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「スイーツブーム」は何故起きるのか? スイーツ番長が語る業界の裏側

2015.3.28 (土) 22:00

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いつの時代も人々を熱狂させているスイーツ。雑誌やテレビで情報をチェックし、人気店で何時間も行列待ちをし、SNSで流れてくるおいしそうな写真にうっとりし……。特にパンケーキやかき氷、ポップコーンなど、ブームになっているスイーツに対してはなおさら情熱を傾けずにはいられないというもの。甘党ならば気にせずにはいられないのが、この「スイーツブーム」だ。

記者も大の甘党だが、気づけばいつも何かしら世間を賑わせているこの現象の仕組みがずっと気になっていた。そこで、「スイーツといえばこの人」とも言うべき人物、スイーツ番長に業界の裏側をインタビュー。強面のルックスながら、深い見識と個性的な文体、美しい写真で独自のスイーツ評を展開。2007年に立ち上げたブログ「男のスイーツ」がスイーツ男子ブームのきっかけになり、その後もスイーツの識者として各メディアで活躍し、スイーツのプロデュースも行ってきたスイーツ界の牽引者だ。

果たして、スイーツブームが私達にもたらしているもの、意味とは?


スイーツブームのカギは、感動を伴う「ストーリー」

――スイーツ番長さんがブログで情報を発信する際に心がけていらっしゃることはありますか?

いわゆるスイーツブロガーさん達とは少し目線が違うと思います。僕の場合はブログで情報を発信することが仕事ですから、思い出や記念という意味合いではなく、読者のみなさんに「おいしさの発見」を促すことです。

――世間で流行っているもの、というよりもその先にあるものを提案していこうということですね。

例えば、「このスフレパンケーキ、見たことないでしょ、初めてでしょ、この食感」って先に言ってしまえば、たとえそれが、従来からあるパンケーキでも新しいデザートに感じる。重要なのはキーワードやストーリーをつけて紹介して楽しませるということ。それは仕掛けというものなのかもしれませんね。

――プロデュース業などを行う番長さんも仕掛け人としての側面をお持ちだと思います。仕掛け人として、番長さんはどのようにブームを予測されているのですか?

それが分かれば、ブームを完全にコントロールできるでしょうね(笑)。実際は、偶発的なもの。

たとえば、バターの香りが購買意欲を誘うクロワッサンですが、あの香ばしい焼きたての美味しさは一瞬のもの。家庭で食べるころには冷めてつぶれてしまっていることもあります。焼きたてのクロワッサンの美味しさを知っているのはブーランジェ(パン職人)たちだけなんですね。ところが、お客さんにもこの焼きたてのクロワッサンを手軽に楽しんでほしい!というブーランジェがいて、一念発起し苦心の末に完成したのが「二次発酵済の未焼成クロワッサンの冷凍生地」。ブーランジェのクロワッサンが家のオーブンで簡単に焼けてしまうんです。このおいしさに専門家やパンマニアがいち早く気づき、ネットショッピングで販売開始して1年を過ぎたころに「お取り寄せ大賞」を受賞して、注文が受け付けられないほどのオーダーが入ったんです。最近のブームである「ひと手間かけておいしいものを楽しむ」というニーズが影響していたんですね。

ブームは偶発的なものと言いましたが、ブームが起きるということについて絶対に言えるのは、「ブームを体験することに感動があるかどうか」ということ。それは、思い出になるものだったり、共有したいと思えるものだったり……。これがスイーツを楽しむストーリーになるんです。クロワッサンだったら、従来はなかった「家でブーランジェの焼きたてを食べる」というストーリーですね。この要素がなければブームは起こらないでしょうね。

原宿を制す者はスイーツを制す。「見たことない!」の発信地

取材時に提供されたスイーツもしっかり写真を撮り、的確に材料や調理のポイントなどを述べるスイーツ番長。審美眼に驚かされる

この日、スイーツ番長が食べたスイーツ(!?)の1つ、大人のトリュフ&フォアグラパンケーキ。フレンチの今関シェフ考案の絶妙な厚みのパンケーキにはおからとトリュフが練り込まれている。フォアグラ、トリュフ、ポーチドエッグ、ベーコン、生ハムをトッピング。「食事の最初の一皿でコレ出てきたら掴まれちゃうよ。ホテルならではだね。めちゃめちゃうまい」

――そもそも、スイーツが盛り上がる仕組みというのはどのようなものなのですか?

