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原作者『ゲド戦記』“アレンの父親殺し”にガッカリ… ブログで酷評したワケとは?【ネタバレあり】

2018年1月12日(金) 19:15配信

金曜ロードSHOW!にて『ゲド戦記』が放送!(※画像は公式サイトより)

金曜ロードSHOW!にて『ゲド戦記』が放送!(※画像は公式サイトより)

1月12日、日本テレビ系列「金曜ロードSHOW!」では「冬もジブリ」と題し『ゲド戦記』が地上波放送となる。アーシュラ・K・ル=グウィン原作の同名大作ファンタジー小説を宮崎吾朗が初監督を務めて映画化した本作。映画公開当時、原作者のル=グウィンはブログにて「映画について質問してくれた日本のファンと興味をお持ちのそれ以外のファンの方たちに向けて」とメッセージを発信しているのだが…。

原文はこちら:Gedo SenkiA First Response to "Gedo Senki," the Earthsea film made by Goro Miyazaki for Studio Ghibli.

原作者の立場や『ゲド戦記』が映画化されるに至った経緯などが詳らかに書き記されたブログ。しかし、映画の評はこんな文章から始まる。

「大半は美しかったけど、“急ごしらえ映画”のアニメーションでは手抜きが見られました。『トトロ』のような繊細な精密さや、『千と千尋』のような力強く、輝かしさのあるリッチなディテールはみられませんでした」

※以下、本作のネタバレにも言及。

本当はHayaoに作ってほしかった…映画化の経緯

まず映画評を紹介する前に、本作の映画化についての経緯の記述を簡単にまとめる。

本作公開の20年以上前に、宮崎駿から3巻刊行されていた「アースシー(原題)」のアニメがル=グウィンに持ちかけられるが、当時宮崎のことを知らずアニメ嫌いだったル=グウィンはこれを断る。それから十数年後、『となりのトトロ』を観て宮崎駿の大ファンになったル=グウィンは、自ら映画化の話を持ちかける(この時点で、ル=グウィンは宮崎駿を黒澤明、フェデリコ・フェリーニと並ぶ天才と称している)。しかし、2005年に実際に出会った際には、宮崎駿は現役の引退を希望しており、息子・宮崎吾朗に監督を引き継がせることを提案。宮崎駿が監修として映画に立ち会う認識で、ル=グウィンは映画化を承認する(後に、宮崎駿が映画製作に関わっていないと知り憤怒した様子も綴られている)。

つまり、原作者のル=グウィンにとって「宮崎駿のジブリで映画を撮ってほしかった」というのが本音だった前提があるのだ。

暴力的、支離滅裂、説教くさい、道徳観もごちゃごちゃ…

そんなル=グウィンにとって出鼻をくじかれたともいえる映画化。上記の評に続く内容も、手厳しい意見が多い。

「エキサイティングな内容だったが、それは原作の意図にそぐわない度合での“暴力”で成り立っているものでした」

原作がダークファンタジーということもあり、本作では麻薬、人身売買、強姦などシリアスな世界観が描かれ、ジブリ作品の中でも異色といえる。しかし本作の暴行シーンは原作者からすると“行き過ぎ”と見受けられていた。

また、「映画は原作とは違うべき」と明言しながらも、「原作の筋を追ってしまった私にとって、映画は支離滅裂な話でした。登場人物は同じ名前でも、気質も違えば、背景や運命までも全く異なったもの」と脚本についても原作の改変に苦言を呈している。

なかでも、ル=グウィンは主人公アレンの父親殺しについて疑問を呈している。

「例えば、映画中で描かれる“アレンの父親殺し”には動機がみえません。『ダークシャドウ、分身がやったんだ』って説明が後から出てくるけど、それも納得いきません。じゃあ、なんでアレンは2つに分かれちゃったの? なんの手がかりもありませんでした。このアイデアはアースシー(原作世界)の大賢人(ゲド)からとったと思われますが、原作のなかでは、いかにしてゲドに影が付きまとうようになるのか分かるように書いてますし、終わりには、影が何者であるのかわかる理由も描かれます」

なぜアレンに影が付きまとうのか…ストーリーの根幹をなす要素が説明されきれないことに、ル=グウィンも消化不良を隠し切れない様子。また、メッセージが高圧的で説教じみて感じられることに不満も語られている。そして、その描写不足は、映画ラストシーンにも大きく影響している。

「私たち人間に巣食う“闇”は、魔法の剣をふるって倒せるものではないのです」

クモを絶対的な悪として、その死をもってハッピーエンドで終わらせることは、原作の哲学に反しており物語としての厚みがないと示唆する。

その他にも、ル=グウィンは登場人物の「肌の色」に関しても思い入れがあったことを語る。しかし、本作の描写にも不安があったようだ。

「私がアースシーの人々をほとんど有色人種にして、辺境の後進的な人々を白人とした狙いは、アメリカやヨーロッパの読者たちに向けたものでした。ファンタジーヒーローは慣習的に白人が担い、有色人種は悪役と結び付けられてきました。小説家はそんな“予想”を覆すことで、シンプルに偏見をなくすことができるのです」

