【インタビュー】『ネオン・デーモン』ニコラス・ウィンディング・レフン監督「美の寿命がどんどん短くなってきている」

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ニコラス・ウィンディング・レフン監督

ニコラス・ウィンディング・レフン監督

次はどんな衝撃を与えてくれるのか──ニコラス・ウィンディング・レフン監督作というだけで、観たことのない映像美、味わったことのない感覚、あっと驚く仕掛けを期待してしまう。『ドライヴ』『オンリー・ゴッド』に続くその新作は『ネオン・デーモン』。これまでは男性主人公が多かったが、今回は16歳の少女ジェシーが体験する、ファッション業界に渦巻く野心、美に取り憑かれた女性たちの悪夢を、とびきり美しい映像で描いていく何とも怖いおとぎ話だ。

タイトルの“ネオン・デーモン”は主人公ジェシーの生命体を表しているとレフン監督は説明する。「悪魔的な存在感として、煌びやかなファッションアイコンのような感じとして、そういうコントラストを彼女に持たせたかった。もともと僕自身もネオンが好きだというのもあるけれどね」

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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悪魔的、煌びやか、圧倒的な美、無垢さ……レフン監督が求めるジェシーを演じるのはエル・ファニング。トップモデルになる夢を叶えるために、ジョージアの田舎町からロサンゼルスにやってきた女の子の設定、それはエル自身がジョージア出身であること重なる。

「エル自身のことを役に取り入れることもジェシーを描く方法のひとつだと考えた。彼女は昔のサイレント映画の大スターと現代の先進的女優の素質を合わせ持っている。ジェシー役がエルに決まったときから彼女が素晴らしい演技をみせてくれることは分かりきっていたよ」と絶賛するように、十代だからこその美を存分に表現してみせた。劇中でも「完璧な美しさ」だと憧れと嫉妬を浴びている。たしかに見とれるほど美しい。と同時に美に取り憑かれていく怖さもある。

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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そう、この物語はホラー要素も強い。というのもレフン監督が「映画を作りたい」と思ったのは14歳の頃に観た『悪魔のいけにえ』の衝撃がきっかけだった。そのホラージャンルに『ネオン・デーモン』で挑んだ。「そもそも美に対する執着のなかに“死”を感じるんだ。人工的に美しくあろうとする野心もそうだし、ネクロフィリアもそのひとつの形と言えるね」という理由だ。また監督自身が女性に支配されていることに気づき、その女性の危険な美──美しさのためなら悪魔に魂を売り飛ばすような、そんな邪悪な世界に染まっていく女性たちについての映画を撮りたい、という興味もあったという。それはどういうことなのか。

「興味があるのは我々が持つ巨大な美に対する執着心だ。現代において我々が思う美は、どんどん寿命が短くなってきている、若くなってきている。ジェシーは今回コンシュームされる=食べ尽くされ消費されるけれど、美の寿命がどんどん短くなってきているのであれば、(なおさら美しいうちに)美という概念を食い尽くさなければならないのではないか、それしか答えはないのではないかと。美の寿命がより短くより若くなる──その2つが混ざり合ったホラー映画は面白そうだって思ったんだよ」

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

だがレフン監督が思う本当の美しさとは「不完全なもの」であり、ジェシーをはじめこの映画の女性たちが求める完璧な美とは相反する。

「そうなんだ、それがジェシーたちと僕たちとの差であり、違いだ。美の世界は女性によって支配されている、だから僕はアウトサイダーとして女性たちの内側を覗くことに興味があった。なかには女性の美は男性の存在があってこそだと言う人もいるし、美の業界は男性に牛耳られていると言う人もいるけれど、僕はそうは思わない。女性の内側にある何かが美に繋がっている。だから美を描いてみたかった」

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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そしてこの映画のヒロインたちが「誰よりも美しくなりたい」と認められたいように、現代はSNSの“いいね”や“ファボ”をはじめ、多くの人が他人に認められたい願望を持っている。だからこの物語は響いてくる。

「美しくなるための整形手術、生身の身体を変えることはもう限界にきていて、そこに新たに登場したのがSNSだ。こんなふうに見られたい、こんなふうに変化できる、自分を自由にコントロールできる世界がSNSによって拓かれた。それは新しいカンバス──美がどういうふうに我々の文化を定義つけるかにも繋がっていく。そんなふうに承認欲求は当たり前のことになってきているけれど、その結果、自分のオリジナリティで満足できなくなってきている。ポテンシャル(生まれ持ったもの)を自分らしく形にするよりも自分とは違うものになろうとしているんだ。そういう世の中になっている気がする」

(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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しかしレフン監督自身は「僕は、承認欲求はないよ」ときっぱり。何者にも左右されないからこそ『ネオン・デーモン』のような刺激的、衝撃的な映画を作り出せたというわけなのか。

「僕が映画監督として承認されたいのであれば、他の人の欲求に導いてもらわなくてはならない、独裁されなければならなくて、それは個性の喪失となるからね。また一方では極端なナルシシズム、完全なる自己愛も多く生まれているように見える。もしかすると承認欲求のカウンター(反撃)となっているのが、極端なナルシシズム、完全なる自己愛なのかもしれない。周りからの欲求に応えようという自分の欲求から解放されることができれば、ポジティブな形で自分を愛することができるかもしれない。承認欲求に対するポジティブな答えがナルシシズムなのかもしれないね」


(取材・文:新谷里映)


映画『ネオン・デーモン』
2017年1月13日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国順次公開

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 『ドライヴ』『オンリーゴッド』
出演:エル・ファニング、カール・グルスマン、ジェナ・マローン、ベラ・ヒースコート、アビー・リー and キアヌ・リーヴス
配給:ギャガ

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アーティスト情報

ニコラス・ウィンディング・レフン

生年月日1970年9月29日(46歳)
星座てんびん座
出生地デンマーク

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