福田雄一監督×原作者・麻生周一対談「映画『斉木楠雄のΨ難』は山﨑賢人の“最終形態”」

2017.10.17 (火) 12:02

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福田雄一監督(正面)、原作者・麻生周一先生(後ろ姿)

福田雄一監督(正面)、原作者・麻生周一先生(後ろ姿)

シリーズ累計発行部数500万部を超える人気漫画「斉木楠雄のΨ難」実写映画となって登場する。生まれながらにとんでもない超能力を持った斉木楠雄が、ワケありのクラスメイトたちが起こす騒動に巻き込まれていく姿を描く本作。楠雄はピンクの髪に緑のサングラスと、実写化するにはなかなかハードルの高いビジュアル!さらには痛烈ギャグを生身の人間が演じたらどうなるのか?など、気になることだらけ。何を隠そう、原作者の麻生周一先生ご自身が「実写映画化、本当にするの!?」と驚いたとか。

そんな麻生先生を喜ばせたのが、メガホンをとるのが『銀魂』や「勇者ヨシヒコ」シリーズ福田雄一監督だということ。福田監督も原作の大ファンだったそうで、「実写映画化したい。主演は山﨑賢人で!」と思い切ったキャスティングとともに、前のめりになって実写映画化が実現した。“相思相愛”の麻生先生と福田監督を直撃し、撮影秘話や山﨑さん演じる楠雄の感想など、たっぷりと語り合ってもらった。

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

超能力を「迷惑だ」と思っている主人公がものすごい衝撃だった(福田監督)

――福田監督は、息子さんの部屋にあった「斉木楠雄のΨ難」の原作漫画を読んで、衝撃を受けたとのこと。どんな魅力を感じましたか?

福田雄一監督(以下、福田監督):まず、設定がとても面白かった。普通、超能力を持っている主人公だったら、超能力を武器にしますよね。僕はそういう作品しか見たことがなかったので、超能力を持っているのにそれが「迷惑だ」と思っている主人公なんて、ものすごい衝撃でした。「うわ!面白いの来ちゃったぞ!」と。まさに漫画「アオイホノオ」にあるセリフ、「これは売れる。これはいかんぞ」ですよ(笑)。そう思ったものを他の人にやられるのって、ものすごく悔しいものなんですよ。

――それくらい、ご自身の描きたい世界観とマッチしていたということですよね(笑)!

福田監督:原作漫画を読んで「面白い」と思ったということは、おそらくギャグセンスに共通したものがあるからだと思うんです。だからこれは、僕が実写化しても絶対に失敗しないという自信があった。うちの息子は原作の大ファンなんですが、その息子が「実写化すればいいじゃん」と言ったんです。実はその遥か前に、妻から「山﨑賢人くんっていう、すごくいい子がいるから。山﨑くんにハマる役があったら、お願いするといいよ」と言われていて。原作を読んだら、「楠雄と山﨑くん、似ているな!」と思って。これだ!ビターン!とすべてが合致しました。非常に幸運な出だしをしましたね。

麻生周一先生(以下、麻生先生):これは福田監督のご家族に本当に感謝です(笑)。僕が「実写映画化する」と聞いたのは、まだアニメ化も決まっていないときでした。なので、アニメ化だと思って意気揚々と話を聞いていたら、実写化だと言うので「嘘だろ」って(笑)。まったく想定もしていない出来事だったので最初はかなり戸惑いました。もちろんやりたいとは言いましたが、正直、キャストが決まって、ビジュアルが世に出るまで信じられなかったですね(笑)。ドッキリじゃないにしても、どこかで立ち消えたり、ポシャるんじゃないかと……。

福田監督:確かに映画化ってポシャる時がありますからね。

麻生先生:でも福田監督だと聞いたときは、めちゃくちゃうれしかったですね。僕は以前、勇者を題材とした漫画を描いているんです(『ぼくのわたしの勇者学』)。でも「影響を受けるとダメだな」と思って、「勇者ヨシヒコ」はあまり観ないようにしていました。そして勇者ものの漫画が終わって、次は探偵ものをやろうと思ったんです。でもそう思って読み切りを描いている時に、今度は堂本剛さん主演のドラマ「33分探偵」を観てしまって。すると僕がやりたいこと、そのまんまだったんです。コンセプトも題材も。もうその時点で、描くのをやめました(笑)。

福田監督:あはは!やっぱり面白がるところが似ているんだと思います。

麻生先生:おこがましいようですが、そうなんですよ。だから、一時期は福田作品と距離を置くようにしてました(笑)。影響を受けちゃダメだと思って。

福田監督:笑いのツボが似ている。僕、「銀魂」の空知(英秋)先生にも「福田さん、きっと『銀魂』より『斉木楠雄のΨ難』の方が合っているよ」と言われましたもん(笑)!

――実写映画化する上で大事にしたこととは、どんなことですか?

