自然を感じるタバコスタンドに海上水族館!? 新進気鋭の建築家・海法圭の思考がおもしろい

2015.11.11 (水) 13:30

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新進建築家・海法圭さんのWORKSから学ぶ建築的思考

海法圭建築設計事務所を主催する建築家・海法圭さん。施主から依頼される仕事とは別に、社会的問題の解決策や都市の将来像を模索して展開している独自プロジェクトは、人間の秘められた力に着目したスケールの大きなもの。代官山 蔦屋書店で開催されたトークイベントでは、最新プロジェクトの話からそんな海法さんの建築的思考に影響を与えた本まで存分に語ってもらった。

建築家・海法圭さん

建築家・海法圭さん

トークイベントの様子

トークイベントの様子

限りなく軽やかな素材で、気持ちいい空間実現

限りなく軽やかな素材で、気持ちいい空間実現
限りなく軽やかな素材で、気持ちいい空間実現
限りなく軽やかな素材で、気持ちいい空間実現

新進の建築家として注目を集める海法さん。その最新作品が2014年12月、東京・南青山にオープンしたコミュニティ型の期間限定空間「COMMUNE246」内の「TOBACCO STAND」だ。「COMMUNE246」は、飲食など個性豊かな屋台村に、シェアオフィス、学びの場などが加わった感度の高い商業施設。「TOBACCO STAND」は施設の入口、国道246号沿いにある。

「都市をキュレーションするという考えのもと、クリエイティビティを自由に解放する特区をイメージして生み出された場所です。僕の手がけたタバコの屋台は道路に面しているので、まずは周囲の建物との関係を見るボリュームスタディをして、小さいながらも存在感のあるつくりを目指しました。また、この場所はビル風や直射日光が非常に強かったり、頻繁に通る自動車の排気ガスがひどかったりと屋外条件がいいわけじゃない。そういう環境下で自然現象に反応しながらこの地域一帯で最も気持ちいい屋外空間と、そこでの体験をどう生み出せるかという思いが根本にあります」

そうしてつくられたのが、和らいだビル風を通すメッシュのスクリーンに包まれた、限りなく軽やかな素材と構法を用いたタバコを味わうためのショップと休憩所。「都市にありながら自然環境を敏感に感じることができる場所になったらいいなと思っています。僕自身は嗜まないんですけど、世界中のシガレットがそろっていて、大人の隠れ家としても楽しめますよ」と茶目っ気たっぷりに話す海法さんに、会場にも笑顔が広がった。


限りなく軽やかな素材で、気持ちいい空間実現

段ボールを多彩に使い、卸売店を生まれ変わらせた!

ビフォー

ビフォー

アフター

アフター

段ボールを多彩に使い、卸売店を生まれ変わらせた!

段ボールを多彩に使い、卸売店を生まれ変わらせた!

ほかにも、極薄ガラスを使って海の世界を疑似体験できる海の上の水族館、日本の林業再生も目指して筏を活用し、東京湾上に自由な市民活動の受け皿となる広大なプラットホームをつくる提案など、日本の環境、産業の課題を建築で解決しようとするアイデアもたくさん披露してくれた海法さん。最後に紹介してくれたのが、東京の下町・浅草橋で手がけた卸売店舗のリニューアルの話だ。

「最初にお店を拝見したとき、いたるところに靴下から帽子、洋服まで5万以上の多種多様な商品と大量の段ボールが積みあがっていて、整理しきれない倉庫のような状態でした。予算が非常に厳しいなかでどうしようか悩みました」と海法さん。

クライアントが求めたのは、買付に来る小売店のバイヤーそれぞれの世界観を尊重する店舗、また段ボールや商品が散乱しない機能的な設えであった。海法さんは3つの手法を通して、バイヤーに余計な世界観を押し付けない自然で無垢な店舗空間を作り出した。1つ目は長年にわたって何層にも重ねられた床や壁の仕上げ等を解体したり、窓を全て覆っていた壁を壊して自然光を入れるなど、建物を元々の状態に近づけたこと。2つ目には、リニューアル前に散乱していた段ボールを卸売店舗の要素としてポジティブにとらえ、新聞紙や雑誌を再利用した塗料を一切含まない原紙の段ボールを型からデザインし5万点の在庫を収納する棚をつくったこと。3つ目が、卸売店を倉庫と小売店の中間の位置づけととらえ、多種多様な商品をうまくディスプレイするために、国産のヒノキ材でフレームをつくったことだ。

