北欧、南米に続くか!? 世界を魅せる信州フレンチ

2014.11.21 (金) 21:47

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浜田統之シェフによる「佐久鯉のコンソメ 鯉のブーダンノワール」。『NORIYUKI HAMADA, RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』に掲載。Photographer: Richard Haughton

2013年に無形文化遺産に登録された和食、世界中でファンを増やし続けているラーメン、各国の一流料理店で供される日本酒など、今や日本の食文化は世界でもスタンダードになりつつある。一方、他国の料理事情はどうだろうか。

浜田統之シェフ。Photographer: Hirofumi Inaba, Hoshino Resorts 世界におけるフランス料理のトレンドは?

浜田統之シェフ。Photographer:Richard Haughton

今、世界が注目するフランス料理のシェフが日本にいる。2013年の「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で、日本歴代最高となる3位入賞を果たした浜田統之シェフだ。2年に1度フランスのリヨンで本大会が開催される同コンクールは、世界中のフランス料理人にとって出場すること自体が栄誉とされる、いわば料理人のオリンピックだ。浜田シェフは採点対象となる肉料理、魚料理のうち、魚料理では世界最高得点を獲得した。

「これはすごいことです。優秀な日本人シェフが過去何回も挑戦しているのですが、ヨーロッパ勢が1位から3位を独占し続けてきました。彼の料理が正統に評価されたことは、日本人がフランス人のフランス料理を模倣する時代から日本人によるフランス料理が世界に受け入れられる時代になったことの象徴です」と、代官山 蔦屋書店の料理コンシェルジュ後藤奈岐氏は言葉に力を込める。


世界におけるフランス料理のトレンドは?

世界中のグルメ業界に強い影響力を持ち、トレンドの発端ともなっているのが、イギリスの雑誌『レストラン・マガジン』で発表される“世界ベストレストラン50”だ。毎年のリストでは、英語圏のレストランが常に上位にランク付けされ、2006年からは4年連続でスペインの「エル・ブジ」、2010年からは3年連続でデンマークの「ノーマ」が首位に輝いている。ランキングは、ガストロノミー(美食)の中心がフランスから多彩な土地と技法の料理へと分散してきたこの20年の状況を如実にあらわしている。

このなかで首位が、分子調理に代表される科学的な料理で世界を驚かせてきた「エル・ブジ」から、「北欧ガストロノミー」という言葉とともに世界のメディアで注目を集めた「ノーマ」に替わったことが2000年代のトレンドを裏付けている。クリエーターとしての料理人が「創造する料理」から、土地(テロワール)や食材の特徴を最大限に「引き出す料理」に、人々の関心移ってきたということだ。「フランス産の食材を使ってフランス料理を作っても、フランス人にはかなわない。だったら自分たちにしか使えない食材で、自分たちなりのガストロノミーを作って行こう」。そんな姿勢の料理人たちが世界各地で高い精度の仕事をしている。

浜田シェフの料理もまた、「食材」「地域性」がキーワードだ。シェフが総料理長を務める軽井沢ホテルブレストンコート(長野県)のメインダイニング「ブレストンコートユカワタン」でその料理を味わった後藤氏は、多彩な食材の魅力に感銘を受けたという。「リンゴやマツタケ、マス、アユ、豚肉など地元信州の旬のものがフランス料理の技法によって、普遍的な料理に仕上げられています。浜田シェフの皿の上では、ローカルであることとユニバーサルであることは矛盾しません。むしろ、ローカルであることこそが、彼の料理の世界的な評価のいしずえとなっているのです」。

信州のシェフが放つ、豪華料理本がすごい!