本作で描かれたキャラクターを見て「日本の観客はゲドの肌の色も私が感じるより暗く見えると聞かされましたが、そうであることを願っています」と言い、「ほとんどのキャラクターは(私には白人に見えますが)」とも述べている。

本件に関しては、筆者の感想を述べると、ゲドの肌の色は黄褐色で白人的だとは思えない無国籍な顔立ちに見受けられる。アレンやテルーの肌の色は白いが、特段、欧米人を強く意識したようにも思われなかった。それでも、原作者が不安視した「肌の色」の問題。映画化にあたり、原作者とのすり合わせがもう少しなされなかったのか…それを象徴するような指摘にも感じられる。

褒めたのは…?もっと素朴な部分だった!

そんな酷評の中でも、ル=グウィンはいくつかの点を賞賛している。

「アースシーのドラゴンの方が美しいと思うけど、ゴロウのドラゴンの翼の折りたたみかたは美しいと認めます。本作における動物の描かれ方には、やわらかさがあります。アレンが乗っている馬の耳が好きでした。(中略)少なくともそれらのシーンには、私はアースシーを見て取ることができました」

かなり皮肉めいた文体ではあるが、本作の牧歌的なシーンにはも一定の賛辞を贈っているようだ。また、本作の声の出演キャストも賞賛。ゲドの声優を担当した菅原文太氏や、本作で声優初デビューを果たした手嶌葵の伸びやかで素朴な「テルーの唄」を絶賛している。

「私たちが観たのは吹き替えではなく、字幕でした。ジブリは素晴らしい吹き替えをしますが、一度だけ日本語音声で聞けて本当によかった。ゲドの温かみがあり、暗めなトーンは特に素晴らしかった。また吹き替えになるときにも愛らしい『テルーの唄』はオリジナルのまま収録されることを願います」

超大作シリーズの映画化のハードルには計り知れないものがあるだろう。何篇にもわたる内容を2時間の枠組みにまとめなければならない難しさは、昨今の実写映画化のムーブメントを観ても火を見るよりも明らかだ。だからこそ、原作ありきの映画化においては、その意図やエッセンスをきちんと抽出しなければ全くの別物となってしまう。

上記の評をみても、ル=グウィンがジブリアニメで描いて欲しかった「ゲド戦記」は、より人間味あふれる繊細な描写求めていたのかもしれない。壮大で哲学的なファンタジーであっても、彼が描き出したかった人間臭さは、やはり『となりのトトロ』のような素朴さだったのではないだろうか?

声優一覧

アレン:岡田准一
テルー:手嶌葵
クモ:田中裕子
ウサギ:香川照之
テナー:風吹ジュン
ハジア売り:内藤剛志
女主人:倍賞美津子
王妃:夏川結衣
国王:小林薫
ハイタカ(ゲド):菅原文太

引用元;Gedo SenkiA First Response to "Gedo Senki," the Earthsea film made by Goro Miyazaki for Studio Ghibli.

>原作「ゲド戦記」全6冊を読む!

(文・nony)


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ゲド戦記

ゲド戦記

監督 宮崎吾朗 
脚本 宮崎吾朗  丹羽圭子 
原作者 アーシュラ・K・ル=グウィン 
音楽 寺嶋民哉 
声の出演 岡田准一  手嶌葵  菅原文太  田中裕子  香川照之  風吹ジュン  内藤剛志  倍賞美津子  夏川結衣  小林薫 
概要 ル=グウィンの名作ファンタジー『ゲド戦記』をスタジオジブリが映画化した長編アニメーション。巨匠・宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗の第一回監督作品。声の出演は主人公アレン役に岡田准一、ヒロインのテルー役には新人・手嶌葵。多島海世界“アースシー”では、西海域の果てに棲む竜が、突如、人間の住む東海域に現われ共食いを始めた。それに呼応して、世界ではさまざまな異変が起こり始める。世界の均衡が崩れつつあるのだった。偉大な魔法使い、大賢人ゲドは、災いの源を探る旅に出る。やがて彼は、心に闇を持つ少年、エンラッドの王子アレンと出会う…。

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アーティスト情報

宮崎吾朗

生年月日 1967年1月21日(51歳)
星座 みずがめ座
出生地 東京都生まれ

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アーシュラ・K・ル=グウィン

生年月日 1929年10月21日(88歳)
星座 てんびん座
出生地 米・バークレー

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