J-POP(邦楽)・J-ROCK・V-ROCK・K-POPのおすすめ音楽情報なら、T-SITEニュース 音楽

150%でものを生み出し続ける理由 本間律子×若杉浩一(POWER PLACE)対談

2015年3月1日(日) 23:40配信

黒木渚のニューシングル『虎視眈々と淡々と』初回限定盤に付属している鹿の木製オブジェ(ジュエリーツリー)

写真(左)本間律子氏/(右)若杉浩一氏

音楽、デザイン、小説などジャンルのクロスオーバーを試みるシンガーソングライター・黒木渚。2015年1月にリリースされたシングル『虎視眈々と淡々と』は、そんな黒木の試みが結実した作品だ。CD、音楽、CD購入者のみが読むことができる黒木自身が書き下ろした小説『壁の鹿』(黒木は大学院で文学を研究した才女である)、初回限定盤に付属している鹿の木製オブジェ(ジュエリーツリー)と、音楽×小説×デザインとジャンルを超えた試みで話題となっている。特に、鹿の木製オブジェは、プロダクトとしての魅力はもちろん、黒木の世界に存在していたファンタジーの世界にあるものを具現化させ、小説と読者の新たな関係を提示している。

その仕掛人が、黒木のステージプロデュースのみならず、プランニングも手掛けるライブプロデューサー・本間律子。POWER PLACEの空間デザイナー・若杉浩一とともに作り上げたそのプロダクトは、長きにわたり空間表現の第一線で活躍しているふたりだからこそできる表現である。空間表現の探求者たちが、いまものづくりに対して思うこととは。その現在地について話を聞いた。

150%のものづくりから生まれる新たな文化

本間は大学卒業後ソニーミュージックエンターティメントに入社、東京スカパラダイスオーケストラなどのマネージメントを手掛け、独立後はライブ音楽プロデューサーとしてchemistryや斉藤和義など数々のアーティストを手掛けてきた人物である。本間の手掛けるライブにおいてベースとなる部分は何だろうか。

本間律子(以下本間)「ライブを観にくる人は、そのアーティストがマックスの魅力を発揮しているところを見たくてチケットを買います。だからアーティストが自然にそうなるような音楽的流れをまず作り上げるのが原則です。その中でアーティストの魅力が最大限に現れる具体的な方法を必死で考える。自分の知らない新しいことがある場合は、面白がっているうちにに考えが発展していきます。普段から“わからない”という言葉があまり好きではなくて、わからないと感じる時は何がわからないのかを順番に考えていけばいいと思っています。時代背景や価値観が違っていても、会話をして、考えて、人間としてのあなたのよさを出したいと思っている、という大前提がちゃんと伝われば、年代を超えてちゃんと会話ができると思います」

若杉浩一(以下若杉)「デザインでもまったく同じです。デザインって仕事を受注する際、コンペ形式が多いんですよね。僕はいつも自分のデザインがイケてると思いながらコンペに挑むんですけど、『そんなところまで求めてないから! そこまでやっても誰もわかんないよ』って」

本間「言われる!よく『3割くらい減らしてやるとちょうどいい』なんて言われますけど、私にはそのやり方は無理なんですよね」

若杉「僕も。コンペに落選した場合、断り文句でよくあるのが、『一番おもしろくてエキサイティングだったと全員が言っていました。でも今回は……』という返事。ある種の妥協をして作ったものは世間には受け入れられやすいかもしれないけれど、あまり長続きはしないと思うんです。僕がやっている仕事は、ハイテクを使ったりビジュアルをドンと使って驚かせたりなど、あまり高度なものは使わないようにしているんです。それをやることによって、何かをやった気分になってしまうんですよね。でも、そんなもので人の気持ちは動くわけはないんです。空間デザインは人が主役で、人のためのもの。人が自分ごととしてものづくりに参加して、光り輝くプロセスにどう仕立て上げるかというのが僕らが一番大切にしている代物。ただ、それはなかなかわかってもらえなくて苦労するんですよ。けれど、そういうことに気づいている人たちはリピーターになってくれるので、その人たちが友達を紹介してくれたりもします。それはすごく時間がかかるプロセスではあるんですけど、1を100にすることばかり考えるよりも、0から1にすることをしっかりとやるしかないんです」

