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【深層インタビュー】紀里谷和明監督 「自分で動いて」掴み取った“ハリウッド”の意味

2015年10月9日(金) 06:00配信

CASSHERN』(2004)、『GOEMON』(2009)で無類の世界を築き上げた紀里谷和明監督が5年の歳月をかけて完成させたハリウッド・デビュー作『ラスト・ナイツ』。

『しくじり先生』(テレビ朝日系)出演で大いに注目を集めた紀里谷監督

『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)に出演、映画界に物申した過去を語って大いに注目を集めた紀里谷監督

架空の封建国家を舞台にした本作は、主君への忠誠心を胸に、難攻不落の城と不条理な権力に挑む、気高い騎士たちの姿を描いたヒューマン・ドラマ。すでに世界30ヵ国での公開が決定している。

主君に忠義を尽くす騎士団の隊長ライデンにクライヴ・オーウェン、高潔な心を持つ領主バルトーク卿にモーガン・フリーマン。この英米の名優たちを、紀里谷監督は日本人監督として初めて演出している。そこで、紀里谷監督にハリウッドでのキャスティングや撮影方法、そして現在の日本映画業界について聞いた。

ハリウッドは「たまたま」 目的が達成されるならどこでも

『CASSHERN』『GOEMON』で日本映画の常識を打ち破った紀里谷監督が次に選んだ場はハリウッドだった。それは決して容易なものではない。交渉や撮影、公開など製作システムがすべてが違うハリウッドで、どうして第3作目を作ることになったのだろうか。

──まず、ハリウッドで製作することになった経緯を教えてください。

紀里谷:僕のところにハリウッドのプロデューサーから素晴らしい脚本が送られてきました。その脚本に書かれていたことは僕がいつも考えている「人間にとって何が重要か」ということを問う内容だったので、それを映画化させてもらえればいいなと思いました。

──いつかはハリウッドで映画を撮りたいと思っていたのでしょうか?

紀里谷:ハリウッドに憧れていたわけではないし、ハリウッドが良くて日本が悪いと思っているわけでもないです。

単純に自分が作りたいものがあって、それを可能にするためにはどうすればいいのかと考えた時に、非常に悲しいことではありますが、今現在の日本のシステムの中でこのような作品を作るということは、まず予算的に難しいんです。

それを可能にする為には、別のシステムを選択する判断しかなくて、それがたまたまハリウッドだったんです。単に自分が作りたい映画を、作れる環境で作ったという、ただそれだけの話です。

モーガン・フリーマンには手紙を何通も 「自分で動いて取りに行く」

「ただ最高の俳優をキャスティングしたい」。紀里谷監督はそのグローバルなコンセプトに基づいてキャスティングを進め、彼の独創的なヴィジョンと脚本に魅せられた大物俳優たちの出演が続々と決定したという。しかし、運だけで事が進むスケールではない。そこには紀里谷監督の血のにじむような努力と果敢な挑戦があった。

──誰でもハリウッドで映画が作ることができるわけではなく、紀里谷監督だからこそ成し遂げられたことだと思うのですが。

紀里谷:誰でもチャンスは巡ってきますよ。皆さんそういう風なことを言って、誰かが何かを成し遂げていることが自分にはできないと思ってしまっているだけだと思います。

モーガン・フリーマン

モーガン・フリーマン

僕は『CASSHERN』や『GOEMON』、ひいては写真家として活動を始めた20年前に1枚の写真を撮るという行為から『ラスト・ナイツ』まで全部つながっていると思っています。その工程において、ひとつひとつの小さなステップを僕は踏んできました。人から何を言われようと自分の思うように踏んできました。

誰も何も自分が欲しいものを手放しではくれないと僕は思っているんです。待つのではなくて、自分で動いて取りに行く。こういう作業をしない限り手に入らない。それはスタッフもキャストもそうですよね。

クライヴ・オーウェンが僕の友達だったのではなく、モーガン・フリーマンが僕のことを面白そうと思ってくれたのではなく、単純にそこには素晴らしい脚本があり、それに対し僕が手紙を書いたりと何度も説得したから出演してくれることになったわけです。

その前に、積み重ねてきたプロデューサーとの関係性があったから脚本も(自分に)いただけたわけであり、その前に過去2作を観てくれて、一緒に仕事をしようと言ってくれたプロデューサーがいたわけです。

僕は自分が特別とは思っていません。ただ単に、これから事を成そうとしている人たちに伝えたいのが、できないという理由を探すよりも、できる理由を探して欲しいということです。できないという声に耳を傾けるのではなく、できるという自分の心の声に耳を傾けるべきだと思います。

──送られてきた脚本は「忠臣蔵」を題材に書かれていたと聞きましたが、これを世界に向けてどう演出したのでしょうか?

