「グリーンとは一生付き合っていくもの」プラントアーティスト川本諭氏インタビュー

2015.3.27 (金) 22:00

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川本氏の著書
『Deco Room with Plants in NEW YORK』
発行:ビー・エヌ・エヌ新社(http://www.bnn.co.jp/

かつてのバブル景気の頃、インテリアとしてのグリーンがブームになったことがあった。「ほしいものが、ほしいわ」という糸井重里のコピーが端的に表現したように、物が溢れ、生活が満ち足りた時代。それでもなお、暮らしをさらに豊かにする物として目が向けられたのがグリーンだった。それから約30年が経った現在、再びグリーンが注目されている。しかし現在はバブル期のブームよりも自然に、より身近なものとしてグリーンに向き合おうとする動きがあるように感じられる。

そのような人とグリーンの新しい関係性を築いた立役者の一人が、プラントアーティストの川本諭氏だ。川本氏はグリーンが本来持っている美しさ、経年変化の魅力を独自の視点でスタイリングすることで、グリーンとの新しい関わり方を世の中に提案している。そんな川本氏は、グリーンとどのように出会い、どのように付き合っているのだろうか。プラントアーティストとしての活動の裏に秘められたバックグラウンドや、グリーンに対する思いについて聞いてみた。

「仕事とプライベートの境界はない」。川本氏とグリーンとの関係性を紐解く。

川本氏がニューヨークで手がけたショップのスタイリング一例。写真は老舗アウトドアブランド『FILSON NEWYORK』のグランドオープンを祝うために期間限定で行われたもの。高い天井と開放感のある天窓を活かし、植物を重ねあわせるように配置していくことで、まるで山の中に踏み込んだような感覚を表現(『Deco Room with Plants in NEW YORK』P.66)

ーまず、川本さんとグリーンとの出会いについて教えてください。

もともとグリーンは好きだったのですが、僕が高校生の頃、ある店で枯れかけたミルクブッシュを安く譲ってもらったことがありました。育て始めるとすごい勢いで回復して成長し、植物の持つ生命力を実感したんです。その出来事をきっかけにしてグリーンに魅了されていくことになりました。

ーその後、1997年に『GLOBE GARDEN』の立ち上げに関わり、2002年に『GREEN FINGERS』を始めていますね。現在の活動の内容について教えていただけますか。

『GREEN FINGERS』では数々の庭や作品を手掛けてきました。現在では国内に6店舗を構えているのですが、2013年9月にはニューヨークにアトリエ兼ショップもオープンしています。現地ニューヨークのファッションブランド『GANT RUGGER』では、グリーンを用いたインスタレーションも担当しているんです。さらに最近では、ガーデンデザインやショップディスプレイなど、グリーンだけに止まらず、幅広いジャンルのディレクターとしての活動も行うようになりました。グリーンの美しさを表現する個展も開催しています。

アパレルショップ『GANT RUGGER』(ニューヨーク)2014FWコレクションプレビュー会場(『Deco Room with Plants in NEW YORK』P.95)

ヴィンテージショップ『Front General Store』(ニューヨーク)(『Deco Room with Plants in NEW YORK』P.71)

ー驚くほど活動の幅が広がっているのですね。グリーンを通じて、世の中にどんなことを発信していきたいと考えていますか。

グリーンと人との関わり方をより豊かに、身近に感じてもらえるフィールドをもっと開拓したいです。そして一人一人の個性がもっと豊かになるような、グリーンのあるライフスタイルを提案していきたいですね。特に、ファッションやインテリアに興味を持つ若者や男性にも、グリーンに触れるきっかけを提供していきたいですし、ファッションやライフスタイルと同じように、グリーンのある生活を都会で楽しむ、そんな土壌を作っていきたいです。

川本氏が語る、グリーンのある生活の魅力とは?

