【インタビュー】4年ぶりとなる映画『ユリゴコロ』で吉高由里子が見せた新境地とは―?

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吉高由里子

吉高由里子

女優・吉高由里子の最新主演映画は、沼田まほかるのベストセラー小説の映画化『ユリゴコロ』。死を味わうことでしか“ユリゴコロ”=心の拠りどころを感じられないヒロイン美紗子、彼女の数奇な人生を綴るミステリーにして愛の物語だ。NHK連続テレビ小説『花子とアン』を終えた後、ドラマと映画において少し休暇をとった吉高さん。その間、初の舞台に挑戦するなど女優としての幅を広げた彼女は、『東京タラレバ娘』でドラマ復帰、そして『ユリゴコロ』で映画復帰した。『真夏の方程式』から4年ぶりとなる映画『ユリゴコロ』で、吉高由里子がみせた新境地とは──。

──初の殺人者役、驚きと同時にどんな吉高さんが見られるのか楽しみでした。

私も楽しみでした。フィクションだからこそ描ける題材、実話じゃない分、変な後ろめたさがないので、脚本を読んだときは面白そうだな、やってみたいな、と好奇心をくすぐられました。松坂桃李さんの演じる亮介が一冊のノートを見つけ、そこに書かれていた告白文「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか」という一文から美紗子の物語が始まります。そのノートを開いているときは過去の美紗子たちの話、ノートが閉じられているときは現在を生きている亮介たちの話。過去と現在の物語がノートを通じて描かれるのも面白いと思いましたし、亮介と同じく私もノートに書かれている物語の先を読みたくなった、引き込まれました。でも、撮影に入ってみたらもの凄く大変な現場で……。

──具体的にどんなことが大変だったのでしょうか。

撮影は去年の8~9月、群馬の前橋がロケ地でした。前橋と言えば暑くて有名な街、もちろん暑かった。暑いうえに雨は降る、台風も来る、ずっとどよんとしている天候で……。でも、そういう天候と作品の持つ混沌とした感じは合っていたのかもしれないですね。そして、今回の撮影はもの凄くカット数が多くて(1シーンが100カットを越えることもあったそう)、体力的にも大変でした。なかでも美紗子が川に入っていくシーンは、台風で撮影が延期になり、予定よりも2〜3週後に撮ることに。少し前までは暑さとの戦いだったのに、そのシーンを撮った10月の川はめちゃくちゃ冷たかったです。ほかにも、美紗子に愛を与えてくれる洋介(松山ケンイチ)とのダムのシーンは3日間かけて撮りましたが、泣くお芝居だったので、撮影期間中の中でも相当に辛かったです。こんなにも心が摩耗した役も作品も初めてでした。

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

──挑戦だったわけですね。誰もが生きていくために必要な“拠りどころ”が、美紗子にとっては“人間の死”だった。それを演じるのはとても難しいように思えますが、役づくりはどのように?

それが、準備をするものは特にありませんでした。殺人者の役なので準備のしようがないっていうのもありますけど(笑)。この映画は過去パートと現在パートがあって、私は過去パートで登場するので、昭和感のあるレトロな衣装やメイクは演技の助けになりました。美紗子は感情を出さないキャラクター、セリフもかなり少ないんです。相手のお芝居に対するリアクションがメインなので、相手の表情を見る、セリフを聞く、相手の演技すべてを受け止める完全に受け身のお芝居でした。

──その分、ナレーションは多かったですね。

そうですね、ナレーションで物語が進んでいきます。個人的な感想ですが、演じながらセリフで説明するのはあまり得意ではないので、そういう意味では今回のようにナレーションで語るのはいいですよね。

──松山さんの演じる洋介は、美紗子の生き方に大きな光を与える役。もの凄く深い愛と包み込むような優しさを持った男性でした。

洋介を見ていると切ない気持ちでいっぱいでした。彼はぜんぜん悪くないのに、ずっと罪を感じて、ずっとトラウマを抱えて生きてきた。彼が真実を知ったときのあの苦しさ、心のぶつけ方、とても難しい役だなぁと思って見ていました。その松山さんの演技を目の前で受け止めるのは、役者として面白かったです。目の表情ひとつとっても、優しかったり怖かったりして、凄い役者さんだなぁって。あと、松山さんのホクロの位置、気づきました? 本来あるホクロを消して、洋介として別の場所につけている。ホクロの位置が変わるだけで、人って印象が変わるものなんですね。

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

──これから映画を観る方は、そこもチェックしないとですね(笑)。熊澤尚人監督の言葉や演出で印象に残っているのはどんなものですか。

監督の言う美紗子のイメージは、肌が透けるような、線の細い、色白の女性……撮影に入る前は、いろいろ話しましたが、クランクイン後は全然。そのカットが「OK」かどうかは分かっても、演技が良かったのか悪かったのかについての言葉はなく、こうしてとかもない、会話自体がなかったと思います。でも、監督が「OK」ならOKなんだなって。どうして何も言ってくれないのか、現場では敢えて聞かなかったですが、それが熊澤監督流の私に対する追い込み方だったのかなって。というのも、こうして取材をしていると監督の話も耳に入ってきて、照れくさくなるほど褒めていただいているようなので、今はほっとしています(笑)。

──凄い女優だと褒めちぎっていました。映画を観ながらきっと誰もが自分にとっての“拠りどころ”について考えると思います。吉高さんにとっての人生の拠りどころ、日々の拠りどころは何ですか。

自分にとっての拠りどころは……演じているときは考えていませんでしたが、撮影が終わってみて思うのは、私の日々の拠りどころは、仕事を終えて家に帰って、セリフを覚えて、お風呂に入って、今日はもうやることがないぞっていう瞬間、そういう時間にお酒を飲んでゆっくりすることかな。何者でもない自分でいられる瞬間は、何よりも幸せ=拠りどころです。それは昔も今も変わらない。

──日常のなかのちょっとした贅沢時間、いい時間ですよね。

そうなんです。しなくてはならないこと、やるべきことを先に終わらせた自分に気持ちよくなるというか(笑)。

──すごくよく分かります(笑)。『ユリゴコロ』の撮影中はどうでしたか。

これまでは、どんな撮影でも苦しいとか追い込まれるとか、役に引っぱられるとか、そういうことはあまりなかったと思うんです。それが今回は、役柄のせいなのか、もの凄く苦しかった。「何なんだ、この感覚は?」という経験したことのない感覚でしたが、新しい経験であることは間違いないです。

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会

──その感覚の正体はつかめましたか。

撮影を終えてもまだつかめていないことはたくさんあって……映画が久々だったからなのか、美紗子という役の影響なのか、この映画が持つ重力的なものなのか、これだっていうのは見つかっていないですが、それはそれで、どれのせいにしなくてもいいかなって思います。ただ言えるのは、守ろうとするのも隠そうとするのも、そして嘘をつくのも愛情があるからで。相手のことを愛しているからなんですよね。この映画はミステリーから始まりますが、徐々にラブストーリーになっていく。男女の愛、家族の愛、いろんな愛情が複雑に絡みあう、喜怒哀楽いろいろな感情を味わうことができました。ありがとうって言いたいですね。

(取材・文:新谷里映)


映画『ユリゴコロ』
公開中

吉高由里子、松坂桃李 / 松山ケンイチ
佐津川愛美、清野菜名、清原果耶 木村多江
原作:沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉文庫)
音楽:安川午朗
主題歌:Rihwa『ミチシルベ』(TOY'S FACTORY)
監督・脚本:熊澤尚人  
企画・製作幹事:日活
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
製作:「ユリゴコロ」製作委員会
配給:東映/日活

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