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「父のことを話すことができることはとても嬉しい」―映画『チャップリンからの贈りもの』ユージーン・チャップリン インタビュー

2015年7月17日(金) 17:11配信

ユージーン・チャップリン氏

ユージーン・チャップリン氏

『黄金時代』『街の灯』『モダン・タイムス』『独裁者』『ライムライト』をはじめ数多くの名作を残し、喜劇王として映画史にその名を刻むチャールズ・チャップリン。今年で没後38年になるが、チャップリンが亡くなった直後に遺体が誘拐された事件を知っているだろうか? 映画『チャップリンからの贈りもの』はスイスで実際に起きたチャップリン遺体誘拐事件をもとに、何をやっても上手くいかない2人の男たちの人生を描いたヒューマンドラマだ。

この映画が凄いのはチャップリンの遺族の全面協力によって作られていること。埋葬された墓地や亡くなるまで住んでいた邸宅で撮影しているだけでなく、孫娘のドロレスはチャップリンの娘役を、息子のユージーンはサーカスの支配人役として出演している。来日したユージーンさんは撮影時をこうふり返る。

「私の両親が生活していた村で撮影をしていて、面白かったのは父が亡くなった1977年を再現したことです。父が亡くなり遺体が誘拐されたことは家族にとって悲しい想い出ですが、1977年の風景が現代に再構築されるのは興味深い体験でした」

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

クザヴィエ・ボーヴォワ監督は2人の誘拐犯を愛嬌あるキャラクターにすることで遺体誘拐事件をユーモラスでハートフルな物語に作り上げた。ユージーンさんも「主人公の2人の詐欺師は無器用で喜劇映画に出てくるようなキャラクター。とてもユーモアがある」と称え、サーカスの支配人役として出演していることに関しては「私は父と違ってとても内気な性格なので、演じることには向いていないんです」と、ちょっぴり恥ずかしそうに話す。

「最初はためらいの方が大きくて。でも、サーカス団は私がよく知っている仲間なので引き受けることにしました。スクリーンのなかに自分の姿があるのは何だか照れくさくて嫌だなぁと思っていたんですが、何十年か経って子供たちが大きくなったときに“パパが出ているよ!”と言って喜んでくれたら嬉しいですね」

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

ユージーンさんが子供想いなのはもちろん父親ゆずり。父チャップリンからは芝居を観る面白さを教えてもらった。「クリスマスの時季には両親がロンドンに連れて行ってくれて、ミュージカルやパントマイムをたくさん観ました。私は芝居小屋のあの何とも言えない夢のような空間が大好き。いつまでもあの場所に居続けたいと思っていました」

世界的な映画人も子供の前では「ごく普通の父親」だったそうだが、亡くなってもなお「父のことを聞かれることや、どんな人だったのか話すことができることはとても嬉しい」とユージーンさん。「私には7歳の双子の娘がいるんですが、娘の同級生が“チャップリンの孫だ!”って言っているのを聞いたりすると、ああ、こんなに若い世代も父のことを知ってくれているのかと嬉しくなります」。もちろん、この映画『チャップリンからの贈りもの』をきっかけにチャップリンの映画を観る人もいるだろう。人から人へ、チャップリンが遺した名作が人々の記憶に刻まれるのは嬉しいことだ。

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

(C)Marie-Julie Maille / Why Not Productions

また、この映画のストーリーにはチャップリンへのオマージュもあふれている。主人公のエディとオスマンが住んでいる家は『モダン・タイムス』の掘っ建て小屋のようで、エディがサーカスの道化になる展開は『サーカス』を彷彿させ、ラストで映し出される楽屋のシーンは『ライムライト』そのものだ。もちろんそれらを含めたチャップリン作品はユージーンさんにとってすべて「愛すべきもの」ではあるが、敢えてひとつ挙げるとしたら──という問いに「ひとつ選ぶのは難しいですが……」と返ってきたのは『街の灯』だった。その理由は?

「ロマンティックで人類愛も描かれていて本当に素晴らしい作品です。ただ、その時期にトーキー映画が出てきたことでチャップリンのキャリアはここまでだねとキャリアの終焉を告げる人も多くいました。そして、サイレント映画は死なないんだと言って作ったのが『街の灯』。サイレント映画ですが、父が初めて作曲した作品でもあり音楽付きで公開されました。サイレント映画は不滅だということを音楽を付けることで証明した映画でもあります」

(取材・文/新谷里映)


映画『チャップリンからの贈りもの』
7月18日(土)YEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

監督:グザヴィエ・ボーヴォワ(『神々と男たち』カンヌ国際映画祭グランプリ)
出演:ブノワ・ポールヴールド(『ココ・アヴァン・シャネル』)、ロシュディ・ゼム『あるいは裏切りという名の犬』)、キアラ・マストロヤンニ
音楽:ミシェル・ルグラン(『シェルブールの雨傘』)
配給:ギャガ


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