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水野学の「クリエイティブ塾」レポート! デザイナーと企業の間にある大きな川に“橋”を架ける

2015.9.23 (水) 21:06

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クリエイティブ塾

2015年8月31日に代官山 蔦屋書店で開催されたクリエイティブディレクター水野学氏(good design company代表)による「クリエイティブ塾」。観覧者60人の応募に対して100人以上から観覧要望があったため、当日の会場フロアは身動きが取れないほどのすし詰め状態に……。

大変な熱気に包まれた中で行われた同イベントは、くまモンの制作秘話、水野さんがデザインをするうえで大切にしている法則、ご自身が手がける2つのブランド「THE」と「STALOGY」に至るまで、90分間ノンストップで繰り広げられた。ここに、残念ながら聞き逃してしまった人達のためにクリエイティブ塾の抄録をまとめる。

デザインと経済が結びついていない現実

水野 学氏

水野 学氏

水野学:僕が普段、美大ではなく慶應大学で教えているのには理由があります。それは「デザインと経済が結びついていない」と感じているからです。ここでいきなりですが、本日の結論です(笑)。世の中には、デザインを必要とする人(企業や団体、お店)とデザインをする人(デザイナーなど)がいます。

この両者の間には大きくて、流れの速い川があると僕は思っています。なぜこのようなことが起こるかというと、お互いに丸投げしあっているから。前者はコンサル会社などを入れて、1年間かけてマーケティング資料をつくって後者に投げます。しかし、そんなに大切に作られた資料も、そのほとんどが、お互いの間に流れた「川」を渡ることができません。前者の意図を汲み取りきれず、売上にも繋がらない提案が後者から出され、その良し悪しが吟味されないまま世の中に出てしまう。

現在、このような不幸なことが各所で起こっています。では、どうしらよいのか? 僕は、どちらか、または通訳のような第三者がその川に“橋”を架けて、歩み寄る必要があると思います。そこで、今回のクリエイティブ塾では、「どうしたら、この橋を架けることができるのか」ということについて、事例を交えながら話していきたいと思います。


くまモンは思いつきではなく理詰めでつくられている

くまモン
くまモン
くまモン

最近、「水野学はくまモンをつくっていない」という噂が流れているようですが(笑)、ちゃんと僕自身がMacでつくりました。「くまモン」という名前にした理由は2つあります。じつは、県名に動物が入っているのは群馬、鳥取、鹿児島、熊本の4県だけで、さらに動物の名前通りに読むのは熊本だけ(他は、「ま」「とっ」「か」)ということが1つ。

もう1つは、熊本には兄貴者(あんじゃもん)のように、「~もん」という方言があるので「熊本者」で「くまモン」にしたんです。ではなぜ、黒い熊にしたか? ここらへんからクリエイティブにブリッジ(橋)を架けていく方法を何となく説明しはじめています。黒い熊と茶色い熊(写真で提示)、どちらのほうが日本の熊っぽいと思いますか?

木彫りの熊の影響か、黒い熊のほうが日本の熊っぽいですよね。ついでに言うと、黒いキャラクターってあまり存在しないんですよ。あと、くまモンの頬は赤丸になっていますが、これは友人の小林賢太郎さん(ラーメンズ)が「アンパンマンやピカチュウなど、顔の中に赤丸があるキャラはヒットする」と以前言っていたのを思いだして、赤くしました。

つまり、くまモンは神がかり的に、ある日突然ひらめいて生まれたキャラではなくて、ちゃんと理由があって、熊本「らしさ」を追求した結果生まれたキャラだということなんです。この「らしさ」という言葉が今日のポイントになるので覚えておいてくださいね。


「シズルの法則」を徹底しているから売上が伸びる

僕は「シズル」という言葉を拡散しているのですが、これは、もともとは肉がおいしそうにジュージュー焼ける様を指す言葉です。そこから派生して、「モノの本質的な魅力」を僕はシズルと呼んでいます。ここで言うシズルは、先ほどポイントと言った「らしさ」とイコールのものだと思ってください。

