琉球、台湾、香港の三都には意外な関係性があった! 食と器の豊かな文化を知る『TRANSIT(トランジット)』トークイベント

2015.5.21 (木) 18:14

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2015年4月29日、トラベルカルチャー雑誌『TRANSIT(トランジット)』(ユーフォリアファクトリー)のトークイベントが代官山 蔦屋書店で行われた。

4月27日に発売された28号の「美しき海の路めぐりて 琉球・台湾・香港」特集にちなみ、テーマは「美しき海の路 ~琉球、台湾、香港の食と器の話~」。同誌編集部の池尾優氏の司会進行のもと、料理ユニット「南風食堂」主宰の三原寛子氏、WEBセレクトショップ「みんげい おくむら」店主兼バイヤーの奥村忍氏が三都市の食と器の文化を紐解いていく。


琉球・台湾・香港、なぜ三都市を特集するのか?

池尾優氏:そもそも台湾は、中国の福建省の人が16世紀以降に渡ってきたという歴史があり、香港人には広東省のルーツがあります。沖縄は19世紀の終わりまで琉球王国という日本ではない国として存在し、中国との関わりが強くありました。そういった繋がりが奥深いなと思い、今回はこの三都をご紹介しています。

三都に共通するのは「豚」をくまなく食べること

三原氏が再現した沖縄料理

三原氏が『TRANSIT』誌面で披露した沖縄料理

三原寛子氏(以下、三原):香港で食べられているのは広東料理で、オイスターソースや干しエビを味付けに使い、飲茶を多く召し上がるのが特徴です。台湾は福建料理。海も山もあるので、食材はとても豊富です。調味料の違いか、中国料理と比べると割りと薄味でさっぱりしているものが多いです。沖縄料理としてぱっと頭に浮かぶものと言えば、ラフテー、タコライス、サーターアンダギーでしょうか。三都とも豚をくまなく食べます。血も食べるし、内蔵も食べる。くまなく、残さず、どうやって食べてこうか、みたいなことを伝え合い、影響を受け合っているのかなと思いました。

沖縄の手工芸文化は世界的に見ても珍しい

カラカラ、マカイ、厨子甕など、沖縄の器は実に独特。厨子甕は中国由来で台湾にもあった洗骨文化が影響しているとか

沖縄の民芸の代表格、琉球ガラス。歴史は古くなく、戦後アメリカ兵の出すコーラの空き瓶や、泡盛の空き瓶といったものを砕いて、もう一度成形しなおしたもの

琉球において中国への献上品や王家にも使われていたという琉球漆器。沖縄では漆がとれないため、中国の漆器を使い、絵柄は沖縄でつけていた。柄も、中国伝来の柄と、沖縄の植物、動物などがミックスされている

カゴの編み手は、現在三人のみ。写真はワラビと呼ばれるシダの仲間で、水に強く、水切りカゴとしても使えるとか

奥村忍氏(以下、奥村):香港はすごく土地が狭くて、民芸、民衆的手工芸というものが非常に少ない。代表的なものでは、蒸籠と土鍋がありますが、これも、メイドイン香港であるかはわかりません。

台湾には、今でも、原住民とよばれる方々がいます。こういった人たち、あるいは、福建省から渡来した人たちに脈々と受け継がれている伝統的な手工芸があるかというと、残念なことに、台湾の経済発展の中で、ほぼ消失されてしまっている。
沖縄は世界的にも珍しく、原始的なやり方を残した手工芸というものが多く残っています。

沖縄の焼き物「やちむん」が生まれるまで。登り窯との70時間の戦い

さらに、沖縄の焼き物「やちむん」の一窯元の話へ。そこには70時間に渡る長い戦いと哲学があった。

奥村忍氏

奥村忍氏

奥村:「やちむん」は沖縄のどこのおみやげ屋さんにもありますが、そのすべてが登り窯で焼かれているわけではありません。今、沖縄では、薪の確保が難しくなっており、若い作り手さんの中には、登り窯をあきらめてガスや電気の窯を使う場合が多い、というのが現状です。

うちのお店では、昔からの焼き方をしている人のものを扱っており、その中の一人、仲村まさひろさんという方の窯焚きに密着した、約70時間の写真をお見せします。

彼の場合は、土、薪、釉薬すべてを、沖縄で取れたものでまかなっています。今はどれでも、お金を出せば簡単に手に入るけれども、昔からの焼き物に憧れ、それを再現し、超えていきたいという思いの中で、あえて、非常に非効率なことをやり続けています。


◆窯焚きの様子

長寿の村、大宜味村のお家にステイ。なんと、ほぼ自給自足!

次は三原氏の食の話へ。三原氏が数年前に沖縄でも長寿の多いと言われる大宜味村の平良さん宅に泊まった時のエピソードから、その暮らしぶりを紹介。

食卓の源になる畑

平良さん宅の食卓

三原寛子氏

三原寛子氏

三原:平良さんは、岸朝子さんにも絶賛されたくらいお料理の上手な方。自宅のお庭には、あらゆる薬草、果物が密集していて、たまに豚肉やコーヒーなどの嗜好品を買われるくらいだとおっしゃっていました。ほぼ自給自足に近い生活なんですね。

沖縄では、「クスイムン」(くすりになるもの)という言葉もあって、食べもの、野菜や肉も薬になるという意識があるんです。「ヌチグスイ」という言葉もあって「命の薬」という意味なのですが、それは、食べ物だけじゃなくて、一杯の水でもすごくおいしいと思って飲むと、長生きにつながるということらしいです。そのように感じる感覚が長生きに繋がるって、すごく素敵だなと思いました。

お年をめした方のほうが楽しみが多いそうなんです。歌もそうですし、食べ物のこともよく知っていて。歳を重ねていった方が、イキイキされているのが長寿の秘訣の一つでもあるのかなと思いました。


◆沖縄でのステイの様子


沖縄の話の後も、台湾の窯元や街の話、台湾の菜食文化「素食」に及び、興味深い食と民芸の話が数多く飛び出した。

琉球、台湾、香港の三都がそれぞれ影響しあって生まれた食と民芸、そして人々が受け継ぐ心は、知れば知るほど活き活きとして魅力的だ。今回のトークイベントは、長期休暇の旅行先に選ばれることが多い三都を、歴史や文化の面からより楽しむためのヒントをたくさんもらえた夜となった。

台湾の菜食文化がおもしろい。肉や魚を、他の食材で模して作る

肉に見えるが、肉ではない


※写真はイベントのスライドより引用(『TRANSIT』誌面の沖縄料理、会場風景除く)

(文:岩間淳美)

奥村忍(おくむら・しのぶ)

日本や世界の民藝、手仕事から生まれた生活道具を扱うWEBのセレクトショップ「みんげい おくむら」店主兼バイヤー。力強く美しい道具に出会うため、月の半分以上は国内外の産地を巡る。旅先では仕入れ同様、おいしいもの探しにも余念がない。今年は台湾でポップアップショップのオープンを企画中。

公式サイト

三原寛子(みはら・ひろこ)

料理ユニット「南風食堂」主宰。食に関する企画提案や編集物の制作、雑誌やWEBなどの料理紹介、商品開発や店舗のフードディレクションなどを行う。近著に『WHOLE COOKING』(marble books)『ココナッツオイルの本』(4月末刊行・SPACE SHOWER BOOKS)など。

公式サイト

>『TRANSIT』公式HP
>『TRANSIT』購入サイト
>『TRANSIT』バックナンバー購入サイト

◆あわせて読みたい

>『TRANSIT』で写真家・川島小鳥が魅せる台湾が“かわいい”! 琉球、台湾、香港を特集


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