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注目の建築家・前田圭介が発信する「インターローカル」とは?

2014.11.19 (水) 16:36

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注目の建築家・前田圭介氏が発信する「インターローカル」とは?

各種メディアやコミュニティなど、近年さまざまな分野から聞こえてくる「インターローカル」というキーワード。「インターローカル」とは、地域や国境とは関係のない地域間の関係性のこと。例えば日本では、今まで情報発信基地であった東京を経由せず、それぞれの地方から直接世界へ情報発信することが可能になった。代官山 蔦屋書店の建築コンシェルジュで、自身も一級建築士の坂山毅彦氏は「建築という分野でも同様の流れが起こっています」と語る。

建築におけるインターローカルとは?

「インターローカルは21世紀型の建築へのアプローチ方法」と坂山氏は話す。自然と密着する建築において、自然災害はひとつのターニングポイントとなる。日本では、2011年の東日本大震災以降、その流れは助長されている。

「今まで日本現代建築の概念は、東京にある“中央のメディア”で一回フィルターにかけられてから発信されていたのですが、今は地方から直接世界に向けて発信できます」

インターローカルの概念が浸透することによって、建築家が地方に事務所を構えやすい状況が生まれてきた。ただ、インターローカルがもたらす影響は、それだけではない。

「その地方にいるからできることや、地方ごとの細かい違いに目を向けることができるようになるんです」

地方から世界へ発信するのは若手建築家

「場所というのは、自身のスタンスや建築思想を固めていくときに大切なことなので、多くの若い世代の建築家はインターローカルな状況を意識して活動拠点を選択しています」と坂山氏は語る。その中でも坂山氏が特に注目しているのは、広島県・福山市出身で、現在も同地を中心に活躍している建築家・前田圭介氏だ。

「地元に事務所を構えて精力的に活動することは、地元にたくさん建築物をつくることにつながる。それは、前田さん自身が福山の風景を作っていくことになり得ます。インターローカルが進むことによって、各地方ごとのすばらしい建築家が、建築を通して世界に発信していくことができる。その状況が、日本の多様な風景を再び取り戻すことを可能にするかもしれません」

注目の建築家の目に映る“守るべき風景”

前田氏の建築の特徴は、「屋外と屋内の境界線が曖昧なこと」だという。

「内外を曖昧にするということは、生態系や街並みなど、建築物から見える風景を大きく建築に取り込むことになります。それによってもたらされる大事なことは、住民が自分の住んでいる街にある素晴らしいものを守り続けるものを作ることへ意識的になること。例えば、窓の外に広がる風景が、チェーン店の看板しか見えないような、日本中どこにでもあるような風景だったら寂しいですよね」

前田氏は、住んだことのない土地に移住するのではなく、生まれ育った地元で活動を続けている意味も大きい。

「広島県福山市に生まれたことをある種の宿命かのように、いい部分も悪い部分も背負って建築をしようとする姿勢。設計をしながら地元のよさを探しているんだと思います」

“均一化”から“自分ごと化”へ

前田氏がインターローカルにこだわり、発信しようとしているメッセージとは何なのか? そこには、今の日本が抱える問題がある。

「均一化されてしまった日本に対する危惧だと思うんです。ちゃんと地元のよさを見出していこうという意識を持ち、実際にその土地に住んでいる建築家がデザインをすること自体が、その土地の風景を作って行くことになる。インターローカル化は、住民が“自分ごと化”して考えていく状況を作ることなのかもしれないですね」

「建築のインターローカル」を知るための3冊を、坂山氏に前田氏のコメントとともに紹介してもらった。

「建築のインターローカル」を知るための3冊

美しい江戸時代を垣間見る

『逝きし世の面影』

渡辺京二 著、葦書房 刊

「江戸時代の社会がいかに国民と国によってつくりあげられ、世界的にみても希有で美しい文化をもった国であったかを伺い知ることのできる一冊です」(前田氏の選書コメントより)

近代化が景観に与えた影響と、今後の課題とは

『犬と鬼』

アレックス・カー 著、講談社 刊

「徳島県の秘境といわれる奥祖谷で著者が運営している築300年の古民家『篪庵(ちいおり)』。そこに泊まったとき過去からの変わらない風景の美しさに触れました。日本が近代化=土建国家を優先してきた結果生まれた、我々が日常当たり前のように見ている景観の異様さについて気付かされます。そして同時に、これから未来へ向けて意識していかなければならないことを気付かせてもくれます」(同上)

時代によって変わるもの、変わらないもの

『木のいのち木のこころ (天) 』

西岡常一 著、新潮社 刊

「時代の変化によって人の価値観がうつり変わる中で変わらないモノづくりの精神と心構えの大切さが現代に生きる私たちのこころに響く一冊。様々なモノが数値化され、そして利便性という名のもと失われつつある職人の技や勘など、あらためて日本の建築文化のこころを知ことができます」(同上)

地方を知ることは日本を知ること、自分自身の地元のいいところや悪いところの両方を受け入れるのは自分を知ることに繋がる。「インターローカル」というキーワードを頭の端に置きつつ読み進めることで、“場所”への新たな視点を発見できるかもしれない。

(文:岡崎咲子)

【代官山 蔦屋書店】
建築コンシェルジュ 坂山毅彦 氏

2013年から同店のコンシェルジュに。一級建築士としても活躍し、建築設計事務所を主宰。社会と建築の距離を縮めることを目指した棚作りに取り組む。毎月、自身が注目する建築家が選ぶ本を紹介し、トークショーを行う「BOOKS with ARCHITECT」を企画している。

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