日本のパンの新時代を作る。国産小麦のヌーヴォー“新麦”を応援するラボ「新麦コレクション」お披露目会

2015.8.14 (金) 13:16

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パンラボ「新麦コレクション」
『パンの雑誌』

『パンの雑誌』

2015年7月23日(木)。代官山 蔦屋書店にて、パンの研究所「パンラボ」の新しい取り組み「新麦コレクション」のキックオフが行われた。平日の夜でありながら、会場はパン好きたちで満席。

近著『パンの雑誌』など、その並々ならぬパン愛を掘り下げた著書で人気のパンラボ創設者、池田浩明さんと代々木の人気店「365日」の杉窪章匡さんをメインに、国産小麦のヌーヴォー“新麦”への情熱が語られた。


「新麦コレクション」って一体なに?

新麦コレクション

「新麦の季節をご存知の方いらっしゃいますか?」。池田さんのそんな質問からスタートしたトークショー。約80名の参加者の熱い視線のなか、まずは「新麦コレクション」の概要について語ってくれた。

「小麦の収穫は夏。本州ではもう収穫が始まり、製粉して粉にするタイミング。北海道はこれからです。日本は、新そばや初鰹など、四季に合わせた旬の食を大事に楽しむ国。小麦もそうやって楽しめるのではないか? と思ったのがきっかけ」と、池田さんは話す。

「そもそもパンはエジプトがルーツ。目の前に小麦畑があって、この穀物をどう食べるかを思考錯誤してパンが生まれました。日本でも、パンには外国産小麦粉が合うと言われた時代から、国産小麦への関心を高めるべきときが来ています」。

池田浩明氏

池田浩明氏

開場の様子

アメリカ産の小麦粉から始まった日本のパンの歴史は、小麦の味の実感がないままにスタートしている、と池田さんは言う。

「農家の人は自分が作る小麦の味を知らない方が多い。食べ物を作っているにもかかわらず、おいしいと言われたことがないんです。「キタノカオリ」や「はるゆたか」など、病気に弱い品種ほど個性があるのですが、リスクがあるから手を出したくない。各農家の小麦粉は、大きなサイロに集めて一緒にされるので、均一な味とレベルが満たされる小麦を作ればいいというスタンスが生まれているんです。そんななか、この粉がおいしい、とパン屋が伝えたことから始まって、こだわった小麦を作り始める農家が増えてきました。おいしいという声が私たちに帰ってくるという、いい循環をどんどん作り出したいんです」。

農家、製粉会社、流通業、パン屋、消費者を小麦畑に起こるウェーブに見立てたロゴデザインにもその想いが現れる。

「製粉しないと食べられないという、小麦の宿命。おいしいという言葉のバトンをリレーするように、みんなが一つのチームになって、話しあえる場があり、イノベーションが起こしていく。それが、この度NPOとして発足した組織『新麦コレクション』の大きな目的です」。


これからは新しい日本のパンをつくる時代

杉窪章匡

杉窪章匡シェフ

ここで、新麦コレクションの副理事でもある代々木公園の人気店「365日」の杉窪シェフにマイクが渡され、パン職人としての役割を話してくれた。

「8年前に本格的にパンに取り組みはじめた時、フランスにいたとき使っていたような粉が日本産にはなかった。大手の粉は製パン性がよくても、味と香りが少なく、無味無臭が常識だったからです。『新麦コレクション』は、農家が日本のおいしい小麦を作って、製粉会社が粉にする。これに尽きる。いい循環を継続するには、小麦粉を使うパン職人が国産小麦の必要性や意義を見出すべきです。フランスのパン文化を伝える→食パンや総菜パンを進化させる、という歴史を通り、これからは新しい“日本のパン”を作る時代。将来的に国産小麦の香りや味、製パン性を駆使したご当地パンを増やしたい。そんなパン職人が必ず国産小麦のコンスタントな供給先になるはずだ、と各農家に約束してまわっています。それがパン職人としての僕の役目」。

その後、各地の小麦農家へのインタビュービデオが流れ、今年の生育状況や製粉風景、畑の様子など、参加者たちは食い入るようにして生産者たちの声を聞いていた。

お待ちかねの“収穫を祝うパン”試食会は、大盛況!

