話題の「タイニーハウス」って? 本場アメリカ西海岸の暮らしが日本でもブームに

2015.5.25 (月) 22:02

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最小サイズの住まいを自分で作る、「タイニーハウス(tiny house)」ムーブメントが日本にもやって来た。数年前から北米を中心に広がる動きで、大量生産・大量消費社会へのカウンターカルチャーに位置づけられる。小屋のようなサイズのシンプルだが自分らしい住まいと暮らしを、セルフビルド(自作)するのが基本だ。

受講者と一緒にタイニーハウスを作るワークショップなどを開催する、Tree Heads & Co.代表で、北米のタイニーハウス事情に精通するタイニーハウスビルダー・竹内友一氏に話を聞いた。

タイニーハウス・ムーブメントとは?

竹内氏らが手がけた山梨県富士吉田市にある小さなツリーハウス。オーナーは週末や休暇だけここで寝泊まりし、バーベキューやテラスで森林浴を楽しむ。取材もこちらで行った

――タイニーハウスとは、どんな家ですか。

タイニーハウスとは直訳すると「小さな(タイニー)家(ハウス)」となるように、小屋やボートハウス、ツリーハウス、トレイラーハウスなどのことです。タイニーハウス・ムーブメントというのは、そうした家を自分でカスタマイズして、その人それぞれにとっての心地よい暮らしをダウンサイジング(縮小)しながら探求する運動のことです。2008年にアメリカのリーマン・ショックをきっかけに、行き過ぎた大量生産・大量生産社会を見直すカウンターカルチャーとして、北米を中心に登場しました。

――竹内さんとタイニーハウスの出会いは?

もともと僕はツリーハウスを全国あちこちに作る仕事をしていたのでのですが、移動することが多くて、行った先々で暮らしがぐちゃぐちゃになっちゃっていたんですね。外食をしなきゃいけなかったり、寝る場所が決まらなかったりして。それで、小さな家に自分の必要なものだけ入れて、引っ張って暮らせたらいいなと思って調べていたところ、タイニーハウスのことを知ったんです。

先駆者のディー・ウィリアムスをはじめとするタイニーハウスで暮らす人たちのことを知るうちに、僕が普段から考えていたことと似ているなとか、自分の生活って無駄が多いなと感じるようになって。去年はアメリカに行ってディーのワークショップに参加して、先月は彼らが実際にどんな暮らしをしているかを知りたくて、北米でタイニーハウスに住む人々を訪ねてまわる映像プロジェクトを行ったばかりです。


タイニーハウスの先駆者であるディー・ウィリアムス氏と。心臓の病気が見つかったことからシンプルライフに転換し、友人宅の裏庭にタイニーハウスを建てて生活する。竹内氏はディーさんのTEDxの講演での迫真のスピーチに感動し、アメリカを訪れ、彼女のワークショップに参加した

究極の住まいをゼロから手探り

――なぜトレイラーハウスを買わず、自分で作るのですか。

アメリカではずいぶんメディアに取り上げられて、今ではタイニーハウスの完成品やキットも販売もされていますが、僕としてはタイニーハウスの本質は、セルフビルドにあると思っています。セルフビルドすることで、自分の本当に必要としているものを、自分自身が知っているつもりで知らなかったことを知ることができる、貴重な体験になるのです。

作っていく段階で「僕はどれくらいご飯を食べるんだろう」「冷蔵庫はどれくらいの容量が必要なんだろう」「どのくらい排泄をして、それを流すためにどのくらい水が必要なんだろう」と考えて、その答えを出していかなければならない。哲学とまでいかなくても、自分のことを考える時間になります。「どうしてこんなことも知らないんだろう」という、葛藤も出てきますね。

――アメリカにはどんなタイニーハウスがありましたか。

2人で一緒に過ごす場所として作ったカップルや、旅をしながら各地の暮らしを伝えているジャーナリストなどによって、いろんなスタイルがありました。

個人個人の生活や考え方が、家に表れるんですよね。空間の作り方や、時間の使い方、好きな色使いとか。ものもいっぱい置けないので、一個一個、慎重に選ぶじゃないですか。グラスは10個じゃなくて2個しか置けないところには、やっぱり好きなものを置きますよね。

だからタイニーハウスって、作ること自体が目的というよりも、一度ダウンサイズしてそれから自分にとってちょうどよいところまで積み上げていくことで、自分にとっての心地よい住まいや暮らしを知ることができる。そういうものだと思っています。


