台湾の食とライフスタイルに新潮流! 新店「RAW」を通して見える、アンドレ・チャンの新たな挑戦

2015.8.30 (日) 01:27

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マンゴーかき氷、豆花、小籠包、火鍋……。日本にも数々の名店が上陸を果たしている台湾グルメ。ご存知、パイナップルケーキもそのひとつ。パイナップルのコンフィチュールを小麦粉とバター、卵でつくった生地で包んだ、手土産にも人気の台湾スイーツ。それを先日、驚きにみちたアレンジを加えて披露してくれたのが、台湾出身の世界的シェフ、アンドレ・チャンだ。彼が自ら、この幻の一皿をじっくりと解説するとともに、新店「RAW(ロウ)」の開店秘話や台湾の食への考え方を話してくれた。

庶民のおやつ、パイナップルケーキの華麗なる「RAW」流アレンジ

ニューヨークタイムズの「そこに行くだけのために飛行機に乗る価値のある世界の10のレストラン」に選ばれ、世界中のグルマンたちから注目を浴びている話題のシェフ、アンドレ・チャンさん。そんな彼が、2014年12月末にオープンした「RAW」のオープニングパーティで供したスペシャルデザートを、蔦屋書店のイベント限定でお披露目! 台湾の旬の恵みを余すことなく伝えたい、という、「RAW」の想いが詰まった一皿だ。

「主役のパイナップルは、若いもの、完熟したもの、完熟しすぎたもの、の3種を使い分けました。メインの生地となるババロアには完熟パイナップルを使い、凍らせて温度と食感の妙を表現。コンフィチュールには完熟しすぎたパイナップルを。一番外側の生地には、伝統的に使われるクラスト、ブリオッシュ生地、バタークッキーをくだいたものをミックス。最後に、1滴のジュレをトッピングしました。そこに、若いパイナップルを使っています」。

「RAW」パイナップルケーキ
「RAW」パイナップルケーキ

ひんやり、しゃくしゃくとした食感は、どこかりんごのような爽やかな甘さ。そこに、キャラメルのような風味のあるコンフィチュールがあらわれ、上質な甘さで全体を包んでくれる。

「ココナッツウォーターとトニックウォーターで仕上げた泡は、あえてココナッツミルクを使わず、軽やかにしました」。

このデザートの裏テーマは“ピニャコラーダ“。フローズンパイナップルケーキに、ココナッツの泡とバニラアイスを絡めながら食べれば納得! 妄想ピニャコラーダを体感できる。台湾の庶民のおやつが、そして台湾が誇るパイナップルが、心踊るデザートへと華麗なる進化をとげたのだ。

台湾へプレゼントがしたかった。シェフが満を持してオープンした新店

台北市郊外にある大直地区。この静かな新興住宅街に2014年秋、初の高級飲食店ビルができ、ミシュラン3つ星をとった「龍吟」が出店したことでも話題のスポットだ。そこに、アンドレシェフの「RAW」がオープンし、大直地区の注目度がさらにアップしたことは言うまでもない。もちろん、「RAW」は開店早々、予約が取れない店である。15日後の予約を毎日12時から、オンラインで受付スタートするも、約15秒で55席のランチとディナーが満席になるそうだ。約10000アクセスもあるというから、倍率はおよそ100倍ということになる。そんな国内外からの客が途絶えない人気店は、どうして生まれたのだろうか。

アンドレ・チャン

「海外にいる間ずっと、いつか、台湾に恩返しをしたいという気持ちを持ち続けていました。フランスからアジア(シンガポール)に返ってきた8年前もそうでしたが、まだレベルが達していない、と思いとどまったのです。ですが、『レストラン・アンドレ』をオープンした翌年頃から、この温存していた考えを具体的にしようと準備を始めました。この店は、アンドレとしてのパフォーマンスではなく、台湾の食材で、台湾らしさを生かした場所にしたかったのです」と、語るアンドレシェフ。

そのストイックさは、準備にかけるプロセスにも表れている。以前、シンガポールに「レストラン・アンドレ」を開店する前に、スタッフを引き連れてアフリカの島に長期滞在をしたことがあったそうだ。あえて、自然の限られた食材しかない環境で、料理への姿勢を確認、リセットしたかったのだという。今回の開店にあたって、何か特別なことをしたのかと問うと……。

「“新しい旧友“である台湾を理解するために、開店前の3年間で何度か、台湾のさまざまな地域で2週間ほどの滞在を繰り返しました。旅というよりは、住むという感覚です。実際にまとめた時間を持つことで、人や文化、食材と深い関わりを持ちたかったのです」。

3、7、21、そして24…・。この数字に込められたメッセージとは?