「忠臣蔵そのものではなく、何が語られているのか。本質に目を向けてほしい」(紀里谷監督)

「忠臣蔵そのものではなく、何が語られているのか。本質に目を向けてほしい」(紀里谷監督)

紀里谷:「忠臣蔵」というと好きな人も知らない人もいて、そこに限定するのではなく、何が語られているのか、その本質に目を向けてほしいと思うんですよね。そうすれば、国や人種、時代も関係なくなってきます。歴史上、どの国を見てもそうなんですね。

この『ラスト・ナイツ』の世界も非常に不条理がはびこっているんですけど、誰もが目を背け、迎合していき、権力に従い、搾取されるがままに進んでいきます。それに対してモーガン・フリーマン演じるバルトーク卿が声を上げるわけですが、彼の精神とそれを受け継ぐ騎士たちの姿がすごく重要だと思います。

──製作期間は5年ですが、何に一番労力を費やしましたか?

紀里谷:すべてですね。映画作りというのはクランクインしてクランクアップで終わるわけではありません。

僕はプロデューサーの役割も担っているので、他のプロデューサーたちと一緒に、ファイナンスの部分も担当、何年もかかりました。また、脚本がいいからといって、そこにすぐにキャストが集まるわけではありません。

しかし、クライヴ・オーウェンが最初に出てくれると言ってくれたのが非常に大きくて、それならばお金を出しましょうと言う人たちも出てきました。

モーガン・フリーマンが出てくれるという話になってからは更に話が加速しましたね。とても小さいところから積み重ねていくことによって、それが大きなプロジェクトとなり、クランクインする事ができました。クランクインしたらクランクインしたで、ものすごい困難が待ち構えていてそれをクリアにする。その繰り返しでしたね。

場面ごとに違う城…ロケの苦労

これまでのCGを主流にしていた紀里谷監督作品とは一変、本作は壮大なロケーションの中で力強いアクションが繰り広げられており、その絵画的な美しさに目を奪われる。また、総勢17ヵ国の一流キャストとスタッフが結集する中で、ただ一人の日本人俳優として伊原剛志が無類の存在感を放つ。クライマックスでのクライヴ・オーウェンとの一騎討ちは圧巻だ。

──本作はチェコの古城や修道院などでロケーション撮影されたと聞きました。大変美しく幻想的でしたが、これまでの作品のCG撮影とは違い大変だったことはありますか?

紀里谷:CGはただ単にひとつの道具でしかなくて、重要なのは僕が何を作りたいのかということなんです。それに対して、CGが必要であればCGを使いますし、ロケーションがよければロケーション、アニメがよければアニメもやる、それだけの話なんですよ。

複数の古城で場面をつなぎ合わせたという

複数の古城で場面をつなぎ合わせたという

今回大変だったことは、ロケーションなので自分の思い通りの画にはならないことです。思い描いたものであれば、CGで作ったほうがいいわけですよね。城ひとつ作るにしても、いろんなロケーションのいろんな城の一部を使って組み合わせて撮影していくんですよ。例えば、廊下を走る時は、この城のこの廊下、角を曲がったら違う城のこの角、門をくぐる時は撮影所のオープンセットということを何度も繰り返していくわけです。各ロケーションはどれも2時間くらい離れているところにありますから、毎日毎日そこに行って撮影して組み合わせていくことが非常に難しい感じでしたね。

──モーガン・フリーマンは、無駄のない紀里谷監督の撮影スタイルが気に入り、バルトーク卿という役柄も演じていて楽しかったとおっしゃっていたそうですが、紀里谷監督は彼から影響を受けたり、学んだことはありますか?

