J-POP(邦楽)・J-ROCK・V-ROCK・K-POPのおすすめ音楽情報なら、T-SITEニュース 音楽

『壁の鹿』にみる、新しいカルチャーが生まれる瞬間 黒木渚×若杉浩一(POWER PLACE)対談

2015年2月23日(月) 00:00配信

写真(左)黒木渚氏/(右)若杉浩一氏

昨年、バンドからソロアーティストへの転身を図った黒木渚。2015年一発目のシングル『虎視眈々と淡々と』は、《体ひとつ女ひとり 虎視眈々と淡々と》などという歌詞が、黒木渚の改めての決意を示しているような作品だ。本作で彼女は音楽家としてだけではなく、表現者としての未知なる可能性を求め、挑みはじめた。

シングルの購入者のみが読むことができる、『虎視眈々と淡々と』の世界観を拡張した小説『壁の鹿』の発表、初回限定盤ではその小説世界でキーとなる『壁の鹿』の存在を具現化させた鹿の木製オブジェ(ジュエリーツリー)を付属するなど、アウトプットの幅を大きく広げている。

なぜ、黒木渚は類をみないこのような挑戦に挑み続けるのか。今回、鹿の木製オブジェ(ジュエリーツリー)の仕掛人のひとり、POWER PLACE・若杉浩一と黒木渚に、本作について、そして、ジャンルを超えた表現の現在と未来について話を聞いた。

黒木渚のニューシングル『虎視眈々と淡々と』初回限定盤に付属している鹿の木製オブジェ(ジュエリーツリー)

小説『壁の鹿』に登場する「壁の鹿」が現実に。こちらの壁掛けオブジェは6,800円(税抜)で販売

LEDライト(別売り)を取り付ければ、ウォールライトにもなる

小説の具現化

まるで鹿のスカルのようなジュエリーツリーの原点は黒木自身が初めて書き下ろした小説『壁の鹿』の小説。黒木のステージプロデュースを手掛けるライブプロデューサー・本間律子の紹介により、黒木と若杉のコラボレーションが実現したという。ただ、そこに至るまでは、長い道のりがあったとか。 

黒木渚(以下黒木)「お客さんに小説も読んでみたいと言われて、今回小説を書き始めたんです。その小説が壁にかかっている鹿が喋るというファンタジー的な要素を持っていて。実存のデザイン性のある雑貨が身の回りあって黒木渚の脳内が立体化することで、読者の肌に触れる感覚を具現化できるかなというところからはじまりました」

若杉浩一(以下若杉)「この話をいただいた際に本間(律子)さんが言っていたのは、CDの売り上げが下がってきているという事実と、“音楽業界による音楽業界のための”っていう塊がどうも釈然としないということ。僕は僕で、デザイン業界にも同じようなことを思っていたんです。だから、話をいただいた時に、直感的にこのコラボレーションは何かが起こるに違いない、起こさなければいけないと思ってお受けしたのですが、そのときは小説が書き上がっていなかったので、いきなり鹿と言われても意味がわからなくて(笑)。アウトプットの形が全然見えなかったんですよ。鹿のオブジェに決まる前はペンダントチャーム、USBメモリ、キャンドルとかいろいろな案が出ていたんです」

黒木「最後の会議のとき、前日に若杉さんが夜も寝ずに考えて、最後の最後でアイディアがでてきたのがこの鹿のオブジェで。その提案を見たら、今まで散々キャンドルだの何だの話し合って来たのに、デザインを一目見た瞬間にみんなで『素敵!』となって即決したんです」

若杉「その時期にちょうど小説が上がって、小説での鹿の姿がおぼろげに見えてきて、やっぱり鹿じゃないのかなと思ったんです。けれど、ただの単純な鹿じゃなくて、いかに意味をなす鹿であるか。そのときにスカルが自分のなかでポンと腑に落ちたんですよね」


カルチャーが産声をあげる場所づくり

紆余曲折を経て行き着いた鹿の木製オブジェ。そこには、ものづくりの醍醐味と真髄が垣間見える。

若杉「決まった瞬間は、まるでセッションのような感じでした。最後の提案のタイミングは、納期的にもギリギリだったんですよ。ギリギリのタイミングでのギリギリの一札で一瞬にして会議が盛り上がる。時間はないけどクリエイティビティのあるものを生み出さないといけないというギリギリの感じと、できたときのドラマのような高揚感は、一度体験すると中毒になりますよね」

黒木「癖になる感じはわかります」

若杉「この感じがないと、ものを作っている感じがしないですよね。先日本間さんに僕が『音楽はいいよね。一瞬にして何万人もの人の心を鷲掴みにするもんね』という話をしたら、彼女は『デザインのほうがすごいよ。一秒で悩殺できる。音楽は3分くらい聴かせないといけない』と言っていて。音楽とデザインだと感染の仕方が違うけれど、それが合わさったときにどうなるかを考えると、ワクワクしますよね」

