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RHYMESTERインタビュー 人間の多様性の美しさを謳い上げたアルバム完成

2015年7月30日(木) 13:33配信

RHYMESTERのニューアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』が提言していること——多様な人間が否応なしに交差し混ざり合う市井において、個々人が本当の意味で“美しく生きようとする”とはどういうことなのか。四方八方から右向け、左向けとヒステリックな咆哮が飛び交う現代日本において、それ以前にそれぞれの人間模様が幾重にもかかるマーブル模様の世界を見つめ、その実相を理解できないだろうか。そのうえで喧々諤々の議論を交わすことはできないだろうか。
本作で描かれているのは、そういった“濃厚な灰色”のメッセージである。そして、本作は日本語ラップの牙城を死守してきたRHYMESTERと彼らが全幅の信頼を寄せるサウンドプロデューサー陣だからこそクリエイトし得た、大衆音楽の豊潤かつ刺激的な振れ幅と可能性=ポップミュージックの潜在力というものも指し示している。2015年、『Bitter, Sweet & Beautiful』というアルバムが生まれたということ。その重みと喜びを噛み締めてほしい。ここではメンバー全員の全曲解説をお届けする。まずは作品に触れてからご一読いただければ幸いだ。(インタビュー&文:三宅正一)

RHYMESTER

RHYMESTER

—今日は全曲インタビューをお願いできればと思っていて。その前にアルバムのアウトラインの話をさせてください。まず、シングル「人間交差点/Still Changing」のインタビューのときにアルバムに向かう流れのなかで、今回のタームのRHYMESTERは多様な人間の生き様であり、多様な音楽を混ぜたいんだという話になって。そこで、宇多さんが“アルバムに関することで今ちょっとアイデアが思い浮かんだ”と言っていたんですね。

宇多丸 ああ、はいはい。覚えてます。

—その答え合わせからさせていただいてもいいですか。もしかしたらそれが『Bitter,Sweet & Beautiful』というタイトルにも繋がってくるのかなと思って。

宇多丸 あれはなんだったかというと、あのときは「Kids In The Park feat. PUNPEE」のアイデアを練っているタイミングで。子どもたちが公園で遊ぶ話をメタファーにしようという歌詞だから、「まざろうよ」というタイトルにするのはどうかとか、そういうことですね。アルバム全体で言おうとしていることと、子どもが遊びに参加したいと思ったときに友だちに“混ぜてよ”って言うじゃない? あれ、いいよねって思って。そういう話ですね。

—なるほど。“混ぜる”というのはこのアルバムのメッセージ性における大きなキーワードで。己の生活の苦味も甘みも引っ括めて、個々人の生き様よ美しくあれということ。そして、喧々諤々の議論を交わしながらも各々の人生模様がマーブル柄になるくらい混ざり合って、それを認めることができれば本当の意味でヒューマニスティックな人間関係と市井を築けるんじゃないかと。そこに至るまでの提案をするアルバムだと捉えたんですけど。

宇多丸 はい、そういうことですね。12曲目の「人間交差点」がアルバムのクライマックスになっていて。この曲で人間の多様性や幅、それを混ぜることが美しいという答えを言ってるんですよね。その前に俺たちの主観的な立場を示す曲があって。俺たちの譲れない己の立場や信条があり、そのなかで煩悶しつつ、でも、そういう立場や信条は誰しもが持ってるはずじゃないかと。そのうえで「人間交差点」にたどり着くという流れなんですけど。

—このアルバムが現代日本に放たれる意義はとても大きいと思います。そこでたとえば安保法案云々とかいろいろ理由を連ねることもできるんだけど、言葉を重ねすぎてもこのアルバムの本質から遠ざかってしまうなと思うところもあって。それほど『Bitter,Sweet & Beautiful』というタイトルがシンプルにメッセージを明示しているから。

宇多丸 そうなんだよね。それはたくさんの取材を受けていても感じていることで。三宅さんが言ってくれたようなメッセージの流れがあって、自分でもそう思って作っていたんだけど、いざそれを説明しようとすると、難しいんだよね。それほどグレーな感覚を表現しているアルバムでもあるから。

—そうなんですよね。

宇多丸 “そうでもあるけど、こうでもあって”みたいなことを説明しようとしてるんだけど、結局は人間の多様性、幅が美しいんだということで『Bitter,Sweet & Beautiful』というタイトルを付けたわけで。たとえば出発点としては、日本でこんなに露骨なレイシズムが台頭してショックを受けたという点もあるんだけど。これも言い方が難しいんだけど――そりゃあ人種差別主義者なんてこの世の中からいなくなるのが理想ですよ。でもさ、仮に「人種主義者がゼロになった世界」というのを想像すると、それはそれで違和感を覚えるなとも思うわけで。

