【レビュー】映画『ラ・ラ・ランド』―オープニングからラストまで完璧な、美しく切ないミュージカル・ロマンス!

お気に入りに追加

映画『ラ・ラ・ランド』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

アカデミー賞最多14ノミネートも納得のクオリティ

完璧という言葉をあまり迂闊に使いたくないが、24日に日本公開を迎えたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』は完璧な映画だ。『セッション』で一躍ブレイクした俊英デイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンをW主演に迎え、ハリウッドを舞台に美しく切ないロマンスを描いた本作は、あらゆるところに目を向けても、全く欠点が見えてこないと言っても過言ではない。筆者は映画に厳しいという自負を持っているのだが、正直に言って、本作の完成度の高さにはお手上げである。

物語の舞台は、夢追い人が集まる街・ロサンゼルス。ハリウッドのスタジオに併設されたカフェで働くバリスタのミア(ストーン)は、女優を目指してオーディションを受ける日々を送っているが、なかなか受かることができないでいた。そんなある日、彼女は夜に偶然訪れたバーで、悲しげな旋律を奏でるジャズピアニストのセブ(ゴズリング)と出会う。それから二人は偶然の再会を重ね、いつしか恋人に。お互いの夢を目指して励まし合う二人だったが、ミアとの生活に安定をもたらすためにセブが加入したバンドがブレイクしたことから、二人の関係には亀裂が入ってしまう…。

映画『ラ・ラ・ランド』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

かつてミュージシャンを目指していたチャゼル監督は、映画人となってからも音楽と密接な関係にある。長編デビュー作の『Guy And Madeline on a Park Bench(原題)』はモノクロのミュージカル映画。脚本を手掛け、独特なストーリーが好評を博した『グランドピアノ 狙われた黒鍵』は音楽サスペンス。そしてアカデミー賞で5部門にノミネートされ、3部門に輝いた長編二作目『セッション』は、音楽教師と生徒の強烈な師弟関係を描いたドラマだ。これまでジャンルレスに音楽を物語に組み込み、高い評価を得てきたチャゼル監督だが、彼の音楽愛に基づく作家性は本作でも爆発している。

オープニングで映し出されるのは、うんざりするほど長い渋滞だ。なぜ渋滞なのか。かつてマイケル・ダグラス主演の『フォーリング・ダウン』の冒頭で描かれたように、渋滞はロサンゼルスの日常だからだ。驚かされると同時に引き込まれるのは、ただ渋滞を映し出すのではなく、これを導入歌の楽器および舞台装置として活用するというチャゼル監督の斬新で愉快なアイディア。渋滞に巻き込まれた人々によって高らかに歌われる「Another Day Of Sun」は、そのキャッチーなメロディと等身大の歌詞(作曲:ジャスティン・ハーウィッツ、作詞:ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール)、次々と歌い手が入れ替わる流麗な構成、そしてロサンゼルスらしい陽気な雰囲気によって、観客の心をガッチリ掴む。

映画『ラ・ラ・ランド』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

ここから展開されていくのが、セブとミアのロマンスだ。コメディタッチのアンサンブル・ラブストーリー映画『ラブ・アゲイン』でも恋人を演じたゴズリングとストーンは、セブとミアのロマンティックさの欠片もない初対面をきっかけに、映画史において最もロマンティックな恋愛模様の一つを紡いでいく。自信家で理想家、屁理屈をこねてばかりなものの、ユーモアのセンスとジャズへの情熱は抜群のピアニストであるセブにふんしたゴズリングは、劇中でのピアノ演奏を自分で行ったほか(その上達ぶりには、共演したミュージシャンのジョン・レジェンドも嫉妬したという)、うっとりするような美声を披露。これまでは、低く掠れた声が印象的な響きを残してきたゴズリングだが、優しく柔らかに響き渡る歌声の美しさには驚かされた。ストーンを際立たせるため、演技に抑えを効かせつつ、いい男としてのセブの姿をしっかり構築しているのも素晴らしい。

オーディションになかなか受からないミアにふんしたストーンは、歌やダンス、セブとの他愛ない会話やデートのシーンで見せる、コロコロと変わる表情やちょっとした仕草が実にキュート。その一方で、セブとの喧嘩や、企画した独り舞台の失敗といった、プロットにおける重大な局面で見せる悲しみの表情にも引き込まれる。これまではコメディを主戦場として、人々に笑顔を与えてきたストーンだが、本作では繊細かつ深みのある演技を見せ、女優としての大きな成長を感じさせてくれた。彼女のパフォーマンスで特筆すべきは、終盤で『Audition (The Fools Who Dream) 』を歌うシーンだ。切なさと希望が溶け合った歌唱には、思わず熱いものがこみ上げてくる。

キャストとともに輝きを放つのが、『セッション』でもチャゼル監督とタッグを組んだハーウィッツによる音楽の数々。先述した『Another Day of Sun』や『Audition (The Fools Who Dream)』に加え、序盤で聞くことができる『Someone In The Crowd』は一度聴いたら忘れられないハッピーな曲に仕上がっているし、劇中の要所で流れる『Mia & Sebastian’s Theme』は、ストーリーが進むにつれて「泣ける曲」としての魅力を深めていく。

