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「出来上がった映画を観て、理想の関係だなと思いました」―映画『夫婦フーフー日記』前田弘二監督×永作博美インタビュー

2015年5月29日(金) 15:45配信

前田弘二監督と永作博美

前田弘二監督と永作博美

音楽ライター・清水浩司が、がんの発覚した妻と共に「川崎フーフ」の名で続けた闘病ブログを書籍化した「がんフーフー日記」(小学館刊)。2011年の発刊以来、大切に読み継がれてきたこの本が実に斬新なアイデアで映画化された。主演の永作博美と、監督の前田弘二に、映画『夫婦フーフー日記』の狙いを訊いた。

前田:起きることはツラいことばかりなんですけど、読んだ印象がすごくあったかく、ダンナとヨメの人柄に惹かれました。なので、映画もふたりの人柄を見せていけるものにしたかったんです。

映画は、死んだヨメがダンナの前に現れる、という極めてフィクショナルな設定を追加。単に、実話感動系の枠におさまらない、ユニークな愛情物語になった。「ふたり」は、丁々発止のやりとりをしながら、闘病中の「過去」を振り返る。言ってみれば、そこでは「悲しみの相対化」が行なわれており、観客の深層に静かに響く多彩さがある。

前田:海外の(映画)DVDでオーディオコメンタリーってありますよね。出演者が(撮影)当時を振り返って、コメントを入れる。これだ、と思ったんですよね。一緒に「過去」を見ている。それを体感できればいいんじゃないかと。そうすることで、悲しいシーンなんだけど、どこか微笑ましかったり、楽しいシーンなんだけど、どこかせつなかったりする。

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

それにしても、前例のないシチュエーション。永作は、佐々木蔵之介と共に、このヨメとこのダンナならではの情緒を作り上げた。

永作:過去が現実で、現在が俯瞰。時空を超えたところにふたりはいるので、一種のファンタジーですよね。リアリティということを意識するなら、完全にありえないところで演じていいなと思ってやってました。幻影なのか幽霊なのか。それは観たひとが感じたところでいいと思うんですけど。絶対、このひと死なないよね。っていう女がここにいたらいいなというぐらいの気持ちで。もともとの(ヨメの)エネルギーが強かったので、それを表現するにはとことんダイナミックにして、超えていくしかなくて。(演じる上では)もう全部、精一杯、みたいな(笑)。ただ、病床に関しては、どうしてもテンションが下がっちゃうので、監督にも「上げて、上げて」と言われたし、私も「上げたい」と思って、意識を高めました。

あるとき、ヨメは衝撃の告白をする。しかも、実にチャーミングなやり方で。たとえば、そんな描写に、この映画の魔法は宿っている。

前田:原作を読んで、悪戯っぽさや茶目っ気に、ヨメらしさを感じたんですよ。それは気遣いでもあるし、照れ隠しでもある。あのシーンは、「このひとなら言いそう」と思いましたね(笑)

永作:このひとと、このひと。このふたりだから生まれたんだな、というものがどんどんどんどん重なっていったらいいなって。ヨメは、ダンナを元気づけよう、私しかダンナの尻は叩けないと思っていて、それは確かにお節介だし、ひとの面倒が見たいひとなんだけど、でも気がつくと、本気で闘ってるな、このひと、みたいなところが、ダンナに対してあって。全部相手のためなんだけど、つい競っちゃうふたりなんですよね。それを、ひとはバカ夫婦って言うかもしれないけど(笑)

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

前田:出来上がった映画を観て、理想の関係だなと思いました。ふたりは言い合えてるけど、本音ではどこかに照れがあって。内面はウブなところがあって。可愛いですよね。別に理想で映画を作っているわけではないんですけど、いい関係だなって。

永作:お互いのこと、すごく思ってるんですけど、それをあんまり出すのは恥ずかしいから、ちょっと退く。その隙間がある感じがいいですよね。近づいたり、退いたりの距離感があるのが。

ある意味、ふたり芝居と言ってもいい構成。佐々木と永作という芸達者ふたりでなければ、この時空を超えた芝居は成立しなかったに違いない。

永作:掛け合いに関しては緊張感を持って臨みました。佐々木さんが生粋の関西出身の方なので本当に助かりましたね。私が微妙にズレたとしても、佐々木さんが帳消しにしてくれるっていうか。「自分は絶対悪くない!」という、夫婦の必死の掛け合い。その意志だけで闘う(笑)。結果、ああいう掛け合いになったんです。たとえば、夫婦漫才みたいに(呼吸を)合わせようとしたら、また違うものになっていたかもしれない。「負けないぞ!」という想いで闘ったことが結果良かったんだなと今は思ってます。

