作者がフリーダム過ぎる! マンガ大賞2017『響~小説家になる方法~』授賞式レポート

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左:柳本氏による受賞イラスト、右:『響~小説家になる方法~』第5巻

 マンガを肴に酒を飲みたい!
 面白いと思ったマンガを、その時、誰かに薦めたい!!

 マンガをこよなく愛する有志が無報酬で集まり、『ちはやふる』『テルマエ・ロマエ』などの傑作を世に知らしめてきたイベント「マンガ大賞」(http://www.mangataisho.com/)。その記念すべき10回目の大賞作が決定し、3月28日、ニッポン放送イマジンスタジオで授賞式が催された。

 2016年中に単行本が発売された膨大なノミネート作品(8巻以下に限る)から大賞に輝いたのは、『響~小説家になる方法~』(柳本光晴/小学館)。異端の感性を持った高校1年生の天才文学少女が、出版社に送りつけた1本の応募作。それが徐々に周囲を巻き込み、衰退した純文学界に旋風を巻き起こしていく、という異色の青春&文学ストーリーだ。

 過去10回のうち、小学館タイトルの大賞獲得は最多となる4回目。そして昨年の『ゴールデンカムイ』に続き、初めて2年連続で男性作家の受賞となった。

 大賞候補に残った13作品のタイトルと作者名、最終獲得ポイントは以下のとおり。

『響~小説家になる方法~』柳本光晴 67pt
『金の国 水の国』岩本ナオ 64pt
『ダンジョン飯』九井諒子 63pt
『アオアシ』小林有吾・協力:上野直彦 60pt
『波よ聞いてくれ』沙村広明 48pt
『約束のネバーランド』出水ぽすか・白井カイウ 43pt
『ゴールデンゴールド』堀尾省太 42pt
『ファイアパンチ』藤本タツキ 37pt
『ハイスコアガール』押切蓮介 33pt
『からかい上手の高木さん』山本崇一朗 30pt
『私の少年』高野ひと深 20pt
『東京タラレバ娘』東村アキコ 18pt
『空挺ドラゴンズ』桑原太矩 9pt

 実写ドラマ化された『東京タラレバ娘』、2年連続ノミネートとなる『ダンジョン飯』『波よ聞いてくれ』、ネットユーザーから支持を集める『約束のネバーランド』『からかい上手の高木さん』など、ここまで残ったのは有力作ばかり。1位から4位が7pt差にひしめく、例年にない激戦だった。

 それでは授賞式の様子を、大賞作家となった柳本氏の“フリーダムぶり”を中心にレポートしていきたい。

■赤裸々に語られた『響』連載までの経緯

 今回のプレゼンターを務めたのは、昨年大賞を獲得した『ゴールデンカムイ』担当編集者・大熊八甲氏。ノーネクタイのスーツ姿で登壇した柳本氏は、選考委員たちによって手作りされたプライズを大熊氏から受け取った(本人が撮影NGのため、掲載写真の左側は担当編集者である待永倫氏)。

 エキセントリックな作風に比べ、どこか純朴でおとなしげな雰囲気を漂わせる柳本氏。しかし記録用に撮影していた小学館のカメラに向かって満面の笑みでピースサインを出すなど(写真撮影NGなのに)、いきなりお茶目なところを報道陣に見せてくれた。

 司会者から受賞の感想を問われると「とにかくうれしい」と語り、続いて「ようやく(受賞が)本当だったんだな」と実感したことを加えた。大賞決定を知らされた時はその事実が信じられず、嘘ではないか、ドッキリ企画じゃないか、何度も編集者に呆れられるほど確認したという。

 また、歴代の受賞者には珍しく、春めいた晴れ着に身を包んだ美人アシスタントも授賞式会場に同行。受賞の連絡が届いた直後、このアシスタントさんから「先生、マンガは絵じゃないってことが証明されましたね!」と身も蓋もないコメントを投げつけられたそうだ。

 会場内をひとしきり笑わせた後は、デビューから『響』連載までの紆余曲折が語られた。

 実は柳本氏、新人賞などを一度も獲らず、ここまで上りつめたマンガ家である。もともとは同人作家をしており、スクウェア・エニックスから声がかかって商業デビューした。同社で読切りを描き、反響も上々。その後に連載の話まで出たらしい。ではなぜスクエニで描き続けず、双葉社、小学館と移っていったのか? その事情が明かされた。

