ベジタリアンのための「肉屋」? スイスでフェイク・ミートが空前のブーム

2016.1.24 (日) 06:00

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肉屋

ベジタリアンの人や、肉を食べる回数を少し減らすフレキシタリアン(日本ではプチベジタリアンと言われることが多い)でも食べられるお肉がヨーロッパで流行っている。ベジタリアンなのに、なぜお肉?と思うだろう。もちろん、見た目や食感を肉に似せたフェイク・ミート(代替肉)だ。大豆(豆腐類)やグルテン(小麦タンパク)を使っている。

「肉を控えよう」という健康意識の高まり

ここ数年、ヨーロッパでは健康的な食生活への関心がぐんと高まり、オーガニックフード消費で数歩先を行くドイツやスイス以外の国々でもオーガニックフードを食べる人たちが増えている。日本食が流行っているのも、美味しいということにヨーロッパ人も気付いたという理由のほかに、やはり健康的なイメージが強いからでもある。そして、この流れに乗って、肉食中心をやめようという姿勢も広まっている。

とはいえ、慣れ親しんできたお肉を急に減らすのはつらい。そこで注目を浴びるようになったのがフェイク・ミートだ。世界で初めてといわれるフェイク・ミートの肉屋は、2010年開店のオランダ・ハーグの「ベジタリアン・ブッチャー」。いまや同店は国内外に広い販売網を持つほど。ほかにも、最近では昨秋パリに「ブーシェリー・ベジタリエンヌ」が開店した。

お客さんからの声で、超人気ベジレストラン「ヒルトゥル」がベジ肉屋を開店

肉屋 外観

スイスでは、いま、国民の2%がベジタリアンだという。一方、フレキシタリアンは40%以上にも達している。スイスのフレキシタリアンなら誰でも知っているのが、チューリヒのメインストリートにあるベジタリアンレストラン「ハウス ヒルトゥル」(ヒルトゥル本店)。「ハウス ヒルトゥル」はギネスブックが認めた世界最初のベジタリアンレストランだ。

115年以上の歴史を誇る同店は、4代目のロルフ・ヒルトゥル氏が率いている。テーブルで注文するスタイルに加えて、100種類以上の「オリジナル温冷ベジタリアン料理」がズラリと並ぶビュッフェ(好きなものを取って、量り売りするスタイル)も訪れる人たちの心をギュッとつかんでいる。心臓部のキッチンでは、50人以上の料理人たちが働いている。

肉

同レストランの様々なフェイク・ミート料理は、本物の肉料理のような満足感。1番人気のタルタルステーキを始め、コルドンブルー(ハムとチーズを挟んだ肉のカツ)、ツーリ・ゲシュニッツェルテス(スイス料理 仔牛肉のクリーム煮)、サテ(東南アジア発祥の串焼肉)、肉団子料理など「これなら、何度も食べたい」と思わせる。

1番人気のタルタルステーキ。レシピは大胆にも最新料理本『ミート ザ グリーン』(ドイツ語版)に掲載

1番人気のタルタルステーキ。レシピは大胆にも最新料理本『ミート ザ グリーン』(ドイツ語版)に掲載

そのあまりの美味しさに「家庭でもぜひ食べたい」という声が後を絶たなかった。こうして、ヒルトゥル氏はベジタリアン肉屋「ベギ・メツグ」の開店を決心した。「ハウス ヒルトゥル」に隣接する「ベギ・メツグ」では、カウンターでの量り売りはもちろん、フェイク・ミートの冷凍もあるし、パッケージ入りも置いてあるのでTPOに合わせて買うことができる。開店から2年が経ち、すっかり街に馴染んでいる。

スイス名物「ツーリ・ゲシュニッツェルテス」はグルテン・ミートを使って

『ミート ザ グリーン』(ドイツ語版)。2016年に英語版が刊行予定

『ミート ザ グリーン』(ドイツ語版)。2016年に英語版が刊行予定

「ツーリ・ゲシュニッツェルテス」のレシピ(ドイツ語)、『ミート ザ グリーン』より

「ツーリ・ゲシュニッツェルテス」のレシピ(ドイツ語)、『ミート ザ グリーン』より

先ほど挙げたツーリ・ゲシュニッツェルテスの作り方を簡単に紹介しよう。ここで使うフェイク・ミートはグルテン・ミート。小麦粉を塩と水で練って作ったグルテンに塩、粉状ブイヨン、カホクザンショウ(花椒)、ゴマ油で味を付けてグルテン・ミートが出来上がる。これを薄切りにする。

フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、グルテン・ミートに焼き色を付けて、一旦フライパンから取り出しておく。オリーブオイルでみじん切りにしたタマネギを色よく炒めてから、薄切りにしたマッシュルームを入れる。白ワインとコニャックを加えて少し煮たら、赤ワインソースとビーガン料理用生クリームを入れてしばらく煮込む。グルテン・ミートをフライパンに戻し、塩・胡椒・レモン汁で味を調える。刻んだパセリを散らして出来上がり。粗くすりおろしたジャガイモを焼いた「レシュティ」と一緒に食べるのが王道だ。

ヒルトゥルの料理本シリーズが店内で読める

「ベギ・メツグ」は単なるフェイク・ミート店ではない。ランチタイムは隣の「ハウス ヒルトゥル」で作ったベジ料理のミニビュッフェが味わえるし、気軽にお茶もできる。ヒルトゥルの料理本シリーズ(独、英、仏版)も読めるし、乾物、オリーブオイル、香辛料、果物、お菓子、お茶などの食品も買える。お洒落で便利な多才な顔を持つ店だ。

(文:岩澤里美 fromスイス・チューリヒ)

  • 肉屋
    お昼の時間帯のミニビュッフェ。近所の会社員の男性たちが大勢来るのも日常の風景
  • 肉屋
  • by Adrian Bretscher 
    (C)by Adrian Bretscher
  • 「ハウス ヒルトゥル」製のサンドイッチやお惣菜やデザートをテイクアウトできる
    「ハウス ヒルトゥル」製のサンドイッチやお惣菜やデザートをテイクアウトできる
  • 『ビーガン ラブ ストーリー』 右はドイツ語版、左は英語版
    『ビーガン ラブ ストーリー』右はドイツ語版、左は英語版
  • ほかの商品
  • 香辛料
  • 肉屋
  • 肉屋
  • by Adrian Bretscher 
  • 「ハウス ヒルトゥル」製のサンドイッチやお惣菜やデザートをテイクアウトできる
  • 『ビーガン ラブ ストーリー』 右はドイツ語版、左は英語版
  • ほかの商品
  • 香辛料

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■店舗情報

「Hiltl Laden Feinkost & Vegi-Metzg」

所在地/(ベジタリアンレストラン「ハウス ヒルトゥル」隣)St. Annagasse 18 8001 Zürich
tel/+ 41 44 227 70 27
営業時間/10:00~19:00(日曜休)
※ミニビュッフェ(「ハウス ヒルトゥル」の料理のミニセレクション)は月~金11:30~14:30のみ

Hiltl Laden Feinkost & Vegi-Metzg公式サイト(英語)

■取材国・都市:スイス・チューリヒ

岩澤里美(いわさわ・さとみ)

イギリス留学を経てスイスへ。記事執筆を続け10年以上が経つ。各種ウェッブサイトでの連載のほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『アゴラ』やクレヨンハウス月刊誌『クーヨン』など雑誌にも寄稿を続ける。 Global Press理事。

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