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

永作といえば、かつてイッセー尾形とのふたり芝居ドラマ「くらげが眠るまで」に出演したこともある。

永作:ふたりって、あんまり動かしようがないので、双方がどれだけ気を遣って、どれだけ気を合わせるか。そういう意味での「気合い」でしかないと思っていて。一瞬の気合いも大事だし、時間のあいた気合いも大事だったりする。それをどう察知するかだけだと思います。ある程度の勘みたいなものでやっているような気がしますね。あと、どっちがペースを作るか、というのもありますね。イッセーさんみたいな方は、イッセーさんが基本的にリードしてくれるので、ついていく。今回は、佐々木さんがしっかり自分の時間で動いてたし、私も私で、意外と自分の時間で立てていたと思っていて。そんななかでのふたりの「気合い」だったと思います。ほんのちょっとした一瞬の感覚なんですよ。私、芝居って、ほんとに瞬発力が大事だと思っていて。ふたりだけだと、1対1なので、かなり感覚を研ぎ澄ませないといけないんです。

前田監督は、「たけしの万物創世記」にレギュラー出演していた1996年当時の永作博美のイメージも念頭にあったとか。

前田:たけしさんに突っ込んでる永作さんが、すごくいいんですよね。

永作:ずいぶん、マニアックなところを出してきますね(笑)。でも、懐かしい感じはしましたね。久しぶりに、こういう弾けた役をやらせてもらったなと。最近、どちらかと言えばシリアスな役が多いけど、以前はエネルギッシュな女性も、活発な女性も、結構やっていたので。あの頃の印象も多少あるのかな? と思います。

傑作『くりいむレモン 旅の終わり』、吉高由里子主演の『婚前特急』、榮倉奈々主演の『わたしのハワイの歩きかた』と、前田監督は会話の流れのなかから、独自の「時間」を浮き彫りにする手腕に定評がある。今回は、夫婦の会話で、過去と現在という時空を超えている。

前田:結局、夫婦のリズムが映画のリズムになっていく。その瞬間その瞬間生まれた時間が、正解の時間だし、そのとき感じたものを取り入れていこうと。今回のように時間軸が変わることは初めてでしたけど、原作がすんなり読めたんです。しかも、この時間っていつなんだろう? と、わからないまま「のれた」自分がいた。でも、記憶ってそうだよなと。3日前と、2日前の区別ってつかないよなと。急に幼児期を思い出したりもする。(物事が起きた)順番に蘇るわけじゃないので。だったら、いろんなものがつながってくればいいなと。そこにフィクションならではの豊かさがあればいいなと思いました。ヨメが現れるというフィクションと、過去を振り返るというフィクション。ふたつのフィクションがある。そこに決められたルールはないので、ルールを新たに作り、もし、見たいと思うものがあれば、そのルールを外して、見たいものを見せる。勝手に作った秩序を自らぶっ壊していくみたいな(笑)。

永作:自由自在の浮遊感みたいなものがあって。観てて、すごい楽しいです。

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会

死ぬヒロイン。永作はこれまでもそのような役どころを何度も経験している。しかし、本作にはかつて感じなかったものがあったという。

永作:キャラクターって、断片的にしか描かれてないんです。その上で演じるので、「完全な死」を演じるというところまでは、いつも至ってないと思いますね。でも今回は、死んだ病室の画を観てて、妙なリアリティを感じて。すごく不思議だなと。あ、このひと、死んでしまったんだ……っていう。それだけで妙に悲しくなった。特に何かしてたわけでもないのに、この空気、ちゃんと(ひとが)死んでる、というのがわかる、感じるっていうのが、なんだろ、この的確感、と思いました。何か特別誘導しているわけではないのに、ちゃんとその場面がはっきりと、すこんと入ってくる。この作品の場面場面が、それぞれスコンと入ってくる。どのシーンも印象的でした。

(取材・文:相田冬二)


映画『夫婦フーフー日記』
5月30日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

原作:川崎フーフ「がんフーフー日記」(小学館刊)
監督:前田弘二
脚本:林民夫・前田弘二
出演:佐々木蔵之介 永作博美/佐藤仁美 高橋周平/並樹史朗 梅沢昌代 大石吾朗 吉本選江 宇野祥平 小市慢太郎/c
配給:ショウゲート
(C)2015川崎フーフ・小学館/「夫婦フーフー日記」製作委員会


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がんフーフー日記

がんフーフー日記

著者 川崎フーフ 
概要 長年の友人関係にあったふたりは二〇〇九年三月に入籍。川崎に新居を構えた。そして一か月後の四月に妊娠が発覚。どこにでもあるような幸せな新婚生活を過ごしていた。ところが、体調不良を訴え続ける妻が検査を受けた同九月、腸に悪性の腫瘍があると告げられる。リンパ節の転移もあり、第三期との診断だった。そして妊娠八か月で、帝王切開で長男を一四八一グラムで出産することになる―。そのあとも、刻々と変化する日々を、泣いたり笑ったりしながら友人、家族と生き抜いた、今まで読んだことがなかったブログ・ドキュメント。

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