ー川本さんの自宅にもグリーンはあるのですか。仕事とプライベートで、グリーンとの付き合い方は違いますか。

日本の家でもニューヨークの家でもグリーンを育てていますよ。好きな植物はいろいろありますが、多肉植物やシダ系、エアプランツ等が多いですね。プライベートと仕事の境目は自分にはあまりありません。常にグリーンに触れながら、グリーンに合うインテリア、空間を常に考えている感じですね。グリーンは、自分にとって無くてはならないものですから。 グリーンは空間にひとつあるだけでも、その空間に血が流れるというか、命がフッと湧くようなものです。それが葉っぱ1枚であろうが、花びら1枚だとしてもです。自分にとってグリーンとは、仕事だけに留まらず、一生付き合っていくものなんでしょうね。

ニューヨークにある川本邸のベッドルーム&ワークスペース。高さのある場所に植物を置くときは、葉が垂れ下がるような種類を選んでフォルムを見せる。サイズの異なる植物をバランスよくスタイリングすることで全体に立体感を生み出している(『Deco Room with Plants in NEW YORK』P.25)

朝の食卓をテーマにした川本邸のテーブル。色とりどりのフルーツやヨーグルトが並ぶ爽やかなテーブルに、季節の切り花をプラスして個性的に。小物などは暖色で揃え、中央においた鉢の鮮やかな緑色でメリハリを利かせた(『Deco Room with Plants in NEW YORK』P.22)

川本氏が内装をすべて手がけた日本の自宅(現在はストアとスタジオとして展開)

ー生活にグリーンを取り入れると、どんな変化があるのでしょうか。

「グリーンを生活に取り入れると、ただ綺麗に揃えられたインテリアというだけではなく、日常に癒しが得られるようになります。例えば、自宅に友人や恋人、仕事仲間、家族など、誰かを招待するときにグリーンを使って玄関やテーブルをコーディネートして彩りを添えることで、ちょっとしたおもてなしの気持ちが、より素敵な空間を作り上げてくれるんです」

ー川本さんが好きなスタイルはありますか?

「個人的には、綺麗に剪定されている庭よりも適度に力が抜けている方が居心地は良いですね。新しいものは疲れてしまいますから、錆びた鉄の感じや古木やテラコッタなど、自然のもので経年変化が見られるものが好きなんです。だけど、古いものばかりじゃなく、適度にバランスの取れている空間で、リラックスできることが一番大切だと思います」



グリーンの存在意義について「無くてはならないもの」と力強く断言する川本氏。ファッションやインテリアと同じ距離感で、生活に密着したものとしてグリーンに向き合っているからこそ、川本氏は独自のスタイリングを生み出せているのかもしれない。グリーンのある暮らしに興味を持っている人は、まずは川本氏の提案するスタイリングに触れてみてはいかがだろうか。

(文:玉田光史郎、写真:Eisuke Komatsubara(moana))

【プロフィール】川本 諭 (かわもと さとし) GREEN FINGERS
creative director | plant artist

1974年 東京生まれ。グリーンがもつ本来の自然美と経年変化を魅せる、独自のスタイリングを提唱するプラントアーティストとして活動。自身のディレクションによる日本6店舗とNY店を展開し、ショップの空間スタイリングなど、グリーンのみにとどまらず、幅広いジャンルのディレクターとしての活動も行う。近年はグリーンの美を表現する個展も展開しか、グリーンと人との関わり方をより豊かに、身近に感じてもらえるフィールドを開拓している。

◆川本諭氏のインスタグラムのアカウント:satie_san

http://www.greenfingers.jp/
http://greenfingersnyc.com/


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Deco Room with Plants in NEW YORK

Deco Room with Plants in NEW YORK

人に植物を・街に植物を・あなたの空間にも植物を―GREEN FINGERS NEW YORKを出店して1年。さまざまな人との出会いやそこから広がる表現。ニューヨークに新たな住まいも構えた川本諭氏が創る、「今」のスタリイングを集めました。

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Deco Room with Plants

Deco Room with Plants

人気ガーデンスタイリスト・川本諭氏の自宅を、場所別に例にとり植物のあるインテリアを紹介します。豊富な写真の中には、きっと自分の部屋にぴったりなアイデアがあるはず。全部ではなくても、一部分を取り入れるだけで、毎日が楽しくなるようなインテリアスタイリングのアイデアにあふれた1冊です。

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