福田監督:脚本を書くときは、まず(当時発売されていた12巻までの単行本に)自分の好きなギャグすべてに付箋を貼っていきました。1本の映画として、これらすべてをインクルードするにはどうしたらいいんだろう?と考えていったんです。それくらい好きなギャグがたくさんありました。

――完成作を拝見すると、文化祭のストーリーが中心となっています。

福田監督:文化祭を中心にすればこのギャグも使えると、逆算して考えていった結果です。そしてギャグを柱に考えるときに大事にしていたのが、山﨑賢人がこれまでやってきたキャリアの“セルフパロディ”をやりたいということ。コンセプトとしては、斉木楠雄と照橋心美のちょっと行き過ぎたラブストーリー。これは、今までに山﨑賢人がやってきたスウィート系の作品の最終形態です(笑)。だから楠雄の壁ドンは絶対にやりたかった!でも実は、賢人くんは『L・DK』で見せた1回しか壁ドンをやったことがないんです。やらせてみたら、本当に超下手でしたよ!「何それ!全然かっこよくないじゃん!」と現場で言いました。

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

麻生先生:僕は、文化祭が中心になっているのは驚きました。まだ体育祭とかの方がやりやすいんじゃないかと思った。でも完成作を観てみると、マラソンの回やドッジボールの回など、うまくつながっているんですよね。ギャグもよくこれだけ盛り込んだなぁと思いました。

福田監督:燃堂と灰呂のマラソンの速度感が全然違うんですよね。灰呂役の笠原秀幸くんが全力で走っているのに、燃堂役の新井浩文くんは悠々と走っている(笑)。

麻生先生:あのくだりは本当に面白かったです。合成の安い感じといい。

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

福田監督:そう!絶対にクオリティを上げないCG合成(笑)!ギャグものはCGのクオリティを上げたり、あまり巧妙にしちゃうと、笑いがなくなっちゃうんですよね。

山﨑賢人さんが死んだ目をして佇んでいるところが、まさに僕のイメージしている斉木(麻生)

――山﨑賢人さんにとって、コメディ映画は初挑戦です。“セルフパロディ”とのお話もありましたが、まさにイメージを覆す新境地となります。

福田監督:僕は絶対にハマると思っていました。スイカを志村けんさんのように食べているシーンは、賢人くんの方から「志村さんってどうやって食べるんでしたっけ」と聞いてきたんです。ふたくち目くらいで「むぅ!」と飲み込めなくなってしまったり、賢人くんのやるすべてが面白かった。夏休みに楠雄と心美がばったり街で会ってしまうシーンでクランクインしたんですが、(照橋心美役の橋本)環奈ちゃんが思い切ってやってくれたので、賢人くんも「これくらいやっていいんだ」と感覚がつかめたと思います。賢人くんはもちろん、心美の妄想の中の楠雄も演じることになりますが、「心の臓が止まっちゃうよ〜!」とかなりヤバい顔をしてくれました。

麻生先生:あのシーンが初日だったんですね。初日からあんなに弾けていたなんてすごいですね(笑)。僕は「斉木役は山﨑賢人さんです」と聞いたときに、実はあまりよく山﨑さんのことを知らなくて。『デスノート』のLをやっている人だと聞いて、めちゃくちゃイケメンだなと思いました。それから色々とググってみても、出てくる画像が全部イケメンで。僕の中では、あまり斉木とは結びつきませんでした。福田監督が最初からハマると見抜いていたのは、すごいと思います。

でも完成作を観てみると、驚くほど斉木でした。ポスターの写真1枚見ても、斉木そのもの。大満足です。僕は山﨑さんの真顔がすごく好きなんです。その真顔が完全に斉木。イケメンなんだけど、斉木。死んだ目をして教室に佇んでいるところなんて、めちゃくちゃ僕がイメージしている斉木なんです。

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

――確かに、あそこまで山﨑さんが振り切った演技をしているのには驚きました。福田監督にとって、「この人はコメディができる」と見抜くコツはあるのでしょうか。

福田監督:それはありますね。第一条件は、自分を面白がって来ない人。中にはいるんですよ、「俺、めっちゃ面白いんです」と言ってくるイケメンが。「俺、めっちゃ面白いことできるんです」って。そういうのはいらない(笑)。基本、僕は真面目にやってほしいタイプなんです。「勇者ヨシヒコ」にしても、山田孝之がふざけている顔って見たことないじゃないですか?

麻生先生:そのイケメンが誰なのか、すごく気になります(笑)。

――今回は、みなさん『斉木楠雄のΨ難』の世界で新たな一面を存分に発揮しています。麻生先生は、驚かされたようなキャラクターはいらっしゃいますか?

