『マッサン』竹鶴政孝が留学した、スコットランド「ウイスキーの首都」を訪ねる

2015.2.15 (日) 07:00

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NHK朝の連続ドラマ「マッサン」をきっかけに、ウイスキーに興味を持ち始めた人が増えているらしい。「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝氏をモデルにしたマッサンとスコットランド出身の妻がウイスキー造りに生涯をかける真摯な姿に、気付けば記者も夢中になり、興味が湧いてきた。

ウイスキーといえば値段が高く、バーの高級感は初心者にはどうも敷居も高い。しかし、竹鶴政孝氏も留学したスコットランドの「ウイスキーの首都」でウイスキー造りを学んだ都内ウイスキー講師の佐伯浩平氏は「ウイスキーの知識が増えると、決して高いとは思わないようになります」と話す。

マッサンも感じたであろう、本場のウイスキー造りの醍醐味、ウイスキーの魅力とは。スコットランド現地での佐伯氏の体験談を通じて伺った。

「ウイスキーの首都」で知る、作り手の想い

キャンベルタウンのあるキンタイア半島の夕暮れ

竹鶴政孝氏も留学したウイスキーの都「キャンベルタウン」

スコットランド最大の都市グラスゴー南西に、かつてウイスキーの首都と呼ばれた「キャンベルタウン」という町がある。良質な水と土、輸送のための港といった、ウイスキー造りに必要な要素がすべてそろった、稀有な土地だ。

ウイスキー造りを学ぶため、竹鶴政孝氏はかつて、このキャンベルタウンのヘーゼルバーン蒸留所に留学した。佐伯氏は昨年6月、閉鎖したヘーゼルバーン蒸留所の跡地から300m先に位置する、スプリングバンク蒸留所が主催する5日間のウイスキー・スクールに参加。「もう一度、ウイスキーの首都に」と同蒸留所が始めた短期講習で、世界中からウイスキー愛好家を受け入れている。参加者(生徒)は現地の労働者とともに、製麦から樽詰めまで、本場のウイスキー造りを学ぶ。

かつてのヘーゼルバーン蒸留所の建物 今はビジネスセンターとして活用。竹鶴正孝が実習した。

スプリングバンク蒸留所 外観

スプリングバンク蒸留所 樽置き場

手間暇かける、本場のスコッチウイスキー造り

スプリングバンクの蒸留器

スプリングバンク蒸留所から生み出されるウイスキーは、世界のウイスキー愛好家らに「もしも無人島に一本だけウイスキーのボトルを持っていくとしたら、スプリングバンクにしたい」と言わせるほどの人気だという。その秘密は、昔ながらの製法のようだ。

佐伯氏は5日間を通して、製麦(大麦の浸麦・発芽・発芽を止める熱風乾燥)・糖化・発酵・蒸溜・空樽への充填・熟成庫への樽搬入・熟成樽内のウイスキー原酒の品質検査(アルコール度数確認など)・瓶詰そして ティスティングまでの全工程を学んだ。

「他の蒸溜所では麦芽を専門業者から購入するケースが多いところ、スプリングバンクは製麦から瓶詰までの工程を100%自前で行っていました。しかも麦芽は伝統的なフロアモルティングで行います。温湿度を一定に保つため、耕運機のような機材で時々麦芽をならす作業です。コンクリートの床の上に、水分を含んだ大麦をシャベルや手押し一輪車で敷き詰めていきます。結構な重労働でした」

佐伯氏によると、新しい設備導入や製造工程の見直しについて所長のフランク・マクハディ氏に聞いてみたが、「従来の方法を変えるつもりはない」と答えたとのこと。少量生産で伝統を守り続けることがスプリングバンクの味を守る上で重要だと考えているようだ。

フロアモルティング(伝統的な製麦方法)

浸麦 (大麦を水に浸して発芽に必要な水分を含ませる)

麦芽を温水と混ぜる容器(マッシュタン)の前で説明するフランク・マクハディ氏

ウイスキーは時間を嗜む飲み物

キャンベルタウンのバーにて。皆フレンドリー。

こうして一つの工程にも妥協をすることなく、スコットランド伝統の味を守ってきたスプリングバンク蒸留所が造るウイスキーは、恐らく竹鶴政孝氏に情熱を注いだウイスキーと最も近い味がするのではないだろうか。

「工程やボトルに詰められた長い歳月、作り手の想いを知ってからウイスキーを前にすると、大切に飲みたくなります。日本の宴会文化とともにあるドライビールとは全く文化の異なる飲み物です。一緒に囲む人と、時間の流れを感じながら、じっくり人生を語り合いたくなる。そんな風に時間を嗜むための飲み物なのだと思います」

日本のウイスキー造りの行方は、引き続きマッサン放映でじっくり味わいたい。


日本のウイスキー造りを知るおすすめ書籍

最後に、かねてからの竹鶴政孝氏ファンで「僕の竹鶴さんが皆のものに……」と嫉妬しながらもマッサンの視聴を欠かさないという佐伯氏に、マッサンの世界を一層楽しめる書籍をおすすめしてもらった。

『ヒゲのウヰスキー誕生す』

文:川又一英 新潮文庫 刊

竹鶴政孝氏とリタ夫人の物語を描いた、最初期の作品。「入念な取材に基づいたノンフィクションで、ニッカウィスキー誕生、そして竹鶴さんのリタ夫人への愛情が伝わってくる良書。泣けます」

『美酒一代―鳥井信治郎伝』

文:杉森久英 新潮文庫 刊

サントリー創業者である鳥居信治郎氏の生涯を描いた書。「ウイスキーファンならずとも、時代を見据えて道を切り開く人物を描いたビジネス書としても楽しめます」

『ウイスキーは日本の酒である』

文:輿水精一 新潮文庫 刊

3000ほどの香りを一瞬にして嗅ぎ分けられるという、サントリー元チーフブレンダーの輿水精一氏が、日本ならではのウイスキー造りの歴史と魅力を語る書。「日本にウイスキーをもたらしたのが竹鶴政孝氏なら、発展させた人は輿水精一氏。日本人にこそ判別できる香り、旨味といった日本人の感性を、ウイスキー造りに生かしてきた歴史がわかる書です」

(文:山岸早瀬、取材協力:BAR SAWA)

【取材協力】ウイスキー講師 佐伯浩平 氏

中目黒の「BAR SAWA」が主催するウイスキーセミナーシリーズ「Red rose」で入門編を担当。ウイスキーに馴染みのない人達に分かりやすく、その魅力を伝える。大学・大学院時代は英国カーディフ大学で国際ジャーナリズムを専攻し、修士号取得。外資系企業でグローバルビジネス構想を担当し、翻訳・通訳業務も行う。 スコッチウイスキー「ボウモア32年」に衝撃を受け、ウイスキーの魅力に開眼。以来、国内外の蒸留所を巡る。2014年にはスコットランドのスプリングバンク蒸留所にてウイスキー・スクールに参加。スコッチ文化研究所会員。


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朝ドラマで話題!男らしい生き方からウイスキーの味わい方まで、“マッサン”が愛した本物とは?常に本物を愛し、ウイスキーを、経営を、家族との団欒を全力で愛しぬいた竹鶴政孝を、孫の目から描く!

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