圧倒的な説得力を持っていたというモーガン・フリーマン

圧倒的な説得力を持っていたというモーガン・フリーマン

紀里谷:あれほどの俳優さんなので、学ぶことしかなかったです。それは何なのかというと、圧倒的な説得力なんですよね。

映画っていうのは大きな嘘をついていて、またお客さんもそれが嘘だとわかって観に来てくださっています。しかしながら、映画が始まるとその世界に引きずり込まれてそこに真実を見出していきます。そこでモーガン・フリーマンは圧倒的な真実を体現していて、モニターを観ながら自分の作品というのを忘れてしまうくらいそこには説得力が存在しています。それに触れられただけでも僕は本当に感謝の気持ちしかないです。それはクライヴ・オーウェンもメインのキャストさんたちも皆そうでした。

──伊原剛志さんも印象に残る役を務めていましたね。現場やその後、何かお話はされましたか?

紀里谷:昨日、若い役者さんを集めた試写会をしまして、その後伊原さんと飲んでいたのですが、お芝居とは何なのか、役者とは何なのかということを話しました。

これは伊原さんと僕の共同見解ですが、役者というのは、芝居をしていない時に一番努力しなければいけないような職業だと思うんです。

例えば、日常生活を送っていて、お酒を飲むという場で、本当にお酒を飲んでいるのか、単に惰性でお酒を飲んでいるのか、とことんまで酔っ払ったことがあるのか、もしくは全くお酒を飲まない時期を経験したことがあるのか。

恋愛であれば、その相手の人を本当に好きになったのか、その時にどれだけうれしい気持ちになったのか、もしくはどれだけ辛い気持ちになったのか。常日頃、朝起きて夜寝るまで、現場ではないところで、いっぱい積み重ねて経験して感じていくことによって、現場に入った時にそれが出せるんだと思います。

──いろいろな経験をしている役者さんとそうでない役者さんは、すぐに見分けられるものですか?

紀里谷:映画や写真を撮っていると、レンズを通してその人がどんな人なのかは全部見えてしまうんです。その人が普段どういう仕事をしていて何を考えているのか、わかるんです。

先程お話した通り、レンズを通してモーガン・フリーマンやクライヴ・オーウェンの人格と存在感の大きさがわかるんです。そこをないがしろにしたまま、上辺だけのお芝居をやられても一気に嘘が見えてしまうというのが、僕の持論なんです。

監督もカメラマンも同じことで、そこには僕も映ってしまいますから、であれば自分はどうやって生きているんだろうかと。別に品行方正で聖人君子になれっていうことではないですよ。僕も女の子と遊ぶ時は本気で遊ぶし、苦しい時は本当に苦しみます。人から何といわれようが、社会がどれだけ非難をしようが、自分がそれを経験したいと思ったらやります。そこなんですよね。それが無い限り同じように感じられないはずなんですよ。

──今の紀里谷監督が形成されていく過程で影響を与えた物とは何ですか?

紀里谷:ガンジー、キリスト、釈迦ですね。形というものにとらわれていない人たちで、職業で評価されるというのではなく、その人が何を思っていたのか、何を言っていたのかだけで成立していた人たちにすごく惹かれます。

だから僕は映画監督という肩書に対して何のロマンチシズムも持っていません。

──今後、『GOEMON』のようなゼロからのオリジナルストーリーを作るご予定はありますか?

紀里谷:いっぱいありますよ。テーマは一貫して不変で「不条理」に対しての話ですね。『CASSHERN』も『GOEMON』も『ラスト・ナイツ』に至るまで。実際に自分の中で「なんでこの世界はこんなに不条理に満ち溢れているのだろう」というのが、子供の頃からのテーマなので、それに対して自分なりの疑問を表現しているので、それはこれからも変わらないと思います。既に次回の構想も始まっています。

──最近ご覧になった映画で面白かったのは?