「さまざまな商品の大きさをチェックし、可能な限り多くの物品が収納可能な段ボール棚とヒノキのフレームをつくりました。それらの配置のしかたを変えることで、プロポーションや仕上げ、自然光の照度分布などが異なる空間を作り出しました。ある場所はギャラリーとして使えたり、ある場所はラウンジといったように、全体を棚で曖昧に仕切りながら多様な使われ方が生まれるスペースにできたと思います」


具体的な建築の技法はもちろん、設計に至る考え方、社会と建築との関係性にまで踏み込んだ海法さんのトークに会場も熱気に包まれた。これからの活躍に目が離せそうもない。

  • 作品例
  • 作品例
  • 作品例
  • 作品例
  • 作品例
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海法圭さんの建築思考に影響を与えた本はこちら

『声の文化と文字の文化』

『声の文化と文字の文化』

ウィルター・J・オング著 藤原書店

「書く」ことと「話す」ことの違いを詳細に分析し、「書く」「読む」ことが人間にどう影響を与えるか考察した本。

『動いている庭』

『動いている庭』

ジル・クレマン著 みすず書房

フランスを代表する庭師の代表作で、庭づくりの実践に導かれた環境観が思想、建築、芸術分野にも刺激を与える。

『身ぶりと言葉』

『身ぶりと言葉』

アンドレ ルロワ=グーラン 著 筑摩書房

人類がいかにして知性を育み、記憶を外部のアーカイブに託していったか。人間の進化の本質に身ぶりと言葉の2つから迫った大作。

『三月の5日間』

『三月の5日間』

岡田利規 著 白水社

イラク空爆・反戦デモを尻目に、渋谷のラブホで4泊5日―表題作のほか、2篇収録。超リアル日本語演劇の旗手によるデビュー作品集。

『人間の土地』

『人間の土地』

サン=テクジュペリ 著 新潮文庫

職業飛行家としての劇的な体験をふまえながら、人間本然の姿を星々や地球のあいだに探し、現代人に生活と行動の指針を与える名著。

『生物から見た世界』

『生物から見た世界』

ヤーコプ・フォン・ユクスキュル 著 新思索社

「新しい生物学の開拓者」と呼ばれたユクスキュルの古典的名著。昆虫や動物など、生物たちが持つそれぞれ独自の環境世界の眺めを紹介。彼らが何を考え、行動しているのかを解明する。

■関連イベント

海法さん紹介の建築家・福島加津也さんが「ひとり」というテーマでトークショーを実施。福島さん選書のフェアも代官山 蔦屋書店2号館1階建築フロアで開催中

建築家による選書棚シリーズ「BOOKS with ARCHITECT」 第11回 建築家・福島加津也と「ひとり」


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海法圭(かいほう・けい)

海法圭(かいほう・けい)

1982年生まれ、秋田県出身。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了後、建築設計事務所勤務を経て、2011年海法圭建築設計事務所主宰。2014年からは東京大学非常勤講師も務める。施主からの依頼のほか、2014年グッドデザイン賞ものづくりデザイン賞:里山十帖(客室1室の改修デザインを担当)、2012年空間デザイン賞入賞:科学未来館企画展、第2回郡山アーバンデザインセンター•コンペティション最優秀賞などの受賞作品も多数。


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声の文化と文字の文化

声の文化と文字の文化

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動いている庭

動いている庭

できるだけあわせて、なるべく逆らわない―これが現代造園の世界に新たな一ページを開いた庭師、ジル・クレマンの哲学である。荒れ地での植物のふるまいをモデルとし、土地を土地のダイナミズムにゆだねつつ、植物を知悉する庭師の手によって多彩で豊かな進化をうながすプロジェクト、それが「動いている庭」だ。クレマンは自邸である「谷の庭」で実験と観察を重ねながら、種の多様性、さまざまなエネルギーの混在、美が展開する庭づくりの技術と管理方法を見いだしてゆく。クレマンにとって、庭は人が驚きと出会う空間、庭の仕事は夢の光景を創り出す営みだ。だからここに収められた文章と写真は、夢を見るために試行錯誤をくりかえす庭師の、思索と実践の記録でもあるだろう。本書は、庭づくりの手引きを越えた、自然と人間の関係をめぐる知恵の宝庫である。クレマンの思想は、生命のゆらぎのなかに生きるわたしたちに多くの示唆をもたらすだろう。

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