笑える、泣ける、ちょっと不穏!? 小説で見る家族の形

2014.10.20 (月) 00:00

シェア

(c)Monkey Business Images

少しずつ夜が長くなって家にいる時間が増え、家族と過ごす時間が増える秋。代官山 蔦屋書店のブックコンシェルジュ・間室道子氏は、この時期だからこそ“家族”を描いた小説を通じて、親子や兄弟のあり方を考えるきっかけにしてほしいと提案する。

“家族”は古代からの普遍のテーマ

「恋愛だったら別れて次へ、も許されるけれど、家族だとそうはいかない。どんなに嫌でも、別の家族のところへ行って、『まぜて』なんて言うことは簡単にはできませんからね。だからこそ、ひと悶着があったり、屈託があったり、ひと筋縄ではいかない“ぬきさしならない”関係なんです。そこが、古今東西、文学のテーマにされてきた所以です」と間室氏は話す。

さらに今、家族・家のあり方が変わってきており、それが新しい作品の兆候を生んでいるという。例えば、バラエティ番組『テラスハウス』(フジテレビ)でも話題になったシェアハウスは、“家族”ではないが、新しい“家”の形だというのだ。

「他人同士であっても、恋愛だったり、友情だったり、何らかのつながりを持ったまま、同じ“家”で一緒に暮らしていくことには変わりがありません。そこにも、家族同様、“ぬきさしならない”関係が潜んでいます。シェアハウスで起きる事件を描いた『虫娘』(井上荒野 著・小学館 刊)など、そういう新しい“家”を舞台にした作品は現代ならではのもの」(間室氏)

普遍の家族の姿、新しい家の形を含め、間室氏が「ぬきさしならない家族たち」をテーマに選んだオススメ小説は、以下の新刊1冊・既刊5冊。作品を通じて、いろんな家族の形を考え、見つめなおすきっかけになるはず。

プロが選ぶ、オススメの家族小説

家族の絆を考える

どんな家族にも事件あり! ややこしい、けれどいとおしい、普遍の関係性
家族シアター』(辻村深月 著・講談社 刊)

同じ中学に通う“真面目な姉”を“イケてない”と思い、反発するも気にせずにはいられない「妹」、「弟」は地下アイドルの追っかけ、「姉」はビジュアル系バンドのファンという兄弟…etc。どこにでもありそうな家族の、家族のしがらみやいざこざを描いた7編の短編集。 「10月20日発売の新刊。家族だからわかること、ゆるせないこと、血のつながり、趣味の不一致、きょうだいの上と下という関係などなど、時にサスペンスフルに、時に切なく浮上する“家族”の物語です」

家族の死…。大切な人を失って、遺された者たちが思うことは
明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』(山田詠美著・幻冬舎 刊)

ひとつの家族となるべく、二組の親子が東京郊外の一軒家に移り住んだ。澄生・真澄兄妹に創太が弟として加わり、その後、千絵が生まれる。幸せな人生作りの再出発と思われたが、“ある死”をきっかけに一変。家族は散り散りに行き場を失ってしまい…。 「『幸せになる』ことが、目標ではなく不可欠になってしまった家族を、語り手を変えながら描く異色作です」

野心のために家族の絆さえ利用する!
チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』(塩野七生著・新潮社 刊)

15世紀末イタリア。チェーザレ・ボルジアは群立する都市を統一し、自分の王国にせんと野心を抱いていた。父である法王アレッサンドロ6世の教会勢力をバックに、弟妹を利用し、政略結婚によって得た支援を得、力をつけていった彼はヨーロッパを騒乱の渦へ。手段を選ばず駆け抜けた彼の生涯を描く。 「毒殺、近親相姦…etc. 家族に、権力がからむと大変! というのはこの一族を見るとよくわかります」

“父親”という存在に向き合う

子vs父! 避けられない関係だからこそ、わだかまりが生まれる…
チルドレン』(伊坂幸太郎 著・講談社 刊)

主人公の陣内は、家庭裁判所の調査員。「俺たちは奇跡を起こすんだ」と独自の正義感を持ち、周囲を自分のペースに引き込みつつも、なぜか憎めない男だ。彼を中心に不思議な事件が巻き起こる。5つの物語が一つになったとき、予想もしない真実が見えてくる。調査員としての仕事や日常を通じて、陣内が父親との確執を振り切る過程も見どころ。 「個性的なキャラクターがたくさん登場するのですが、なかでも目の見えない永瀬がものすごくいいキャラクター。彼を大好きになる人は多いはずです」

“母親”という存在に向き合う

かつての娘自身のように、母がロック狂に…その姿に思うのは
ロック母』(角田光代 著・講談社 刊)

川端康成文学賞受賞作『ロック母』などを収録した7編の作品集。『ロック母』は、妊娠したが男に逃げられ、未来を決めかねている女性が主人公。シングルマザーになる覚悟で主人公が帰った実家の離島では、大音量でロックを聴く母親が。爆音の防塞のなかに引きこもる母を見ながら、主人公は出産の時を迎える。「田舎のお母さんがある日、ハードロックにハマったら、あなたはどうしますか? お母さんがキッスとかディープパープルを聞きまくっているという状況がおもしろい」

夫婦愛と、男女の愛について考える

家政婦が見た、家族の秘密…幸せそうな風景に潜む、小さな闇
小さいおうち』(中島京子 著・文藝春秋 刊)

昭和初期、少女・タキは赤い屋根のモダンな家に女中奉公に出た。若くて美しい奥様を心から慕う。旦那様と奥様、そして子どもと過ごす平穏な日常に“恋愛事件”と戦争の影がちらついていく。晩年のタキがつづる回想ノートが意外な形で現代に継がれていく。 「東京郊外のかわいらしいおうちで起きる、心ふるえる事件。昭和初期版・家政婦は見た! 直木賞受賞作で、映画化もされました」

(文:高橋七重)

【代官山 蔦屋書店】
ブックコンシェルジュ 間室道子 氏

書店員歴は約四半世紀。2011年に同店のブックコンシェルジュへ。1日1冊、休日は5冊、年間計720冊を読み、シーズンや時勢に合ったテーマで文学コーナーを構成している。『ZIP!』(日本テレビ・毎週木曜出演)などでテレビ出演するほか、雑誌の書評連載も多数。

このコンシェルジュの他の記事を読む  他の代官山 蔦屋書店コンシェルジュの記事を読む  コンシェルジュブログ


関連記事

関連タグ

この記事をシェアしよう。

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

You might Like

レコメンド

Read More

T-SITE LIFESTYLE TOPへ戻る

Access Ranking

ランキングをもっと見る

日本最大級ビアガーデン「ヒビヤガーデン2018」日比谷公園で5月18日から開催

  1. No.1 日本最大級ビアガーデン「ヒビヤガーデン2018」日比谷公園で5月18日から開催
  2. No.2 ミニチュアアーティスト田中智の個展、銀座で4月27日から。指先サイズの世界にときめく
  3. No.3 漫画『スラムダンク』新装再編版が6月1日より刊行開始! 井上雄彦がカバーイラスト描き下ろし
  4. No.4 花火×音楽のエンタメショー「STAR ISLAND 2018」、お台場で5月26日開催
  5. No.5 東京駅の新土産「PRESS BUTTER SAND(プレスバターサンド)」。行列必至の工房をレポート

ランキングをもっと見る

  • TSUTAYAマンガ通スタッフおすすめ

Event

イベントをもっと見る

イベントをもっと見る

Store

SNS/RSS

Facebook

Instagram

tsite_lifestyle
Instagram


T-SITE LIFESTYLE(RSS)