映画『ラ・ラ・ランド』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

過去のミュージカル作品へのウィンクも、映画ファンを楽しませてくれる。例えば、導入部分でいきなりミュージカル・シークエンスを描き、カラフルな衣装の数々で画面を彩ることによって観客を引き込むスタイルは、ジャック・ドゥミ監督の代表作『ロシュフォールの恋人たち』と共通している。また、チャゼル監督は本作の物語を4つの季節に分けて構成しているが、これもドゥミ監督の名作『シェルブールの雨傘』からの影響とみて間違いない。クライマックスで見られる、マジカルな仕掛けが組み込まれたダンスシーンも、ウディ・アレン監督の『世界中がアイ・ラブ・ユー』へ奉げられたオマージュだろう。こうした演出からは、チャゼル監督のミュージカル映画への愛がひしひしと伝わってくる。

チャゼル監督については、兼任した脚本も質が高い。ミュージカル映画は往々にして「娯楽性」を追求してしまいがちで、これに抵抗感を覚える人も多いのだが、チャゼル監督はミュージカルという超現実的な枠組みの中で、極めて現実的かつ普遍的な問題を描き、物語に程よい「悲劇性」を加えることによって、誰もが胸を打たれる結末を導いている。本作はアカデミー賞をはじめとする各賞レースを席巻しており、歴代のミュージカル映画の興行収入でベスト5に入っているが(2月21日現在)、こうした成功はチャゼル監督によるバランスの取れたストーリーテリングなしには起こりえなかったはずだ。

映画『ラ・ラ・ランド』

(C) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

演出、キャスト、音楽、脚本に加え、衣装、美術、編集など、どこに目を向けても本作は非常にレベルが高く、第89回アカデミー賞で最多14ノミネートを受けたことも頷ける。これほど完成された映画には、なかなかお目にかかることはできない。かつてミュージカル映画の黄金期で、ジーン・ケリーやフレッド・アステアといったスター俳優たち、ジャック・ドゥミやヴィンセント・ミネリなどの名監督、そして『メリー・ポピンズ』『サウンド・オブ・ミュージック』といった傑作が放った、きらきらとした輝き、そして魔法に似たときめきを今日に蘇らせた本作は、昨今では作られることが少ないミュージカルというジャンルの素晴らしさを再認識させてくれた。チャゼル監督、ゴズリングとストーンを中心とするキャスト、音楽のハーウィッツ、そしてこの作品に携わった全てのスタッフには、「素敵な映画体験をありがとう」と伝えたい。

(文:岸豊)

>【インタビュー】ライアン・ゴズリング&デイミアン・チャゼル監督、第89回アカデミー賞 最有力『ラ・ラ・ランド』への思いを語る!


映画『ラ・ラ・ランド』
公開中

監督・脚本:デイミアン・チャゼル『セッション』
出演:ライアン・ゴズリング『ドライヴ』、エマ・ストーン『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、J・K・シモンズ『セッション』
提供:ポニーキャニオン/ギャガ
配給:ギャガ/ポニーキャニオン

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

Twitterでも最新記事をチェック!

映画・音楽・芸能の最新エンタメ情報ならT-SITEニュース エンタメ。公開中の映画や話題のレンタルDVD・ブルーレイのクチコミ・レビュー、人気アイドル・バンドのライブレポートから、芸能人・セレブのインタビュー記事まで。TSUTAYA/ツタヤのランキング情報や豊富な画像・写真・動画・ムービーとあわせてお届けします。

T-SITEニュース エンタメの記事を見る

この記事を読んだ人におすすめの記事

こちらの記事もおすすめ

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

エマ・ストーン

生年月日1988年11月6日(28歳)
星座さそり座
出生地米・アリゾナ

エマ・ストーンの関連作品一覧

ライアン・ゴズリング

生年月日1980年11月12日(36歳)
星座さそり座
出生地加・オンタリオ・ロンドン

ライアン・ゴズリングの関連作品一覧

関連サイト

あなたへのおすすめ

  • プレミアムフライデーは「おうちシネマ」

人気の画像

  • 橋本マナミ、入浴中のプライベート写真が流出?
  • メジャーデビューのNGT48メンバーが『My Girl vol.17』で総力特集 中井りか “水着姿”を披露
  • 玉城ティナ、蒼波純、稲村亜美ら輩出 ネクストブレイク・ガールの梁山泊「ミス iD 2018」の詳細発表
  • 稲村亜美、事務所の先輩・どぶろっくから下ネタ洗礼「“WBC”は出さない」
  • 春の乃木坂現象! 秋元真夏、白石麻衣、橋本奈々未ら、写真集累計発行55万部突破!
  • “ぷるんぷるん”で巨乳酔い!? 岸明日香、森下悠里、柳瀬早紀らポケットVR発売記念イベント
  • 岡田結実、ファースト写真集を誕生日の4月に発売
  • 放プリ・小島まゆみが変形水着姿、城崎ひまりがメイド水着姿を披露 『まゆみん色の恋』『プリンセスの秘密は』
  • 叶美香、セクシーすぎる「すーぱーそに子」に絶賛の声

TSUTAYAランキング

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST

TSUTAYA映画通スタッフおすすめ

Twitter投票受付中

SNS・RSS