住まい、暮らし、仕事……離島で暮らすために、必要なことは? 『あたらしい離島旅行』発売記念トークイベント

2015.8.17 (月) 00:59

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『あたらしい離島旅行』発売記念トークイベント 会場風景

昨年、代官山 蔦屋書店で「島で暮らす、ということ」をテーマに、島で生まれ島で育った人たちの話を中心としたトークショーが行われた。今年は書籍『あたらしい離島旅行』(WAVE出版)の発売を記念して、ゲストに著者のセソコマサユキ氏と『季刊 ritokei』鯨本あつこ編集長を招いて、再び島のトークショーを開催。2015年6月24日のテーマは、「移住」。ボルネオ島で暮らした経験もある代官山 蔦屋書店の旅行コンシェルジュ・荒木左地男が司会をつとめ、「島に移り住む、ということ」について来場者とともに考えた。

ふたりが“島”に出会ったきっかけは?

セソコマサユキ氏

セソコマサユキ氏

セソコマサユキ氏(以下、セソコ): 僕の場合は、30歳を超えてふと立ち止まったときに、仕事と暮らしのバランスを見直してみたいという思いが芽生えたのがきっかけです。沖縄は「セソコ」という名字のルーツがあることや、旅行なんかで行って肌に合うのを感じていたので、思い切って場所を変えて、暮らしと仕事をもう一度考えてみようと思い、3年前に本島に移住しました。沖縄でも東京と同じように編集の仕事をさせていただいていますが、東京というか都会とは少し違った仕事のスピードだったり、自然との近さだったり、人との距離感なんかが僕にはすごく合っていて、居心地が良く暮らさせていただいているという感じです。


鯨本あつこ氏

鯨本あつこ氏

鯨本あつこ氏(以下、鯨本):私は、大分県日田市という海のないところで生まれ育ち、仕事で上京しました。東京では社会人スクールに通い、そこで編集者の仲間たちと出会いました。たまたまそのスクールの同級生に、瀬戸内海の大崎上島という島に移住する方がいたんです。それで、そこに皆で遊びに行ってみようとなって、観光名所やにぎやかさはないものの、全く知らないおじさんが「これうちの庭で採れたミカン」と言ってミカンをくれたりして、素朴な島の雰囲気がすごくあたたかかったんです。編集者の仲間たちとは「おもしろいメディアを作りたいね」という話をしていたので、「島っていいんじゃない」という話になり、ないなら作れば良いというところから「離島経済新聞」というサイトを作り、その1年後に「季刊リトケイ」という新聞の形のメディアを作ることになりました。


いま注目を集める島はどこ? 最近の離島事情について

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

荒木:離島人口は約70万人と言われますが、今人気がある島は?

鯨本:住民登録がある418の島で、一番人口が多いのが約14万人の淡路島。その次は、奄美大島の約7万人。宮古島や佐渡島、対馬、石垣島が3〜6万人。小規模だと、人口100人だとか、2~3人なんて島もあります。人気というか、人口が増えているのは、石垣島や小豆島ですね。

荒木:それは、島内の自然増加ですか? それとも、移住者が増えている?

鯨本:石垣島は、もともと移住者(開拓者)が歴史を作ってきた島でもあるので、移住者の増加だと思います。ほかに人口が増えている島では、島根県の海士町(あまちょう)は有名で、増えても減ってもいない、というところでいうと、小笠原諸島の父島なんかがあります。でも、日本全体の人口も減少傾向なので、当然、減っている島が多いですね。

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

セソコ:取材を通して、石垣島や宮古島は、自分でお店だとか、何か事業をやりたいと思っている人が多い印象を受けました。淡路島は、橋で都会と繋がっているので、そういう意味では別格の様な感じがします。自然も近くにあるけど、都会にもすぐ繋がっているという面では移住しやすく、利便性という意味では移住のハードルが低いように思います。

鯨本:ハードルがとても高いけれど移住者が増えているのが、鹿児島と奄美の間にある“日本一長い村”トカラ列島だとか。

荒木:人口が増えているのには、何か理由があるのですか?

鯨本:これ以上人口が減ると、学校や病院がなくなるようなギリギリの人口規模なので、移住者を増やそうとする自治体の施策もありますね。でもやはり人気の島はある程度、観光などのニーズの多い島で、交通の便がそんなに悪くないという特徴があります。ニーズが多いので、いろいろなインフラがある。

セソコ:ニーズが減ればインフラが不十分になるし、人口が少なければ商圏も小さくなるので、そういう意味でも島が小さくなるほど移住のハードルが上がっていくのかなと思います。

離島移住にまつわるQ&A

イベントは、離島への移住を考えているという参加者が大半を占めた。とはいえ、移住に関しての明確なマニュアルが存在する訳ではない。イベント後半には、離島での「住まい」「仕事」「暮らし」について参加者が抱いている疑問や質問に対する質疑応答が行われた。

