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「人間の声というのは、いちばん最初の楽器だと思う」―映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』フランソワ・ジラール監督&ギャレット・ウェアリング インタビュー

2015年9月10日(木) 19:38配信

(左から)フランソワ・ジラール監督&ギャレット・ウェアリング

(左から)フランソワ・ジラール監督&ギャレット・ウェアリング

9月11日(金)から公開される映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。アメリカにある実在の寄宿制の合唱学校を舞台に、過酷な家庭環境で育った少年が、合唱によって希望を見出していく物語だ。ボーイ・ソプラノの少年たちを描いた映画はこれまでもあったから、あらすじだけ聞くと、とりたてて珍しく思わないかもしれない。けれど、この映画は観てみないとわからない魅力にあふれている。8月初旬に来日したフランソワ・ジラール監督と、この映画で1,000人以上の少年の中から選ばれた少年、ギャレット・ウェアリングに話を聞きながら、その魅力を解剖していくと――。

―まず、主人公の少年、ステット役が決まった経緯から聞かせてください

ジラール監督:ギャレットに決まるまでは本当に長い道のりでした。

―どのぐらいかかったんですか?

ジラール監督:結局、6か月かかりましたね。キャスティング・ディレクターが1,000人ぐらい、僕が250人ぐらいの子どもたちに会いました。ステットというのは、大変な家庭環境にいて、孤独だし、あまり話さない少年です。そういう内面性を表現できる子は13歳ではなかなか見つからないんですよ。

―その中でギャレットくんに決めたのは?

途中、この子でどうだろうという子が出て来て、ダスティン・ホフマンと会わせてカメラ・テストもしたのですが、魅力的な子ではあるんだけど、ステットには何かが足りないんです。他の皆はクリスマス休暇前だったこともあり、もうその子に決めて休暇に入りたいと(笑)でも、僕だけが納得いかなくて、結局、白紙に戻して。今に思えば、大胆な決断をしましたね。監督としては、本当に「この子がいい」と思えないと、映画は撮れないですから。

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

―ギャレットくんは、オーディションのこと、覚えていますか?

ギャレット:ものすごくよく覚えています。前に歌のオーディションでさんざんな目に遭ったので、もう歌のオーディションはやめておこうと思っていて、しぶしぶ受けたんです。映画の中で歌う『戦いの賛歌』という歌を練習して、1次審査はなんとか通過したので、2次審査も練習していったら、監督が「もうその歌は聴き飽きたよ」って(笑)慌ててアドリブで他の曲を歌いました。

―監督、その狙いは?

ジラール監督:オーディションっていうのは、あてにならないんです。オーディションが得意な子というのもいますから。オーディションでは、歌う以外にも、広い体育館を走ったり、いろいろなことをしてもらいました。ステット役として、僕がインタビューしたりしてね。アドリブ力を見たかったんです。

ギャレット:ロサンゼルスに家族で引っ越したばかりの時で、今度はカメラ・テストでニュージャージーに行って。広い体育館だったんですけど、僕は歌うだけかと思っていたら、急に「走って!」と言われて、あわてて壁に激突して。僕は何をやっているんだろう……と思いました(笑)。ステット役としてのインタビューは……されたかな。よく覚えていないです。自分が覚えておきたかったことしか覚えていないみたいです(笑)

―それは、いい性格ですね。撮影中、覚えておきたいような楽しいことはありましたか?

ギャレット:ランチに行こうとしたら、目の前で車が止まって、窓が開いたら、(共演の)キャシー・ベイツなんです。「これからハンバーガーを食べにいくけど、ギャレットくんもおいで」って。その日は家族で撮影現場にいたから、皆でおじゃましたら、シェイク・シャックというハンバーガー店(来年、日本にも上陸)なんですけど、すでにお店にダスティンがいて、ノリノリなんです。「俺もう4個食ったけど、みんなももう1個食べない?」って(笑)「フライドポテト、食べな」とか「ミルクシェイク飲まない?」とか、いろいろ進めてくれて。ダスティン・ホフマンとキャシー・ベイツの間でハンバーガーを食べている自分が夢みたいでした。

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

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ジラール監督:あれだけ撮影したのに、いちばんの思い出が、バーガーなのか?(笑)

ギャレット:違うよ。だって、楽しかったことを聞かれたから……

ジラール監督:わかったよ。ギャレットにとって、これはバーガーの映画ってことでいいんだな(笑)

ギャレット:じゃあ、バーガー・クワイアってこと?(原題はボーイ・クワイア→少年合唱団のこと)。

ジラール監督:(笑)

―監督は、現場でのギャレットくん、いかがでしたか?

