芥川賞・直木賞、80年の歴史を振り返る

2015.1.15 (木) 07:07

シェア

日本で最も名誉ある文学作品に贈られる賞といえば「芥川賞」「直木賞」だろう。毎年2回、1月と7月に同時に発表され、日本中の注目の的に。それだけに、80年の歴史のなかでは、芥川賞・直木賞をきっかけにした社会現象もたびたび生まれている。

1月15日(木)、第152回(2014年下半期)の作品が発表される。この機会に、特に話題になった芥川賞・直木賞の受賞作品から、文学界・世の中を振り返ってみたい。

芥川賞・直木賞とは何か?

毎回、メディアの話題をさらう2つの賞だが、そもそも芥川賞・直木賞とはどのような賞なのか?

両賞とも、1935年に文藝春秋を創業した小説家・劇作家の菊池寛が、友人であった作家・芥川龍之介と、大衆娯楽の時代小説であり、脚本家・映画監督でもあった直木三十五の業績を記念して創設したもの。芥川賞は純文学の新人に、直木賞はエンタテインメント(娯楽)小説の中堅・ベテラン作家に贈られる。

直木賞はすでに知名度がある作家の地位を確固たるものにする意味合いがある一方で、芥川賞は新人の登竜門としての性格が強い。そのためかメディアが取り上げやすく、話題になっているものが多いようだ。

芥川賞・直木賞が巻き起こした話題・社会現象

第1回芥川賞にはあの有名作家が落選。殺害予告まで…

第1回(1935年上半期)は、芥川賞に石川達三『蒼氓』、直木賞は川口松太郎『鶴八鶴次郎』『風流深川唄』『明治一代女』が選ばれている。

実はその裏で、芥川賞の候補にデビューしたばかりの太宰治も挙がったが、落選。当時から女グセの悪さや心中、自殺を繰り返していたことに対し、選考委員だった川端康成は「作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に發(はっ)せざる憾(うら)みあつた」と選評。これに激怒した太宰治は、雑誌「文藝通信」に『川端康成へ』と題し、「事実、私は憤怒に燃えた。幾夜も寝苦しい思ひをした。小鳥を飼ひ、舞踏を見るのがそんなに立派なのか。刺す。さうも思つた。大悪党だと思つた。」と文章を掲載している。彼は以後も受賞を熱望したものの、実現することはなかった。

賞の権威を確固たるものにしたのは『太陽の季節』(石原慎太郎)

『太陽の季節』(石原慎太郎)

『太陽の季節』(石原慎太郎)

あまり賞の注目度が高くなかった芥川賞・直木賞だが、第34回(1955年下半期)に芥川賞を受賞した石原慎太郎の『太陽の季節』で状況が一変する。若者の無軌道な生活を描いた作品で、奔放な性描写などは当時の人々に衝撃を与えた。石原慎太郎の髪型をまねた「慎太郎カット」や「太陽族」といった言葉も生まれ、社会現象にまでなった。1956年に放映された映画は、弟の石原裕次郎のデビュー作。


歴代最高の売上となった『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)

『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)

『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)

間は空くが、次に社会現象となったのは、第75回(1976年上半期)に芥川賞を受賞した村上龍の『限りなく透明に近いブルー』。単行本・文庫合わせて354万部と歴代受賞作で最も高い売上となった。米軍基地に近い町で麻薬とセックスに明け暮れる若者の姿を描いた作品で、作者の実体験に基づいている点も相まったセンセーショナルな内容。

70年代としては、第77回(1977年上半期)の芥川賞受賞作、池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』もミリオンセラーに。彼はすでに版画家として国際的な評価を得ていたこともあり、大きな話題を呼んだ。


芥川賞・直木賞の壁を超えた第119回(1998年上半期)

第119回(1998年上半期)では芥川賞・直木賞の概念が覆された作品選定が注目を集めた。私小説作家・車谷長吉が『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、大衆文学の作家とされていた花村萬月が『ゲルマニウムの夜』、ハードボイルド調の作品で知られていた藤沢周が『ブエノスアイレス午前零時』で芥川賞を受賞。

これ以前にも、第6回(1937年下半期)に純文学作家と言われていた井伏鱒二が直木賞、社会派推理作家の松本清張は第28回(1952年下半期)に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞、第46回(1961年下半期)には推理小説で知られる宇能鴻一郎が芥川賞、戦場小説や時代小説などを発表していた伊藤桂一が直木賞を受賞している。

芥川賞の歴代最年少受賞をダブル更新した第130回(2003年下半期)

『蹴りたい背中』(金原ひとみ)

『蹴りたい背中』(綿矢りさ)

『蛇にピアス』(金原ひとみ)

『蛇にピアス』(金原ひとみ)

第130回(2003年下半期)は、芥川賞の歴代最年少受賞記録をダブル更新したことがメディアを賑わせた。当時19歳の綿矢りさ『蹴りたい背中』、20歳の金原ひとみ『蛇にピアス』で、それ以前の最年少受賞者は第56回(1966年下半期)に『夏の流れ』で受賞した23歳の丸山健二だった。

ちなみに直木賞の最年少受賞者は、第11回(1940年上半期)に『小指』他で受賞した22歳の堤千代が記録を保持している。第148回(2012年下半期)に23歳で受賞した『何者』の朝井リョウは、初の平成生まれの受賞者ということで注目を浴びた。

一方で最年長記録は、芥川賞は第148回(2012年下半期)に『abさんご』で受賞した75歳の黒田夏子、芥川賞は第102回(1989年下半期)に『小伝抄』で受賞した68歳の星川清司。


言葉の壁を超えて受賞を勝ち取った『時が滲む朝』(楊逸)

『時が滲む朝』(楊逸)

『時が滲む朝』(楊逸)

第139回(2008年上半期)の芥川賞受賞作『時が滲む朝』(楊逸)は、日本語を母国語としない、中国人作家が受賞した初の作品として注目された。中国の民主化を志す学生たちの苦悩と挫折の日々を描いている。



受賞をきっかけにベストセラー作品が生まれるだけでなく、テレビドラマ・映画やコミック化されるものも実に多い。第152回(2014年下半期)は芥川賞・直木賞ともに各5作品がノミネートされている。文学界の一大イベントから目が離せない!

(文:高橋七重 写真:(C)LeicherOliver)


関連記事

関連タグ

この記事をシェアしよう。

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

You might Like

レコメンド

Read More

T-SITE LIFESTYLE TOPへ戻る

Access Ranking

ランキングをもっと見る

日本最大級ビアガーデン「ヒビヤガーデン2018」日比谷公園で5月18日から開催

  1. No.1 日本最大級ビアガーデン「ヒビヤガーデン2018」日比谷公園で5月18日から開催
  2. No.2 ミニチュアアーティスト田中智の個展、銀座で4月27日から。指先サイズの世界にときめく
  3. No.3 漫画『スラムダンク』新装再編版が6月1日より刊行開始! 井上雄彦がカバーイラスト描き下ろし
  4. No.4 ハンドドリップコーヒーを誰でも簡単に。「coffee職人 ZOOM」発売
  5. No.5 東京駅の新土産「PRESS BUTTER SAND(プレスバターサンド)」。行列必至の工房をレポート

ランキングをもっと見る

  • TSUTAYAマンガ通スタッフおすすめ

Event

イベントをもっと見る

イベントをもっと見る

Store

SNS/RSS

Facebook

Instagram

tsite_lifestyle
Instagram


T-SITE LIFESTYLE(RSS)