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【インタビュー】『V.I.P. 修羅の獣たち』パク・フンジョン監督「冷たくて背筋の凍るようなドライなノワール映画があるということも知ってもらえれば」

2018年6月14日(木) 18:50配信

パク・フンジョン監督(左)/(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

パク・フンジョン監督(左)/(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

韓国ノワールの傑作『新しき世界』のパク・フンジョン監督が放つ、闇に翻弄される男たちの狂宴を描くクライム・アクション『V.I.P. 修羅の獣たち』(6月16日全国公開)から監督のインタビューが到着!

―​『V.I.P. 修羅の獣たち』で企画亡命者という題材を選択された理由について教えてください。

分断国家である韓国だからこそ扱うことのできる題材だと思いました。韓半島を取り囲む国際情勢のジレンマを描くのにピッタリだと思ったところからスタートしています。内容やスタイル、全体のトーンについても、前例のない作品なので、ストーリーは明確にしなければならないと考えました。企画亡命を素材として扱ったこと自体は、それほど難しいことではありませんでした。

―3つの国家が絡み合う話だけに、撮影は苦労したのでは?

初めて海外で撮影をしました。撮影自体はそれほど苦労せずに済んだのですが、製作費が高額であったり撮影場所の交渉も大変で、多くの試行錯誤が必要でした。韓国には北朝鮮の雰囲気を感じられる場所がないので、北朝鮮の村の再現は特にとても難しかったですね。それでも一番雰囲気的に近いだろうと思う所を探し出し、セットを作り、残りはCGでやりました。香港のレストランも同じです。元々の設定はレストランではなかったのですが、セットを作って撮影しました。

(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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―3ヵ国が目前に存在する悪人を見て見ぬ振りをするという設定は、観客に息苦しさを抱かせませんか?

必要に応じて連れてきた人物が怪物だった…。どんな社会でもそのような怪物に対する備えと処置システムがあるはずだ、と。だがある時、各国の事情や政治的な利害関係によりそのシステムが正常に作動しなくなり、そうこうしている間に、より深刻さを増した怪物が大手を振って歩き回る…というジレンマに関する物語を作ってみたかったんです。このような状況下において、国家が傍観者となり、むしろその怪物をかばう側に回ってしまった時に起きる出来事を描こうと思いました。

―これまで監督は『新しき世界』のカン課長、チョン・チョン、そして今回の映画のキム・グァンイルなど、観客の脳裏に焼き付くキャラクターを作り出してきましたが、 人物像はどのように練りあげていくのでしょう?

優先すべきは事件や状況で、それを描いてから最も適合する人物を作り出します。次に、そのキャラクターがその状況に置かれた時どう行動するか考えてみるんです。この性格、この職業の人物ならどう行動するか…というところから。今回も同じように“企画亡命者”というキーワードを考えた時、“韓国国家情報院”というワードが一番最初に思い浮かびました。チャン・ドンゴン演じる国家情報院要員パク・ジェヒョクの例を挙げるなら、海外に駐在経験のある、それなりのベテランであること。本局勤務を望むならエリートであるはずですからね。このようにディテールを1つ1つ積み上げていくのです。

(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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―キム・グァンイルのキャラクターは今まで韓国映画になかった新しい類型の悪役だという声もありました。

サイコパスのキャラクターは韓国映画の中に多く登場しています。キム・グァンイルは北からのVIPという点が他のキャラクターと違うところです。サイコパスの犯罪者は各国の社会的なシステムを利用して完全犯罪を目論むのですが、キム・グァンイルはいまだ王朝国家の様相を呈するいびつな国家で生まれた特権階級に属する人物です。サイコパスの本能を道徳的に制御してくれる人がいないので人の命を軽視する傾向にあり、犯罪の概念自体が最初からありません。「僕がやったけど、何か?」みたいな感じで。サイコパスの中でもハイレベルなサイコパスでしょう(笑)。

―イ・ジョンソクを連続殺人犯役にキャスティングした理由と、劇中で最も印象深かった演技はどんなものでしたか?

イ・ジョンソクさんについては、彼から先に“キム・グァンイルを演じてみたい”と連絡が来たんです。俳優としての欲があると感じたし、好印象でしたね。積極的で心がけもいいなと。若手スターなので、こんな役でなくていくらでも素敵な役をもらえるのに。イ・ジョンソクの演じたキム・グァンイルは、海外暮らしの長い北朝鮮のエリート高官の息子で、元々、そのイメージに合った貴族的な雰囲気のある俳優を望んでいました。幼いころから何不自由なく育ち、すべての人々を見下すような怖い物知らずのキャラクターです。

(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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―チャン・ドンゴンさんをパク・ジェヒョク役にキャスティングした理由と、その演技についてどういう感想をお持ちになりましたか?

ジェヒョク役にぴったりだと思いました。ただそこにいるだけでキャラクターが表現されるというか。素晴らしい俳優なので特に指示したことはありません。作品を観て頂ければ分かると思いますが、とてもよく演じてくださったので感謝しかありません。

―では、キム・ミョンミンさんはどうでしょう?

