台湾の名シェフ、アンドレ・チャンによるトークショー。世界中の食通が惚れ込む料理哲学に感嘆の声

2015.8.30 (日) 01:27

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アンドレ・チャン

2015年6月27日(土)。代官山 蔦屋書店のラウンジAnjinにて、台湾出身の世界的シェフ、アンドレ・チャンさんによるトークイベント「台湾味覚新体験」が開催された。

「サンペレグリノ・世界のベストレストラン50」にランキングされ、ニューヨークタイムズの「そこに行くだけのために飛行機に乗る価値のある世界の10のレストラン」に選ばれたシンガポールの人気店「レストラン・アンドレ」のグランシェフであるアンドレ・チャンさん。今もっとも注目されるシェフのリアルな声を聞こうと、会場には多くの人が詰め掛けた。台湾在住歴13年の青木由香さんをMCに、アンドレシェフによる最新スイーツの試食、そして彼の料理に対する想いを聞いた。

今もっともホットなシェフがアレンジした、最高にクールなご当地スイーツって?

長身のがっしり体型に映える、クールなジャケット姿で現れたアンドレ・チャンさん。白い歯をキラキラさせながらときおりビッグスマイルを見せる、自然体が好印象の今いちばんホットな若手シェフだ。

「アジアのベストレストラン50」では5年連続トップ15に選ばれ、昨年、今年と「世界のベストレストラン50」にもランクインし、南フランスのヌーベルキュイジーヌを主とした、軽やかで繊細で、アーティスティックな料理の数々がゲストたちを魅了している。2014年には、台湾に待望の新店「RAW(ロウ)」をオープン。そんなアンドレシェフの最新スイーツが、トークショーがはじまってまもなく、テーブルに運ばれてきた。

「『RAW』はフレンチの技法を取り入れながらローカル食材を使った料理を通じて、台湾のライフスタイルを提案する新しいコンセプトの店です。そんな『RAW』流のパイナップルケーキを、今回はご紹介したいと思います。台湾の伝統的なスイーツに新食感を掛け合わせた一皿になっています」と、アンドレシェフは話す。

丸い皿の空間を生かした盛り付けが美しい、アンドレシェフによる「パイナップルケーキ」。冷凍されたパイナップルのババロアに、濃厚なパイナップルのコンフィチュールがサンドされた一品は、しゃくしゃくとした食感とひんやり感が夏らしい。ココナッツの泡とバニラアイスを一緒に食せば、夏らしく洗練された味わいが楽しめる。

アンドレシェフによる「パイナップルケーキ」

アンドレシェフによる「パイナップルケーキ」

アンドレシェフ曰く、「伝統の味わいを壊すことなく、軽やかな仕上がりにしたかったんです。東洋と西洋のアイデアを掛け合わせたピニャコラーダをメインイメージにして、さまざまな温度帯を一度に味わえる仕掛けです」。

世界で活躍してきたシェフが、ふるさとである台湾の人々に新しい台湾食の楽しさを伝える。そんな想いが現れた一皿だ。フローズンパイナップルケーキ。このインスピレーションはどこから来るのか?天才では?というMCからの問いに、照れ笑いをしながら、アンドレシェフはこう答える。

「私の料理は、すべて計算されています。自分でも“コントロールフリーク“だと思うほど、たくさんの数字で構成された料理です。だから時間と精神力をかけないと、できない。私も、自分が天才だったらよかったのにと思います(笑)」。

アンドレ・チャンがシェフになるまで

台湾生まれの彼は、13〜15歳までを日本で過ごし、食材の大切さや鮮度の重要性を学んだという。その後15歳でフランスへ。「ルジャルダンデ・サンス」、「メゾン•トロワグロ」、「ラトリエ・ド・ジョエル・ロブション」、「ピエール•ガニェール」、「ラストランス」、といったフランス料理の名だたるシェフの指導のもと、ヌーベルキュイジーヌへの情熱を追求し、2008年、シンガポールの「ザ・スタンフォード スイスホテル」に移る。

後に「ジャーン・パー・アンドレ」と名前を変えた同ホテルのレストランは、2010年「世界のベスト・レストラン50」で39位にランクイン。世界的に名声を博すとともに同年、19世紀のテラスハウスをテーマにした「レストラン・アンドレ」を開店する。

予約は3〜4ヶ月待ち。人気店「レストラン・アンドレ」とは?

