【インタビュー】水野学が手がけるブランド「THE」、創業の地・代官山で新展開!?

2015.10.19 (月) 21:51

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THE

THE GLASS

クリエイティブディレクターの水野学さんが中心となり、3年前に立ち上げたブランド「THE」は、あらゆるジャンルのメーカーや企業と共に「定番」とは何かを考え、この世界にない新しい定番をつくることをコンセプトにしている。そのTHEが10月23日(金)~11月30日(月)に代官山 蔦屋書店で行われるイベントDDD(DAIKANYAMA DESIGN DEPARTMENT)の中で、ポップアップショップを出店する。

都内に直営店を構えていることもあり、ポップアップショップを出店する印象があまりないTHEというブランドが「なぜ、出店に至ったのか?」という真相を探るべく、代官山 蔦屋書店ビジネスコンシェルジュの渡部彩氏がTHEのメンバー4人(水野学さん、中川淳さん、鈴木啓太さん、米津雄介さん)に直撃取材を敢行! 取材はTHEの拠点がある代官山のオフィスにて行われた。

THEの4人はこうして出会った

THE

左から、米津雄介さん、鈴木啓太さん、中川淳さん、水野学さん

THEは、トータルディレクションを水野学さん、プロジェクトマネジメントを中川淳さん、プロダクトデザインを鈴木啓太さん、プロダクトマネジメントを米津雄介さんと、4人の明確な役割分担によって成り立つブランドだ。

そもそも、この4人のメンバーで「新ブランドを立ち上げよう」と考えたのはなぜなのか?

――まずは4人の出会いやプロジェクトスタートのきっかけを教えてください。

水野学(以下、水野):僕はすぐ人に「何か面白いことない?」と聞く癖があって、4年前も(鈴木)啓太さんとグラスのデザインの打ち合わせをしているときにその質問をしました。そうしたら、啓太さんが「実は面白いアイデアがあるんです」と。

THE GLASS

THE GLASS

鈴木啓太(以下、鈴木):世界共通で知られている大手ハンバーガーチェーンのドリンクカップのS/M/Lサイズは日本人に合わせてつくられていることから、水野さんに「あのサイズでグラスをつくったら、“日本人の基準のグラス”ができると思いませんか?」と言ったんです。水野さんが「いいね! 他にも基準になるものってあるよね」と言ってくれて盛り上がり、そこからプロジェクトがスタートしました。

米津雄介(以下、米津):最初は水野さんと啓太さんの2人でブランドの考え方をつくり、その後(中川)淳さんが参画し、最後に僕が加わった形ですね。僕は前職のときに啓太さんと2年ほど仕事をしていた関係で、「一緒にTHEでものづくりをしませんか?」とお声掛けいただきました。当初からTHEでは、デザイナーがただ製品をつくるのではなく、きちんとした流通の仕組みに乗せて、広く一般のお客様に届けることで、世の中の定番の基準値を高めていきたい、というビジョンまで決まっていました。そこで水野さんが「知りうる限りの最高の経営者を連れてくる」と言って、呼んだのが中川淳さんだと僕は聞いています(笑)。

中川淳(以下、中川):僕は弊社、中川政七商店のブランディングを水野さんにやっていただいていた関係で交流があり、お声掛けいただきました。ちなみに、僕も「知りうる限りの最高のプロダクトマネージャーを」と言って、米津さんが呼ばれたと聞いています(笑)。

――THEではどのような製品をつくっていますか? また、ブランドの特徴は?

水野:THEで最初につくった商品は、啓太さんが最初に言ったグラスでした。その後はシャツや洗剤など幅広いジャンルの商品をつくって販売しているので、THEの特徴の1つは「製品の境界線がないこと」と言えるかもしれません。


シャツ

THE SHIRTS

洗剤

THE 洗濯洗剤 The Laundry Detergent

中川:立ち上げのときによく言っていたのは「THEはカテゴライズされてはいけない」ということ。だから、あえてまとめず、ジャンルを散らかしているところはあると思います。今月発売の新商品は、掃除に使う粘着クリーナー“THE COLOCOLO BY NITOMS”ですしね。

