「日本から世界へ。ニッポンフレンチ」トークセッションレポート

2015.3.2 (月) 12:20

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浜田統之シェフ

星野リゾート 軽井沢ホテルブレストンコート「ユカワタン」で総料理長を務める浜田統之シェフの豪華料理本『NORIYUKI HAMADA, RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』がフランスのグレナ社より2014年11月26日に刊行。さらに日本でも、代官山 蔦屋書店にて12月1日より発売が開始された。代官山 蔦屋書店では出版を記念して、浜田シェフのトークイベント&サイン会を12月8日に開催。

浜田シェフがフランス料理で表現し続けるのは、地元・信州の食材はもちろん、風土や自然、生産者の営み。日本の素材や感性を大切にしながら、世界に果敢に挑戦する浜田シェフ。そんな浜田シェフの世界観に迫るべく、食やワインに造詣の深いコラムニスト、中村孝則氏をモデレーターに迎え、「日本から世界へ。ニッポンフレンチ」をテーマとしたトークセッションが繰り広げられた。


長野県小布施にある「小布施ワイナリー」でつくられたスパークリングワイン『Obuse Sparkling E1 Rose Demi Sec』、ロゼのリンゴのノンアルコールスパークリング『Le Paulmier Pepinelle』いずれかをウェルカムドリンクで提供

田シェフがこのイベント用に開発したアミューズ。料理本の構成と同じ「塩味」「酸味」「甘味」「旨味」「苦味」の五味を感じられる一品。来場者はワインをあわせて楽しみながらトークに耳を傾けた

フランスで出版した意図と世界への挑戦

Photographer: Richard Haughton

Photographer: Richard Haughton

中村 まず、なぜ日本ではなく、フランスの出版社から出版したのでしょうか?

浜田 日本のレストランやシェフが日本に向けて発信しても、海外で評価を得ることはなかなか難しく、フランスには成熟した出版文化があり、料理本はひとつのジャンルとして確立されていて、プロダクトとしてのクオリティも非常に高い。せっかくなら、フランスで出版したいと思いました。

中村 やはり、世界を目指すという意識が高いと思いますが、なぜ世界を視野に入れて挑戦し続けているのでしょうか?

浜田 2005年「ボキューズ・ドール 国際料理コンクール」の世界大会に出場したのがきっかけです。そのときは12位でしたが、「なぜか?」と考えたときに、フランス料理の真似をしているだけに過ぎないと気付いたんです。このままやっていても世界から注目されるレストランにはなれない、自分にしかできないことをやっていこうと思ったのが一番大きいかもしれません。やっぱり、世界で戦うと見えてくるものがあります。

中村 今の時代、特に料理人やレストランは、ローカルでも世界一になれるチャンスがある。料理の世界では、発信次第で世界一を目指せます。フランスでの出版は、その戦略の一環でもあるかと……。

浜田 信州には『ミシュランガイド』はありませんから、世界に認めてもらう方法として選択肢が絞られてきたということもあります。イベントやボキューズドールの審査員としての活動の際に、この本を活用する機会も増えてきました。

日本の地方から発信するフランス料理とは

中村 とても完成度の高い本ですが、どのようなことを伝えたいと思って作っていたのでしょうか?

浜田 まず、フランスに向けては日本の技術の提案です。それから逆に日本に向けて、東京ではない地方のレストランでもここまでできるということを証明したかった。地方の良さや生産者たちをアピールすることで、日本がもっと元気になると思います。世界には地方でも面白いレストランがたくさんあります。その土地でないとできない料理が生まれた瞬間に、世界中からお客さまが食べに来るという現象が起こる。日本でも実現できれば、地方がもっと盛り上がっていくと思います。

中村 この本の中でも、信州の食材を意識的に使われていますよね。

浜田 “限る”ことによって、より発想が豊かになるのではないかと思っています。例えば、信州の佐久鯉。地元の食材しか使わないとしたら、素材について相当考えますよね。わざわざ信州まで食べに来ていただけるような鯉の料理を作るのはハードルがかなり高く、普通の食材の何倍もの時間をかけて向き合うことになる。でも、これが料理の本質だと思います。この本で、そういった料理の可能性を見ていただきたいです。

中村 僕が日本の評議員長を務めるグルメアワード「世界ベストレストラン50」も「ローカル・ガストロノミー」──ローカルな食材、生産者、食文化にリスペクトして、そのエリア自体の魅力を伝えるのがトレンドになっています。浜田シュフが取り組んでいる「ローカル・ガストロノミー」はどのようなものでしょうか?