—良し悪しは別にそれはそれでクリーンすぎるしリアルじゃないっていう。

宇多丸 やっぱり理解し難い「他者」もいないと逆にちょっと不安になってくるというか。

—わかります。

宇多丸 何に対しても“そうじゃねえよ”という意見が幅としてあってしかるべきというか。たとえば安保法案の件も、自民党政治なんてある意味いつの時代もこんなもんだったとも言えるけど、それに対して反対意見が上がらなくなってしまう、もしくは反対意見がまったく有効でなくなってしまうような世の中こそが怖いわけで。喧々諤々やること自体が悪いんじゃない。

—議論の場がね、あるうちはまだ。

宇多丸 うん。怒れてるうちは、モメてるうちはまだ大丈夫っていうかさ。だから、仮に世の中が俺が考える理想のほうに100%いったら、それはそれでキモいなって思う(笑)。それはそれで美しくないかもねって。それは自分の中のダークサイドも含めてね。

—トラック面では予告どおりPUNPEEくんのプロデュース曲が14曲中5曲と大活躍してるんですけど、音楽的な全体像としてどんなことを意識しましたか?

Mummy-D(以下 D) 音的には、メロウネスというかね。前作(『ダーティーサイエンス』)がノイジーな音像を目指して制作したものだったので、今回はどちらかと言うと洗練だったり、グッドミュージックだったり、リアルミュージックがキーワードになっていた。それもあってKREVAにトラックを頼んだのもあの音像がほしかったからだし、PUNPEEに5曲もお願いしたのは彼の音楽的な幅がほしかったからで。

—なるほど。

D 最初、今回は“アゲ曲なしでもいいか”みたいなことをも言ってたのね。アルバムに向けた制作を始めたときにKREVAのライブを観に行って。そこで宇多さんと“やっぱり『心臓』あたりのあのメロウネスっていいよね”って話をしたりして。

宇多丸 そうそう。「I Wanna Know You」とかシビれちゃって。あと、ジャスティン(・ティンバーレイク)のあのアルバム(『The 20/20 Experience』)とか、シャレた感じがほしいよねって話をしたんだよね。結果的にこのアルバムは俺らしい泥臭さがあるんだけど、自分たちでは出せないシャレた要素を取り入れたうえで泥臭くなってるから。そこは大きなポイントで。

D グッドミュージック、リアルミュージックが嫌いな人なんてそうそういないだろうしね。

—PUNPEEくんは特に正攻法ではなく変化球を混ぜたうえでのグッドミュージックをクリエイトできるトラックメイカーだし。

D うん、そうだね。だから、KREVAとBACHLOGICには“今度こういうアルバムを作りたいんだ”というコンセプトを説明してオファーしたんだけど、PUNPEEには一切説明しなかった。好き勝手に作ってもらったほうがいい気がして。

—「SOMINSAI」のトラックなんてどうかしてますよね、これ(笑)。

D うん、狂ってるよね(笑)。

—強烈なフィドルのリフも一発で耳に残る。

宇多丸 あと、PUNPEEのトラックには最初から仮の歌サビが入っていることもあって。あのノリは俺らから絶対に出てこないから。これはおもしろい風通しのよさが生まれるなって思った。

—PUNPEEくんのトラックは、まさに音楽的な多様性の重要な一翼を担っているし。

宇多丸 そう、それは結果論でもあるんだけどね。これだけ“多様性”って言ってるから、聴こえ方が息苦しかったり閉塞感があると違うなって思うし。結果的にではあるんだけど、正しい方向に進んでいったなって思います。

—では、ここから1曲ずつ聴かせてください。

『Bitter, Sweet & Beautiful』全曲解説

Bitter, Sweet & Beautiful

2015年7月29日発売

初回限定盤A(CD+Blu-ray):VIZL-846 \3,800(税抜)
初回限定盤B(CD+DVD):VIZL-847 \3,500(税抜)
通常版(CD):VICL-64371 \3,000(税抜)

※Blu-ray/DVDには、“6 minutes of #nkfes” 全アーティスト収録・主催フェス「人間交差点 2015」スペシャルダイジェスト映像、「SOMINSAI feat. PUNPEE」(人間交差点 2015)ライブ映像、「Still Changing」ミュージックビデオ、「人間交差点」ミュージックビデオ ※副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリーを収録