手放すことで世界が広がる

――日本でタイニーハウスをつくるワークショップを主催されたそうですね。

そうですね、去年の10月から3カ月間、山中湖で。参加者は12人いたんですけど、「そろそろ退職して自宅は子どもに譲って、自分はタイニーハウスに移住を」という人もいたし、「田舎を出る予定だけれども、どこに住んでみたいかまだ決まっていないのから、まずはタイニーハウスに」、「都内に住んでいるので、自分の暮らしをちゃんと考えてみたい」とか、いろんな人がいましたね。

暮らしって、いろんな職種や考え方のなかにあるのに、これまでは家はありものの箱に自分がフィットしなければいけなかったんですよね。セルフビルドすることで、飲水はこうしたい、食べ物はこうしたいと、お風呂はシェアでもいいとか、自分の暮らしをつくりあげていくことができます。考えや生活が変わっても、自分で作ったものなので、自分で変えることもできます。

――竹内さんにとって、タイニーハウスの魅力とは?

小さくすることで、これまでだらだらと無駄にしていたものが、だんだん自分の元に戻ってきて、ラクになるところです。無駄なところが削ぎ落とされると、与えられる仕事をこなして、そこにあるものを食べて、というなんとなく受動的だったことが、能動的になって、生活がキラキラしてくるんですよね。

日本発タイニーハウスを世界に発信?

――タイニーハウス・ムーブメントのこれからに期待することは?

これまで海外事例の紹介ばかりだったんですけど、日本にもこういう意識の人が増えているし、日本ならではのタイニーハウスが出てきたらおもしろいですね。地域によって、天候も手に入る材料も違うじゃないですか。いろんな国でアイデアを紹介し合いながら、それぞれが、自分らしいライフスタイルを選べたらいいですよね。

北米にいくと、みんなに「日本人こそタイニーハウスの先輩じゃないか」と言われるんですよ。カプセルハウスとか東京のワンルームマンションとか、一つの狭い空間をうまく多機能に使う文化を、もともと持っています。

ただ日本人って、狭いところに住みたくて住んでいるわけじゃないと思うんですよね。やむを得ず、というか。タイニーハウス・ムーブメントを日本に持ってきておもしろいと感じているのは、そういう小さい空間に住まわされている感じゃなくて、自分で選んでいるというか、ポジティブに狭い空間に暮らせる運動になったらいいですね。

――読者にメッセージをお願いします。

僕は無理に皆にタイニーハウスに住んでほしいとは思っていなくて、それぞれにとって適正な大きさの、適正な量のものに囲まれ暮らすのが、一番いいと思っています。ただそれを見つけるためのきっかけに、タイニーハウスはなれると思います。

やってみて、自分では嫌だなと思ってもいいんですよね。「やっぱりトイレはちゃんと流れないと気持ちが悪いよね」とか(笑)。そういうことすら、今まで考えたことがないと思うんですよね。自分がそうだったですけど、やってみてわかることって、いっぱいあって。

全部自分で作ろうとしなくても良くて、電気のことは詳しい人に聞こうとか、材木のことはあいつが詳しいとか、同じ意識の仲間で助け合えばいいんです。だからタイニーハウスはDIY(自分でつくる)ではなくて、その延長にあるコミュニティビルド(みんなでつくる)でもいいんじゃないかと思っています。

僕もまた、9月から八ヶ岳でワークショップを開催する予定です。参加者が作ったタイニーハウスは、皆が泊まれるようなモデルルームにしようかなと。いろんな人につくって、泊まってもらって、家を消費するものから、こんなのいいな、つくってみたいなと思うものにできたらいいですね。

『シンプライフ・小さな家と大きな暮らし』制作プロジェクト支援募集

(文:山岸早瀬 、photo : Gabriel Craft(gabrielcraft.me))

【プロフィール】竹内友一 氏

1974年生まれ、東京在住。タイニーハウスビルダー。 20歳で渡欧、イギリスやオランダのクリエイターの下で働く。8年後帰国、環境学習などソフトウェアのデザイン、人と自然をつなぐ体験プログラムの制作を行う。2010年、株式会社Tree Heads & Co.設立。全国でツリーハウスの制作やタイニーハウスのワークショップ開催、発信活動などを行っている。

Facebook「Simplife」 『シンプライフ・小さな家と大きな暮らし』制作プロジェクト支援募集

◆あわせて読みたい

>話題の「タイニーハウス」最前線! アメリカ西海岸の小さくて豊かな暮らしぶりを拝見


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