ジラール監督:オーディションの時からそうだったんだけど、彼は台詞も何もかも完璧に準備してくるんですよ。ベテランの俳優さんは……そうでもないので(笑)。ダスティンは撮影現場のみんなに面白い話をしているし、エディ・イザードもその辺でスタッフを笑わせているし、現場が楽しくて、みんななかなか撮影しようとしないので、監督としては「はいはいはいはい、始めますよー」ってやるのが仕事でしたね(笑)

―ダスティン・ホフマンさんとの共演、緊張しましたか?

ギャレット:ダスティンは人を緊張させないんです。一緒にいると、安心して、すごく楽しい気分にさせてくれる人でした。スタッフの人たちにもいつも感じがいいし、周りのことをすごく考えていて、本当にいろいろなことを教えてもらったと思います。

ジラール監督:彼は本物のリーダーなんですね。彼がいることで現場がひとつになるし、本当に皆のことを見てくれていました。特にギャレットのことはいつも気にしていましたね。でも、子ども扱いはしないんですよ。飽くまで共演者として彼のことをリスペクトしていました。

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

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―監督はダスティンさんとは交友が深いですね。

ジラール監督:そうですね。10年ぐらい前に映画の企画を一緒に練って、結局、映画化は実現しなかったんです。彼も僕も音楽が好きだから、脚本のベン・リプリーも含め、僕ら3人の打合せは、ほとんどが音楽の話でしたね。3人の音楽への思いや、好きな音楽が、この映画にかなり投影されていると思います。

―監督はこれまで『グレン・グールドをめぐる32章』や『レッド・バイオリン』を監督されて、オペラの演出も手掛けている。音楽的なバックグランドが豊かです。

ジラール監督:映画の中に音楽を使う時は、キャラクターを物語るように選曲します。飽くまで大事なのは、キャラクターなんです。今回も本当にいろいろな合唱曲が出てきますが、それぞれのキャラクターを考えて選曲しています。

―中でも、ダスティン・ホフマン演じる合唱指導の先生・カーヴェルは、過去もある人物で、ステットにもただやさしいだけではない。とても複雑なキャラクターで興味惹かれました。

ジラール監督:そうですね。カーヴェルのキャラクターは、観客に嫌われてもおかしくない面も持っている。でも、愛される人になったのは、ダスティンが演じてくれたからだと思いますね。合唱団が歌う曲は、カーヴェルなら、こういう曲を選ぶだろうという選曲にしています。

―少年合唱団としては、とても珍しい選曲ですよね。讃美歌だけでなく、あらゆる国や時代の曲が混ざっているし、カール・ジェンキンスの『アディエマス』のような現代の曲も混ざっていて。

ジラール監督:今回は選曲をするために、100時間以上の合唱曲を聴きました。飛行機の移動中や何をする時にでも。この作業は僕にとっては多くの人がサッカー観戦に夢中になるような感じ。大好きな作業ですね。

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

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―エンドロールは、アメリカ少年合唱とジョシュ・グローバンさんのコラボ―レーション。日本ではあまり知られていないですが、ジョシュ・グローバンはアメリカの国民的シンガーですよね。あらゆる音楽の歓びが味わえます。

ジラール監督:人間の声というのは、いちばん最初の楽器だと思うんです。ヴァイオリンやチェロ、ピアノもすべての楽器は人の声を模倣して、人の声に憧れ、その音に近づきたいと生れた音なんだと思います。人の声というのは、不思議な力がありますよね。理屈を超えて、心に直接、届く。この映画をやっていて、少年たちの合唱を聴いていると、あまりにも心を揺さぶられるので、長い時間は聴けなかったぐらい。少年たちの声もジョシュ・グローバンの声も観て下さった方に深く響くと思います。

―ギャレットくんは、普段は音楽は?

ジラール監督:ギャレットはバロック音楽が好きなんだよね。

ギャレット:それは何?(笑)

ジラール監督:ごめんごめん、冗談です。話して。

ギャレット:(笑)オーストラリアのシンガーでSHIRって知ってますか?彼女の曲が大好きで、ずっと聴いてます。僕は好きになると、飽きるまで何回も聴くんです。で、飽きると次の曲に行く。いまはSHIRです。

―ミュージック・ビデオがちょっと面白い人ですよね。SHIRの曲をかけながら、踊ってるのかな

ギャレット:そうです。いつも踊るよ。何でも踊る(笑)。そうやってバカみたいに踊ることは、よくあります(笑)。

―俳優には小さい頃からなりたかったんですか? 本格的に俳優の仕事をするため、テキサスからご家族でロサンゼルスに引っ越したんですよね?