1. Beautiful-Intro  2.フットステップス・イン・ザ・ダーク  3.Still Changing  4.Kids In The Park feat. PUNPEE  5.ペインキラー  6.Beautiful  7.SOMINSAI feat. PUNPEE  8.「モノンクル」  9.ガラパゴス  10.The X-Day  11. Beautiful  12.人間交差点  13.サイレント・ナイト  14.「マイクロフォン」

1. Beautiful-Intro

—このトラックはJINさんとSWING-Oさんのプロデュースで。このイントロをモチーフに6曲目のインタールードへと繋がり、11曲目で「Beautiful」というひとつの楽曲に帰結するんですけど。どういうイメージで出発したんですか?

DJ JIN もともと“Beautiful”というキーワード自体はアルバム制作に向けたいちばん最初のミーティングから出ていて。そこをキーワードにして、メロウネスを感じる曲を作っていったんですね。当初はアルバムタイトル曲的なものは作らない予定だったんだけど、制作が終盤に差しかかったあたりで総合プロデューサーであるDから“やっぱりアルバムのキーになるような曲がほしい”という意見をもらって。それで、結果的にイントロ、インタールード、11曲目の「Beautiful」という曲で1本の串を通すことになったんです。ただ、本筋のテーマはアルバムタイトルにあるように『Bitter,Sweet & Beautiful』だから。つまり、100%の純度で“Beautiful”というキーワードがあるわけじゃないということで、トラックにノイズを入れたりしていて。その表裏一体な感じが伝わればいいなと思ってます。

—この「Beautiful」3部作のキーフレーズとなっているピアノの旋律は美しいんだけど、そこはかとなく切なく、シリアスな趣があって。ホントに絶妙ですよね。

JIN 実はね、ここにはミソがあって。これ、調律が通常とは違うんですよ。

—なるほど、そうなんだ。

JIN  440か441(Hz)という一般的な調律ではなく、432(Hz)という魔法の調律があって。

宇多丸 そうなんだ! その話、今初めて聞いた。

D 俺も「Beautiful」のトラックを聴きながらここに乗せるべきラップと歌メロのラインを探っていたら、“あれ? このトラックってチューニングがおかしいのかな?”って思ったんだよね。でも、JINとSWING-Oで作ってるんだから、チューニングなんて間違うわけないと思って聞けなかったんだよ(笑)。

JIN この調律はSWING-Oのアイデアなんだけど。これを440か441でいくとこの独特の深みが出ないんですよ。それをSWING-Oに教えてもらって。

宇多丸 なるほど! それでちょっと不安を覚えたり、普通じゃねえよ感が出てるんだ。

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2. フットステップス・イン・ザ・ダーク

—PUNPEEプロデュースですね。メロディアスかつシリアスなムードを表出させるピアノとブレイクビーツのループを軸にしたシンプルなトラックで。PUNPEEくんにしては珍しいタイプのトラックなのかなと。

D そうかもね。最初にPUNPEEからもらった5曲入りのデモのトップに入っていて。だいたい人にデモを渡すときって、いちばん自信のあるトラックはトップに入れておくもんだから(笑)、当初から自信作なのかなと思ってた。そのうえで、さっき言ったようにPUNPEEにはアルバムのコンセプトを伝えないでトラックを作ってもらったんだけど、こちらとしては“Beautiful”を感じさせるトラックがほしいと思ってるわけじゃない? そこでいきなりトラックの冒頭にPUNPEEの声で“This is my beautiful life…”って入ってたから“おおっ!”って思って。

—いきなりシンクロしたんだ。

D そう。ただ、トラック自体はステキなんだけど、ムードとしては90’sヒップホップ感があるから、歌詞をちゃんと練らないと懐古主義的な曲になりかねないなという危惧はあったのね。でも、この曲でアルバムを始めたいなという思いも強くて。

