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「新宿ってパワーがいる」―映画『さよなら歌舞伎町』廣木隆一監督インタビュー

2015年1月24日(土) 12:00配信

廣木隆一監督

廣木隆一監督

映画『さよなら歌舞伎町』は、日本で指折りの多忙な映画人のスケジュールが奇跡的に合い生まれた奇跡的な映画と言えるだろう。監督は廣木隆一。本作を含め今年は『娚の一生』『ストロボ・エッジ』の公開がすでに決まっている、オファーの絶えない監督のひとりだ。主演は、22歳にして圧倒的演技力で人々を魅了する染谷将太、AKB48のトップアイドルから本格派女優へと新たな道を切り開く前田敦子。彼らを中心に、新宿・歌舞伎町のラブホテルのとある1日の群像劇が描かれる。

──これまでに60本以上の映画を監督していますが、群像劇が初というのは意外です。監督を引き受けた経緯から聞かせてください。

「脚本は『ヴァイブレータ』や『やわらかい生活』で組んだことのある荒井(晴彦)さんのオリジナルです。ラブホテルの中だけで物語が展開するというのが面白かったし、限られた空間で起きるその物語をどうやって映画的に広がりを見せられるか──難しそうだけれど挑戦したいと思いました。しかも今までにやったことのない群像劇。新宿のラブホテルが舞台という設定も最近はなかなかない設定だし、人間っぽい映画を作ってみたいなって」

──ただ、新宿の歌舞伎町で撮影をするのはとても難しいんですよね?

「道路使用許可を取るのも大変なんですけど、何とか警察の許可を得ることができて。舞台となっているのは実際に歌舞伎町にあるホテルアトラスというラブホテルで、外観とロビーを使わせてもらっています。営業中、比較的お客さんがいない夜中から早朝にかけての時間帯を借りて撮影したんですけど、営業の妨げにならないよう、お客さんがやって来ては撮影を中断して知らないふりをしていました(笑)。さすがにこの映画の物語みたいに、知り合いにばったり会うってことはなかったけど、それがあったらもうギャグですね(笑)」

舞台のメインはラブホテル

舞台のメインはラブホテル

──たしかに(笑)。廣木監督はこれまでにも『やわらかい生活』では蒲田を、『RIVER』では秋葉原を、東京の街を切り取ってきました。今回の舞台である歌舞伎町は監督にとってどういう街なんでしょうか?

「昔、ピンク映画を撮っていたときは新宿が拠点のような感じでした。打合せも撮影も撮影後の飲みも新宿。近頃はぜんぜん行かなくなったけれど……というのも、新宿ってパワーがいるんですよ。70歳近くもなるとパワーがなくてね(苦笑)。あと、昔と今とでずいぶんと街が変わってきていますよね。コマ劇場がなくなっちゃったし。昔はコマ劇場以外にもオールナイトの映画館がたくさんあって、よく夜中に映画を観に行ったし、夜中でも誰かしら知り合いがいた、そういう街でした」

──そんな移り変わっていく歌舞伎町で描かれるのは、染谷さんの演じるラブホテルの店長・徹と前田さんのミュージシャンを目指している沙耶のカップルをはじめ、ラブホテルですれ違うさまざまな男と女の1日。群像劇を描くうえで大切にしたのはどんなことですか?

「脚本の荒井さんの名言に“偶然が二度あると必然になる。それが劇なんだ”というのがあるんです。その名言のように、たった1日のなかにあれだけの偶然があるものなのか? って思われないように(違和感のないように)することは気をつけました。面白かったのは、彼女と妹の秘密をいっぺんに知ってしまう徹に対しての観客のリアクションが世界共通だったこと。妹がAV女優なんだと徹が従業員の里美(南果歩)に話すシーンは、トロント映画祭でも釜山映画祭でもみんなどっと笑うんです」

染谷将太と前田敦子

染谷将太と前田敦子

──笑えるほどの悲惨さを染谷さんがみごとに演じていたということですよね。

「ほんとに。そういう意味でも将太に徹を演じてもらって良かったです。彼はね、たったひと言で僕が言いたいことが分かるんです。現場で(徹の置かれた状況って)『……キツイよな?』って投げかけると『キツイっすね……』って返ってくる。たったそれだけの会話で徹をどんなふうに演じたらいいのか、彼には伝わっているんです」

──監督の考えを読み取る力、受け取る力、すごいですね。前田さんはどうでしたか?