365日のパン

カタネベーカリーのカンパーニュ

ダンディゾンのエピ

トークショーが始まる前から、テーブルの上にずらりと並んでいたパンの数々。これらは、プロジェクトに賛同した人気店から届いた“収穫を祝うパン”だ。パン好き垂涎のそうそうたるラインナップは、「ムールアラムール」、「ダンディゾン」、「ル・ルソール」、「ブーランジェリーレカン」、「パーラー江古田」、「GARDEN HOUSE CRAFTS」、「ブラフベーカリー」、「カタネベーカリー」、そして「365日」。

「この場でカットして、分け合おうと思います。このスタイルが、新麦コレクションの象徴」と、冒頭で語っていた池田さん。まずは唯一、今年の新麦(熊本県のオーガニック農家・東さんが収穫し、自ら挽いたもの)を使ったパン「365日」から。

「挽きたての熊本産『ミナミノカオリ』を使って日本のパンを作りたかったので、和の素材を使いました。僕はパンを作る前に必ず、小麦粉を舐めてテイスティングし、味と香り、唾液と絡まった時の粘度と溶け方、グルテンの質を確認します。この粉はタンパク質が弱めで、香りはきな粉のようで、若い感じ。ですから、織り込み生地にしてバターと合わせたペストリー生地にしたらおいしいんじゃないかと思ったのです。さらに、小麦粉にバターと水ときび砂糖をほんの少し混ぜてクリームにし、黒豆とともに巻きました」。表面はぱりっとしつつ中はしっとり。クリームとペストリー生地の一体感と、小麦粉と各素材の甘みが調和した見事な一品。

会場に駆けつけたパン職人のひとり、「パーラー江古田」の原田シェフは、「キタノカオリ」の全粒粉と湘南小麦を半量ずつ使ったベーシックなパン、カンパーニュを持参。葉山で勉強のために小麦栽培をしているという「GARDEN HOUSE CRAFTS」の村口シェフは小麦の穂をあしらったカンパーニュを。生産者の顔が見え、消費者に届くまでのたくさんの点をつなげたいと話した「カタネベーカリー」の片根シェフは4種のパンを提供した。ほかにも各ベーカリーからのコメントを池田さんが代弁するなか、さまざまなアプローチで国産小麦のおいしさを引き出したパンを、じっくりと味わい比較するという貴重なひとときを堪能で、参加者も感動ひとしお。

左から、池田浩明氏、「365日」杉窪シェフ、「カタネベーカリー」片根シェフ、「パーラー江古田」原田シェフ、「GARDEN HOUSE CRAFTS」村口シェフ

左から、池田浩明氏、「365日」杉窪シェフ、「カタネベーカリー」片根シェフ、「パーラー江古田」原田シェフ、「GARDEN HOUSE CRAFTS」村口シェフ


おいしい日本のパンを届けたくて——。池田さんを筆頭に、多くのパン職人やそれをとりまく関係者たちが動き出した。10月には、収穫祭として都内で新麦パンを販売する予定だそう。日本と農家の新しい希望が託されたこのプロジェクトを、おいしく楽しく、心から応援したい。

(文:関智水)

池田浩明 (いけだ ひろあき)
パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。東においしいパン屋あると聞けば、行ってパンを食べ、職人の声に耳を傾け、西にすごい小麦農家ありと聞けば、土を掘り返し、小麦をむしゃむしゃ頬張る。『パンラボ』(白夜書房)、『サッカロマイセスセレビシエ』(ガイドワークス)、『パン欲』(世界文化社)

杉窪章匡 (すぎくぼ あきまさ)
代々木上原「365日」オーナーシェフ。国産の素材を使い、ハムやあんこも自家製、常識を覆す製法で作り上げる、ポップで食べ手思いのパンで、食の世界を席巻する。福岡「ブルージャム」、名古屋「テーラテール」、向ケ丘遊園「セテュヌ・ボンニデー」をプロデュース。



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