服部みれい氏が新雑誌『murmur magazine for men』で投げかける、新世代の男性像とは?【編集長インタビュー第5回】

2015.6.23 (火) 11:33

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『murmur magazine for men』

『murmur magazine for men』

murmur magazine(マーマーマガジン)』という女性誌をご存知だろうか。他にない独自の視点で世の中を切り取り、美しく生きること、自分を愛することの大切さを読者に対して投げかける、唯一無二の雑誌だ。その在り方は、本当の意味で“ライフスタイル誌”と呼ぶにふさわしい。内容は、“冷えとり”や“塩浴”といった健康法から、新しい生き方の提案まで多岐にわたり、編集長である服部みれい氏の姿勢に共感を示すファンも多い。

女性誌ではあるものの、ある意味、男女の垣根を超えて受け入れられていた『murmur magazine』だったが、2015年5月に『murmur magazine for men』が発売。今回、あえて『for men』と銘打って男性向けの新雑誌をつくったのはなぜなのか。編集長の服部みれい氏に話を訊いたところ、現代の男性像や雑誌の在り方に至るまで話題は広がった。


男性主導の時代が終わる

『murmur magazine』

『murmur magazine』

「『murmur magazine』では、ある意味ニッチな内容を紹介してきたんですけど、私たちの規模としては非常によく売れていて、こういう内容が本当に読者の方々に受け入れられるんだなと感動しています。雑誌自体は女性向けに作っていたんですけど、3、4年前からは男性もよく読んでいるという話を聞くようになって。男性もこういう内容に興味があるんだなという手応えがありました。もうひとつ、2011年の震災がきっかけとしては大きくて。私は今岐阜に住んでいるんですが、当時は東京にいて、これからどういう価値観で生きていけばいいのか、抜本的に揺さぶられたんです。男性主導で作られてきた都市や社会の構造は、本当に人や自然を幸せにしたのかなって。男性自身も、社会から求められる男性像を背負って生きるのって、しんどいんじゃないかなと思ったんです。もう窮屈になってきているんじゃないか、と」

さらにもうひとつ、服部氏曰く「murmurっぽい」話も。数秘術によると、2008年頃に男性主導の時代が終わると言われていたらしい。実際、当時東京にいた服部氏は、夜遅くまで精力的に働く女性たちの姿を見ながら「男女が入れ替わった」と感じていたそうだ。「『murmur magazine』で女性に対して充分に伝えてきたし、これからは本誌で紹介していたような内容をぜひ男性に伝えていきたいと思いました」


柔らかな感性、“ニューボーイ”の登場

『murmur magazine for men』の表紙を開いてすぐ、“創刊のことば”には「すべてのニューボーイたちに捧げます」とある。”ニューボーイ”というのは、一体どんな男性なのか。

「最近は“サードウェーブ男子”なんて言葉もありますよね。それも含んでいるんですけど、“ニューボーイ”はサードどころかセブンスくらいまで行ってるかな(笑)。つまり先を行っている男の人たちのことなんです。優しくて、柔らかくて、かつ野性的な感性を持っている人たち。今までの雑誌やテレビの世界で描かれていない男性像です。私の周りにもニューボーイはたくさんいますよ。例えば、『for men』でインタビューした“ささたくや(※)”さんは、まさにニューボーイの典型ですね。原始的な生活を送っていて、同時に感性が都会的で、お洒落。さらに女性目線で言えばイケメン(笑)。こういう人いるんだなって。オルタナティブな生き方をしているし、一般的な男性のイメージに対して挑戦もしています」

(※全国を巡業しながら定期的に「TABI食堂」を運営)

『for men』だから踏み込めた特集

服部みれい氏。岐阜にあるオフィスにて

服部みれい氏。岐阜にあるオフィスにて

『murmur magazine』創刊号の特集は“不食と少食”。不食とは文字通り、食べない人のことを指す。思わず「本当?」と驚くような、刺激的なテーマだ。また、“僕たちがケータイをもたないワケ”として、携帯電話を持たない男性たちの座談会も収められている。

