女の美容整形はモテるためではなく自己満足【『整形した女は幸せになっているのか』北条かやインタビュー後編】

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『整形した女は幸せになっているのか』(北条かや/星海社新書)

 試しにグーグルで「整形」という語を入れ、検索してみる。美容クリニックのHPがたくさん羅列されると思いきや、実際には芸能人の整形疑惑を検証するまとめサイトがずらずらと出てくる。整形に対して決して肯定的とはいえない世間の空気を感じるが、それでも自らの顔を外科的に変える女性たちは年々増加している。彼女たちはなぜ整形するのか? そして、整形は彼女たちに何をもたらすのか? 『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)の北条かやさんへのインタビュー、後編です。

―私は整形の動機には「きれいになって男性にモテる」が必ず含まれると思っていたのですが、本書によるとそういう理由で美容クリニックを訪れる女性がほとんどいないことがわかります。これは意外でした。

北条かや(以下、北)「整形をしたことのある一般女性へのインタビューでは、“ついにやった!”“達成感”といった表現が非常に目立っていました。まるでフルマラソンを走りきったかのような達成感や充足感って、モテとは遠いところにあるものですよね。そこに異性の目はまったくといっていいほど介在しません。モテ願望を叶えるためではなく、純粋な自己満足のために彼女らは整形をしているんです」

―みずから美容整形を体験した作家の中村うさぎさんは、北条さんのロングインタビューに答えて、外見が理想に近づくとモテどころか、「鏡を見たときの快感に比べれば、他人の評価なんてどうでもいいって気持ちになってしまう」とお話しされています。

北「それはうさぎさんにかぎった話ではなく、整形をした多くの女性に当てはまる現象です。術後のダウンタイムも終わり、完成した目や鼻を鏡で見たときはドーパミンやらエンドルフィンやらがどばどば出ている感じになるのでしょう。その自分自身への満足感と比べると、モテによって得られる快感はごく小さなものです。モテるために美容整形、というのは、どちらかといえば男性に多いケースのようですよ」

―北条さんはうさぎさんへのインタビューを通して見えてきたものを、「若さや美醜に縛られる地獄と、縛られない地獄」と表現されています。どちらにしても女性の行く先には地獄しかないのかと絶望的な気分になりますが……。

北「美醜にまったくとらわれないのは、見方によっては幸せなことですよね。でも、美醜にとらわれている人たちが得ている幸せを感じることはないでしょう。たとえばアイプチできれいな二重ができたとき、整形後にはじめてメイクしたとき、“あ、きれいになった!”と感じるその瞬間瞬間に幸せが宿ります」

―その幸福感に後押しされながら、理想の顔を目指していく方が多いのですね。でも、そのうちどうしても〈できないこと〉に直面するのではありませんか? たとえば、長らく白人的な顔が理想とされていますが、いまの技術では白人の骨格にはなれません。脂肪吸引などで痩せることはできても、身長を伸ばすことはほぼ不可能です。

北「“白人になりたい”“あゆになりたい”、私の場合は“リカちゃん人形になりたい”という願望があるのですが、どれも完全には叶えられないものですよね。限界がきたときに、多くの方はお金の面であきらめます。本書では、整形を主題にした唯川恵さんの小説『テティスの逆鱗』(文藝春秋)からたびたび引用していますが、この小説の登場人物のひとりは整形のために借金を背負います。そこまで客観性を失う人はそういなくて、“私、タレントでもモデルでもないから仕方ないか”“このぐらいが妥協点なのかな”というラインを自分で見つけるんです」

―その一方で、整形を「ズルい」と捉える風潮も根強いです。

北「整形は努力していない、という考えですね。メイクを工夫すればいいのに整形する、ダイエットをがんばればいいのに脂肪吸引をする……でも整形はリスクを伴うものです。痛みに対する恐怖やダウンタイム中の不安など、精神的な負担も強いられます。私はこれも努力に数えていいと考えています。けれど、整形=ズルいとする風潮は今後も変わらないでしょうね。手軽に美を手に入れることは、手軽に権力を手に入れることでもあるからです。美とは相手の欲望を強く喚起し、その行動を変えてしまうもの、すなわち〈権力〉であるというのは、中村うさぎさんが指摘されていることです。美しいということで得られるメリットがあまりに大きすぎるんですね。それを整形で手に入れる人に対する世間の目が、あたたかいものになることはないでしょう」

―整形について1冊書き終えて、北条さんの整形に対する解釈は変わりましたか?

北「いまは、“整形で自由を手に入れるということはありえる”と考えています。私たちは顔を自分のものだと思いがちですが、突きつめて考えると、顔とは他人のものなのです。自分で自分の顔を見ることはできませんよね? 常に鏡を見ているわけではないし、写真では反転されています。その評価は他人に委ねるしかないもので、だからこそ苦しい思いをしている人も少なくないでしょう」

―それを実感されることはありますか?

北「以前はメガネをかけている自分の顔がまったく好きではなかったので、ずっとコンタクトで過ごしていました。女子会に行くのですら、メガネ姿なんてありえなかった。なのに、あるときふと気が向いてtwitterのアイコンをメガネをして撮った写真に変えたところ、反響が大きかったんです。自分が見ている私の顔と、他人が見ている私の顔はこんなにも違うのかと驚きました」

―中村うさぎさんが整形後、ネットの掲示板で「整形してあの程度かよ、ブス」と叩かれても、「この整形が失敗だとしたら、(主治医である)高梨の問題なので、あたしの責任じゃないもんね」と思えるようになった、というエピソードに通じる体験ですね。

北「それは開き直りでもあるし、ご自身の思い描いた美を手に入れたがゆえの自信でもあるのでしょうが、なにより自分の顔に関する自由と主体性を手に入れたからこそいえることではないでしょうか。整形とは、そうした自分の顔、身体を自分自身に取り戻すための手段だと、いまは考えています」

取材・文=三浦ゆえ

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