—そういう意味では、実質的なオープニングナンバーであるこの曲でアルバムの核心となるテーマに触れてますよね。孤独の暗闇を走る人生の主観同士が交差するという。

宇多丸 それはなぜかというと、俺のバースは制作の最後の最後に書いたからです!(笑)。

D だから核心に触れてるんだよね。

宇多丸 Dが入れた1stバースは、アルバム全体のコンセプトは立てているけど、まだプロットが完全には固まりきる前で。俺もそのとき仮のバースを入れたんだけど、自分的には全然面白くなかった。Dが言ってることを繰り返してるだけだなって。歌詞の内容的には主観を走らせる者同士として、Dがクリエイターとして走っているなかで、俺のバースはグイッとアルバムのテーマに引き寄せるような内容にするべきだなと思った。そういう思いのもとに最後にピースをはめたので、まるでアルバムのすべてを見通してるようなバースになってます(笑)。今回のアルバム制作は、この曲に限らず作っては微調整を繰り返してるものが多くて。そうすることによって、アルバムの整合性や完成度を高めることに成功してると思う。PUNPEEが“This is my beautiful life…”っていうラインを入れてきたことから始まった偶然の産物も含めて必然に着地できた感じはありますね。

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3. Still Changing

—「人間交差点」と両A面のシングル曲ですけど、あらためてアルバムのピースになってどういう感触がありますか。

宇多丸 この曲はアルバムのこの位置にもってこようって初期から決まってたんだよね。“「フットステップ」から「Still Changing」にいく流れヤバくね?”って言ってた。

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4.Kids In The Park feat. PUNPEE

—素晴らしいですね、この曲。PUNPEE流のヒップホップマナーに則ったトイポップとでも言いたくなるようなトラックと、公園の子ども社会におけるルールにこそ人間関係の本質があるよね、という含蓄に富んだ比喩的表現を駆使したリリックのバランスがホントに最高で。

宇多丸 そう言ってもらえてよかった。

D PUNPEEは最初から“RHYMESTERに今回渡すトラックの中で絶対にクラシックを作りたい”ってものすごく気合いを入れてくれていて。“それに値する曲がまだできてないんです”って言っていたんだけど、レコーディングの最後のほうに“できました!”って持ってきたのがこの曲なんだよね。デモの段階でサビの歌メロも仮で入っていて。“なんだこのポップセンスは!”って思った。だからPUNPEEに“これさ、自分のアルバム用にとっておきなよ、もったいなよ”って言ったんだよね(笑)。

宇多丸 そう、こっちが説得したくらい(笑)。

D でも“どうしてもRHYMESTERのアルバムに入れてほしい”って言ってくれて。俺ら的にもこういうかわいらしいタイプの曲調ってやったことがなかったからこそ、やりがいもあったから。ありがたくトラックをいただきました。そこからはPUNPEEも含めてスタジオでみんなで話し合いながらこのトラックで何を歌えるか計画出産的に作っていって。

宇多丸 PUNPEEの全体の雰囲気に対するこだわりも強くて。細かいところまでいろいろやり取りした。あと、この曲はサーマソング的な抜けのよさもあるから、夏フェス的なイベントでも機能するキャッチーさもあって。多くの人に愛される曲になってほしいですね。

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5.ペインキラー

—意外にも初のKREVAトラックということで。クレさんらしい浮遊感のあるメロウネスが充満してますね。

D そう。KREVAグルーヴというか、彼ならではのメロウネスを俺らに注入してほしいなと思って。“アルバムは『Beautiful』みたいなタイトルになりそう”ということを伝えたうえで発注して、6曲くらいもらったのかな。どれもすげえよかったんだけど、その中で、いちばんポップで、俺らがやりそうもないトラックを選んだ。クレのトラックは俺も宇多さんも違和感なくラップを乗せられるから。

宇多丸 素晴らしいよね。他のトラックもすげえよくて。いつかクレに丸ごと1枚アルバムのプロデュースをお願いしてみたいなって思ったくらいです。実はこれ、いちばん最初にレコーディングした曲で。この曲のおかげで最初からこのコンセプトはいけるなって手応えをつかめたのもよかった。超フレッシュなんだけど、歌詞で言ってることはRHYMESTERらしいというバランスも含めて。

—歌詞ではRHYMESTERの音楽における“効き目”を語っていて。

宇多丸 そう、トラックはとろけそうに甘いニュアンスもあるんだけど、言ってることはかなり毒っけがあって。そのバランスも気に入ってる。

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6. Beautiful

D イントロのピアノのメロディが“Bitter”だとしたら、このインタールードでは“Sweet”を表現したくて。そして、11曲目「Beautiful」でひとつの曲になるというイメージですね。

