【編集長インタビュー第4回】雑誌『STUDY』長畑編集長が語る/リアルを提示するファッション誌の創刊

2015.3.3 (火) 07:00

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『STUDY』編集人 長畑宏明 氏
​1987年大阪府生まれ。大学入学後まもなく音楽雑誌『Cookie Scene』のライターとして活動をスタートさせ、大学4年の時にスナップサイト『howtodancewithyou』を立ち上げる。また、当時『メンズクラブ』の編集者だった有賀さんを撮影したことがきっかけで、同誌でも一時期アルバイトとしてスナップページを担当。大学卒業後はファッション専門のウェブ会社に入社。2014年4月に退社したあとはフリーの編集/ライターとして活動する傍ら、『STUDY』の編集作業を行う。2014年12月に『STUDY』創刊。

雑誌とは世間や時代を映すものであり、その雑誌自身と言えるのが編集長という存在。編集長が変われば雑誌のメッセージやカラーもガラリと変わる。編集長を知ることは、雑誌の楽しみを知ることとイコールと言えるだろう。

そんな主張のもと、今注目すべき雑誌の裏側を紹介したいと思う。今回インタビューするのは、ファッション雑誌『STUDY(スタディ)』の編集長・長畑宏明氏だ。

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世の中に対して紙の雑誌が果たす役割は、かつてとは異なってきている。変化の波によって休刊という道を選ぶ雑誌も多い中で、2014年末に一つのファッション雑誌が創刊された。雑誌の名は『STUDY』、編集長を務めたのは28歳の長畑氏。編集経験のなかった長畑氏が、ファッションが好き、雑誌が好きという情熱で作り上げた『STUDY』は、ファションと雑誌の世界に少なからず波紋を広げている。

新たなファッション誌の創刊に至るまでの道のりや、『STUDY』にかける思いを長畑氏自身に尋ねてみた。


ずっと憧れていた紙の世界へ飛び込んだ

学生時代から音楽雑誌『クッキーシーン』のライターとして活動し、大学4年生の時にスナップサイト『howtodancewithyou』を立ち上げた長畑氏。当時は原宿を中心にアヴァンギャルドなスタイルのファッションが流行っていたが、長畑氏はそのムーブメントに夢中になりながらも同時に妙な同調圧力を感じていたという。編集経験のなかった長畑氏が、自ら新雑誌を立ち上げようと思い至るまでにはどのようなストーリーがあったのか。

「スコット・シューマン主宰の世界的なスナップサイト『サルトリアリスト』に刺激を受けて、スナップサイトを始めました。『サルトリアリスト』では登場する誰もが自由にファッションを楽しんでいて、それがとても新鮮だったんです。大学を卒業した後はアパレル専門のWeb会社に就職し、経験を見込まれてスナップのアプリサービスを任されました。

仕事にはそれなりに没頭しましたし、学んだことは山ほどあるのですが、次は自分の価値観を素直に表現したものを作るべきだ、と思いました。僕は雑誌が昔から大好きで、これまでに数多くの雑誌を読んできましたし、絶えず「僕だったらこういう取材がしたい」とか「こういう誌面が作りたい」という妄想をしていたんです。

会社時代の後半は悶々とした日々を過ごしていたんですが、ある日「自分がリアルだと思える雑誌を作れば良いんだ」と思い立って、会社に辞表を提出しました。ただ、その時点では雑誌のコンセプトすら固まっておらず、「早まったことをした」と内心後悔した時期もありましたが(笑)」

物ではなく、人を中心にしたファッション誌

過去にライターとしての経験があったとは言え、本格的な雑誌編集の経験はなかった長畑氏。一体どのような雑誌を作ろうと考えたのだろうか。そこにはインディペンデントで取り組む長畑氏だからこそ踏み込めた世界があった。

「当時、僕の中にあったのは「リアル」という言葉だけ。いまはリアリティのないものに夢はないと考えていたからです。雑誌を作る上で掲げた目標は、ファッションを通じて人の生き方そのものを表現し、読んだ人が自分の内面と対峙するきっかけにしたいということ。だからこそ、これまでのファッション誌と同じように企画の中心に物を置くことは考えていませんでした。雑誌の中心になるのは人しかない、そこで初めて服が必要な理由が浮かび上がってくる。それが僕の考えた「リアル」ということです。

広告など色々な事情があるので大手出版社ではこの企画は通らないだろうし、僕もこれからそういうことを考えなければいけないのですが、ひとまず自分がやりたいことをやりました。

『STUDY』で取り上げた人のセレクトは完全に僕の主観です。誌面では計5名の人を紹介しているのですが、「固定観念に縛られていない人」という軸で選んでいます。たとえば一人目の谷川さんは僕が通っていた古着屋さんの元スタッフで、個人的にすごくお世話になっている方です。後から「こうすればよかった」と後悔することもあったのですが、そもそも普通の出版社ではやらない企画。踏みとどまるとやらない理由ばかりが生まれてきますから、勢いを大切にしました」

紙に対するノスタルジーはない

既存の雑誌や手法に対するカウンターとして創刊された『STUDY』は、好意的な反応を持って人々に受け入れられた。しかし長畑氏の目指す地点はまだ終わりではない。次号以降の雑誌を作ることはもちろん、長く継続できる雑誌を作ることが目標だと語る。スタートを切ったばかりの『STUDY』が目指す地点とは。

「次の号は、今回と同じような構成でボリュームを増やしたいと思っています。中身については決まっているのですが、これからは雑誌を継続させていく仕組みを作りたいですね。一緒に雑誌を作っている人たちの生活のためになって、初めて「持続可能性がある」と言えると思うんです。正直、雑誌作りに対して僕たちはまだまだアマチュアなので、いろいろな人に相談しながら作っていますが、これから2ヶ月に1冊のペースで出版できるようにしていきたいです。

周りの人たちは『STUDY』に対して期待してくれますが、僕はできるだけドライに受け止めています。紙の雑誌に対するノスタルジーはありません。Webに対して紙の雑誌は「感覚的に好きなところから読み始められる」という一覧性の機能として優れているだけ。紙だから温かみが伝わるなんていうのは、あまり信じていませんね。「紙回帰」のブームだけでは持続可能性がないと思います。」


長畑氏はファッションと雑誌に対する溢れんばかりの情熱を持ちながら、同時に冷静な視点も備えて業界を見つめている。ノスタルジーに溺れていては、本当に継続可能な雑誌は作れない。

「僕は雑誌が大好きなのに、本当に心を動かされる雑誌はない」とも長畑氏は語ったが、それはつまり「リアル」な雑誌がきわめて数少ないということかもしれない。『STUDY』が新たな発想で切り込んだ世界からは、長畑氏の言う「リアル」が垣間見えるはずだ。その「リアル」はここからどんな広がりを見せるのか。これからの展開を見守っていきたい。

(文:玉田光史郎)

雑誌『STUDY』

「ファッションの“いま”を編集する」をテーマに創刊。編集長・長畑宏明氏、カメラマンの岩本良介氏、デザイナーの辻慎太郎氏(ROOM)の3人で制作している。隔月発売予定。1,200円(税抜)。

公式サイト


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