万城目学のご当地限定本に温泉街滞在型アート!? 歴史ある城崎温泉が「本とアートの街」に

2015.5.12 (火) 16:41

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石造りの太鼓橋がかかる川辺に連なる柳並木を、浴衣を着た人々がカラカラと下駄を鳴らしながら歩いていく――。

1300年前の奈良時代に端を発し、文豪・志賀直哉の名作『城の崎にて』で知られる城崎温泉。重ねた歴史にふさわしい風格が漂う温泉街だが、ここ数年、新しい風が吹き込んでいるらしい。


城崎温泉でしか手に入らない“ご当地小説”が豪華すぎる!

「2013年で、志賀直哉が城崎温泉を訪れてから100周年を迎えました。これをきっかけに、若い世代の方にも『文学の街』を楽しんでもらいたいと思っています」と話すのは、志賀直哉が投宿した「三木屋」のご主人・片岡大介氏。

片岡氏もメンバーとして活躍する、旅館の若主人たちで組織する「城崎温泉旅館経営研究会」が立ち上げた出版レーベル本と温泉」が企画したのは、城崎温泉限定、しかも旅館などでしか手に入らない“ご当地小説”だ。

2013年9月から2冊が発刊されているが、いずれも現地に行ってでも手に入れたいほどの魅力あふれる内容なのだ。

名作を徹底的に解釈した現代版!
志賀直哉「城の崎にて」「注釈・城の崎にて」箱入二冊組

  

まずは“現代版”として蘇らせた「城の崎にて」。

「城の崎にて」は、1907 年に発表された志賀直哉が城崎に滞在した記憶を記した短編。1903 年、東京で山手線にはねられて怪我をした志賀直哉は、治療のために城崎を訪れる。そこで小さな生きものの命に見た自然感を記した物語だ。

わずか十数ページの小説と、注釈を加えた “解説編” を合わせ、2冊組として仕上げている。

「注釈を担当したのは、元UTRECHT代表で、新しい本との関わり方の形を提案している江口宏志さんです。なぜ志賀直哉が『電車に轢かれる』ということが起こりうるのか……といった細かいところまで時代背景などを徹底的に解説しています」(片岡氏)

人気作家の書き下ろしを、温泉に入りながら読めるぜいたく!
万城目学「城崎裁判」

  

カバーはタオル。「本と温泉」マークを分解構成して、温泉の雰囲気をグラフィックとして表現したオリジナルだ

耐水性の高い紙「ストーンペーパー」を使い、温泉にゆっくりと浸かりながら、浸かっているその温泉の物語に浸たることができる

次は現代作家が城崎を舞台に描いた物語。「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「偉大なる、しゅららぼん」などで知られる人気小説家・万城目学が志賀直哉の足跡を追体験して執筆した書き下ろし新作だ。志賀直哉が「城の崎にて」の中で投石によって死なせてしまったイモリへの “殺しの罪” と、小説家の創作の源泉を探る温泉奇譚。

「万城目さんは2013年12月と2014年5月に城崎に滞在し、外湯を巡るなどした体験をふまえて一年間かけて作品を仕上げました」(片岡氏)というから、その“ご当地度”は推して知るべし。

装丁にもぜひ注目を。ブック・ディレクター幅允孝氏(BACH)が編集し、長嶋りかこ氏が装丁を手掛けており、紙は「ストーンペーパー」という撥水性の高い紙、カバーはタオルになっている。なんと、温泉に入りながら読めてしまうのだ!

今後も新作を予定しているというから、期待せずにはいられない。なお、2作品とも5月14日(木)から開催される代官山 蔦屋書店の「代官山BOOK DESIGN展2015」でも冊数限定で販売される。

温泉街でリアルタイムに生み出されるアートがおもしろい!

(C)西山円茄

6月5日〜7日に公演予定の平田オリザ(KIAC芸術監督)唯一の自伝的戯曲『冒険王』。5月10日から『新冒険王』滞在制作のため、オリザ氏はじめ青年団がKIACに滞在している

「作家・イン・旅館」を経て新しい“温泉地文学”が生まれた一方で、2014年4月には日本最大級の舞台芸術のアーティスト・イン・レジデンス施設「城崎国際アートセンター」がオープン。文筆家や芸術家を多数迎え入れてきた歴史にちなみ、世界各国からアーティストやカンパニーが訪れ年間を通してアーティスト・イン・レジデンスのプログラムを行っている。

  

2015年4月にはライブラリーもオープン。動く本棚をメインに、幅氏が選書している。動く本棚は温泉街にも繰り出し、温泉客を楽しませてくれる。


さらに2015年4月からは、“温泉地文学”や「城崎国際アートセンター」のライブラリーを手掛けた幅允孝氏が地域プロデューサーに就任し、今後、城崎のまちを盛り上げていくとか。

「温泉街としての古き良き雰囲気と、新しい文化の融合を楽しんでほしいですね」と片岡氏は話す。ホタル飛び交う6月、花火を平日毎日楽しめる夏休みシーズン……四季折々の温泉街の風情に新たな楽しみが加わり、進化し続ける城崎温泉から目が離せない。

◆あわせて読みたい

>代官山 蔦屋書店が選ぶ、おもしろい日本のブックデザイン。表紙がしおりの本から春画のデザイン本まで
>代官山 蔦屋書店が選ぶ、おもしろい海外のブックデザイン。映像×写真の作品集、1950年代の『VISIONAIRE(ヴィジョネア)』まで


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