「過去のAKB48のブランド名がついてまわって、なかなか“前田敦子”個人としてはまだ見えづらいんだろうけど、すごく映画的な人だし、この映画のなかにも自然にはまっていました。将太をビンタするシーンでは『本気でやっていいからね』って言うと、本当に本気で将太のことをバコッて殴っていましたからね。やべっ、マジでやったぞって(笑)。本気でって言ってもふつうは手加減しちゃうもの。本気でいけるっていうのが彼女らしさなんです。素晴らしい演技でしたよ」

──そのシーンの会話、やりとりも見ごたえありました。そんな徹と沙耶のほかにも風俗スカウトマンと家出少女、不倫刑事カップル、時効まであと1日の逃亡犯、韓国人の恋人たち……さまざまな男女の話が織り混ざっているわけですが、舞台がラブホテルの一室ということもあり、ワンシチュエーション劇のようでもありました。

「韓国人カップルのヘナとチョンスのバスタブのシーンは特に長かったですね。1シーンが長いうえに20テイク近くも撮っているんです。1日目にOKを出すけど次の日にもう一回撮らせてって。ラストの徹と沙耶の神社のシーンもリテイクしたいって2日かけています。でも、役者には前日のここがダメだったからリテイクするとか理由は伝えない。もう一回やりたいと言うだけ。自分が納得していないときって、家に帰ってもどこか腑に落ちなくて何かひっかかっていて、それはもう感覚でしかないので言葉では説明できないんです。もう一回やってみるとそれ以上のものが撮れるかもしれなくて、その可能性に賭けたくなる。撮影が終わるたびに、できるならもう一度最初から撮り直したいって思うこともありますね(笑)。欲張りなんです」

イ・ウンウと、村上淳

イ・ウンウと、村上淳

──(笑)。すごく欲張ったバスタブシーンを含め、ヘナ役のイ・ウンウさんの脱ぎっぷりに驚かされました。女優を大胆にさせる秘策はあるんでしょうか?

「僕自身も現場で裸になっていますから……というのは冗談ですけど(笑)、僕の考えとしては、女優さんは裸になれるのが基本だと思っていて。だからといって裸になれるなれないが演技の評価にはならない。それでも、男も女も別に裸になってもいいんじゃないか、とは思っています」

──変にガードしていないから違和感がなくリアルで、キャラクターの生々しい心情が伝わってきました。最後に、この映画で監督が伝わってほしいと思うことは何ですか?

「男と女の感覚はズレているものだけれど、みんなアホでいいじゃん、迷っていていいじゃん、っていうことかな」


(文:新谷里映)


映画『さよなら歌舞伎町』
2015年1月24日(土)より、テアトル新宿ほか全国順次公開

新宿・歌舞伎町のラブホテル。愛が見つからない大人たち、男と女が交錯する、かけがえのない1日
一流ホテルマンと周囲に偽るラブホテルの店長・徹。彼は有名ミュージシャンを目指す沙耶と同棲しているがちょっぴり倦怠期。ある日、徹は、勤め先の歌舞伎町のラブホテルでいつもの苛立つ1日を過ごすはずだった。そこに集まる年齢も職業も違う訳アリな男と女たち。彼らの人生が鮮やかに激しく交錯した時にあらわれる欲望や寂しさ、そして秘密とは―。

出演:染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、ロイ(5tion)、桶井明日香、我妻三輪子、忍成修吾/大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、河井青葉、宮崎吐夢、松重豊、南果歩
監督:廣木隆一 脚本:荒井晴彦、中野太
(C)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会 R15+


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