秋の夜長のお供に! 映画ライターが選ぶ傑作ホラー映画5選(洋画編)

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秋の夜長のお供といえば、やはりホラー映画だ。今回は、筆者が選ぶホラー映画の傑作を5本紹介する。


悪を呼ぶ少年

『悪を呼ぶ少年』(72)

1本目は、ロバート・マリガン監督の『悪を呼ぶ少年』。主人公のナイルズ(クリス・ユドヴァーノキー)は、いたずら好きな双子の兄ホランド(マーティン・ユドバーノキー)と仲良しの心優しい少年。ある日ナイルズとホランドは、突然現れた従兄に、亡くなったナイルズとホランドの父が持っていた、今は父の亡骸と共に埋葬されているはずの指輪を持っている姿を見られてしまう。これをきっかけに、兄弟の周囲に不可思議な死が頻発するようになり…

本作は、「主観のトリック」を組み込んでいるのが面白い。実在しない「ある人物」を、ナイルズの主観の中でのみ映し出すことによってあたかも存在するかのように見せかけているのだ。よくよく注意していればわかるのだが、油断していると思わず騙されてしまう。このトリックによって隠されていた衝撃の真相には、思わずゾッとする。終盤にかけての展開も抜かりなく、恐ろしすぎるラストは未だに忘れられない。


永遠の子どもたち

『永遠のこどもたち』(08)

ギレルモ・デル・トロ監督がプロデュースに回り、スペイン出身のJ・A・バヨナが監督を務めた『永遠のこどもたち』は、筆者が選ぶ、ホラー映画史上最高傑作の1本だ。

主人公は、かつて自身が暮らした古い孤児院に移り住んだラウラ(ベレン・ルエダ)。夫のカルロス(フェルナンド・カヨ)、病気を抱える息子のシモン(ロジェール・プリンセプ)と共に新生活を始めたラウラだったが、孤児院の歓迎会の最中にシモンが姿を消してしまい…

中盤まで本作の恐ろしさを引っ張るのが、かつて孤児院で働いていたソーシャルワーカーのベニグナ(モンセラ・カルーラ)という老女。見ているだけで人を不安にさせるような表情と、神経を逆なでするセリフ、時には暗闇の中に無言で佇み、またある時には…。彼女を演じたモンセラ・カルーラの怪演には、大きな拍手を送りたい。

そんな本作で特筆すべきは、「敢えて見せずに、聞かせる」演出。最高に怖いのが、シモンの捜索に協力する霊媒師(ジェラルディン・チャップリン)が、こどもたちの幽霊と接触を試みるシーンだ。彼女が見ているはずの凄惨な状況は、敢えて鑑賞者には見せられず、こどもたちの泣き声や不協和音を聞かせるだけに留める。この演出によって、一体どんな状況なのかを鑑賞者に想像させ、逆に恐怖心を煽ることに成功しているのだ。終盤で明かされる衝撃の真相によって、「泣けるホラー映画」へと姿を変えるのも素晴らしい。


ミスト

『ミスト』(08)

ある映画に、「危機的な状況に陥ったとき、文明化された人間は共食いをはじめる」というセリフがある。フランク・ダラボン監督の『ミスト』は、このセリフを象徴するようなホラー映画だ。

舞台は穏やかな田舎町。ある晩、町を台風が襲う。台風の翌日、主人公のドレイトン(トーマス・ジェーン)や町の住民はスーパーで買い出しをしていたが、いきなり霧が街全体を包み込む。そして、霧から逃げてきた1人の住民が叫ぶ。「霧の中に『何か』がいる!」と…

本作において真に怖いのは、得体の知れない「何か」ではなく、住民が織り成す醜い生存競争だ。そもそも、本作において「何か」は重要な存在ではない。真に重要なのは、「何か」の登場によって表出する、「危機的な状況に陥った人間の凶暴性」なのだ。