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7. SOMINSAI feat. PUNPEE

—そして、問題作の「SOMINSAI feat. PUNPEE」なんですけど。

D 問題作ね(笑)。

宇多丸 PUNPEEのトラック集の中に入ってる時点でいちばん目立っていた。

D これもまた“Beautiful”だよね。

—正しさだけじゃ生きていけないっていう。

宇多丸 そうそうそう。

—ある種のダーティーさも含めて、“Beautiful”にたどり着くために必要な要素であると。

宇多丸 そういうことですね。これは「ペインキラー」の次に手をつけた曲で。つまり2曲目に作った曲なんだけど、パーティーチューンではありつつもアルバムで言うべきコンセプトはこういうことだよなって見えていた部分がかなりあって。日本人の土着的な祭りってむちゃくちゃものも多いじゃない? 長野の諏訪でやってる御柱祭とかも“大木を落とすってなんだよ!”って思うじゃん。しかも死者が出たりとか。あと、川崎のかなまら祭りとかね!

—正気かっていう(笑)。

宇多丸 西洋的な感覚からしたら、もうアウトっていうか(笑)。でも、そこも含めた日本人らしさがあって。そもそも全然洗練されてないじゃん、俺らっていう。欧米人のスタイルを継承したみたいな顔をしてるけど、本質は「SOMINASAI」ですよ、と。

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8. 「モノンクル」

—モノンクルはフランス語で“僕のおじさん”という意味があり。

宇多丸 そう、あとはジャック・タチというフランスの映画監督の作品タイトルでもあり。そして、そこからインスパイアされたと思われる、北杜夫の「ぼくのおじさん」という少年向け小説があって。それは家でゴロゴロしてるおじさんの話なんだよね。さらに、伊丹十三が昔「モノンクル」というタイトルの雑誌を出版していて。そのすべてに通じているのは、斜め上を生きるおじさんの隙間の知恵っていいなと思う感覚だなと。親とか教師が与える正しさに対するちょっとしたカウンターだったり。自分も親戚のおじさんのこと好きだったなって思い出したりして。周りには“変なこと教えないでよ!”とか言われたりするんだけどね(笑)。あと、自分の子どもには厳しいお父さんなのに他所の子どもに対しては超無責任なおもしろおじさんとしての顔があったりとか。RHYMESTERも若手の後輩にとってはそういう存在なのかなとも思いつつ。

—Dさんは歌詞で高田純次さんを挙げてますけど。

D あの人のふざけてるんだけど、格好はビシッとしてるみたいな。あのバランスがカッコいいよね。

—先日放送された高田純次さんをフィーチャーした「情熱大陸」もおもしろかったですよね。

D うん、あれよかったよね(笑)。

宇多丸 だから、ただ下品なおじさんはヤなんだよね。セクハラしたり、公衆マナーを守らないタイプのおじさんはヤだ。

—粋なおじさんですよね。リアルな処世術を知っていたり。

宇多丸 そうそう。飄々としていて、権力志向じゃないおじさん。

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9. ガラパゴス

—これは日本語ラップの牙城を死守してきたRHYMESTERだからこそ言えることというかね。

D そうですね。ホントはもうこういうことは書きたくないんだけどね(笑)。でも、この手の怒りみたいなものはヒップホップが乗りやすいんだよね。ハッピーな感情を歌うよりも、こういう怒りやブルース的なテーマとヒップホップの相性がいいのは間違いなくて。

宇多丸 でも、Dのサビのメロがすごくよくて。これがサビもラップ調だったら、今まで何度もやってきた感じになっちゃうけど、サビがメロウでオシャレなんだよね。そこがいいなって。Dさん、さすがですよ。

D あそこはどう考えても歌しか乗らないんだよ。だから歌うしかねえなと。近年はラッパーが歌うのもあたりまえになっていて、そういう意味では、日本ではクレは早かったなって思うんだけど。やっぱり歌でしか乗り切れない瞬間と、ラップでしか乗り切れない瞬間ってあるんだよね。

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10. The X-Day

—これはもう、映画『インディペンデンス・デイ』のような事態を迎えなければ、人類はひとつになれないのか、おまえらっていう苦言を呈していて。トラックを手がけたのはDさんですね。

宇多丸 ホントはDももっといっぱいトラックを作ってたんだよ。他のトラックもよかったんだけど、飽きちゃったんだって(笑)。

D そう。作ってるときに悩みすぎて飽きちゃって。あんまり自分のトラックが好きじゃないんだよね(笑)。人の力を借りたいって思っちゃう。でも、このトラックに関しては、サビを作って乗せてみたらすごくハマったので採用しました。