浜田 「ユカワタン」では食材を作るところから取り組んでいます。例えば、牛や豚、鶏もユカワタン用の育て方でお願いしています。地元の生産者とコミュニケーションを取りながら、僕たちスタッフも頻繁に現地へ向かう。どのような飼料でどのように育てるかなど、都度考えながら、生産者とともに食材自体も進化していくように協力して頂いています。

「ニッポンフレンチ」の真髄とその可能性

写真(左)浜田統之シェフ/(右)中村孝則氏

中村 今、海外でも「ニッポンフレンチ」の言葉を聞くようになってきており、今後ジャンルとして確立してくのではないかと思っています。浜田シェフが目指す「ニッポンフレンチ」とは?

浜田 日本の食材とフランス料理の技法をどのように融合させていくかを常に考えています。また、そこに日本の技術が加わると、新たな可能性も見えてくる。例えば、鯉。鯉は複雑な骨組みをしているため、フランスでは赤ワインで丸ごとくたくたに煮て、骨を柔らかくします。ただ、身がボソボソになってしまうため、濃い赤ワインソースを合わせます。でも、そこにハモなどで施す日本の骨切りの技術を用いると、適切に火が入って身が美味しい状態で仕上がり、ソースも濃くする必要がない。さらに、海外ではあまり使わない内臓を使ってブーダンノワールにするなど、日本の食材や日本の技法によりフランス料理以上になるものもある。鯉のブーダンノワールは、フランスと日本のよいところを掛け合わせれば、フランス料理を超える「ニッポンフレンチ」が創り出せることが証明された一品だと思っています。

中村 「ニッポンフレンチ」が世界に通用する可能性は大いにあると?

浜田 僕はそう思います。美味しいフランス料理が日本にあるといっても海外からはなかなか注目されませんが、日本の食材とフランス料理の技法で、フランス料理以上のものが日本にあるとすれば、海外からもたくさんの方が足を運ぶと思います。

中村 本を出版したことで、ひとつの大きなスタートラインに立ったと思いますが、これからの具体的な目標などはありますか?

浜田 日本でないとできない、もしくは地方ならではという料理を、日本の料理人たちがもっと考え、日本だけではなく世界に発信していくのが理想です。海外からお客さまが来るようなレストランが、東京だけではなく地方に少しずつでも増えていくと、本当に楽しい。今後も地方の食材を使って、海外からわざわざ食べに来てもらえるような料理を一品でも多く作り、ますます世界に発信していきたいと思っています。

中村 日本は食材も含めて地方の食文化がとても豊かな国ですから、それを見つめ直す機会として、浜田シェフのように地方から発信できるレストランが増えてくるのは素晴らしいことです。さらに長野は長寿県。ガストロノミーの注目のテーマのひとつはアンチエイジング──健康に美しく老いていくことです。浜田シェフが取り組んでいる「ニッポンフレンチ」が、アンチエイジングにもつながり、日本のポテンシャルをさらに世界に広められるのではないかと思います。これからも応援していきます!


世界が注目する浜田シェフの「ニッポンフレンチ」は、東京ではない地方で、その土地だからこそ創り出すことのできる料理。生産者と一緒に取り組むことで地域の活性化にもつながり、地方の豊かな魅力をも表現するものだ。地方から発信する「ニッポンフレンチ」が新たなムーブメントになる可能性を確信できるトークセッションだった。

『NORIYUKI HAMADA, RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』を購入する

(文:久保田裕子)

浜田統之(はまだのりゆき)

星野リゾート 軽井沢ホテルブレストンコート総料理長。1975年、鳥取県生まれ。イタリア料理を経て、24歳でフランス料理界へ。2007年、「ホテルブレストンコート」の総料理長に就任。2011年メインダイニング「ユカワタン」オープン 2013年「ボキューズ・ドール国際料理コンクール フランス大会」で日本史上初3位入賞。2014年ウィナーズ・アカデミーの会員として、ボキューズ・ドール国際料理コンクール、ヨーロッパ大会、アジア大会、フランス大会本選で審査員を務める。

「ユカワタン」公式ページ

中村孝則(なかむらたかのり)

コラムニスト。1964年葉山生まれ。ファッションからインテリア、食、酒、車、旅、ホテルなど、ラグジュアリー・ライフをテーマに雑誌や新聞、TVで活躍中。2007 年、フランス・シャンパーニュ騎士団シュバリエ(騎士爵位)の称号を叙勲。現在、グルメアワード「世界ベストレストラン50」「アジアベストレストラン50」の日本評議委員長を務める。自著に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)。

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