 本格的な連載をする前に“1巻で終わる短期集中連載マンガ”を描きたいと熱望した柳本氏。しかしスクエニ側からは「そんなものは要らない」「あなたの自己満足のためにページは割けません」と拒否され、追い出された(本人談)そうだ。

 スクエニから追い出されたところに双葉社からオファーがあり、短期集中連載されたのが『女の子が死ぬ話』。タイトルがド直球なのでご存じの人もいるだろう。一度読んだら二度と忘れられない、衝撃的ストーリーの作品である。

 この『女の子が死ぬ話』を読み、ただならぬ才能に惚れ込んだのが『響~小説家になる方法~』の初代担当編集者(登壇した、現在の待永氏は2代目)。こうして柳本氏は小学館に口説き落とされ、今回のマンガ大賞獲得につながっていったのである。

「これは話していいのかなぁ」と迷いながら結局すべて暴露してしまうフリーダムトーク、場違い感すらおぼえる和服美人アシスタントの存在、デビューから連載までのドラマチックな展開など、前半部分だけでも見どころ満載な授賞式となった。

■創作秘話もフリーダム!

 柳本氏の壇上トークは、『響~小説家になる方法~』誕生の経緯にも及んだ。小学館に口説かれた時点では何も連載テーマが決まっていなかったという。では、小説家というマンガでは珍しいテーマを扱い、あれほど濃密な作品はどうやって生まれたのだろうか。

 部活もしていないし、得意なことも好きなこともなかったという柳本氏。野球やサッカーなど多くの先駆者がいるメジャー系テーマは、自分にはやれない。かといって誰も扱ったことのないテーマで、作品に変な偏りを持たせたくない。

 そこで着目したのは、世間一般ではメジャーだけど、マンガではあまり扱われていない「小説・文芸」テーマ。小説の文章そのものは絵に描き起こせないから、誰も手を付けてこなかった。しかしキャラクターさえ活かせば、「このキャラなら凄いのを書いている」という説得力さえ持たせれば成立するのではないか、との考えに至ったという。

 マンガで小説家の物語を成立させる強烈なキャラクター、そして自身から湧き出す“圧倒的な天才を描きたい”欲求――これらが融合して生まれたのが、受賞作品のタイトルにもなった“響”という主人公だった。

 未読の人のために少し解説しておくと、『響~小説家になる方法~』の主人公は鮎喰 響(あくい ひびき)という名の高校生。セットしていない黒髪、メガネ、小柄といった典型的な文学少女の風貌に、読んだ者すべてを魅了する絶対的な文才を持つ。しかし並外れた感性ゆえか、初対面の相手に「生きてて楽しい?」と言い放つ、小競り合いした相手を本当に殺しかける、他人に自分を屋上から突き落とさせようとするなど、想像もつかない行動に出てしまうキャラクターだ。

 なお作者の柳本氏は、この特異なキャラクターを可愛いと思って描いていることが発覚。インタビューの場で「揉めたヤンキーの小指をぽっきり折っちゃう子って可愛くない?」と答えたりもしたが、なかなか他人から同意を得られないことに悩んでいるそうだ。

 作中の“響”に劣らない柳本氏の奔放な感性、フリーダムぶりは、その後も次々に明かされていく。「文学賞の取材には行ったことがあるか?」という報道陣からの質問に対し、芥川賞・直木賞の記者会見場に「作画資料を撮影するために行ってみた」と回答。編集部を通さずアポなしで行っても会場に入れるわけがないことに現地で初めて気づき、当然のように取材できなかったという。歴代のマンガ大賞は、綿密な取材に基づく作品が1位を獲得してきた傾向にあり、その点でも柳本氏の“アバウトすぎる取材スタンス”は異色といえるだろう。

 担当編集者である待永氏との出会いも“響”めいていた。2人がタッグを組む前、たまたま年末の謝恩会で待永氏が酔態をさらすところを柳本氏は目撃していた。そのため担当になることが決まった時、柳本氏は「あなたには担当されたくなかった」と言ったそうだ。初対面の相手へ歯に衣着せぬ物言い……ここまでくると“響”そのものではないか。

 それでも互いに信頼で結ばれ、編集者として柳本氏の中にあるものをフルに引き出し続ける待永氏。単行本は5巻まで発売されており、注目度はどんどん上がっている。メディアミックスの話も来ているとのことで、今後のさらなる展開を楽しみにしながら、過去最大級に暴露話の多かった授賞式レポートを締めくくりたい。

(取材・文/浜田六郎)

■「マンガ大賞2017」公式サイト
http://www.mangataisho.com/

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