キム・ミョンミンは以前から一緒に仕事をしてみたかった俳優です。皆さん、彼の代表作は「白い巨塔」(07年のドラマ)だと言いますが、私は「お熱いのがお好き」(00年のドラマ)から見てきましたからね。その時は助演でしたがすでに俳優としての存在感がありました。なので“いつか必ず一緒に仕事をするぞ“と思っていたんです。これまでもシナリオを何度か送ったことはありましたがスケジュールが合わず…今回は幸いにも日程が合いました。

―ピーター・ストーメアの出演は映画ファンの期待を膨らませました。

彼は『悪魔を見た』『新しき世界』を観てくれていて、キム・ジウン監督のハリウッド進出作『ラストスタンド』に出演していたのを思い出したのでシナリオを送ってみたら、“喜んで出演する”との返答が返ってきました。思いも寄らぬことでしたし「我々の製作費は十分とは言えない」とも伝えましたが、快諾してくれました。言葉の障壁はあったけど、気兼ねなく仕事をすることができたと思います。ハリウッド俳優ですが、とりわけ大変だとも思わなかったし、何より彼は特別待遇を受けるのを嫌いました。個人トレーラーの代わりにコンテナでも準備すべきかと考えたのですが、「皆と一緒でいい」と言ってくれました。現場であれこれ口を出す姿はまるで、町内の世話焼きおじさんのようでしたね。スタッフと一緒に組み立て椅子に座って、お菓子を食べたりもしていましたよ(笑)

(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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―明確な設定が監督にあったためか、俳優たちは「パク・フンジョン監督との作業は容赦がなかった」と口を揃えていました。

出演者は経歴が20年を越える俳優ばかりでした。演技については私が口を出すことではなく、彼らのほうが専門家ですからね。ただ「キャラクターが一連の状況下でどのような行動を取るか?」については、すべての設定が私の頭の中にありました。なので一定のラインを設定し、その中で最も良いものを選んだのです。私のラインを越える設定が出れば、容認できないというわけですね。そんな時は“それは違う気がするな”という程度のことをは言ったと思いますけど、そこまでキッパリと否定したことはないとはずです(笑)。

―撮影時、最も苦労したシーンとその理由は何ですか?

人を殺める場面は撮影と編集過程において非常に悩んだ部分でしたね。恐ろしさを見せつけるという一方で、観客がどのように受け取るかということもありますし、表現する程度について、非常に悩みました。私としても明らかに不快を感じる部分についてはカットしようとも考えましたし、短めのシーンにしてみたりと色々試しましたが、そうなるとキム・グァンイルの行為が鬼畜の所業には見えなくなり、悪行の程度が弱まる気もしました。

―韓国ではジェンダーにまつわる話題も過熱しました。キム・グァンイルの残忍さを示すために、劇中で犠牲となった女性のシーンについてです。

観客が不快に感じ、震え上がるに違いないとも思っていたので、私たちも非常に悩みました。ですが、キム・グァンイルの魔物性を見せつけるに相応しい代案が他になかったんです。主人公の恐ろしさをしっかり伝えてこそストーリーの原動力が確保されると思っています。悩んだ末にあの場面を入れましたが、女性客が観ると、より暴力的に見えるのかもしれません。私のジェンダーに対する感性が鈍いせいだとも思います。もっと言うと、ジェンダーに対する知識不足なのかもしれません。

(C) 2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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―今回の論争を機に、何かを変えるつもりはありますか?

今後も作品を作るたび、いくつもの悩みを抱えるでしょう。ジェンダー問題をさらに注意深く学び、考える必要性を感じました。どちらかというと私の周囲には女性が少なく、そのため、韓国の男性の大部分がそう思っているように“男らしさ”に対する先入観が暗黙のうちに存在してしまっている。自分ではそれほどこだわっているつもりはありませんでしたが、今回の件で、世間とのギャップを感じましたね。

―監督は本作を通じて単調ではない独特なノワール映画を試みたのだと思われますが、監督ご自身はどうお考えですか?

『新しき世界』が味付けのしてあるスパイスの効いたノワール映画であるとするなら、『V.I.P. 修羅の獣たち』はスパイスの入っていないドライなノワール映画だと言えます。『新しき世界』には男たちの友情と裏切り、対立や嫉みなど感情面を描いた面白さがありましたが、本作にはそのような関係性から生じる面白さはなく、 ひたすら事件の様相を描いています。私は個人的にドライなノワールを好む方なので、『V.I.P. 修羅の獣たち』は私の好みが反映されている作品ですね。

―観客に向けて、メッセージをお願いします。

怪物のような1人の男によって国家システムが機能不全に陥る様子から、私たちが置かれている現実を思い起こしてもらえると、様々な問題が深刻化する社会が自然に思い浮かぶのではないでしょうか。また韓国映画によく出てくる男の友情や仁義など熱いエネルギーを放出するノワール映画ではなく、それとは正反対の冷たくて背筋の凍るようなドライなノワール映画があるということも知ってもらえれば幸いです。

(ライター:Lee Youna/引用元メディア:singlelist)


映画『V.I.P. 修羅の獣たち』
6月16日より、シネマート新宿ほか全国ロードショー

監督:パク・フンジョン『新しき世界』
出演:チャン・ドンゴン『泣く男』、キム・ミョンミン『エンドレス 繰り返される悪夢』、パク・ヒスン『密偵』、イ・ジョンソク「観相師-かんそうし-」、ピーター・ストーメア 『ジョン・ウィック:チャプター2』『ファーゴ』『アルマゲドン』
2017年/韓国公開8月23日/128分/シネマスコープ/レイティング:R15+/原題:브이아이피/英題:V.I.P./配給:クロックワークス


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