黒木「ものづくりの喜びって本当に得難いものだと思うんです。私は音楽家になってからその喜びを知ったんですね。かつては就職していたから、その反動もあるんですよ。働いていた職場はクリエイティビティがあまりないところだったので、そこからクリエイティビティしかない世界にきて、おもしろくてたまらないんです。それと同時に、新しいことをやっていくときに絶対的に他者の存在が必要で。『体ひとつ女ひとりでやってます』みたいなことを歌っていても、結局はたくさんの人が関わらないと黒木渚は作れない。正解もないし、終わりがあるのかもわからない世界でやっていくからこそ、若杉さんのような現役でずっと楽しそうにやっているベテランがいたら安心しますよね」

若杉「POWER PLACE主催で、ものづくりをしている人たちが集まって意見交換をするイベント『屋台大学』をやっているんです。例えば、あることに『いいんじゃない?』とアンテナがたったら、その集団が同じ価値観を持ってそのプロジェクトを動かしはじめる。エネルギーの集合体や運動がどこに集まるのかがカルチャーのはじまりで、それを受け止めてくれる集団や場から何か新しいことが起こるような気がするんですよね」

ものづくりの原点の変化

インターネットの発達や各種サービスの増加、技術進歩などにより、ものづくりの環境は大きく変わっている。その変化を、ふたりの表現者はどのように感じているのだろうか?

若杉「四谷にある東京おもちゃ美術館の“赤ちゃん木育ひろば”という場所の空間デザインを手掛けたのですが、当然、普通に考えれば子どもに優しい、いかにも子どもの空間とするんでしょうけど、果たして本当にそうなのか?と疑問に思ったんです。子どもたちがそれを望んでいるのかと。いままでのものづくりがエンドユーザーのためではなく供給者側、作る側の都合なんじゃないかという気がずっとしていたので、“赤ちゃん木育ひろば”は、あえて枯山水のような極めて大人の空間を作ったんです。そうしたら、子どもたちはよだれを垂らしながら楽しんでいるし、お母さんやお父さんは極めて居心地がいい空間になって、大変人気がある。そう考えると、いままでの音楽業界やデザイン業界もそうだけど、“誰のためのものづくり?”というものづくりの原点から離れていっている気がしたんですよね」

黒木「ちょっと変わったことをしはじめると、変わり種、色物扱いされるのがすごく窮屈で。昨年バンドを解散してソロ活動をはじめたことによって制限がなくなって、音に対しても自由な選択ができるようになった。フラットで自由な状況になって、ようやくまわりを見渡せるようになったし、CDだけという縛りにしがみつかなくてもいいやと思えるようになったんです。『お前は音楽家だろ』と言う人もいるかもしれないけれど、私はそれは音楽を捨てることじゃなくて音楽をさらに広める行動だと思っているから、全然挑戦していいと思っているんです。そして、お客さんには、知らない物や知らないことだからといって拒絶しないでほしいと思います。私は感性を磨くことは表現者じゃなくても絶対やったほうがいいと思っていて。例えば本なら、悪書というか教育上よろしくないとされているものの中にも名作ってすごくたくさんありますよね。感性が磨かれれば磨かれるほど、いい悪いの判断が自分でできるじゃないですか。ネットの世界をみていると、考えが凝り固まっているなと感じることが結構あって。Twitterもそうですけど、いろいろな社会現象に対して匿名で意見を述べている世界で、この人たちは意見を腹の底から思っているのかと思うことがあります。ただただ他者を傷つけたりとか、周りの意見に流されて大多数側になることで安心することとか、生身の人間同士のやりあいではなく、すごい固い感じがするんですよね」

若杉「もっと体感する、失敗を味うべきだと思います。『いいから食ってみろ。……ほら、まずかったろ?』なんてこともあるかもしれないけど(笑)、痛いことも苦しいことも何もかも含めて、身体の中にどれだけ染み込ませるかが生きる力や知恵になる。ただ幸い、僕は若い人たちと話しているとそういうものに飢えている気はするんですよ。僕らが就職するときは一部上場企業に入ることがいいこととされていましたが、今の若い人たちはそんなことにもあまり興味がないし。僕は、『日本全国杉だらけ倶楽部』という、戦後の植林によって増えてしまった杉を材木としてを評価する運動もしているのですが、その活動で地方にいくと、大学生が目をキラキラさせて手伝ったりしてくれるんです。それを見ると、今の若い人は至極真っ当だとも思うんですよね。音楽や文化もそうですけど、そういう違う味わいのものを大人がきちんと世の中に出してあげないと、大人も含めて生きる力や知恵のない人が増え続けると思うんです」