THE COLOCOLO

THE COLOCOLO BY NITOMS

米津:製品分野だけでなく、つくり方も色々なパターンがあって、自分達でTHEだと考えたものを協力工場とつくることもあれば、メーカーや企業から「一緒にTHEをつくりましょう!」と提案いただくこともあります。

水野:1つだけ、全てのものに共通しているのは「スタンダードになり得るもの、基準となるものであること」です。THEがそこを目指す理由は、たとえば僕は白シャツをよく着るのですが、既存のものは腕の部分が太かったり、襟が大きかったりで、意外とスタンダードなものがないんですよ。そんなこともあって、THEでは定番中の定番をつくろうと考えました。ちなみに、僕らは「良いものをつくっている」とは言いません。そのジャンルの基準となるものをつくっているんです。好みは人それぞれなので、ここは結構大事なポイントですね。

THEはなぜ代官山という場所で生まれたのか?

THE

2012年に代官山で誕生したTHE。クリエイターが集まる街と言われることもある代官山だが、代官山にはクリエイターを惹きつける“何か”があるのだろうか。また、クリエイティブと代官山という場所に具体的な関連性は存在するのだろうか。THEのメンバー4人が語る代官山の印象から、そのヒントを探る。

――みなさんにとって代官山はどのような場所ですか? 中川さんは奈良在住なので、この質問はちょっと微妙かもしれませんが……。

中川:え、僕はその質問から外されるの(笑)?

水野さん

水野学さん

水野:淳さんは仕方ない(笑)。僕は初めて自分の事務所を構えたのが1999年4月8日で、場所は代官山でした。その場所の「気」が良いかどうかは大事なことだと思っていて、調べてみたところ、代官山は縄文時代から水面下になったことがないという沿岸部にしては珍しい土地のせいか、風通しと湿度がちょうどいいんですよ。それを僕の変なセンサーが感じ取ったのかもしれません。

鈴木:うーん、今の水野さんの話を超えるような面白い話はないなぁ(笑)。


中川さん

中川淳さん

中川:じゃあ、超えていいですか?! 僕は拠点が奈良ですが、以前まで代官山の駅前に奈良県の施設があったので、ちょくちょく仕事で来ていたんです。代官山 蔦屋書店ができたのはこの街にとって大きな変化だったと思いますね。初めて蔦屋書店を見たときは、ここは“都心にある郊外”なんだと思いましたね。アレ……、超えられなかったですね。

水野:何をもってして超えると言うんですか(笑)。

鈴木:確かに、渋谷や恵比寿のすぐ隣にあるのに代官山は喧騒とかそういうものを一切引きずっていない不思議な場所ですよね。“箱庭っぽい”というか、新しいものや古いものなど、いろいろなものが調和してできている街という印象があります。


米津:急行が止まらない不便さも良い影響を与えているのかもしれませんね。代官山は蔦屋書店ができたこと以外はあまり大きく変わっていない街で、昔ながらの喫茶店も街中に残っていますしね。

水野:もう1つ、僕が思う代官山の良いところは儲け主義的な人が少なくて、「良いものを提供しよう」という人が多いところかな。その精神が僕に合っていたので、THEのメンバーを巻き込んで、代官山で活動しているという感じですね。

――少し話が出ましたが、みなさんにとって代官山 蔦屋書店はどのような存在ですか?

水野:僕はもう自分の家の一部だと思っています。息子も初めて1人で買い物に行ったのが代官山 蔦屋書店の中のコンビニだったので、僕よりも、もっと家の一部だと思っているんじゃないかな(笑)。

鈴木さん

鈴木啓太さん

鈴木:僕は書店だと思っていなくて、色々なジャンルの本が置いてあるので、世界を俯瞰して見ることができる場所ですね。一番使うのはカフェですが、行くたびにビルボードやショウウインドウのように新しい情報を得ることができる珍しい場所だと思います。

米津:キュレーションの仕方が独特で面白いですよね。言い方は良くないかもしれませんが、暇つぶしをするには最高の場所だと思います。僕も啓太さんと同様、2階にあるカフェは好きで、あそこはとても居心地がいい。