シズルについてもう少しわかりやすく説明します。たとえば、「春と聞いて思い浮かべるものや色は?」と聞かれたら、日本人ならば「桜」であり、色は「淡いピンク」です。これは僕が決めたわけでも、コントロールしているわけでもなく、9割以上の人がそう答えるんです。つまり、僕らは色や形など、さまざまなものから自然にシズルを感じ取っています。

商品ブランドや人の「シズル=らしさ」を見つけることはとても重要です。お客様の信頼を得られたり、欲しいと思ってもらえる商品のベースには、必ず「シズル」がある、と僕は仮説を立てています。

センスは後天的なもので知識の集積で身につく

センスは後天的なもので知識の集積で身につく

一度は観たことがある名画でも、知識がないと作家の名前やタイトルは意外と出てこないもの

よくクライアントから「自分にはセンスがないからデザインはわからない」と言われることがあります。でも、センスは特殊能力でも天賦の才能でもなくて、知識の集積によって身につけることができる後天的なものです。つまり、センスがないと思っている人の大半は、デザインに関する知識のストックが圧倒的に足りないんですね。

センスを身につけるためには、知識を身につける必要があります。ある特定のジャンルの知識を身につけたいと思ったら、次の順番でやってみてください。①王道、定番のものを知る、②流行のものを知る、③共通項や一定のルールを見出す。王道を見つけることができれば自分なりの判断基準を得ることができます。

デザインを必要とする人やデザイナーは幅広く知識をもつ必要があるので、ジャンルを横断して読書することがとても重要です。そのためには自分の好きなジャンルの本ばかり読んでいてはダメです。たとえば、僕は女性誌をたくさん読むのですが、女性にはぜひ男性が好んで読む雑誌……モデルガンの月刊誌とか!(笑)を、読んでもらいたいですね。

どうしたら両者の間にある川に橋を架けられる?

どうしたら両者の間にある川に橋を架けられる?

本日のまとめです。デザインを必要とする人とデザインをする人の間にある大きな川に“橋”を架けて、お互いが歩み寄るにはどうしたらいいのか?

デザイナーはデザインの本ばかり読んでいても意味がありません。社会は「人・お金・モノ」の3つで成り立っているので、心理学や経営の本を読んでみてください。僕は学生の頃、本屋さんに足繁く通って色々な本を読んでいました。センスは後天的に、知識の集積によって身につくものなので、今その経験がとても役に立っています。

デザインを必要とする人にはもう少し橋を渡ってきていただきたいと思います。興味がなくてもデザイン関係の本を手に取ってみていただきたい。もう1つ、デザインというと見た目やディテールをどうするか、といった話になりがちですが、どのような「らしさ」を目指すのかということをデザイナーに伝えてあげてほしいと思います。

どうかみなさんデザインを毛嫌いせずに、触れてみて、さらに世の中に広げていただければと思います。


THE

THE

THE

THE

STALOGY

STALOGY

水野学さんが手がけた2つのブランド「THE」と「STALOGY」。「THE」はお皿やコップなど、各ジャンルのこれこそはと呼べるアイテムを企画・開発・セレクトするブランドであり、「STALOGY」は高技術・低価格を追求した文具ブランドだ。現代は、差別化が声高に叫ばれ、みんなが欲しがるど真ん中のものがない「市場のドーナツ化」が起きていると水野さん。そこで「スタンダードで良質なものをつくろう」と考えたことからスタートしたという。「STALOGY」は代官山 蔦屋書店でも購入することができる。


水野さんが提唱する「橋を架ける理論」は、デザイナー以外にも応用できる普遍的な話だ。料理人であれば食材とお客様、役者であれば脚本とお客様――どのような仕事でも本質にあるのは、何かと何かの間に橋を架けることではないだろうか。そう考えると、仕事で悩んでいる人は「シズルの法則」を徹底することで、突破口が見えてくるかもしれない。

(文:廣田喜昭)

水野 学(みずの・まなぶ)

1972年東京生まれ。good design company 代表。慶應義塾大学特別招聘准教授。クリエイティブディレクターとして、ブランドづくりの根本からロゴ、商品企画、パッケージ、インテリアデザイン、コンサルティングまで、トータルにディレクションを行っている。

「THE」公式サイト
「STALOGY」公式サイト


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