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「『エベレスト 3D』は、2.5Dで作ろうと思っていた」ー映画『エベレスト 3D』バルタザール・コルマウクル監督インタビュー

2015年11月6日(金) 14:53配信

バルタザール・コルマウクル監督

バルタザール・コルマウクル監督

『ハード・ラッシュ』(12)や『2ガンズ』(13)で知られるアイスランドの名匠バルタザール・コルマウクル監督の最新作『エベレスト 3D』(15)は、世界最高峰として知られるエベレストの登攀(とうはん)を目指した登山家たちの姿を実話に基づいて描いた超大作だ。生命が死にゆく「デス・ゾーン」における究極のサバイバルと、登山家たちのエベレストへの情熱を描いた上質な群像劇が融合した本作は国際的に高い評価を獲得し、先月開催された東京国際映画祭にも特別招待作品として出品された。今回は、同映画祭に合わせて来日したコルマウクル監督に、本作の製作プロセスやエベレストでの撮影などについてお話を伺った。

―まず最初に、本作の監督を引き受ける決め手は何だったのでしょうか?

監督:逆の言い方をした方がいいですね。オファーを受けたとき、断る理由はありませんでした。本作のようにスケールの大きな作品を撮りたかったことに加え、本作は非常に個人的な物語であると同時に、現実的で真実に基づいた物語でもあり、そして舞台は世界で最も壮大なエベレストです。私にとって、真実の物語と、『ザ・ディープ』(12)で描いた「人間vs自然」というテーマを一段上のスケールで描き、映画のレベルを一つ上げることは、ずっと望んでいたことでした。また、本作はハリウッド・メジャー作品ですが、良く知られた真実を描いた作品である以上、ばかげた話にしたり、単純化やストーリーの変更をスタジオに強制されることはありません。エンディングが悲しいものでもスタジオは口出しできないので、私が望んだように描くことができるということも大きかったですね。

 

(C) Universal Pictures

―現場は非常に過酷だったと思います。森尚子さんにインタビューした際、高地の環境を作る気圧室で誰が最後まで残ることができるかを試したときに、監督とジェイク・ジレンホールさんが最後まで残ったというお話を伺いました。監督にはなぜそれほどの体力があったのでしょうか。また、最も動き回っていたのは監督だったとのことですが、体力的な問題はありませんでしたか?

監督:私自身もエベレストでの体調の良さには驚きましたが、私はアイスランドで、嵐の中を自転車で走ったり、悪天候下で水泳をすることで、肉体を鍛えてきました。身体的に強くありたいと思っていたのです。監督という仕事をするにあたっては、肉体と精神は表裏一体であり、肉体が強くなければ精神的にも弱くなってしまいますからね。最初の頃プロデューサーに、『この映画では、君が皆を引っ張るんだ』と言われていたので、注意深くなっていて、そうできるよう準備したいと考えたのです。

また、かつて私はセーリングの選手としてオリンピックを目指していましたし、子供の頃からスポーツマンで、ネイチャー・スポーツを得意としていたことも大きかったでしょう。でも、どうやって本作に対する準備をしたのかと聞かれたときのベストな答えは、10歳の頃に、嵐の中でも毎日学校に通っていたからですね(笑) アイスランドでは、毎日のように嵐が起こるのです(笑)。

―エベレストを舞台とする本作の製作環境はとても過酷です。スタジオや保険会社からの反対はありましたか?

監督:保険会社はナーバスになっていましたし、予算を引き出すことができるのかも不安に感じていました。製作会社であるワーキング・タイトルは、本作に約14年の歳月を費やしました。私が携わったのは3年ですが、スティーブン・ダルドリーは2004年に本作を製作しようと試みて行き詰まり、2010年か2011年位に、本作を再び前進させるため、私に話を持ちかけてくれました。

ハリウッドは本作のような作品を好まないので、大きな困難を伴ったのです。ハリウッドは多くの場合、主人公の欧米人に、日本人の相棒や(敵役の)ロシア人を用意したり、ハリウッド好みに型通りの展開を作りたがります。結局のところ、ハリウッド映画は機械的に作られているのです。本作よりもそういった映画のほうがアメリカでの売上は良いでしょうが、世界規模では本作の方が良い売上を残します。この対照的な図式は興味深いです。私はアメリカだけに興味があるのではなく、世界に興味があるので、本作に世界の人々が興味を持ってくれたことを誇りに思っています。

 

(C) Universal Pictures

―4,000メートル以上の高地では困難しかなかったと思うのですが、最も困難だったことは何ですか? また、「これだ!」という会心のシーンはどのシーンでしょうか?

