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最新作『暮れ逢い』に見る、パトリス・ルコント流「恋愛映画の描き方」とは?

2014年12月19日(金) 14:14配信

パトリス・ルコント監督

パトリス・ルコント監督

フランスの名匠パトリス・ルコント。映画監督として40年──コメディ、アクション、ラブストーリー、アニメーション……多彩なジャンルに挑み、30作に及ぶ長編映画を世に送り出してきた。そんなルコント監督の最新作は、彼が最も得意とする大人の男女の恋愛を描いた『暮れ逢い』。代官山 蔦屋書店の3周年を記念した特別企画「WE RESPECT…」でのトークイベントレポートに加えインタビューをお届け。なぜ、彼は「愛の名匠」「恋愛映画のマエストロ」と言われるのか?『暮れ逢い』を通してパトリス・ルコント監督の映画の作り方、恋愛映画の描き方を探る。

──『仕立て屋の恋』『髪結いの亭主』『イヴォンヌの香り』といった恋愛映画から前作のアニメーション『スーサイド・ショップ』まで、さまざまなジャンルで映画を撮っていますが、やはり“恋愛”を描くことに長けている、という印象が強いです。監督自身、恋愛映画がお好きなのでしょうか?

もうずっと昔の作品になってしまいますが、監督になりたての頃、最初の数作品はぜんぶ喜劇だったんです。人を笑わせることは楽しいですからね。ただ、自分の実生活のなかで感じる感情すべてを喜劇では表現しきれないと限界を感じた。喜劇ではないジャンルでその感情を表現したいと思ったんです。映画監督としてある程度の信頼を得ると自由にジャンルを選べるようになりますから。その自由を手にしたとき、僕が本当にやってみたいと思ったのが恋愛映画でした。そして、その第一作目が『仕立て屋の恋』だったというわけです。

──監督にとって、あらゆる感情を表現できるのが恋愛映画というわけですね。それが面白さでもあると?

恋をしている男女を撮る、欲望がだんだん高まっていく人間を撮るというのは、とても濃密で自分の心を動かしてくれます。何より、ものすごく映画的だと思うんです。僕自身が(作品などに)抱いている感情が強ければ強いほど、それを映像化したくなる。成功するかどうか何の確信もないんですけどね(苦笑)。そう、すごく誇りに思った出来事があるんです。僕の友人でとても有名な人を『髪結いの亭主』の試写に招待したとき、映画を観終わった彼が人目を避けて泣いていたんです。「それほどこの映画に感動したのかい?」と聞いたら「この映画を観て、自分は妻をちゃんと愛していないことに気づいた。愛し足りていないことに気づいたんだ……」と。そのとき、僕の仕事は決して無駄じゃないと思ったんです。

──いいお話ですね。今回の『暮れ逢い』は許されぬ恋に落ちた男女が主人公です。夫がいる身で夫の個人秘書である青年フリドリックに恋するシャーロット、自分が仕えるボスの妻シャーロットに恋してしまったフリドリック。プラトニック・ラブであるのにとてもエロティックなのはなぜですか?

人生においても作品においても、欲望をすぐに消費するのではなく、できるだけ持続させる。僕はそこに重きを置いている。快感を感じるんです。とは言っても僕は懐古主義者ではないですし、そもそも欲望を持続させることが時代遅れだとは思っていません。今の時代にも通じるものだと思っていますから。秘めたる恋ほど素晴らしいものはない。だって、すごくエロティックだったでしょう? 控え目にしなくてはならない関係だからこそ、その内側は煮えたぎる火山のようなものなんです。

暮れ逢い

(C)2014 FIDELITE FILMS – WILD BUNCH – SCOPE PICTURES

暮れ逢い

(C)2014 FIDELITE FILMS – WILD BUNCH – SCOPE PICTURES

──恋愛における何かしらの障害と欲望は密接な関係にあるということですね。

そうです。障害があるからこそ、禁じられた愛だからこそ欲望は高まるんです。フリドリックはホフマイスターの妻シャーロットに恋をする権利はないので、必然的に彼には秘めたる恋しか道はない。でも会った瞬間から彼女のことが気になってしかたなくて、いつも彼女のことばかり考えている。すごく恋をしているんですね。そんなフリドリックの人生最大の衝撃というのは、決して手の届かない人だと思っていたシャーロットが自分と同じように想いを寄せてくれたということなんです。

──2人それぞれが相手の存在を追いかけ、見つめる、あの官能的な視線。触れそうで触れないギリギリの距離感にとてもドキドキさせられました。視線や距離感について、俳優たちにどんな演出を? また、監督ならではの撮影方法はあるのでしょうか?

僕は自分でカメラを回しているんです。そうすることで俳優と自分との間にとても親密な関係性が生まれます。女優にしても男優にしても、カメラのすぐ後ろに監督がいることで彼らは自分たちの最高のものを差し出してくれるものなんですね。もしもカメラを回す権利を奪われてしまうのであれば、僕は映画を撮ることはないでしょう。それほど僕にとっては大事なことです。

パトリス・ルコント監督

──シャーロットの何とも言えない生々しい美しさや、彼女を愛する男たちの気持ちが痛いほど伝わってくるのは、そういうことなんですね。そのなかで一番ドキッとさせられた視線は誰のどの視線ですか?

いくつかあるんですが、感動してドキッしたのはホフマイスターがシャーロットにヒゲを剃ってもらっているときに、かすかな声で最後に自分の気持ちを打ち明けるシーンです。あのシーンはとても感動させられました。あまりに素晴らしい演技を見せてくれたので、それ以上のテイクは必要なく、1テイクしか撮っていません。夫が妻にある告白をする──役柄としての行動にドキッとさせられるのはもちろん、アラン・リックマンがたった1回のテイクでその感情を演じてくれた、そこにさらに感動してしまうんです。

(文:新谷里映)


映画『暮れ逢い』
12月20日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

原作:シュテファン・ツヴァイク「Journey into the Past」
監督:パトリス・ルコント
出演:レベッカ・ホール、アラン・リックマン、リチャード・マッデン
音楽:ガブリエル・ヤレド
劇中曲:ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」作品13第2楽章「アダージョ・カンタービレ」
2014年/フランス・ベルギー/英語/98分/原題:A Promise
配給:コムストック・グループ
配給協力:クロックワークス


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パトリス・ルコント

生年月日 1947年11月12日(70歳)
星座 さそり座
出生地 仏・パリ

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