「不食は内容がすごすぎると思って。マクロビオティックとか断食というテーマは『murmur magazine』周辺でもよく語られてきたけれど、食べなくていいとなると、全部がひっくり返っちゃいますよね。でも、みんなで食べるのをやめよう、なんて言う気はないんですよ。不食もひとつの道ではあるし、『for men』の方向性を紹介するコンテンツとして良いと思ったんです。もともと、海外には食べずに生きている人がいるらしい、という話は友人たちから聞いていて。そんな人が日本にもいるって知って、ぜひ会ってみたいと思いました。秋山(佳胤)さんにインタビューしていても、この人が嘘を言っているとは絶対に思えませんでした。私自身、心底おもしろいと感じたし、『思い込み』を外すすごい事実だ、と思ったんです。もちろん、読者の方々をびっくりさせたかったですしね」

少食や断食といったテーマは『murmur magazine』でも取り上げたことがあったが、不食というテーマにまで踏み込めたのは「『for men』だからこそやれた」と服部氏は語る。『murmur magazine for men』は、服部氏にとって新しいことができる舞台であり、それが楽しいのだという。

ケータイを持たないというテーマも、多様性のひとつ。「ケータイを持たないのもアリかも、と思って欲しくて。断捨離ブームもそうですけど、何かをやめるというのは、今、みんな興味があるんじゃないかな。とはいえ、生活の中で減らしづらいのがケータイですよね。でもケータイを見ることで他のことができなくなっている側面もあるし。ケータイを持たないのはカッコイイ、モテるっていう意見も編集部にはありましたよ。ケータイばかり見ているのはカッコ悪いし、ケータイを持たない人って独立独歩、何でも工夫するパワーがあって、自立して生きている感じがします」

マーケティングより、編集長の関心が重要

昔の雑誌には、編集長個人の強い関心から成り立っているものも多かった。服部氏自身も、編集長という個人の思いが反映された雑誌に憧れを抱いてきたそうだ。しかし、今は予定調和なものが溢れている時代。ある面では、雑誌の意義が薄れつつあるのかもしれない。雑誌とは、一体何なのか。『murmur magazine for men』を作るにあたって、服部氏はそのことについて考えたという。

「今、マーケティングしてリサーチして作られたものに、読者は飽きてるんじゃないのかなと感じているんです。そういう風にして作られたコンテンツって、こう『はっ』とさせられるものが少ない気がするんです。それよりも雑誌や読み物って、論理的に図れないもので作った方がおもしろくなる気がする。『新しいこと』にチャレンジしやすい。雑誌はいつもフレッシュで、新しくて、どこかアナーキーなところがないとつまらないんです。また今、ごく個人的な関心ごとに、みんな興味があるんじゃないかな。私たちの雑誌が続いているのも、そういうことだと思います。『murmur magazine』は100万部や200万部売れる雑誌ではないけれど、いつも完売するし、すみずみまで読み込んでくれる。すごい量の読者カードが届く。メチャクチャ楽しいですよ。生きている充実感があります」


『murmur magazine』と『murmur magazine for men』は、他の雑誌と並べてずいぶん異質な雑誌に見えていた。しかし、服部みれい氏の話を聞くと、むしろこれが正しい雑誌の在り方だったんだと思えてくる。人が何かを知り、おもしろいと感じ、誰かに知ってもらいたいと思う。そんな計算抜きの純粋な思いがあってこそ、理屈や論理を飛び越えて、本当に魂に届く雑誌が生まれるのだ。

(取材・文:玉田光史郎)

服部みれい(はっとり・みれい)

文筆家、『murmur magazine』編集長、詩人。1998年に独立し、ファッション誌のライティング、書籍の編集・執筆を行う。2008年春に『murmur magazine』を創刊。冷えとりグッズと本のレーベル「マーマーなブックス アンド ソックス」主宰。

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