監督:例を挙げるなら、吊り橋ですね。初めて歩いた時は震えてしまって、最後には走り抜けました(笑)。また、ヤク(高地に生息する牛の仲間)と一緒に撮影するのも大変でしたね。ヘリコプターが来たときに、ヤクが暴れだしてしまったのです。それはジェイソン・クラークのシーンを撮影している時で、彼が吊り橋の上で振り向くと、ヤクが沢山いるんですよ。 「なんてこった」という感じでした。保険会社もナーバスになるはずです(笑)。他にも数えられないくらい大変なことがありました。

エベレストの記念碑がある地点での撮影では、皆が高山病になってしまい、私とカメラマンは半分酔ったような状態で何とか撮影を試みたのですが、監督人生で最悪の映像でした。標高が引き起こす酷い頭痛によって、映像も演技も酷いもので、誰も撮影を続けることはできませんでしたね。もちろん、使い物にならない映像だったので、本編ではちゃんとカットしてありますよ(笑) 。2つ目の質問については、会心のシーンは毎日ありました。特に、記念碑で撮り終えた瞬間は「やった」と思いました。様々なミスを修正するため、丸1年かかったポスト・プロダクションが終わった時にも、そう感じました。

―撮影に関してですが、撮影監督のサルヴァトーレ・トチノを起用した理由と、監督にとっての3Dという映像フォーマットの面白さ、難しさをお聞かせください。

監督:サルバトーレは屈強な撮影監督です。過酷な環境下で撮影する本作の場合、屈強でない人に撮影を任せることはできません。深く積もった雪の中、スタジオ撮影と同じようにベストなアングルを探さなくてはならないという状況下で、サルバトーレも最初は体調を崩しましたが、豊富な経験と才能、そして強さを持っていたので、彼を起用しました。

3Dについてですが、2011年頃、私はプロデューサーに『この映画は2.5Dで撮ろう』と提案したんです。これは実在しない私のアイディアなのですが(笑)、私が言いたいのはこういうことです。私が大ファンであるアン・リー監督の3D映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12)で説明してみますと、海のシーンはとても美しいのですが、2人の男が室内のキッチンにいるシーンも3Dだと、妙な感じがします。つまり私は、2Dと3Dのバランスを見つけたかったのです。3Dは進歩してきましたが、3Dにおける最大の進歩は、もう誰も3D撮影を行っていないことです。3Dカメラはとても重く、安定しないので、山での撮影は不可能です。しかし今となっては、撮影において、2Dと3Dの違いはありません。2Dの手法で撮影して、あとから3Dに転換することができるからです。この3Dにおける変化が起こったあと、私はアルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』(13)を観ました。そして、『これだ!』と思ったのです。そこで、プロデューサーはようやく2.5Dの意味を分かってくれました(笑)。

私は本作の3Dが、テントの中でどう機能するかに興味がありました。面白いと感じたのは、テントの中で背景が生きていた(動いていた)ことです。背景が生きているというのは、2Dではなく、3Dならではのことです。また、普通に山を見ても、どれほど大きいか、どれほど離れているかは分かりませんし、近いと思って歩いても、山に近づくことはできません。なぜなら、想像しているよりも大きく、遠い距離にあるのに、我々が近くにあると錯覚しているからです。私が近くでエベレストを見たときには、その大きさに圧倒され、感銘を受けました。

この圧倒的な印象をどうやって出すかということが本作における私の課題でした。エベレストを2Dで撮影しても、その大きさ、果てしなさは伝わりません。3Dは距離感を生むことによって、エベレストがどれだけ大きいのかを観客に伝えることに大きく貢献してくれました。私にとって3Dは初体験でしたから、学ぶのはとても愉しかったです。3Dに対する人々の意見は様々ですが、好みの問題でしょう。3Dの映画を2Dで観ても面白いはずです。

私は、馬鹿馬鹿しくない、テレビで観るのではなく映画館に行く価値のある3D作品が生み出されている現状を好ましく思っています。私が子供の頃は、3Dはギミックでしかありませんでした。物語はなく、単に鑑賞者に向かって何かが飛んでくるように見えるだけでした。しかし、あれから30~40年を経て、3Dは映画体験の一部になりました。とても面白いことです。

私は『ゼロ・グラビティ』が大好きですし、『アバター』(09)も私の子供にとって素晴らしい映画体験になったと思います。映画では、正しい目的のために進歩した技術を使うことは素晴らしい。私は視覚効果を扱う製作会社をアイスランドに持っているのですが、新技術が大好きですし、映画が変わっていくことにとても興味があります。私は懐古的な映画監督ではないので、未来を見ています。どうしたら物事が発展するのかを考えるのが好きですし、既存のものに固執しても何も変わらないと考えています。

―今後はどんな映画を作っていく予定ですか?

監督:中東で起こった石油災害を起点とする、「ジェイソン・ボーン」シリーズのような逃亡者とアクションを描くリアリティのある作品。それに、バイキングの姿を描く作品もあります。自分が新たな経験を積むことができる映画を作っていきたいですね。

(写真・取材・文:岸豊)


映画『エベレスト 3D』

11月6日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開

原題:Everest
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、ロビン・ライト、エミリー・ワトソン、キーラ・ナイトレイ、サム・ワーシントン、ジェイク・ギレンホール
配給:東宝東和


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