宇多丸 歌詞はDの念願のテーマが実現したんだよね。

D そう、サビで歌ってることをずっと言いたくて。

宇多丸 この歌詞を書いてるときはイスラム国がグイグイ台頭していて。あと、日本と近隣諸国のこじれた関係とかも“どう解決すればいいかわかりません!”ってなる問題も多いじゃないですか。でも、この曲で描いてるような事態が起こったらいいのかと言ったら、そんなことはなくて。要は、“世界がひとつになるために安易な手段なんてないですよ”っていう結論なんだけど。

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11. Beautiful

D タイトルチューンと言っても過言ではないので、このアルバムで言うべきことをあえて明確に言葉にするべきなのかなと思って。“言わなくてもわかるでしょ?”っていうンニュアンスが意外と届いてなかったりもするから。

宇多丸 ただ、Dから言われたんだけど、このあとに「人間交差点」というこのアルバムの答えとカタルシスを最大限に示す曲が来るから、“この曲の中ではちょっと答えを留めておいてくれ”と。

D そう。“答えを言い切らないでください”というリクエストをして。

宇多丸 エモーションとして、このアルバムの中でいちばんネガティブなトーンにもっていきたいというのもあって。悩んで、悩んで、悩み切ったところで「人間交差点」のカタルシスを迎えたいから。そういうエモーションのカーブみたいなところは計算しましたね。スタジオでDが“ポエトリーリーディングに近いような感じにしてもいいかな?”って言ってたから、俺も最初はDに準じたフロウでいこうかなと思ったんだけど、言葉を叩きつけるようなアプローチもありかなと思って書いたりとか、そういうやり取りもありました。

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12. 人間交差点

宇多丸 シングルでリリースしたときとまた重みが違って聴こえる。大成功だと思う。

D あらかじめ最後のほうに位置する曲になるのは間違いないだろうなとは思っていて。俺のバースも“結局”から入ってるからね。“結局”って最初に来る曲で言うことではないから(笑)。つまり、シングルで結論を言ってたってことだよね。個々の楽曲が最後に「人間交差点」で集約される。渋谷のスクランブル交差点だってそうじゃん。あたりまえだけど、同じ人が交わる組み合わせは絶対になくて。

宇多丸 そのあとに控えてる2曲のエンディング効果も考えつつね。

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13. サイレント・ナイト

—夜の静謐さとそこにある孤独の尊さ。そこから音楽が生まれるささやかな予感と高揚感。そして、未来に向けた解決策が一瞬でも浮かぶような希望も滲んでいるような曲だなと。

宇多丸 交差点を経由して、みんなそれぞれ家に帰って、こっちが“このアホが! 死ね!”なんて思ってる人たちもたぶん家に帰ったら涙で枕を濡らしたりしてるんだろうなっていう(笑)。

D サビの“何か産まれそうな そんな気がしてる きっと あともう少し あともう少し あともう少しで”っていうラインがいいんだよね。

—これがPUNPEEトラックであることもグッとくるなと。

D これも今までのRHYMESTERだったら選ばなかったタイプのトラックだね。

宇多丸 あと、唯一PUNPEEが手がけたトラックのなかで彼の声が入ってないんだよね。

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14.「マイクロフォン」

—ラストにセルフボーストも含めたRHYMESTERの生き様、姿勢を打ち出す曲で。

D この曲を入れるんだったらオープニングかエンディングしかないと思って。どちらにしても所信表明みたいなことになると思うんだけど、最後に入れたほうが、味があるかなと。最後に一発“なめんなよ”っていう(笑)。

宇多丸 この曲はエンディングクレジットというかね。「サイレント・ナイト」がラストシーンで。あと、孤独な主観を抱えた人たちが交差して、それぞれの道を歩き出すという結末。で、結局そこからみんな“おまえの意見を言えばいい”っていうかさ。“ウォーズ”はヤだけど、“スタイルウォーズ”はいいじゃん。ヒップホップって基本的にはモメごとが大好きな文化でしょ。でも、たとえばMCバトルにしたって、言いたいことを言い合って、最終的には握手する文化でもある。“俺も意見を言うけど、おまえも言えよ!”って。それこそがヒップホップ的なスタンスとしての“Beautiful”だと思うから。

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RHYMESTERオフィシャルサイト

RHYMESTERも出演!T-GROOOVEスペシャル・ライブ


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アーティスト情報

宇多丸

生年月日 1969年5月22日(49歳)
星座 ふたご座
出生地 東京都

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