人見有羽子が選ぶ「通訳で関わった思い入れの深いフランス映画」10本

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フランス語の通訳・翻訳で知られる人見有羽子さん。彼女が選んだバラエティ豊かな作品とその舞台裏を聞けば、フランス映画がグッと身近に感じられること間違いなし!

※ピックアップ作品は、2011年末に発行された『シネマハンドブック2012』掲載のものとなります。ご了承ください。


人見有羽子が選ぶ「通訳で関わった思い入れの深いフランス映画」10本

ベティの小さな秘密

舞台はフランスの片田舎。両親の不仲に心を痛めていた10歳の少女ベティは、ある日、父親が勤める精神病院から逃げ出してきた青年に出会う。ベティは彼を自転車小屋にかくまい、必死に守ろうとする。
※写真はキービジュアルです

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夏時間の庭

フランスのオルセー美術館20周年企画で製作された家族ドラマ。母から遺された屋敷や庭、貴重な美術品を整理する兄妹は、生前母が自分たちに負担をかけまいと死の準備を進めていたことを知る。

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スイミング・プール

執筆活動のため、出版社社長ジョンの別荘にやって来た女流作家サラ。そこへジョンの娘と名乗る女性ジュリーが現れる。奔放な彼女の魅力に注目したサラは、ジュリーを題材にした物語を書こうとする。

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ペルセポリス

監督が自身の自伝的グラフィックノベルを映画化。70~90年代のイランを舞台に、少女マルジの成長と母娘の愛を描く。第60回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞。カトリーヌ・ドヌーヴら声優も豪華。

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恋は足手まとい

エマニュエル・べアールのコケティッシュな魅力が炸裂するラブコメディ。19世紀のパリ社交界で華やかに繰り広げられる恋の駆け引き。メガホンをとったのは『読者する女』のミシェル・ドヴィル。

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イザベル・アジャーニの惑い

フランスを代表する女優イザベル・アジャーニが企画と主演を兼任した文芸ラブストーリー。19世紀のフランスとポーランドを舞台に、伯爵夫人と20歳年下の青年との許されざる恋がつづられる。

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パリのランデブー

恋人の浮気を疑う女子大生の心模様「7時のランデブー」や、画家が知り合いの娘をピカソ美術館に案内する道中、すれ違った人妻に興味を抱く「母と子 1907年」ほか3話オムニバスのラブコメディ。

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ミスター・ノーバディ

人生の選択について描いたユニークなファンタジー。主人公は死を目前にした118歳の男。彼の脳裏に浮かんだ人生の岐路が複数のパラレルワールドとして描かれる。

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ずっとあなたを愛してる

15年の刑期を終え、出所した女性が妹家族のもとで再生していく姿を描く感動ドラマ。主演は『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマス。

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君を想って海をゆく

恋人のいるロンドンを目指し、ドーバー海峡を泳いで渡ろうとするクルド難民の少年と水泳コーチの人種を超えた交流を通して、難民問題に一石を投じる人間ドラマ。

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『ベティの小さな秘密』―大人も子どもも一緒に楽しめるフランス映画です

『ベティの小さな秘密』

『ベティの小さな秘密』

フランス版『千と千尋の神隠し』のような映画ですね。子どもって恐がりだけど、何か守りたいものができたとき、百倍の勇気が持てるし、大胆になる。ベティのそのいたいけな決意が、彼女の赤いコートや赤い靴などビジュアルにも表れている気がします。

感動的なのは、冒険を終えたベティが「私の名前はエリザベットよ」と言うセリフ。実は本作の原題でもあるのですが、「もうベティちゃんじゃないわ」という少女の成長に拍手です。監督も穏やかな笑顔の人でしたが作品もまさにそんな感じ。大人も子どもも一緒に楽しめるフランス映画です。

『夏時間の庭』―エッジの効いた作風から一転、監督自身のルーツを振り返るかのように

『夏時間の庭』

『夏時間の庭』

アサイヤス監督って元々エッジが効いていて、アグレッシブなスタイルの監督でしたが、これを観たとき「アサイヤス、変わった!」と感じましたね。前作までは社会の先端に目が向いていたのが、本作では一転、ルーツを振り返るかのように家族や母亡きあとの兄弟、世代間の継承の問題を描いています。遺産相続にありがちな口論も一切なくて、ひと皮むけて熟したなぁと。

ジュリエット・ビノシュはサバサバした長女役ですが、ご本人もとっても気さく。気難しそうという印象を持たれていますが、取材中、チャーミングなゲラ子さんでしたよ(笑)。

『スイミング・プール』―リュディヴィーヌ・サニエの完璧なボディを観てほしい

『スイミング・プール』

『スイミング・プール』

何と言ってもリュディヴィーヌ・サニエの役づくりによる完璧なボディですよね。取材では彼女のダイエット方法に女性記者さんの話題が集中していました(笑)。オゾン監督曰く、彼女は“南仏のマリリン・モンロー”のようなアイコン。それに応えるため、撮影中も低脂肪ヨーグルトや白身魚ばかりで大変だったみたいです。もう二度とイヤだって(笑)。

もう一つ、今回の主人公は女流小説家ですが、監督は主人公を女性にすると“ヒロインの背後に隠れられる”から描きやすいとおっしゃっていて本作に関しては非常に意味深な発言! 要マークです。

『ペルセポリス』―イランの人々に対する先入観をぬぐい去るためにも観てもらいたい

『ペルセポリス』

『ペルセポリス』

全世界で話題になりましたが、日本では少し見過ごされてしまったのが残念。イランというと政治的な話かなと思われがちですが、これは監督の分身、少女マルジの成長を描いた普遍的な物語。マルジはポップミュージックに熱狂していたりと、どこの国の若者にも当てはまる話なんですよね。それにユーモアも効いてる。