水野:2人が言っているカフェってAnjinのこと? あれはBarでしょ。そうか、僕は夜しか行かないから、カフェだと思ったことがなかったなぁ(笑)。

中川:僕は函館 蔦屋書店にも何度か行っていますが、オープン当初は「東京以外で成立するのか?」と疑問に思っていました。でも、オープンから1年が経つ頃には、おしゃれな主婦層が昼間にたくさんいて、客層が自然にマッチしていくんですよね。それを見たときに、「蔦屋書店は街をつくっているんだ」と実感しました。

水野:それで言うと、代官山 蔦屋書店を中心に代官山は“経年優化”が起こっている街だと思います。少し前までは、著名な建築家が建てたとか、そういうことをみんなが求めていたけど、今はゆとりある空間や木や緑などの自然といった豊かさを求めている。代官山 蔦屋書店だけでなく、周辺のカフェ・ミケランジェロやリストランテASOも大きな木を残したまま空間を形成していて、それが代官山に街の豊かさを生み出していますよね。

代官山でポップアップショップをやろうと思った理由

――最後に、THEのポップアップショップの開催場所に代官山 蔦屋書店を選んだ理由を教えてください。

米津さん

米津雄介さん

米津:ジャンルの垣根なく取り組みをしているところや、好奇心の持ち方など、蔦屋書店とTHEは親和性が高いと思っています。今回、ポップアップショップを実施するに至ったのも、開催場所が代官山 蔦屋書店だったということが非常に大きいですね。

水野:うん、同じ地域に根差しているブランドという意味でもいいなと思っています。もしかしたら、現代の“THE 書店”は代官山 蔦屋書店と言えるかもしれない。ただ、僕らは目立ちたいわけではないので、THEを好きになってくれそうな人が自然と集まるであろう代官山 蔦屋書店で、たくさんの人に見ていただいて、好きになっていただけたらなと思っています。


今まであまり例のなかったTHEのポップアップショップは、水野学さんたちが「定番と考えるもの」を見て、触って、実感することができるチャンスだ。最近、昔みたいに凝ったものや奇をてらったものに興味がもてなくなってしまったという人は、「こういうシンプルなものを求めていた!」と目から鱗の体験ができるかもしれない。

(文:廣田喜昭)

  • THE 醤油差し
    THE 醤油差し
  • THE 椀
    THE 椀
  • THE LUNCH BOX
    THE LUNCH BOX
  • THE TOOTHBRUSH by MISOKA
    THE TOOTHBRUSH by MISOKA
  • THE SHEA BUTTER
    THE SHEA BUTTER
  • 醤油差し
  • 椀
  • ランチボックス
  • 歯ブラシ
  • シアバター

■THEとは?

THE

過去を知り、現在を考え、未来を創る。

「これこそは」と呼べるもの。
たとえば、THE JEANSといえばLevi’s 501、といった世の中の「THE」を生み出すブランド。
定番と呼ばれるモノの基準値を引き上げていくことを目指し、
あらゆるジャンルの企業と共に、世の中のスタンダードとなる製品とはどうあるべきかを研究開発している。

THE公式サイト


■関連イベント

代官山デザインデパートメント2015

  

水野 学(みずの・まなぶ) トータルディレクション

1972年東京生まれ。good design company 代表。慶應義塾大学特別招聘准教授。クリエイティブディレクターとして、ブランドづくりの根本からロゴ、商品企画、パッケージ、インテリアデザイン、コンサルティングまで、トータルにディレクションを行っている。

中川 淳(なかがわ・じゅん) プロジェクトマネジメント

1974年生まれ。株式会社中川政七商店 代表取締役社長 十三代。社長就任後に「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業を開始。「中小企業ブランディング」などをテーマに、セミナーや大学での講演歴も多数。

鈴木 啓太(すずき・けいた) プロダクトデザイン

1982年愛知県生まれ。PRODUCT DESIGN CENTER代表取締役。プロダクトデザインを中心に、 プランニングからエンジニアリングまでを統合的に行い、家電製品、産業機器、モヴィリティ、アートに至るまで、国内外で様々なプロジェクトを手掛けている。

米津 雄介(よねつ・ゆうすけ) プロダクトマネジメント

1980年東京生まれ。THE株式会社 代表取締役社長。全国のメーカーを回りながら 商品開発・流通施策・生産管理・品質管理など、プロダクトマネジメント全般と事業計画を担当。取締役副社長を経て、2015年3月に代表取締役社長に就任。



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