ネットがない時代は、テレビで有名人とかが「おいしい」って言ったものに共感したくて盛り上がっていたんだよね。でも今はちょっと違っていて。

やっぱり、ストーリーなんですよね。

パンケーキのブームを例に上げると、2008年に上陸した「bills」がきっかけですね。これは日本で海外ドラマやセレブが流行って、女性誌でもそういうライフスタイルが取り上げられたりしていました。こういうタイミングで、「NYセレブやハリウッドセレブが愛するレストラン」「世界一の朝食」っていう触れ込みとともに海外からやってきた。この朝食というはスクランブルエッグのことなんですが、メニューにあるパンケーキが見たこともないビジュアルで。 パンケーキっていうのは、昭和時代からホットケーキと呼ばれてきた喫茶店やファミレスの定番メニュー。それが、ふわふわでくちどけが良くて、ハニーコームバターとかいう、当時は聞いたこともないものを使っているっていうのが、すごくインパクトがあったんですね。

食文化に対する好奇心にも刺さったということ、デートや遊びで食べるといったシチュエーションに使えたとか、いろんな要素がハマった。そこからハワイの『Eggs 'n Things(エッグスシングス)』が原宿にできたのをきっかけに、原宿に行列ができるようになった。

そもそも原宿は街そのものに発信力があり感度が高いので、商材に力、個性があれば、他の場所では行列しにくいモノでも行列が起こりますね。

――原宿はクレープブームなどが起こりましたし、土地柄、粉物ブームの素地はあったということでしょうか?

一つのエリアと言っても、原宿の竹下通りと表参道って、全く客層が違う。

粉物で言うと、原宿の象徴といえるクレープとパンケーキは、全く層が違いますね。クレープは500円ぐらいで、大きくて腹持ちが良く、オヤツや食事代わりにファストフードとして若い子たちが並びます。行例ができるグルメポップコーンは、パンケーキを求める層と似ていますね。値段も従来の菓子ポップコーンとは違い、素材や製法にこだわりがあり高額です。

原宿というところは、土地代が高くて個人では出店が難しい。仕掛けているのは、大きなお金を動かせる企業です。彼らがリサーチを重ね、海外で流行のレストランやクラブ、ホテル、リゾートを巡って日本にはないものを探してくる。そしておさえた物件にお店をオープンするという流れですね。

メディアがブームを作る時代は終わった。ブームを動かすのは、企業とネット

――ブームは、メディアが仕掛けるものだと思っていました。

バレンタインの時期になると、メディアから「本命チョコベスト5」とか「義理チョコベスト5」を教えてくださいって言われたりするんだけど。今は本命チョコなんてみんな買ってないんだよね。家族や自分、友達用の方が多くて。メディアは、イベント事に形骸化してしまって、消費者の方が先を行っている。

あと、スイーツのあり方が変わって来た点をいえば、行列。あれはスイーツを求めているというよりも、SNSで行列に並んでいること、食べるという行為自体をみんなに伝えたい、楽しさを共感したいという意味合いが強い。ここ2、3年は特に顕著ですね。

お店側も、わかっているところは、ちゃんとそこを意識している。映えるビジュアルのものを提供したり、上手にパフォーマンスをして、お客さんにSNSで発信したい、それを見た人にも食べたいと思わせるようにしている。そういうお店は、やっぱり流行っていますね。

――ブームはお店や企業の戦略として仕掛けているパターンが意外に多いのですね。

メディア側は企業から情報を提供してもらっていますし、ネット検索やブログでネタを拾える時代になりましたからね。メディアから個人へ情報を届ける、という従来のあり方ではなく、個人の情報をメディアが求めるようにもなった。ネットが普及したからこそ、次から次へと新しいものを発信していかなきゃいけないから。

食は人が情報として食いつきやすいジャンル。だからこそ、(多くある中から大勢に訴求するためには)よいものにストーリーを添えて、ブランディングしていくことが必要。商品そのものの希少性や行列させること、とかね。例えば、ポップコーンを人からもらった時に、それが行列ポップコーンブランドならば、「並んでまで買ってきた」感があって、余計にありがたいじゃないですか。

――確かに、行列に並んで買う達成感ってありますよね。

それ、重要です。魔法なんですよ、並ばせるということは。お店は意図的に並ばせているんです。お店はそういうストーリーを作っているんですね。

ちょっと前に話題になった、クリスピー・クリーム・ドーナツとかは上手ですよね。並んでいる時に、これから販売する商品丸ごと1個を配るっていう、あれ。しかも揚げたてなので、凄くおいしいんです(笑)。最近はここを踏襲して、積極的に並んでいる客に試食を出したり、声掛けをしたりするところも多いですね。

――スイーツブームとは、一体何なのでしょうか。

お祭りだよね。味云々だけではなく、すなわち食を楽しむ「FUN FOOD」、並ぶこと自体がイベントなんです。

(文:高橋七重、撮影協力:ニューヨークラウンジ by インターコンチネンタル 東京ベイ

【プロフィール】スイーツ番長

独自のスイーツ評で注目を集め、テレビ、ラジオ、新聞雑誌、WEBコンテンツ、ソーシャルメディアなどで活躍。それらの経験を活かしたスイーツ&グルメなどのプロデュース、商品開発、コンサルタント、催事リーシングも手がける。著書に「男のパフェ」(日本出版社)「スイーツ番長の至高の10大スイーツ」(東京書籍)「手みやげスイーツ100選」(東京地図出版)ほか。フードキュレーター協会代表、2014年にグルメブログのインフルエンサーユニット「たべあるキング」を旗揚げし主宰を務める。

日本女子博覧会 グルメプロデューサー
PLATINUM GOURMET 主宰
たべあるキング 主宰
フードキュレーター協会 代表


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