【松岡美術館】「今回を逃したらもう一生会えないかも」ではなくて、「またいつか会おうね」という場所―連載第2回

2016.8.9 (火) 07:00

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ロビー600×400

東京・白金台にある松岡美術館

◆連載第1回はこちら↓

【松岡美術館】写真撮影や模写もOK!「小さい頃に来ておきたかった」親しみのある美術館―連載第1回

松岡美術館とは

東京都白金台の「プラチナ通り」から横道に1本入った、閑静な高級住宅街に松岡美術館はある。
この美術館の大きな特徴は何といっても、初代館長・松岡清次郎氏の収集した美術品のみで展示を構成していることだ。
コレクションを貸し出すことはあっても、借り入れは一切しない。そのような美術館は日本では珍しい。
清次郎氏の審美眼によって選び出された様々なジャンルの美術品のなかには洋画があり、中国の陶磁器があり、現代彫刻やエジプトの木棺までもが含まれる。
そんな世界各地、様々な時代の美術に触れることのできる松岡美術館。
他にも鑑賞者にとって嬉しい取り組みをされているが、運営の方々はどのような思いで仕事に取り組んでいるのだろうか?

館長の松岡さん、副館長の黒川さん、学芸員の三島さんにお話を伺い、魅力を解き明かしたい。

松岡さん600×400

 館長の松岡治さん

――連載の2回目と3回目は、松岡館長にお話を伺っていきます。まず、連載1回目でも話に出ましたが、松岡美術館さんは、作品の模写や写真撮影を許可されていますよね。そういった美術館は日本では珍しいと思います。このような決まりは、どのように決まっていったのでしょうか。

松岡:美術館を建てるにあたって、初代館長の松岡清次郎が世界中の美術館を視察して、良い点を取り入れて……それをずっと踏襲しているだけですね。例えばルーブル美術館は、元々写生がOKですし。設立時の40年前ではデジカメはないですから、美術館にカメラを持ち込むのは余程お好きな方ですよね。清次郎にとって美術品は、自分のお金を出して集めた、ある意味私物みたいなものものだから「俺がいいって言うんだからいいじゃないか。海外でもこうやってるんだし」という形だったんです。お客様のご要望から許可するようになったのではなく、元から「いいよ」というスタンスです。

清次郎は、80歳を契機に美術館設立を決意した。

清次郎は、80歳を契機に美術館設立を決意した。

――それは、自分の美術館のコレクションですべて構成しているからこそできる事ですね。

松岡:そうですね。他館の企画展は、写真撮影禁止とかいろいろ制限がある場合も多いでしょうが。美術館っていろいろな考え方があって、国公立の美術館・私立の美術館の違いもありますし、うちみたいに「他から借りません」ってところと「他から借りて見せる」っていうところ、いろいろな美術館があっていいと思うんですね。例えばフェルメールの作品がオランダから来たら「この機会を逃したら二度と観られないかもしれない」という一期一会の大切さがありますよね。うちの場合は展示後、何年かしたらまた同じ作品が出る可能性があるので「また会えるかもね」っていうスタンスなんです。だから、お客様としても「観られてラッキー」というよりは「またくるよ」というもっと近しいものです。所蔵が全くない美術館もありますが、そういうところとは全然ちがうんですよ。それぞれがあっていいと思うし、正直、当館は珍しいものをご覧いただくというやり方はできない。自分たちが美術館として生きていく道が、このスタイルだったんです。そこをどうやってお客様に対して近しいものにしていくかを、僕はいつも考える役割です。


――撮影・模写OKという決まりも、来場者にとって近しい美術館になるために一役買っていますね。QRコード解説文の方は、お客様のご要望があってできたんですよね。

QR写真合成

作品キャプションについているQRコードを読み込むと、解説文を読むことができる。

松岡:そうですが、実はそれだけではないんです。まずはお客様から、解説文はあまり多くないほうがいいというご要望と、もっと解説を読みたいというご要望、2つを同時期にいただきまして。折衷案として、読みたい方だけが読めて普段は隠れている形として、僕がQRコードを提案しました。

もう一つは、運営側の理由なんです。当館は所蔵作品だけで回しているので、企画展ごとの図録は一切作らないんですよ。そうすると、学芸員が勉強したことや新しい発見をお客様にお伝えする機会がないですよね。じゃあQRコードで、自分が勉強してきたことを発表できたらいいね、ということがあって。「これだけ調べたのに発表する場がない」となると、学芸員もモチベーションがあがりませんよね。だから学芸員の発表の場というのが、もう一つの理由です。

――他に、松岡美術館さんの特徴的な決まりってありますか?

松岡:他の大きな特色は、監視員がいないことです。

――監視員をつけないというのも珍しいですよね。もちろん鑑賞者にとっては嬉しいことかもしれませんが、不安はないのでしょうか?

松岡:もちろん、お客様も人だから何をするかは分からないですよね。でも正直な話、今レクリエーションって山ほどあるじゃないですか。その中でわざわざ、ここを選んでくださる方がいらっしゃるだけでありがたいと思っているので。他の美術館だって面白い展示をたくさんやってるじゃないですか。そりゃルノワール展の方がいいですよ、日本に初めて来た作品、っていう方がいいじゃないですか(笑)。でも、そこを行かれたうえでなのかは分からないですが、こっちを選んでくださる方がいる。やっぱりそこには当館への思いがあると思うんです。だから信用してますよ、お預けしてますよっていう姿勢の一つとして、監視員を置かない方針をとっています。

自分がお客様の立場になったら、美術館に行ったときに誰かが座ってじっと見てると、気になりませんか?もちろん作品に万が一のことがあったら困るので、絵画作品の一部はある程度距離が近づくとアナウンスが入ったり、モニターの方でもすぐ分かるようにしてあります。そういう「見えない警備」をする事によって、お客様が作品と向き合うときの距離感も違ってくる。やっぱり長い時間じっくり観たかったりしますよね。美術館は本来、居心地のいい場所であるべきだと思います。

――松岡美術館さんはあまり広告を打たないイメージがありますが、それはなぜでしょう?

松岡:僕は、何よりもまずお客様お一人お一人の満足度やロイヤリティを大事にしたいと思っています。つまり、むやみに入館者を増やすよりは、リピーターとして来てくださるお客様を大事にしようという運営ですね。昔は招待券をまいて、入館者数を増やすという施策もしていたのですが、美術館の雰囲気を優先しようと決めてやめました。それでお客様は減りましたが、アンケートを見ると「静かでゆったり観ることができる」「憩いの場」「癒やされる」などの言葉がとても増えました。宣伝文句に誘われて1回訪れるというより、何度でも「あの作品が観たい」「美術に囲まれてゆっくりしたい」と思っていただけるような場所にしたいです。

最終回へ続く

(文:宮﨑玲子 構成:Tチケット事務局)

松岡美術館

住所:東京都港区白金台5丁目12番6号
東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線「白金台」1番出口から徒歩6分
開館:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
http://www.matsuoka-museum.jp/

Tチケット取扱詳細

■チケット販売期間
~2016/9/23(金)23:59まで

■チケット料金
トートバッグ(大)セット券(一般のみ) 2,900円(税込)
トートバッグ(小)セット券(一般のみ) 2,700円(税込)
※松岡美術館所蔵のディエゴ・ジャコメッティ作「猫の給仕頭」がデザインされた、トートバッグ専門ブランド「ルートート」とコラボレーションのトートバッグ付。

チケット購入はこちら
http://matsuoka1604.tticket.jp/


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