幻の酒「獺祭」の秘密に迫る! トークショーレポート

2014.11.25 (火) 13:20

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左から桜井博志社長、勝谷誠彦氏

代官山 蔦屋書店のビジネスコンシェルジュが世の中に知ってほしいと思っているビジネススタイルを、各界のスペシャリストに語ってもらう「代官山ビジネススタイルカレッジ」が11月17日、代官山 蔦屋書店1号館のイベントスペースで行われた。今回のテーマは<旭酒造 桜井博志×勝谷誠彦 スペシャルトークショー~幻の酒「獺祭」の秘密 旭酒造こだわりの経営論~>。

山口県の小さな酒蔵「旭酒造」が、苦闘の末に造り出した純米大吟醸酒「獺祭」。今や国内外で評判を呼び、常に品薄状態が続く。旭酒造・桜井社長の経営の秘密に、日本酒に造詣が深いコラムニストの勝谷氏が迫った。


日本酒業界は「希望の星」

  
  

桜井社長が6年間の試行錯誤と失敗を続け、苦闘の末、ついに1990年に完成させたのが、幻の酒と評される獺祭だった。原料は、酒造最適米「山田錦」のみを用いている。その後も改良を続け、玄米を削り23%の精白米にして造った「獺祭磨き二割三分」が完成。これが今では獺祭の代名詞となっている。今年4月に来日したアメリカのオバマ大統領に安倍首相が贈ったのも「二割三分」だった。 『獺祭 天翔ける日の本の酒』(西日本出版社)の著書もある勝谷氏は、桜井社長が成功させた手法についてこう語る。

「酒造りの最後は、人間の感覚と感応によります。これは日本の産業の素晴らしいところです。機械に頼る部分は合理化を進め、人間の手作業が必要なところとどう棲み分けるか、そこが大事だと思います。杜氏の勘に頼っていた部分でコンピュータ化を図り、失われた20年の間に急成長を遂げたのが旭酒造なんです。酒造界はいま成長産業で、海外にも進出している。そんな希望の星なんです」


求められる「顧客の声を生かした革新」

だが、決して順風満帆だったわけではない。桜井社長が振り返る。

「山口県では完全な負け組みでしたし、岩国の市場での売上げも4番目だったんです。そこで自分たちの特別性を構築しなければいけないと考えた。そのとき、社会に要求する機能性が変わってきたこと、つまり、酔うための酒ではなく、楽しめるような酒にしていかないといけないと気づいたんです。そこで、年間を通して酒を造る四季醸造の実現や遠心分離機を導入し、これまでのように杜氏の勘に頼らず安定的な旨い酒を造ることを目指し改革を進めたのです。そして多くの人に飲んでもらわないと理解されない。ネットが普及し、その部分は助かりましたが、そうしたものが進めば進むほど人間のつながり、つまり、顧客の声を生かすことが大切になってくると思います」

そこで大切なのは、かつての日本のように個人技や頑張りだけでは乗り越えられるものではないということ。

「私が担当責任者によく、背中で覚える仕事はやめて、必ず言葉で説明する仕事をしろ、と言っています。勘とか仕事を盗めと言われても無理がある。言葉にできないことは、自分も理解していないんです。これからはそういう仕事の仕方がどんどん必要になると思います」(桜井社長)

日本の将来は「日本酒」にあり

そして今、蔵元の若き杜氏たちは海外へ目を向けている。蔵元の子息たちは農大の醸造学科へ進み、勘ではなくその本質を学び、そして海外留学も経験することが多い。桜井社長は「ニューヨークで日本酒は必ず受けると思い、息子を行かせた」という。

「ニューヨークでもロンドンでもパリでも、日本酒は売れています。ワインなどに比べ安いこと、それに和食のブームもあります。日本酒を含めて海外で日本は再評価されているんです。世界で今、景気が悪いのはモノを売り尽くしてしまったからです。資本主義は、新たなフロンティアを見つけて売ることで伸びてきた。車や携帯は新しいマーケットがほとんどないけれども、日本酒はまだ世界のほとんどが知らない。その意味で市場はもっと広がるでしょう」(勝谷氏)

アベノミクスの中で世界に進出する日本酒。桜井社長もこう主張する。

「車やパソコン、携帯などだけでは今後、頭打ちになるのは見えています。イタリアのファッション、フランスのかばんなどと同様、日本にも日本酒や漆器など優れたものがあります。そういうものを持っているところが強いと思います。そこを考えていかないと日本は将来、難しいでしょう」

  

示唆に富む内容のトークショーのあとは、聴衆に獺祭が1杯ずつ配られ、その味わいを確かめていた。

潰れかけた酒蔵が「獺祭」を生み出し、世界20カ国で評価されるまでの七転び八起きは、桜井社長の著書『逆境経営』(ダイヤモンド社)に詳しいのでぜひ一読を。

(文:青柳雄介)


◆プロフィール


桜井博志(さくらい・ひろし)/旭酒造株式会社代表取締役社長。1950年、山口県周東町(現・岩国市)出身。松山商科大学卒業後、西宮酒造(現・日本盛)での修行を経て、76年旭酒造入社。一時、家業を離れていたが、父の急逝を受け復社し「獺祭」の開発を手がけ、経営再建を遂げる。本格的な海外販売を目指し、近くパリを皮切りに海外直営店を出店予定。

勝谷誠彦(かつや・まさひこ)/コラムニスト、写真家。1960年、兵庫県生まれ。テレビのMCやコメンテーター、雑誌の連載などで活躍。対談『カツヤマサヒコSHOW1・2』『怒れるおっさん会議ⅰnひみつ基地』(ともに西日本出版社)などのほか、小説や評論など著書多数。年中無休で朝10時までに5000字以上を配信する有料メール『勝谷誠彦の××な日々』は、現代社会情勢を知る上で必読。


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カネなし!技術なし!市場なし!ピンチがいつも救ってくれた―。つぶれかけた酒蔵が、世界20カ国に展開するまでの七転び八起き。

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