『ku:nel(クウネル)』淀川美代子編集長インタビュー「雑誌づくりが難しい時代だからこそ、読者とのつながりを大事にしたい」

2017.2.23 (木) 07:00

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『ku:nel』2017年3月号

『ku:nel』2017年3月号

『Olive(オリーブ)』『an・an(アンアン)』『GINZA(ギンザ)』『MAISHA(マイシャ)』――数々の雑誌の編集長を務めてきた淀川美代子さん。リニューアルを手掛ける度に人気誌へと育て上げ、“伝説の編集長”と呼ぶ人も多い。

淀川さんが新編集長として『ku:nel(クウネル)』を50代女性に向けたライフスタイル誌としてリニューアルしてから、最新号2017年3月号でちょうど一年が経った。以来、『ku:nel』もまた売上を伸ばし続けており、淀川さんの手腕が光る。

現在の淀川さんの想いについて、そして雑誌をつくるということについて。改めて話を聞いた。

『ku:nel』が体現するのは等身大の「50代の大人の女性」

――改めて『ku:nel』リニューアルの背景を教えてください。

これまで若い女の子向けの雑誌を中心に作ってきたので、50代の女性に向けた雑誌というのは、私にとって初めての挑戦でした。そこでまず思ったのは、世間が思っている40〜50代と、その世代の実際の女性の間に、大きな隔たりがあるということです。

今、皆さんお若いです、ものすごく。表紙にも出ていただいた小林麻美さんはおしゃれで。リニューアル第2号に出ていただいた島田順子さんもかっこいいですよ。やっぱり、感覚が昔とは全然違います。女性の大好きなものも、昔とは変わってきています。

リニューアルで参考にしたのは、いくつになっても自由で輝いている、パリの女性です。パリは日本人の女性にとって、親しみやすい海外だと思うんです。ちょっとおしゃれで、慎ましくて。でも永遠にみんなの憧れです。

『Olive』が参考にしたのもフランスの少女たち。憧れは何歳になっても変わらない。(過去記事より)

人生はおしゃれがすべてではないですが、見た目はすごく重要。50代では、最先端のおしゃれは必要ないと思うんです。シンプルで、その人にとって着心地がいい。でも、見た目はちょっとかっこいい。それが理想ではないでしょうか。こんな50代になれればいいな、という感じで読んでくださる30~40代の方もいるそうで、嬉しいですね。

登場するのも輝く50〜60代

――誌面に登場するのも、まさに理想の50~60代を体現している方々ですよね。

若い人が出ちゃいけないという理由はまったくないのですが、モデルや執筆陣は、「50〜60代になっても素敵な人」を基準に選んでいます。執筆陣の松浦弥太郎さんや吉本ばななさんも、たぶん同世代? 料理家のコウケンテツさんは少々お若いですけれど、50代前後の女性の憧れですから。

小林麻美さんは、今の50代くらいの人が、20代くらいの頃のアイドル。普通のアイドルとは一味違う、憧れの存在でした。最近も各雑誌がアプローチしていたそうですが、小林さんはもう(メディアには)出ないと決めていたそうで。でも、ちょっとしたご縁があって登場していただけました。リニューアル号は見てくださっていたようです。

その人らしい「暮らし」が見える紙面作り

――最新号の小林さんも素敵ですよね。

小林さんの撮影には私も立ち会いましたが、小林さんはおしゃれへの関心が高くて、私生活でも洋服がとてもお好きなんです。最新号(2017年3月号)では、スタイリストさんと一緒に、ご自分で洋服を選んでくださいました。楽しそうでしたね。次号は全部、小林さんの私服なんですよ。すごくかっこいいんです。お楽しみに。

――私服! 憧れの方の日常を垣間見ているような、ワクワク感がありますね。

コウケンテツさんも、ご自身の私物を撮影に使わせていただくこともあります。これは『クロワッサン』の元編集長に教えてもらったんですけど、読者は、自分の好きな料理家がどんなお皿を実際に使っているのかに興味があるそうです。コウさんだったらこう使うんだな、と。

パリのことを紹介するときも、ただパリのことではなくて、パリに息づいて、生活している人の情報を届けています。(『ku:nel』2017年3月号の)台所特集では、パリの人たちのキッチンを見せてもらいました。さすが素敵でしたね。ちょっとしたリネンの置き方ひとつとっても、おしゃれで。私も、見ていてとても楽しかったです。しかし日本もかなり良かったですよ。