そんな台湾との親密な時間のなかで得た、最大のインスピレーションは?

「はじめて“24節気”という台湾の暦に出会ったときですね。これこそが、私達が食を通じて広めていきたいものだ、と強く思いました。春夏秋冬よりも24の季節で分けるスタイルが、なんとも台湾らしい。着るものや食べるもの、すべてのライフスタイルがこの暦に寄り添っているのです」。

それは、自らを“コントロールフリーク“と呼ぶアンドレシェフの得意分野でもある。どんなに小さな料理でもすべて計算してしまうほど、大の数字好きなのだそう。

「季節ごとに1つのコースを立て、1年で24のコースを提供します。コースは7つの皿で構成し、それぞれの皿に3つの要素を使います。ですので、1つのコースに21種類の季節の食材を散りばめるのです」と、アンドレシェフ。もちろん、根底には南フランス料理の基礎がしっかりとある。テイスト、アロマ、ボディは常に気を使っている料理のキーワード、と彼は言う。

「台湾料理にはまだ、日本でいう寿司のような、世界に通じる料理が広まっていない。豊かで質のいい食材にあふれた台湾は、今、抜本的な変化が求められているのです。伝統に基づきつつ、自分が世界で学んできたことを合わせ、台湾食材のおいしさと楽しさを伝えたい。そして台湾のライフスタイルを、世界へ発信していきたいのです」。

そんな大きな使命感を抱いて作った、「RAW」という新たな舞台。

「『RAW』は、あらかじめ植えられた木ではなく、種として土地に育てられ、大樹になっていくもの。内装にも、バカラやクリストフルはなく、お金さえあれば手に入るものは、あえて置いていません。台湾の精鋭たちがインターナショナルな視野で表現した、台湾スピリットがここにはあります」。

Challenge comes to me.シェフの素顔と、これからのこと

アンドレ・チャン

パリ、シンガポール、台湾と、計5つのレストランを持ちながら、料理を通してさまざまな提案をゲストに投げかける。そんな多忙を極めるアンドレシェフの新たな挑戦が、また静かに始まっている。

2015年9月に開かれる有田焼400周年イベントの一貫で、食材や食器などすべて佐賀産で仕立てたコース料理を、期間限定のプレミアム野外レストラン「DINING OUT」で提供する予定だ。佐賀に足を運び、自ら土を選んでデザインし、食材選びの細かい打ち合わせをしていく。幼いころ日本にいた経験と趣味でもある陶芸とのコラボレーションを、大いに楽しんでいるのが見て取れた。故郷に錦を飾り、間違いなく大きな達成感を味わっているであろうときでも、アンドレシェフに歩みの速度を緩める気配はない。最後に彼は、こう言った。

「Challenge comes to me(自分から挑戦をしているのではなく、向こうからやってくるのです)」。


世界から熱いラブコールが絶えないシェフ、アンドレ・チャン。さらなる飛躍にますますエールを送りたい。

(文:関 智水)

■あわせて読みたい

アンドレ・チャンの「台湾味覚新体験」トークショーレポート
美食の宴「DINING OUT」、9月の舞台は佐賀。2日限りの器と料理の究極のマリアージュ(2015年9月12日(土)~14日(月))

【プロフィール】アンドレ・チャン(江振誠)

1976年、台湾生まれ。15歳で単身渡仏。モンペリエにある「ジャルダン・デ・サンス」で9年間にわたり修業を重ねた後、ロワンヌ「トロワグロ」で1年半ほど研鑽を積む。その後、「ラトリエ・ド・ジョエル・ロブション」第一号店のオープニングを経て、バルザックの「ピエール・ガニェール」で2年間、「アストランス」で2年ほど経験を積み、2008年にシンガポールへ。フランス料理界を代表する偉大な料理人、ピエール・ガニェール、ジョエル・ロブション、ジャック&ローラン・プルセル兄弟、パスカル・バルボらの下で得た経験を活かし、「ジャーン・パー・アンドレ」を立ち上げた後、2010年10月に「レストラン・アンドレ」をオープン。2013年には「世界ベストレストラン50」の38位にランクイン。シンガポールでもっとも評価されているレストランとして、国内外から注目を集めている。2014年12月末には台湾に「RAW(ロウ)」をオープン。今年6月に行われた北品川「カンテサンス」とのコラボレーションをはじめ、各国のシェフとのイベントにも精力的。

「RAW」website


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