“道”を建築する!? 注目の若手建築ユニット「o+h」大西麻貴+百田有希

2015.4.2 (木) 12:27

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『二重螺旋の家(2011)』

いま、最も活躍している若手建築ユニット「o+h」こと、大西麻貴氏+百田有希氏。学生時代から現在にかけて数々の賞を受賞し、著書『大西麻貴+百田有希/o+h | 8stories』などの出版物もヒットを飛ばしている。

近年、大学の卒業設計展が盛んに行われており、全国の学生で競い合う場が増えているという。建築を学ぶ学生が何千何百人といる中で、彼らは当時からめきめきと頭角を現していた。彼らはそんな大学時代に出会い、ユニットとして活動を始めた。

代官山 蔦屋書店の建築コンシェルジュで、自身も一級建築士の坂山毅彦氏も注目している一組。彼らの魅力を「とても感性の研ぎ澄まされた方々」と表現する。

「私はいつも大西さんのことを、『頑固さと謙虚さを兼ね備えた人』と表現しています。『自分が作りたい建築』を貫ける芯の強さを見せる一方で、設計事務所勤めを経験していない部分を補うかのように、多くの先輩方の意見に耳を傾ける姿勢を忘れません。百田さんは『リテラシーに優れた人』というのが大学を卒業し東京に来られたころに、私が彼と接して抱いた印象です。それが伊東豊雄さんの設計事務所で6年間働いてさらに磨かれたに違いないと想像します。伊東さんは建築界の旗手的存在なのですが、彼のもとで働いたスタッフが独立してどんどん活躍しています。優秀なスタッフが集まり、活発な議論を繰り返し切磋琢磨する。素晴らしい環境です」


建築ユニット「o+h」として活動する大西麻貴氏(右)、百田有希氏(左)

『大西麻貴+百田有希/o+h | 8stories』大西麻貴+百田有希 著、LIXIL出版 刊

『o+h』の建築は「道」に似ている?

『こどものみんなの家』(2013)は伊東豊雄氏との共同設計

『さとうみステーション』(2014)。宮城県気仙沼市に竣工したガソリンスタンド

そんな彼らが、建築する上で重要な要素としているのは「記憶」だという。

「二人の人生経験や、建物を建てる土地で見つけた良いもの、魅力的なもの。そういう『記憶』を、建築に取り込もうとしていると感じます。彼らは建築を構想する段階(例えばスケッチ)で 『ここで本を読みたいな』『ここなら洗濯物が干してあっても風景になりそう』といった“居場所”になるシーンをたくさん見つけていきます。そして、それらを連続的につなげていき、1つの建築をつくりあげているような印象があります。それはまるで映画のようで、だから、とても物語性がある。このような『記憶が連続』する空間体験は、街中の『道』でのそれに近いのではないでしょうか」

例えば、『二重螺旋の家(2011)』(メイン写真)。建物に螺旋状に巻きつく階段は、まるで入り組んで先の見えない路地のよう。ここには「二人が過去に 体験した豊かな路地空間という記憶」と「下町の風情が残る敷地周辺の記憶」が刻まれている。「先が見えませんから、常に奥にある何かを期待しながら 登っていけるんです。道を歩くときの楽しさを、建物の中に作っていると言ってもいい」と坂山氏。

彼らの事務所も実に象徴的だ。

道に面した、八百屋さんのような設計事務所

道に面した、八百屋さんのような設計事務所

「八百屋さんみたいでおもしろいんです。シャッターを開けたら、外につながっちゃうっていう。二人に使っていてどうですか?ってお聞きしたら、通りかかる 人が見ていってくれる、とか、オープンな時は少し離れて通るけれど、冬に防寒のために透明のビニールカーテンを付けると近くを通るようになるとか。そういうことを観察しながら楽しく働いています。誰のものでもない、みんなで作られている“パブリック”な空間の良さ、同時に予測不能なことが起こるワクワク感や高揚感をくれる場所。彼らはそういう『道』の居心地の良さを彼ら自身の“居場所”に見出しています」

「道を建築する」、そのココロが分かる5冊

「o+h」の建築概念・ポリシーはどこか哲学的だ。そこで、より彼らの建築キーワードともいえる「道」についての考え方やイメージを彼ら自身が表現した5冊を、坂山氏に二人のコメントともに紹介してもらった。

彼らの姿勢・考え方は、選書だけでなく「選び方」にも現れている。

「一人ずつ分担して選書するのではなく、『全部二人で選びます』とおっしゃるんです。それが彼らにとって自然な形なんじゃないでしょうか。二人で意見はぶつけあってはいるんでしょうけれど、ちゃんと二人で作ったものに着地させようという意志の強さを感じる。それは建築についても同じで、二人で作ることへのこだわりを感じます」

『タモリの東京坂道美学入門』

(タモリ 著、講談社 刊)

「東京にはたくさんの坂道がありますが、中でも湾曲する坂道は歩くに従って思いがけない空間の展開があってどきどきします。そんな東京の魅力的な坂道を丁寧に教えてくれる本。この本を片手に坂道を歩きましょう」(o+h)

『ゆめくい小人』

(ミヒャエル・エンデ 著、偕成社 刊)

「お姫様の悪夢をとりのぞく街を探して、王様が旅を刷るお話。草原をくねくねと走る一本道のページは、最もプリミティブな道のイメージです。旅の末に見つけた、悪夢を食べる『ゆめくい小人』の呪文は眠れない子どもたちにおすすめ」(同上)

『トルコ・イスラーム都市の空間文化』

(浅見泰司 著、山川出版社 刊)

「イスタンブールを訪れたとき、街路の楽しさに心奪われました。折りたたみ式・移動式家具のリサーチなど、イスタンブール特有の街路を使いこなす知恵がたくさん載っていて、私たちももっと道を使いたい!という気持ちになります」(同上)

『失われた時を求めて』

(プルースト 著、岩波書店 刊)

「一杯の紅茶から過去の記憶の空間が立ち現れる一節を読んだ時、本当に空間が煙のように数珠つなぎになって、カップから浮かび上がる様が見えたように思いました。記憶の中の空間は連続的なのだということを思い出させてくれる本です」(同上)

『見えない都市』

(イタロ・カルヴィーノ 著、河出書房新社 刊)

「いつか街のような建築を設計してみたいと思います。細い路地、輝く塔、深い井戸、滑らかな床石。設計してみたいのは、まだどこにも実在しない幻の都市の建築。この本の中にはそんな魔法のような都市のイメージがたくさん眠っています」(同上)


「o+h」の二人のメッセージは実に明解だ。「道」自体を楽しむ本、記憶や目に見えないものを空間としてとらえる考え方。彼らはそれを建築に閉じ込め、毎日新しい発見や出会いを喚起する。「道」には冒険が詰まっていることや、もっと毎日を楽しむための視点に気付かせてくれるだろう。

(文:高橋七重)

「o+h」の公式HP

◆関連イベント

建築家による選書棚シリーズ「BOOKS with ARCHITECT」 第八回 建築家・大西麻貴+百田有希と「道」

【代官山 蔦屋書店】
建築コンシェルジュ 坂山毅彦 氏

2013年から同店のコンシェルジュに。一級建築士としても活躍し、建築設計事務所を主宰。社会と建築の距離を縮めることを目指した棚作りに取り組む。毎月、自身が注目する建築家が選ぶ本を紹介し、トークショーを行う「BOOKS with ARCHITECT」を企画している。

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