提案したいのは「賢いお買い物」。“選ぶ目”の情報を提供する

――アイテムの紹介も、従来の50代向けの雑誌にはなかったラインナップですよね。デニムですとか。

50代くらいの女性って、もっともっとお買い物すればいいのに! と私は思うんですが、ただ「買い物しましょう」じゃダメなんですね。みんな、「賢い買い物」をしたいと思っているんです。

求められているのは、やっぱり「安くて良いもの」の情報ですね。例えばデニム。「デニムを履きたいんですけど、どうしたら…。」という声が読者からも寄せられています。デニムは値段もそんなに高くないし、50代でもカジュアルに、おしゃれにデニムを履いてみたいんですね。

カジュアルと言っても、そこらへんにあるトレーナーやスウェットパンツをただ着るのではなくて、品良くまとめたいですよね。そのためには選ぶ「目」が必要。そのための情報を提供したいと思いました。

(2017年3月号の)フランスの人たちのスナップを見ると、50歳以上でも、みんなデニムを履いています。これは全部、年齢を聞いて撮影しているんです。こんな風にかっこよくなれればいいなって、思ってもらえたら。

雑誌の歴史を作ってきた淀川さんのアンテナとは?

――編集長として第一線を走り続けておられますが、アンテナはどのように張っているんですか?

昔からそうですけど、雑誌のテーマはいつも、世間話みたいなことをしているところから見つけていきます。自分でも本を読んだり、テレビを見たり、映画を見たりしながら情報を集めたりもします。

難しいですよ、雑誌を作るというのは。今は雑誌がたくさんありますから。

『an・an』なんかは刺激的な特集をすると爆発的に売れますが、『ku:nel』はそういう刺激的な雑誌じゃないし、トレンドの雑誌でもありません。だからこそ、読者とのつながりを大切にしたいですね。

これまでの縁が今につながっている

読者からいただいたお手紙には返事を書いています。『Olive』編集長のときからそう。当時の『Olive』読者の方が、この間も手紙をくださいました。『ku:nel』も読んでくださっているそうです。

実は私、人とあまり親しくするのが苦手なほう。これまでも雑誌の仕事で、人と知り合う機会がたくさんあって、億劫に思っていたこともありました。でも、それは間違いでした。あの頃お世話になった人が、今になって本当によくしていただいています。

『MAISHA』でやってもらっていたデザイナーさんにも、これから『ku:nel』でもお願いできることになりました。やっぱり大事ですね、つながりは。必要以上に親しくなる必要はないけれど、やっぱり親交は温めておいたほうがいいかなって思います。程良くね。あと、嫌いな人はつくらないほうがいいんですよ。そういうのは返ってくるものだから。

この歳になって、そう思います。

――最近は、よい出会いや発見はありましたか?

最近びっくりしたのは、小説家の原田マハさん。パリ在住のファッションデザイナーと一緒に原田さんがストーリーを書かれて、ストーリーのある服作りをされています。それがかわいいんですよ。『ku:nel』とは違うテイストなので、『Olive』があったら、と思いました。

――次に作ってみたい雑誌はありますか?

もう雑誌は作りません。『ku:nel』が最後です。今は、Webマガジンに関心があります。そういう時代ですね、やっぱり。紙で見られない記事をウェブで見てもらったり、インテリアの撮影現場の動画などを楽しんでもらったりできるようにしたいですね。そちらの方面は不得手なので、私は指揮をとれません(笑)。写真は好きなんですけれどね。

でも、いろんな技術を覚えたら、Instagramの動画機能を使った『ku:nel』の宣伝などはやってみたいです。あと関心があるのは、健康問題ですね。

(文:山岸早瀬)

■新刊情報

『ku:nel』2017年3月号/バックナンバー

ku:nel(クウネル)公式サイト

■試し読み

淀川美代子(よどがわ・みよこ)

マガジンハウスで1985〜87年、『Olive』の3代目編集長を務め、全盛期を作り上げた。その後、『an・an』『GINZA』の編集長を歴任。リニューアルを手掛け、人気雑誌へと成長させた。2010年、マガジンハウスを退職。現在、フリーランスとして編集活動を続ける。

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