本間「まったく同じです。若杉さんのやっていらっしゃる屋台大学(POWER PLACE主催の、ものづくりをやっいてる人が集って意見交換をするイベント)には若杉さんに伝播された同じ臭いがする人たちがたくさん集まっているから、行きたくなっちゃうんですよね」

若杉「そういう場所から新しいものは生まれてくると思うんです。今回の黒木さんのプロジェクトも新しい方向の兆しが生まれてくるような気がしていて。どうやって世の中に伝えて行くのか、担い手はどうなるんだ、プロモーションの仕方や伝え方など問題は山積みなんですけど、間違いなくそういう場から新しい文化や新しい代物が生まれてくるに違いないと確信しているんです」

音楽とデザインに共通するパッション

本間はライブという空間を、若杉はオフィスや店舗などの空間を長きにわたり第一線で創出してきた。テクノロジーなどが発達し、表現自体の手法が変化している中で、空間とそこに集う人の関係性はどのように変化したと感じているのだろうか。

本間「25年くらいこの仕事をしていますが、以前に比べてお客さんが圧倒的にライブに慣れてきている。どうやって楽しむかをわかっている上で参加したいし、歌いたいし、振りもやる気満々でライブにきているような気がします。期待して来たお客さんをもちろん十分に満足させてあげる、という一方で、裏切ろうとする気持ちもありますね。例えば、思いっきり騒いだ後に突然どんと突き放して、ただただひたすら深く音楽をやるシーンを作るとか。そういう振れ幅がそのままお客さんの感動の深さになるんです。お客さんはそこまで求めてないかもしれないけど、だからこそこちら側が啓蒙して良いんじゃないかと。だって音楽の本質はそういう所にありますから。それを体験せずにただ騒ぐだけで帰っちゃもったいない」

若杉「そうですよね。裏切りっていうのはありますよね。空間デザイン自体にはエキサイティングな場を設ける必然性というのはあまり求められてはいないと思うんですけど、僕は必要だと思っているんです。人がいて、活動してこそ本当の空間というものが生まれてくる。だから人を置き去りにするのはどうも納得ができないんです。結局、本間さんの仕事もデザインも同じような気がしたんですよ。以前、渋谷公会堂で本間さんが手掛けた黒木さんのステージを観たとき、これはデザインだと思ったんです。決して華飾ではなくて、音楽と演出と照明がギリギリのところで融合して観客に押し寄せてくる瞬間、『これはヤバいものを観た!』と思って、終演後大絶賛したんです。こういう空間作りが音楽業界にはじまったとすると、おもしろくなりそうだと思ったんですよね。音楽から学ぶべきものって、本当にたくさんありますよ」

本間「デザインから学ぶこともたくさんありますよ。私も若杉さんも、お客さんの期待以上のものをかえすことに快感を覚えていて、そこを目標としていると思うんです。期待に150%で返すのが成功すれば、数多のストレスがそこで相殺されるんですよね」

若杉「僕の生き様の原点というのは、一瞬神が降りてきたような躍動感。それが身体に染み付いている以上はそれがないと行きていけないような気がするんです」

本間「若杉さんのデザインには、音楽的なパッションが加わっているからこそより魅力的になっているんだと思います」

若杉「なるほど。僕がデザインをはじめたときに、躍動感のない、空気が動かないようなものづくりに違和感をずっと覚えていたんです。けれど、音楽のグルーヴィーな感じとか、違う楽器を一緒に奏でることで、一瞬で違う空気感を出してしまうこととか、そういう領域からは離れられない。だから、デザインのミュージシャンであろうと決めたんです。そうしたらふっと楽になって、それでいいんだと思えたんですね」

本間「私もステージセットを作る時には、一般的なやり方ではものたりなくて、必ず若手の建築家にデザインを頼みます。音は実体を伴わないものなので、それがライブという実体になる時に、そこに存在して目に入ってくるものを精査する事はとても重要だと思います。黒木渚のステージは白と黒の帯が交差するクールなデザインでしたが、渋谷公会堂に備え付けの材料のみでレゴのように作りました。経費はゼロです。幕を半分だけ上げたままにするなど、既存の発想を捨てて初めて成り立ったものです。音楽的パッションを持った視角デザインと、演者のパッションを最大にするべくデザインされた音楽。この二つがあいまった時の質の高さと深さを体験してしまうと、そこからは決して逃れられない。どれだけ予算がなかろうが、どれだけ土下座を重ねようが、なんとしてでもその150%の領域まで持って行きたいんですよ」