紀里谷:先日、『Ex Machina(原題)』という映画をアメリカで観ました。まだ日本では公開されていませんが、非常に良かったですね。

やはりそれも「人間とは何なのか」ということを問い詰めていくような内容でした。アレックス・ガーランドの初監督作で、脚本も良く出来ているし、作品としても素晴らしかったですね。日本の映画だと、『日本のいちばん長い日』が素晴らしい作品だったと思います。技術的なレベルでも最高だと思いました。

日本のために…

独自の撮影方法で生み出した紀里谷監督の過去2作はヒットしているにも関わらず、世間からは辛辣な声があがった。また、本作は世界30ヵ国での上映が決まっているが、当初、肝心の日本での公開がなかなか決まらなかったという。

「外に向けたマーケットとして成立すれば、予算も上がる。監督たちも作りたいものを作れる」(紀里谷監督)

「外に向けたマーケットとして成立すれば、予算も上がる。監督たちも作りたいものを作れる」(紀里谷監督)

──最後に、今後の日本映画業界について思うことはありますか?

紀里谷:2004年に『CASSHERN』を撮った時に、これは日本のためになるものだと僕は真剣に思っていました。

僕だけではできないかもしれないし、1作目だったので失敗するかもしれないけど、このやり方さえ確立して、他の監督がこれを参考にして作ってくれれば、少ない予算でもハリウッドの大作にも敵うような作品が作れるんじゃないかと。

その当時の日本アニメーションがやっていたことと同じようなことが、実写でもできるんじゃないかと本当に信じていたんですね…。でも、その時は応援どころか、非難や否定しかなかったです。

今回も「忠臣蔵」という日本古来の題材を使って、日本のコンテンツやソフトというものが世界に向けて作られるようなものになるのではないか。そして、日本にいる俳優さんたちが、このような作品にもっと出られるのではないだろうか。ひいては、日本の業界がそれをやることによって活性化し、外に向けたマーケットとして成立するようなものが作られれば、予算は自ずと上がり、映画監督たちも自分たちが作りたいものを作られるようになるのではないか、という思いが僕にはありました。

しかしながら蓋を開けてみると、世界30ヵ国で買ってくれているのに、日本での配給は、なかなか決まらない状況にまた直面するんですよ。

社会を見ていても同じことで、東京五輪のエンブレム問題にしても、「五輪」という非常に希望に満ちあふれたイベントを開催しようとしているのに、同じ日本人同士で批判して徹底的に叩くという行為が止まらない。同じように、女性が輝ける社会を作らなければいけないと言いながら、一生懸命がんばっている女性に対して、同じ女性が「意識高いわね」と言う。学校もそうですよね。それがイジメの構図にもなっているし、このようなことがなぜ起こるのか僕はわかりません。

所詮は私たちひとりひとりが互いにやっているだけの話だと思うんです。誰かが嫌悪する社会や権力者、そのシステムを作り上げているのはそれぞれ個人の問題だあと思います。それをこの『ラスト・ナイツ』では語っています。

(取材・文:クニカタマキ)

『ラスト・ナイツ』

11月14日(土)全国ロードショー
監督/紀里谷和明
出演/クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、伊原剛志、アン・ソンギ、他
配給/KIRIYA PICTURES、ギャガ
(C)2015 Luka Productions


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出演者 江口洋介  大沢たかお  広末涼子  ゴリ  要潤  玉山鉄二  チェ・ホンマン  佐藤江梨子  戸田恵梨香  鶴田真由 
監督 紀里谷和明 
脚本 紀里谷和明  瀧田哲郎 
音楽 松本晃彦 
概要 「CASSHERN」の紀里谷和明監督が贈る時代劇アクション。戦国の世を舞台に、大泥棒・石川五右衛門をはじめ歴史上の人気キャラクターたちが繰り広げる奇想天外なストーリーが、大胆かつ斬新なヴィジュアルで綴られる。主演は江口洋介。1582年。天下統一目前の織田信長が明智光秀の謀反に遭い暗殺され、その無念を晴らすべく豊臣秀吉が光秀を討伐、自ら天下統一を果たす。豊臣の治世となり、それなりの平安は訪れたものの、格差は広がり、庶民の困窮ぶりはひどくなるばかり。そんな時、一躍庶民のヒーローとなった天下の大泥棒・石川五右衛門。ある夜、彼が偶然盗んだ南蛮製の箱。そこには、彼も知らない重大な秘密が隠されていたのだが…。

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