スイーツの試食が終わると、「レストラン・アンドレ」の成り立ちをまとめたビデオが上映された。食材にフォーカスされた、艶かしいほどのビジュアルと、コンセプチュアルな料理哲学「オクタソロフィカル」のキーワードが映し出される。食材に対する並々ならぬ想いと、計算された料理へのアプローチ、アンドレシェフの美意識がまとめられた美しいものだった。

アンドレ・チャン

アンドレシェフ(左)と青木由香さん(右)

「いま、ホームシックになってしまいました(笑)」

上映後、一番に放った彼の言葉だ。パリ、シンガポール、台湾のほかにも、こうやって数々の国を飛び回るシェフ。その彼が開いた最初のレストランに対する、大きな愛情が伝わって来る。

今年10月に5周年を迎える「レストラン・アンドレ」は、2013年に初開催の「アジアのベスト・レストラン50」でシンガポールのベスト・レストランにランクイン。多くの美食家たちが注目したユニークな料理哲学「オクタフィロソフィカル」とともに、その名を世界に轟かせた。「オクタフィロソフィカル」とは、食材ごとの微妙なニュアンスを引き立たせ、さまざまな食感の融合を構成した、独自の料理アプローチ。

元、芸術家志望だったというアンドレシェフがたてた8つの性質、Unique(個性的な食材の組み合わせ)、 Texture(食感)、Memory(思い出)、Pure(素材本来の味)、Terroir(豊かな土壌)、Salt(海の恵み)、 South(心のふるさと、南仏の大らかさ)、 Artisan(職人技)を伝えるためのもの。

まるで協奏曲のような計算された旋律のなかに、たくさんの驚きが閉じ込められその試みを、ゲストが体感できる場所、それがチャイナタウンの一等地に瀟洒な佇まいを見せる築100年の洋館「レストラン・アンドレ」なのだ。リビングルーム、ベッドルーム、ダイニングルームなどしつらえの違う親密な30席があり、鹿の角をかたどったランプシェードやアンドレシェフが作った陶器の置物、クリストフル製の食器などが飾られ、1日に30人のゲストを迎え、もてなす。

アンドレ・チャン

「信頼を寄せる契約農家に、旬の一番おいしい食材を届けてもらうことをポリシーとしているので、毎日朝になるまで食材がわかりません。店についてから、与えられた食材をどう生かすか、と日々メニューを考えています」。

食材への恩恵をひしひしと感じる、料理へのスタンス。その大きな想いを、スタッフへはどのように伝えているのか?という問いには……。

「レシピよりも食材について考えること。それを全スタッフに時間をかけて丁寧にシェアしています。この店は、農家とシェフとゲストをつなぐ、新しい関係性を築く場所なのです」。ゲストをもてなすためには、料理はもちろん、空間への配慮も隅々まで見届ける。

「訪れてくれるゲストに合わせて、テーブルや椅子、家具の配置も変えています。だから毎日お引越しのようで大変!」と、笑う。

レストランには常にアンドレシェフがいる。逆に言えば、彼がいないときは店を開けないという徹底ぶりだ。常に予約が3〜4ヶ月待ちというのもうなずける。

「この店は自分の家のような存在。だから主人のいないときは休みます。皆様も、いつかこの店へ足を運んでくださるときは、ぜひキッチンに入ってきて私に会いにきてください!」

トークショーが終わるとすぐ、有田焼の作陶のために佐賀へ飛ぶというハードスケジュールだったアンドレシェフ。目下、彼がプロデュースする有田焼の器とともに供される特別な料理コースを準備中なのだとか。修行したフランスとシンガポール、そして心のふるさとの台湾に店を構えるアンドレシェフの、次なる試みが日本とのコラボレーション。ますます目が話せない!

(文:関 智水)

■あわせて読みたい

台湾の食とライフスタイルに新潮流! 新店「RAW」を通して見える、アンドレ・チャンの新たな挑戦
美食の宴「DINING OUT」、9月の舞台は佐賀。2日限りの器と料理の究極のマリアージュ(2015年9月12日(土)~14日(月))

【プロフィール】アンドレ・チャン(江振誠)

1976年、台湾生まれ。15歳で単身渡仏。モンペリエにある「ジャルダン・デ・サンス」で9年間にわたり修業を重ねた後、ロワンヌ「トロワグロ」で1年半ほど研鑽を積む。その後、「ラトリエ・ド・ジョエル・ロブション」第一号店のオープニングを経て、バルザックの「ピエール・ガニェール」で2年間、「アストランス」で2年ほど経験を積み、2008年にシンガポールへ。フランス料理界を代表する偉大な料理人、ピエール・ガニェール、ジョエル・ロブション、ジャック&ローラン・プルセル兄弟、パスカル・バルボらの下で得た経験を活かし、「ジャーン・パー・アンドレ」を立ち上げた後、2010年10月に「レストラン・アンドレ」をオープン。2013年には「世界ベストレストラン50」の38位にランクイン。シンガポールでもっとも評価されているレストランとして、国内外から注目を集めている。2014年12月末には台湾に「RAW(ロウ)」をオープン。今年6月に行われた北品川「カンテサンス」とのコラボレーションをはじめ、各国のシェフとのイベントにも精力的。

「RAW」website


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