表紙は、雪が降り積もった木々をイメージ。フランス人デザイナーは厳しいながらも美しい軽井沢の風景に心奪われたという。Photographer: Hirofumi Inaba, Hoshino Resorts

Photographer: Richard Haughton、 Hirofumi Inaba, Hoshino Resorts

Photographer: Richard Haughton

Photographer: Richard Haughton

インテリアとして飾っても美しい。Photographer: Hirofumi Inaba, Hoshino Resorts

インテリアとして飾っても美しい。Photographer: Hirofumi Inaba, Hoshino Resorts

このほど、浜田シェフの料理の魅力や日本におけるフランス料理の可能性を示してくれる本が刊行された。フランスのグレナ社刊の『NORIYUKI HAMADA,RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』である。編集・執筆をフランス国内で活躍する料理書の権威、増井千尋氏が担当し、写真は彼女との共著も多いロンドン在住アイルランド人写真家のリチャード・ホートン氏が手掛ける。フランスでの発売は2014年11月26日、日本での発売は12月1日だ。

日本の一地方のレストランが、フランスの出版社から料理本を出すのは初の試みだ。これは、日本のフランス料理を世界に発信する上で意義深いという。

「世界のプロフェッショナルが注目するフランスの版元から出版することで、日本国内においても逆輸入的に注目を集められます。また、シェフの料理の技量とともに、信州の食材や自然の素晴らしさが伝わってくることもこの本の魅力です。食材に光を当てるのはシェフですが、それだけでは料理は成り立ちません。食材の作り手と、料理の作り手、そしてそれを食べる人々がいてレストランの料理は成立しますが、彼らは地元の食材を押し出すことで、地域の生産者の仕事を持続可能なものとし、味わいの多様性をもたらすということを戦略的に行っているのです。地域食材のプロモーションのターゲットはレストランの顧客だけではありません。地域を代表する高級レストランで使われる食材がレストランの顧客以外の人々の注目も集めるということについて、ユカワタンの人々は極めて意識的です。ですから、この豪華な料理本には、ひとりの料理人、ひとつのレストランの自己説明だけに留まらない大きな意図が含まれるのです」(後藤氏)


フランス料理は美食の世界の共通言語

浜田シェフの料理には、フランス料理が持つ「世界の共通言語」としての強みがある。例として後藤氏が挙げたのは、浜田シェフの夏のスペシャリテ(看板料理)「鮎のブーダンノワール」。

豚の血を使った腸詰、ブーダンノワールで、鮎をはらわたごとくるんだもので、「ブーダンノワールの濃厚さを知るフランス人にとっても、鮎のはらわたの苦味を知る日本人にとっても味覚の驚きがもたらされるでしょう」。世界に信州の食の魅力を発信する上で、日本料理ではなく、フランス料理の技法を用いることの強みは、世界の共通言語としての普遍性にあるのだ。

2015年1月から2月にかけて期間限定で東京に出店する「ノーマ」のシェフ、レネ・レゼピ氏も、浜田シェフらの案内で信州を訪問し、その多彩な食材に魅せられたという。レゼピ氏が日本の食材をどのように料理するのかも気になるが、地域や自然環境などに対する自分たちの役割について意識的な料理人たちが活躍する日本のフランス料理界からも目が離せない!

信州フレンチの“美”を堪能する

『NORIYUKI HAMADA, RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』

グレナ社(フランス) 刊 18,000円(税抜)

フランス料理の本質である五味(塩味、酸味、甘味、旨味、苦味)を5章に分け、「素材」の章につなげる。常に「素材と向き合うこと」を料理の基礎に置き、「日本人の感性」と「フランス料理の確かな技術」で、素材を素材以上においしくすることを目指す浜田シェフ。「素材」の章からは、生産者と対話を行い、時には自らの知識や技術で生産者に問いかけ、共により良い食材を開拓したいという気持ちを感じ取れる。

【代官山 蔦屋書店】
料理コンシェルジュ 後藤奈岐 氏

映像業界で翻訳・ナレーション収録ディレクターを務めながらフランス料理を学んだ後、2011年に代官山 蔦屋書店のコンシェルジュへ。専門料理書や洋書のMDを担当し、料理フロアのフェアの企画も行っている。

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