監督は自国の動乱を体験していますが「過酷なときこそ笑い飛ばすしかない。ユーモアは生きるための武器」と意識して“笑い”を取り入れていたみたいです。ぜひイランの人々に対する先入観をぬぐい去るためにも観てもらいたいですね。

『恋は足手まとい』―エマニュエル・べアールのキュートな魅力全開の映画

『恋は足手まとい』

『恋は足手まとい』

エマニュエル・べアールというとシリアスでイタい役柄が多いですよね。でも監督はまったく違う役をオファーしたかったというだけに彼女のキュートな魅力全開です。本作の彼女の美貌はホントに年齢を感じさせません。原作はフランスでは有名なボードヴィル(軽喜劇)の戯曲で、三谷幸喜っぽいドタバタにフランスならではのお色気を加えたものですが、監督はその演劇の伝統をふまえながら、べアールという現代の女優にオマージュを捧げています。愛人役の男がどつぼにハマっていく様子もケッサク。「こんなにお気楽でいいの?」と驚きながら楽しんで!

『イザベル・アジャーニの惑い』―アジャーニとの関係を聞こうとする記者さんたちの苦労が印象的

『イザベル・アジャーニの惑い』

『イザベル・アジャーニの惑い』

アジャーニの愛人役のスタニスラス・メラールの取材時に印象的だったのは「アジャーニとはデキてたのか」を聞き出そうとする記者さんたちの苦労ですね(笑)。私も通訳としてオブラートに包みながら聞くんですけど、メラールも「尊敬してます」とうまくトボケるんですよ。周知の事実ではありましたけどね。アジャーニは昔からトリュフォー『アデルの恋の物語』など恋をすると自分を破壊してしまうような悲劇のヒロイン役が多いですが、実生活でもそれを体現しているようなところがあって。この二人はどうだったのかな、と下世話な想像をしながら観るのもありかな!

『パリのランデブー』―監督が書いてくれたメッセージ入り色紙は我が家の家宝

『パリのランデブー』

『パリのランデブー』

“恋愛にめげないフランス人体質”を描いた映画ですが、それを70歳過ぎのロメールが撮ったというのがすごいですよね。監督にはパリで三度ほど通訳させていただきましたが本作の仕事が二度目。そのとき監督が色紙にエッフェル塔の絵と“二度あることは三度ある”ってメッセージを書いて下さって! 今では我が家の家宝です。

本作では撮影許可がおりないような観光地でも撮影していますが、現場では撮影監督の女性を車いすに乗せて、カメラをかまえた観光客にまぎれてゲリラで撮影したみたい。その話を監督はいかにも自慢げにされていましたね(笑)。

『ミスター・ノーバディ』―映画という高度なオモチャで遊びながらできたような作品

『ミスター・ノーバディ』

『ミスター・ノーバディ』

少年の「もし○○だったら?」という妄想がどんどん枝分かれしていくストーリーで、観た後、煙にまかれた気分になりました。DVDで繰り返し観るには格好の作品ですね。ベルギー人のドルマル監督はハートも体格も大らかな反面、利発な少年のような一面もあって、この作品でも“映画だからできること”を追求している監督の姿に、映画という高度なオモチャで真剣に遊ぶ少年の姿が重なります。

『ずっとあなたを愛してる』―ラストシーンは浄化されていくヒロインの感情を象徴

『ずっとあなたを愛してる』

『ずっとあなたを愛してる』

主演のクリスティン・スコット・トーマスというと、フランスでは“上品で取っ付きにくい”という印象を持たれがちでしたが、罪を背負い、心に深い傷を持つ女性を演じた本作でグッと株が上がりました。ここでは彼女の“控え目だけど多くを語る”演技が最大限に活かされ、全編を流れる静かな緊張感が破られるラストは、主人公の感情が浄化されるのを象徴しているようで印象的でした。

『君を想って海をゆく』―恋愛モノだけじゃないフランス映画の多様性を観てほしい

『君を想って海をゆく』

『君を想って海をゆく』

人生をあきらめた男がクルド難民の少年を助け、最初はパフォーマンスでしかなかったのに難民を取り巻く理不尽な状況に疑問を抱いて目覚める話。平凡な男の姿を通してフランスの難民の問題を提示するだけでなく、他者に対して心を閉ざすんじゃなく一歩前進してみようというヒューマンなメッセージも込められています。恋愛モノだけじゃないフランス映画の多様性を観てほしいですね。


(C) 2006 - PYRAMIDE PRODUCTIONS / FRANCE 3 CINEMA / RHONE - ALPES CINEMA (C) 2008 MK2 SA-France 3 Cinema. Photo by Everett Collection/アフロ (C) 2007. 247 Films, France 3 Cinéma. All rights reserved. (C) Les Films du Losange/C.E.R (C)INA, Les Films du Losange (C) 2009 PAN-EUROPEENNE - MR NOBODY DEUTSCHLAND GmbH - 6515291CANADA INC -TOTO&CO FILMS - FRANCE 2 CINEMA - FRANCE 3 CINEMA (C)2008 UGC YM - UGC IMAGES - FRANCE 3 CINEMA - INTEGRAL FILM (C) 2009 Nord-Ouest Films-Studio37-France 3 Cinéma-Mars Films-Fin Août Productions.

プロフィール

人見有羽子

大学在学中にフランス語に目覚め、卒業と同時に渡仏。12年の滞在を経て'97年に帰国後はフランス映画をメインに、料理、アート関連の通訳・翻訳で活躍中。

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