北海道発、“組み立てる”建築がおもしろい!

2014.10.20 (月) 00:00

シェア

代官山 蔦屋書店の建築コンシェルジュ坂山毅彦氏が注目する建築家・髙木貴間氏の作品「house k」。屋根型のモチーフを設計ルールとして“組み立てて”デザインされている。

昨今、一般住居の建築においても、デザイン性と暮らしやすさの工夫を融合させたアート的な要素が増してきている。そんな、暮らしのなかに溶け込んだアート・住居には、作者である建築家のメッセージ、思考回路が潜んでいる。代官山 蔦屋書店の建築コンシェルジュで、自身も一級建築士の坂山毅彦氏は、「建築が盛んで、おもしろいエリアと言えば北海道」と話す。

北海道ならではの傾向とは

寒さが厳しく、屋内で過ごす時間が長くなるため、他の地域に比べて特に屋内の空間に対する工夫が生かされているという。

「窓を大きくできないので、部屋を明るくすることが課題になります。照明を使えば話は早いですが、自然光を取り入れることで、光の一日の変化を楽しめます。雲が晴れればパーッと明るくなり、雲が出てくれば影が生まれ…。白い壁を生かすなどして、部屋全体にその光の変化を反映させています。北海道の建築家たちは、逆境を逆手に取って、いいものを作っているんですね」(坂山氏)

注目の建築家が放つ、“組み立てる”建築

「北海道のアートシーン、全国の建築シーンで名前が出ないところはないほどの有名な建築家・五十嵐淳さんの本。非常に売れてます」(坂山氏)

『状態の構築』(五十嵐淳 著、TOTO出版 刊)。「北海道のアートシーン、全国の建築シーンで名前が出ないところはないほどの有名な建築家・五十嵐淳さんの本。非常に売れてます」(坂山氏)

北海道を代表する建築家といえば、今年開催された「札幌国際芸術祭 2014」にも参加している五十嵐淳氏。坂山氏は、彼に続く建築家として、生まれも育ちも北海道、現地で活躍している髙木貴間氏に注目している。

髙木氏の建築におけるキーワードの一つとして、坂山氏は「組み立てる」を挙げる。

「北海道建築に特有の“光を取り入れる”課題に対し、髙木さんは光を受ける“面”を意識しています」(坂山氏)

屋根のような形、四角の箱のような形など、家ごとにテーマとなる形を設定し、同じ形を反復して使う。そのようなルールに基づいて“組み立て”られた空間は、障子や欄間といった、日本家屋にある細かい部位をはぶいてシンプルにした面で光が拡散され、奥まで行きわたる。


「house k」

「house i」

「寒さの厳しい北海道で“光を取り入れる”建築が試行錯誤されたように、木材や形の合わせ方だけでなく、家を建てるまでの筋道、家の設計、家とそこに住む住人についてのストーリー…髙木さんが建築で行っている“組み立てる”思考回路自体も、日々の生活の知恵の積み重ねの上にできあがったものです」と坂山氏は言う。

献立を組み立てる、旅行計画を組み立てる…etc. 日常で私たちも“組み立てる”行為をしている。

「“組み立てる”のは家を建てることだけではありません。彼の“組み立てる”思考は、私たちの日常生活にも応用できます」(坂山氏)

髙木氏が家という作品を作る上でインスピレーションを得て、思考を“組み立てる”参考になったという本を、坂山氏に髙木氏自身のコメントを交えて紹介してもらった。

注目建築家の頭の中をのぞける3冊

コミックのコマと幻想的なイメージが世界観を構築
コミック『ネジ式』(つげ義春 著、青林工藝舎 刊)

誰もが経験したことがあるような悪夢の世界を再現した漫画作品。「多くの造語を使ってシュールに展開される作品。コマに挿入される幻想的なイメージは、ストーリーをぶつ切りとします。これはコマのある漫画にしかできない表現であり、シュールさを加味するにも大きな役割を果たしています」(髙木氏の選書コメントより)

現実と物語のゆがみ…ストーリーのルールをつくる
小説『変身』(フランツ・カフカ 著、角川書店 刊)

朝起きたら虫になっていた男の話。「ガルシア・マルケスが『物語のつくり方』という著書の中で『現実をどの程度歪めることができるのか。本当らしさの限界は、われわれの考えている以上にひろがりのあるものだ。読者とゲームの規則を決めておく。その規則が出来上がったら変えてはいけない。すべてのキーは大いなるゲーム』と語っています。これはまさに変身の冒頭で具現化されています」(同上)

勝利への戦略を組み立てる
小説『坂の上の雲』(司馬遼太郎 著、文藝春秋 刊)

陸軍の名将・秋山好古、その弟で海軍の名参謀・秋山真之、近代短歌・俳句の開祖・正岡子規…伊予松山出身の三人の青春を描く。「ストーリーの中心は日露戦争で、総力戦で国力の劣る日本の勝利への戦略の組み立て方が描かれています。明治という時代を学ぶ良い教科書だと思います。私は読破後に竹下通りの裏にある東郷神社で思いにふけりました」(同上)

“組み立てる”視点で名作を読み返して、ストーリーとは別に見えてくるおもしろさを楽しみたい。(文:高橋七重)

【代官山 蔦屋書店 関連イベント】

建築家による選書棚シリーズ「BOOKS with ARCHITECT」 第五回 建築家・髙木貴間と「組立てる」

【代官山 蔦屋書店】
建築コンシェルジュ 坂山毅彦 氏

2013年から同店のコンシェルジュに。一級建築士としても活躍し、建築設計事務所を主宰。社会と建築の距離を縮めることを目指した棚作りに取り組む。毎月、自身が注目する建築家が選ぶ本を紹介し、トークショーを行う「BOOKS with ARCHITECT」を企画している。

このコンシェルジュの他の記事を読む  他の代官山 蔦屋書店コンシェルジュの記事を読む  コンシェルジュブログ


関連記事

関連タグ

この記事をシェアしよう。

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

You might Like

レコメンド

Read More

T-SITE LIFESTYLE TOPへ戻る

Access Ranking

ランキングをもっと見る

花火×音楽のエンタメショー「STAR ISLAND 2018」、お台場で5月26日開催

  1. No.1 花火×音楽のエンタメショー「STAR ISLAND 2018」、お台場で5月26日開催
  2. No.2 ミニチュアアーティスト田中智の個展、銀座で4月27日から。指先サイズの世界にときめく
  3. No.3 日本最大級ビアガーデン「ヒビヤガーデン2018」日比谷公園で5月18日から開催
  4. No.4 漫画『スラムダンク』新装再編版が6月1日より刊行開始! 井上雄彦がカバーイラスト描き下ろし
  5. No.5 「ルーヴル美術館展」国立新美術館で5月30日から。《美しきナーニ》ほか約110点が集結

ランキングをもっと見る

  • TSUTAYAマンガ通スタッフおすすめ

Event

イベントをもっと見る

イベントをもっと見る

Store

SNS/RSS

Facebook

Instagram

tsite_lifestyle
Instagram


T-SITE LIFESTYLE(RSS)