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

Q. 離島での住まいは、どの様にして見つけるのでしょうか? 新築で建てたり、リノベーションをしたりするのですか?

鯨本:石垣や宮古あたりになると新築という選択肢も出てきそうですが、本当に小さい島だと集落のみんなで作る、なんて言い始めるところも(笑)。よく聞くのは、島にある空き物件を何とか借りるという話。あとは町営住宅、村営住宅などが一番手堅いかな。

セソコ:僕が取材した宮古島のすぐ近くの来間島という小さい島の話なんですが、宮古島って今、伊良部大橋が繋がったりして、人気が出ているので空き物件自体がすごく少ないらしいんです。来間島で喫茶店を営んでいる木村くんという人は、最初、市街地でアパートを借りて住んでいたけれど、もっと田舎に暮らしたいと思って、自転車でいろんな集落をぐるぐる回ったそうです。彼は、空き物件を見つけては地域の人に声をかけて「この持ち主は?」と話を聞いて、直接連絡するというプロセスを経ていました。

鯨本:それは良いですね。そもそも不動産屋がない島が多くて、東京の離島でも不動産屋があるのは、八丈島と伊豆大島だけ。不動産屋がない島だと、やっぱり集落の人と何回もやり取りをするうちに、ようやく物件を借りることができたりだとか、そういうところがありますね。

Q. 離島での、仕事探しのポイントは?

セソコ本島と離島では全然事情が違うと思います。本島や石垣島にはいるけれど、宮古島にはほとんどライターさんとかカメラマンさんはいないし、それはやっぱり需要というか仕事自体がないからだと思います。本のなかで紹介した人たちは、ほとんどが自分で何かをやっているような人たち。探すというよりは、この島に移住して自分で何ができるかを考えて、できることを仕事として自分で生み出していく、という考え方の方が良いのかもしれません。

鯨本:離島で暮らしている人は、複数の仕事をしている人がすごく多いんです。しかも、都会のようにパッケージングされたような仕事じゃない。週何日働いて、何時から何時で、ボーナスがいくらで、日々どういう業務をするか……みたいな決まりきった仕事はすごく少ないんですよ。農業、兼漁業、兼役場みたいな、お金を手に入れることができるだけの自分の能力を色んなところで小出しにして、起業とまではいかなくても個人事業主でやっていく、という感じの方が本当に多いです。

 「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

「あたらしい離島旅行」より(撮影・セソコマサユキ)

Q. 離島の“夜遊び事情”を教えてください。

鯨本:夜は何をしているんでしょうかね、みなさん。毎日、人の家で飲んでいるって島もありますし(笑)。夜の店がない島もありますからね。 

荒木:与論なんか毎日、与論献奉なんて言ってお酒を飲みますよね。

鯨本:そうそう。皆さん、与論献奉って知ってますか? 皆で盃を回して、盃が回ってきた人は口上を述べて一気飲みして次に回す、というのを延々繰り返す。与論島には「有泉」という名の酒蔵があって、このお酒は20度と低めなんですよ。だから、一気飲みしても大丈夫(笑)。お酒の飲み方と言えば、与論島と宮古島です。

セソコ宮古島でも、親が順番に盃を回して、一人ずつ口上を述べる「オトーリ」がありますね。

鯨本:あれはある意味、すごく理にかなっていると思います。口下手で目の前に何人もいると喋れないなんて人がいるじゃないですか。でも、順番に話をしていくから、みんな、まんべんなく喋られる。良いシステムではありますよね。島での飲み会は、結構重要ですからね。

荒木:そういうのをきっかけに、島内でネットワークを構築していくとうことですね。


質疑応答では、「島への移住」を実際的に検討している参加者が多いせいもあって、移住への心構えかから移住してからの人付き合いまで、かなり具体的なところまで話は及んだ。また、人によって島に対するアプローチが全く違うのも印象的だった。「ノマド」という言葉がすでに古く感じる位、何処でだって仕事をして、生活ができる時代だ。その中に、「島で暮らす」という選択肢を加えてみても良いのではないだろうか。

(文:岸田由佳)

セソコマサユキ

編集者・ライター。2012年、沖縄への移住を機に独立。さまざまな媒体での編集、ライティングのほか、イベントのディレクションなど独自の目線で沖縄の魅力を発信中。著書に『あたらしい沖縄旅行』『あたらしい離島旅行』(ともにWAVE出版)がある。

セソコマサユキ ウェブサイト

鯨本あつこ(いさもと あつこ)

有人離島専門のウェブメディア『離島経済新聞』、タブロイド紙『季刊リトケイ』編集長。地方誌編集者、経済誌の広告ディレクター、イラストレーター等を経て2010年に離島経済新聞社を設立。2013年TED×Tokyo登壇。美ら島沖縄大使。

『離島経済新聞』


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