若杉「その通りだ! それが喜びだもんね」

本間「そうですね。生きる喜びですもんね」

(文:岡崎咲子)

◆「壁の鹿」オブジェの写真

◆合わせて読みたい

<『壁の鹿』にみる、新しいカルチャーが生まれる瞬間 黒木渚×若杉浩一(POWER PLACE)対談>

<文学系ミュージシャン・黒木渚が選ぶ、いま気になる本3冊>

本間律子 ほんま・りつこ

1963年大阪府生まれ。東京女子大学卒業後、新卒採用でソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。 東京スカパラダイスオーケストラのチーフマネージャーなどを経て、1997年ライブ音楽プロデューサーとして独立。ライブの音楽面と演出面のプランニングとディレクションを行い、手掛けたライブが見違えて生まれ変わる様は「本間マジック」と呼ばれる。 2009年株式会社SNARE spray設立、本来のライブプロデュース業の他、建築家チームsprayとのステージセットプランニング、ミュージカルの音楽監督、若手サポートミュージシャンの育成・マネジメントも手がける。 手がけた主なアーティストは、東京スカパラダイスオーケストラ、絢香、CHEMISTRY、ORANGE RANGE、アンジェラ・アキ、SCANDAL、斉藤和義、小柳ゆき、黒木渚など多数。

若杉浩一 わかすぎ・こういち

1959年熊本県天草郡生まれ。1984年九州芸術工科大学芸術工学部工業設計学科卒業。同年株式会社内田洋行入社、デザイン、製品企画、製品開発、研究開発を経て、内田洋行のデザイン会社であるパワープレイスにて、ITとデザインのメンバーを集めリレーションデザインセンター設立。企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行い、やりすぎて何度もデザイナーを首になるも、性懲りもなく、企業と個人,社会の接点を模索している。杉の魅力をアピールし、日本中に杉のプロダクトを増やしていこうという運動を展開している「日本全国スギダラケ倶楽部」も行う。

パワープレイス


「ライフスタイル」の関連記事

このタグがついた記事をもっと見る

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

Twitterでも最新記事をチェック!

この記事を読んだ人におすすめの記事

こちらの記事もおすすめ

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

黒木渚

生年月日 1986年4月19日(32歳)
星座 おひつじ座
出生地 宮崎県日向市

黒木渚の関連作品一覧

関連サイト


カテゴリー

T-SITEニュース エンタメトップへ戻る

アクセスランキング

  1. マンウィズ、[ALEXANDROS]、My Hair is Badら14組が競演!ツタロックフェス2018ライブレポート

    1位

  2. Hey!Say!JUMP・有岡大貴、イベントで名前を間違えられるも「神対応」

    2位

  3. 2018年人気急上昇! 注目のロックバンド10選!

    3位

  4. 2017年上半期、10代に人気のロックバンド!ワンオクを抑えてトップに立ったのは?【TSUTAYA ランキング】

    4位

  5. 【2018年1月~4月】TSUTAYA写真集ランキング 昨年覇者・白石麻衣の座を長濱ねるが継承?

    5位

本日の人気記事ランキングTOP30

人気の画像

  • 小倉優香、『チア☆ダン』「JETS」センター役に大抜擢!
  • 『けものフレンズ』で大ブレイクの美少女声優・尾崎由香、初の写真集を発売!
  • ナニワのブラックダイヤモンド・橋本梨菜、ヤンジャンに堂々登場
  • 有村架純、初セルフプロデュース 25歳の「今」が詰まった写真集発売
  • 可愛すぎる音大生・みうらうみ、「グラビアン魂」に初登場
  • 出口亜梨沙、“大人エロス枠”で初表紙飾る
  • 【2018年1月~4月】TSUTAYA写真集ランキング 昨年覇者・白石麻衣の座を長濱ねるが継承?
  • エロかわいい音大生・みうらうみ、再びグラビアに登場
  • 元GEM・南ななこ、初グラビアは昭和レトロな銭湯!“美バスト”を披露

TSUTAYA ランキング

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST

TSUTAYA MUSIC PLAYLISTをもっと見る

TSUTAYA映画通スタッフおすすめ

TSUTAYA映画通スタッフおすすめをもっと見る

SNS・RSS