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特別じゃない。実は誰もがこじらせている!? からこそ共感できる―映画『スウィート17モンスター』【連載コラムVol.22】

2017年4月21日(金) 22:29配信

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第22回目は「あまり描かれることのないタイプのヒロイン」が登場するという、映画『スウィート17モンスター』。こじらせ度も、自己中度も、わがまま度もかなり高い主人公に共感してしまうのは、やはり誰でもどこかでこじらせている部分があるからでは? と思わずにいられない。


(C)2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR - STUDIOCANAL

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好きな人のことを独占したい(=愛されたい)気持ちは、ごく当たり前の感情。両親の愛も、親友との友情も、ボーイフレンドの気持ちも、できることなら自分だけに向いていてほしい、誰だってそう願う。やがて大人になるにつれて、いろいろな経験を重ねて、人の気持ちは自分の思いどおりにはならないことを知っていく。『スウィート17モンスター』のネイディーンのように。

17歳は、子供から大人へと成長と遂げる不安定な年齢で、映画の題材としても『17歳』『17歳の肖像』『17歳のカルテ』……など“17”のついたタイトルをはじめ、描かれることの多い年齢だ。この『スウィート17モンスター』の主人公ネイディーンも17歳。ただ、彼女の場合は、映画のヒロインっぽくないというか、あまり描かれることのないタイプのヒロイン。たとえば米ドラマ「ゴシップガール」のような世界の住人とはぜんぜん違って、キラキラ感で括るとすると、イケてない負け組に振り分けられる。おまけに、自分なんて……と卑屈全開で生きている女の子、わざわざ自分で自分の青春をこじらせている女の子、それがネイディーン。「青春ってイイよねー」ではない、どろどろの内面を隠さず丁寧に描いているのが、心地よくて面白い。

(C)2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL

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ネイディーンには優等生の兄ダリアンがいて、彼は勝ち組だ。で、兄を敵視している。そんな兄をかわいがる母との仲もあまりよくなくて、反発して困らせてばかり。でも、幼い頃からの親友クリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)はいつも味方で、彼女さえいてくれたら、たった1人の親友がいてくれたらそれで幸せだった。そのはずだった。兄のダリアンとクリスタが恋に落ちるまでは……。

唯一の親友が天敵の兄に奪われてしまったことで、ネイディーンの生活は音を立てて崩れていく。「自分か兄かどちらか選んでよ!」とクリスタに感情をぶつけるシーンなんて、どんだけワガママ? 自己中? と呆れてしまう。でも、憎めない。そして、どうして私だけ一人ぼっちなの? どうして私は愛されないの? どうして? と、どんどん卑屈になって、どんどん空回りをして、自分を想ってくれている人の気持ちすら踏みにじってしまう。ものスゴいこじらせ女子だ。見ていて痛々しけれど、多くの人が多かれ少なかれそういう感情を経験してきているからこそ共感する。「その気持ち、わかるわぁ」と、ネイディーンに自分を重ね合わせる。どんなに自己中なキャラクターであっても、嫌いになれないのだ。実は大人になっても、みんなこじらせている(と思う)。大人になって、こじらせ感を表に出さない技を身につけて、周りに気づかれていないだけで、こじらせている。だからティーンだけでなく大人にも響く。もしかすると、大人の方が響くのかもしれない。

(C)2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL

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こじらせ度も、自己中度も、わがまま度もかなり高いネイディーンを愛しいキャラクターとして演じているのは、ヘイリー・スタインフェルド。『トゥルー・グリット』『ピッチ・パーフェクト2』『ラストミッション』『はじまりのうた』などに出演している女優だ。なかでもこのネイディーン役はぶっちぎりのハマり役! 監督も「彼女以外にできない役、ネイディーンそのものだった」と大絶賛。今後、追いかけていきたい女優のひとりだ。ちなみに、監督のケリー・フレモン・クレイグはこの映画『スウィート17モンスター』で監督デビューを飾っていて、彼女もまた追いかけていきたい監督のひとりになった。ネイディーンの駆け込み寺的存在、教師のミスター・ブルーナーをウディ・ハレルソンが演じているのもいい。描かれてはいないけれど、ブルーナーも昔はこじらせていたのかも…… と妄想すると、それはそれで楽しくて──。こじらせることは悪いことじゃない、こじらせて人は大人になっていくのだと抱きしめたくなるような、そんな素敵な青春映画だ。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

『スウィート17モンスター』
4月22日(土)より、HTC渋谷、新宿シネマカリテほか公開

主演:ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン、キーラ・セジウィック 他
監督・脚本:ケリー・フレモン・クレイグ
製作:ジェームズ・L・ブルックス、リチャード・サカイ、ジュリー・アンセル
2016/アメリカ/カラー/1h44min/PG12


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