黒木「私も臆病だからいつもビビッてはいるんですけど、怖いながらも周りに背中を押してくれる人がいるし、先で待っている人もいるから、いつもなんとかやり切れるんです。人生で2回くらいは血反吐を吐くくらいの努力をしてもいいと思うんですよね。その1回が今なような気がしているんです」

(文:岡崎咲子)

◆合わせて読みたい

<文学系ミュージシャン・黒木渚が選ぶ、いま気になる本3冊>

<150%でものを生み出し続ける理由 本間律子×若杉浩一(POWER PLACE)対談>

黒木渚 くろき・なぎさ

1988年宮崎県生まれ。幼少期に日本舞踊をやっていた祖母の影響で漠然とステージに対する憧れを抱く。高校卒業後、福岡へ。ギターを独学で学び、市内のライブハウスで弾き語りを始め、2010年12月には自らの名前を掲げたバンド「黒木渚」を結成。在学中は文学の研究にも没頭、また教員免許を習得する。地道に行っていたライブ活動が実を結び、2012年シングル『あたしの心臓あげる』でデビュー。2013年に12月19日バンド解散を発表し、2014年からソロとしての活動を開始。同年1st Full Album『標本箱』リリース。2015年1月に3rdシングル『虎視眈々と淡々と』をリリース。3月よりツアー「虎視眈々と淡々と」で全国を巡回。

公式サイト

若杉浩一 わかすぎ・こういち

1959年熊本県天草郡生まれ。1984年九州芸術工科大学芸術工学部工業設計学科卒業。同年株式会社内田洋行入社、デザイン、製品企画、製品開発、研究開発を経て、内田洋行のデザイン会社であるパワープレイスにて、ITとデザインのメンバーを集めリレーションデザインセンター設立。企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行い、やりすぎて何度もデザイナーを首になるも、性懲りもなく、企業と個人,社会の接点を模索している。杉の魅力をアピールし、日本中に杉のプロダクトを増やしていこうという運動を展開している「日本全国スギダラケ倶楽部」も行う。

パワープレイス


「黒木渚」の関連記事

このタグがついた記事をもっと見る

虎視眈々と淡々と

虎視眈々と淡々と

演奏者 黒木渚 
概要 黒木渚のアルバム商品「虎視眈々と淡々と」「標本箱」「はさみ」の中からいずれかを購入し、ご応募頂いたお客様の中から抽選で「ツタロックフェス2015」へご招待!
【応募期間】~2015/2/16 23:59:00まで

 作品詳細・レビューを見る 

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

Twitterでも最新記事をチェック!

この記事を読んだ人におすすめの記事

こちらの記事もおすすめ

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

黒木渚

生年月日 1986年4月19日(32歳)
星座 おひつじ座
出生地 宮崎県日向市

黒木渚の関連作品一覧

関連サイト


カテゴリー

T-SITEニュース エンタメトップへ戻る

アクセスランキング

  1. 【インタビュー】今田美桜、『花晴れ』“庶民狩り”に隠れた意外な趣味

    1位

  2. 2018年人気急上昇! 注目のロックバンド10選!

    2位

  3. 2017年上半期、10代に人気のロックバンド!ワンオクを抑えてトップに立ったのは?【TSUTAYA ランキング】

    3位

  4. 【ネタバレ】名探偵コナン、黒の組織黒幕“あの方”の正体が判明!長期休載も発表!

    4位

  5. 「ファンが選ぶONE OK ROCKの名曲」最終結果発表!

    5位

本日の人気記事ランキングTOP30

人気の画像

  • 小倉優香、『チア☆ダン』「JETS」センター役に大抜擢!
  • 『けものフレンズ』で大ブレイクの美少女声優・尾崎由香、初の写真集を発売!
  • ナニワのブラックダイヤモンド・橋本梨菜、ヤンジャンに堂々登場
  • 有村架純、初セルフプロデュース 25歳の「今」が詰まった写真集発売
  • 可愛すぎる音大生・みうらうみ、「グラビアン魂」に初登場
  • 出口亜梨沙、“大人エロス枠”で初表紙飾る
  • 【2018年1月~4月】TSUTAYA写真集ランキング 昨年覇者・白石麻衣の座を長濱ねるが継承?
  • エロかわいい音大生・みうらうみ、再びグラビアに登場
  • 元GEM・南ななこ、初グラビアは昭和レトロな銭湯!“美バスト”を披露

TSUTAYA ランキング

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST

TSUTAYA MUSIC PLAYLISTをもっと見る

TSUTAYA映画通スタッフおすすめ

TSUTAYA映画通スタッフおすすめをもっと見る

SNS・RSS