ギャレット:そうです。俳優になるという決断は、とても勇気のいることだけど、その決断を支えてくれた両親にはすごく感謝しています。この年齢でこういう仕事をさせてもらえることも、初主演作がこの映画で、すごく豪華な人たちと共演させてもらったことも、すごくありがたかったなと思っています。

―今回の作品のオーディションは、引っ越してきた後で?

ギャレット:引っ越し作業中で、部屋中の荷物をダンボールにまとめた後に、スカイプでオーディションしたんです。積み重なったダンボールの上にカメラを置いて、犬がわんわん吠えて、大変でした(笑)。

―俳優になるんだっていう意志が、ステット役を呼び寄せたんですね。

ギャレット:決まった時は、本当にうれしかったです。オーディションでは壁に激突して、自分では全然ダメだと思っていたから(笑)。

ジラール監督:ね。本当にオーディションっていうのはあてにならないんです。お世辞ではなく、未来のスターが誕生する場に立ち会えて、僕はラッキーでしたね。

(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

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―ギャレットくんが錚々たる共演時の中で堂々たる演技をしているのは、監督の演出によるところも大きいと思うのですが。

ジラール監督:今回、彼が表現してくれた内面性は、彼自身が演じたものだと思います。僕が何を言っても、俳優のカリスマ性はどうにもできませんから。僕は監督の仕事というのは、俳優の皆さんが表現する余白を作ることだと思うんです。だから、僕から「こうやってほしい」とは言いません。それぞれが自分なりに表現する余地をこちらが作ることが大切だと思っています。例えば、ギャレットなら、今、彼は自分の表現をするために何が必要なのか、僕にどうやって支えてほしいと思っているのか。論理的な説明を求める役者さんもいれば、動きの面で助けてほしい人もいる。愛が欲しい人もいれば、叱ってほしい人もいて、人によって本当に違うので、そこを見極めるのが演出家の仕事ですね。

ギャレット:だから、ジラール監督は素晴らしい監督なんだよ。

ジラール監督:お! さては僕の次回作に出ようと思っているな(笑)。

―次回作の話が出ましたが(笑)お二人の今後の予定は?

ジラール監督:今はオペラと舞台を2本ずつ予定しています。映画『シルク』でご一緒した中谷美紀さんが主演する舞台『猟銃』の再演が、来年、東京のパルコ劇場であります。美紀さんが本当に素晴らしいですよ。

ギャレット:僕は少し前に『インディペンデンス・デイ』の撮影を終えました。オリジナルから20年経った続編で、相当にエキサイティングでした。来年の夏に公開されます。俳優の仕事は浮き沈みが激しいから、この後、どうなるかはわからないけれど、いちばんいい状態をイメージして、ポジティブに臨んでいきたいです。

―監督はシルク・ドゥ・ソレイユの演出もされていますし、日本は何度もいらしていますね。

ジラール監督:そうですね。25回ぐらいになるかな。日本に来ると決まって会う友人もいるし、好きなレストランもいっぱいあるよ(笑)そのうち、大人になったギャレットが「日本は25回目です」って記者会見の席で言っている様子が思い浮かぶね。

ギャレット:日本に来て感動したのは、ポッキーとコアラのマーチのおいしさ。友だちにも買っていこうと思います。

フランソワ・ジラール監督&ギャレット・ウェアリング

音楽的な素養が深く、巨匠のような雰囲気を漂わせながらも、冗談の好きなジラール監督と、映画の中のステット役のイメージを裏切らず、好青年の道を邁進中のギャレットくん。年の離れた友人どうしのような二人から、楽しい現場の様子が伝わってくる。ダスティン・ホフマン、キャシー・ベイツのほか、ステットを見出す別の教師役をデブラ・ウィンガーが演じ、高校の合唱部を舞台にした人気ドラマ『Glee』のケヴィン・マクヘイルも先生役で登場するなど、豪華キャストのアンサンブルが贅沢な『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。底力のあるスタッフ・キャストが揃うと、スタンダードな物語がここまで輝くのかという感動を味わわせてくれる。

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』
9月11日、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

原題:BOYCHOIR
監督:フランソワ・ジラール
脚本:ベン・リプリー
撮影:デヴィッド・フランコ/編集:ゲタン・ユオ/
音楽:ブライアン・バーン/美術:ジェーン・マスキー
出演:ダスティン・ホフマン、キャシー・ベイツ、デブラ・ウィンガー、ジョシュ・ルーカス、エディ・イザード、ケヴィン・マクヘイル、ジョー・ウエスト、ギャレット・ウェアリング
2014年アメリカ/カラー/1時間43分/スコープサイズ/5.1chサラウンド/日本語字幕:牧野琴子
配給:アスミック・エース


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