麻生先生:吉沢亮さんの海藤瞬も好きですし、あとは橋本環奈さんの照橋さん。これには驚かざるを得なかったです……。ある意味、山﨑さんが食われてしまっているようなシーンもあって、ものすごい弾けっぷりでしたね。

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

映画『斉木楠雄のΨ難』/(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

福田監督:あの時期、環奈ちゃんはノッてましたね。『銀魂』で神楽を演じたその翌月に、本作の撮影をしているので、“おもしろハイ”みたいなテンションになっていた(笑)。それが大成功でした。今回、環奈ちゃんのナレーションは絶対に現場で録りきりたいと思っていて。実際、ほとんどが現場で録音したものを使っています。こればかりは、自分で自分を褒めてあげたい! ある程度の時期を経たら、絶対にその“おもしろハイ”がとれてしまうと思ったんです。環奈ちゃんのトーンは、あの時期にしか出せなかったものだと思います。

日本映画界に“ギャグ映画”が必要。山﨑賢人が斉木楠雄を演じる意味とは?

――お二人にとって、“笑いの原点”となったような作品と、“笑い”にこだわる理由を教えてください。

福田監督:僕は、鴨川つばめ先生の「マカロニほうれん荘」です。こだわる理由は、簡単に言うと僕は“笑い”以外に、興味がないんです。泣けるものや、感動するものに興味がない(笑)。作品の感想も「笑えました」と言われると、すごくうれしいんです。

今回の映画は本当にチャレンジだと思っています。日本ではなかなかギャグ映画が成立しないし、ヒットしづらい。僕はスティーヴ・マーティンレスリー・ニールセンの『裸の銃(ガン)を持つ男』など、アメリカのギャグ映画が大好きで。どうしようもなくくだらないけど、とにかく笑えるんです。僕は、なぜ日本のエンタテインメント界がなかなか育たないのかと思うと、「こういうものあっていい」という考え方ができないからだと思っていて。もちろん膵臓を食べてもいいし(笑)、泣けて感動できる映画があってもいい。でも一方で、ただただ笑える映画があってもいいと思う。「こんなのは映画じゃない」と言うよりも、「こういうのがあっても面白いよね」と言える日本映画界であってほしい。だからこそ、「斉木楠雄のΨ難」という最高の題材をいただき、それを今一番人気のある山﨑賢人にやってもらうことに意義があった。全国公開の大きな映画としてギャグ映画があるというのは、すごく大切なことだと思っています。

麻生先生:僕のギャグものの原点は、うすた京介先生です。そのうすた先生が以前「『アオイホノオ』の島本和彦先生に影響を受けた」とおっしゃっていました。そういう意味でやはり福田監督と僕は同じようなルーツを持っているといえるのかもしれませんね。

今回、福田監督のおっしゃったチャレンジの機会にご一緒できて、めちゃくちゃ光栄に思っています。それに山﨑賢人さんやゆずさんをはじめ、そうそうたるみなさんが「斉木楠雄のΨ難」の世界を成立させてくれるなんて、光栄以外のなにものでもないです。

僕は、当初は感動ものを描きたい。感動させられるものなら、感動させたいと思っていました。なかなかそちらの才能がなくて、僕にはギャグしかできないな……と思ってギャグ漫画を描き始めました。最初はそういう気持ちでしたが、今は「笑うって本当にいいことだな」と実感しています。泣くよりも、笑う方がいい。福田監督と同じで、読んでくださった方に「面白かったです」「笑えました」と言ってもらえるのが、すごくうれしいんです。

(インタビュー・文:成田おり枝)

■公開情報

映画『斉木楠雄のΨ難(さいきくすおのサイなん)』
2017年10月21日(土) 全国ロードショー

出演:山﨑賢人 橋本環奈
新井浩文 吉沢亮 笠原秀幸/賀来賢人 ムロツヨシ 佐藤二朗
脚本・監督:福田雄一
原作:「斉木楠雄のΨ難」麻生周一(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
制作プロダクション:プラスディー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=アスミック・エース

公式サイト

福田雄一

1968年7月12日生まれ、栃木県出身。1990年に旗揚げした劇団ブラボーカンパニーで座長を務め、全作品の構成・演出を担当。監督・脚本を担当した「THE3名様」シリーズ、「33分探偵」などで着実にファンを増やす。2009年には『大洗にも星はふるなり』で映画監督デビュー。深夜のコメディドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズで人気を不動のものとした。2017年は映画『銀魂』を大ヒットさせている。

麻生周一

1985年生まれ、埼玉県出身。「勇者パーティー現る」で第64回赤塚賞準入選を果たし、2006年34号の週刊少年ジャンプに同作品が掲載される。その後「ぼくのわたしの勇者学」「新世紀アイドル伝説 彼方セブンチェンジ」の連載を経て、現在「斉木楠雄のΨ難」を連載中。同作品は連載5周年を突破し、コミックスの累計発行部数は500万部以上の人気作となっている。


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