救いようのないラストに嫌悪感を覚える人もいるだろうが、よく考えてみれば、この作品はある作品と真逆のラストを迎える。その作品とは、『ショーシャンクの空に』だ。同しくフランク・ダラボン監督作品である『ショーシャンクの空に』は「生きる希望を捨てなかった男の解放」を描いた。しかし本作は「生きる希望を捨てた者の末路」を描いている。ダラボン監督は凄惨な本作のラストを通じて、『ショーシャンクの空に』で描いたように、「生きようとすることの尊さ」を逆説的に説いたのではないだろうか。そう考えてみると、本作が只の「胸糞悪いホラー映画」ではなく、「逆説的に生命の尊さを描いたホラー映画」として深みのある作品だと思えてくる。


エスター

エスター

『エスター』(09)

ホラー映画は、子供をモチーフにした作品に名作が多い。『フライト・ゲーム』(14)や『ラン・オールナイト 』(15)で知られるジャウム・コレット=セラ監督の『エスター』もその1つだ。

ケイトとジョンの夫妻は、息子のダニエルと難聴を抱える娘のマックスと幸せに暮らしていた。しかしケイトは過去に3度の流産を経験しており、夫妻はもうひとりの娘が欲しいと望んでもいた。そこで夫妻は、ある孤児院に赴く。そこで出会ったエスターという名の少女を引き取ることにする。愛想が良く、教養もあるエスターは、すぐに手話をマスターしてマックスとも仲良くなるのだが、徐々に不審な行動を重ねていき、さらには凶行に及ぶようになり…

主演は『死霊館』(13)のヴェラ・ファーミガ。本作で彼女が演じたケイトは、流産によって精神が不安定になっているという前提がある。それ故に、周囲はエスターの凶行がケイトの妄想なのではないかと疑ってしまう。そうしてケイトが孤立していくのに比例して、エスターの行動が過激化するという展開が巧い。また、幽霊や呪いなどのスーパーナチュラルな要素を一切使わず、エスターという悪魔的な少女を通じて、あくまでも「人間が持つ恐ろしさ」をテーマとすることで、リアリティのある恐怖を成立させているのも素晴らしい。


ババドッグ

『ババドック 暗闇の魔物』(14)

ホラー映画で成功するためには、無名の俳優陣をキャスティングすることが有効だ。というのも、有名スターが出てしまうと、そのスターに対して鑑賞者が抱く先入観によって、キャラクターのリアリティが薄れてしまうのだ。もちろんスターが出ていても怖いホラー映画はあるが、無名俳優の方が演技のリアリティは高まる。オーストラリアのジェニファー・ケント監督の『ババドック 暗闇の魔物』は、そのメリットを最大限に活かした作品と言えるだろう。

主人公は、シングルマザーのアメリア(エッシー・デイヴィス)。彼女は息子のサミュエル(ノア・ワイズマン)と共に仲良く暮らしていた。ある夜、2人は1冊の絵本を見つける。「ミスター・ババドック」というその絵本は、ストーリーが途切れており、内容も不吉だったので、アメリアは本棚に戻す。しかし、その日から2人の周りで不可解なことが起きるようになり…

「ミスター・ババドック」はもちろん恐ろしいのだが、それ以上に恐ろしいのがサミュエルとアリシアの変容だ。もともとサミュエルは、多動性障害なのでは?と感じさせるほどに活発で、普通の子ができる「線引き」をすることができない。その行動は時に常軌を逸し、アメリアや鑑賞者をゾッとさせるのだが、「ミスター・ババドック」の登場によって、彼は「暴走」するようになる。そして、そんなサミュエルを優しく見守るアメリアもまた、次第に理性を失っていく。不眠症とノイローゼを経て憔悴していくアリシアは、やがて愛するサミュエルへ憎しみをぶつけていくように。終盤におけるアメリアの変容ぶりには、思わず息を呑む。意外性に溢れるラストも秀逸だ。

(文:岸豊)

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