東北の職人×フランス人デザイナーが生み出した、新しい伝統工芸「KOKESHI」とは?

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人のようにおじぎをする「KOKESHI」。写真右が隈氏、左がロナン氏

スクリーン右が隈氏、左がロナン氏

東北地方で江戸時代から作られてきた工芸品、こけし。この伝統の品を再解釈した「KOKESHI」が発表された。

2011年の東日本大震災地震以降、東北のものづくりを支援するべく建築家の隈研吾氏が中心となって立ち上げた「East Japan Project」の一環として発表されたものだ。作者であるフランスのプロダクトデザイナーコンビであり兄弟の、ロナン&エルワン・ブルレックのロナン氏が来日し、10月30日、代官山 蔦屋書店で隈研吾氏とトークセッションを行った。


「こけし」じゃない? 「KOKESHI」とは

ろくろの回転によって木を球体に削りだして作る「こけし」。東北のこけし職人・木工職人、そしてブルレック兄弟のコラボレーションにより生み出された、「こけし」の新解釈がこちら。

関節を与えることで動きが生まれた。おじぎをする姿は、どこか愛嬌を感じさせる。ロナン氏らは、このシンプルなデザインを完成させるのに6ヵ月かかったとか。

プロジェクト発足時、隈氏が思い出したのは彼らの「鳩のプロジェクト」だったという。

「木でできた、ごくシンプルな鳩の作品なのですが、ちょっとしたカーブの中に、ちゃんと“彼”がある。不思議な鳩です。僕の机には、その鳩と、チャールス・イームズがデザインした鳥が並べてあるんですが、同じ鳥を扱った作品なのに、2羽の性格の違いすら感じる。カーブでこんなに違いが出るものかと。それで、『KOKESHI』でもちょっとしたカーブで、従来の『こけし』とまったく違ったものにするだろうと思っていましたが、まさかおじぎをするとは!」(隈氏)

ロナン氏は「人間の形をしたオブジェなので、ちょっとしたふくらみで表情が変わる。それがすごく難しかった。また、本来『コケシ』は子どもを失った母親のためのもので、その悲しいミステリアスな背景は尊重、というか、考えた部分」と話す。これに対し、「そこを目や鼻を描くわけでなく、カーブなどで翻訳してしまうプロセスがすごい。そして、そのディテールへの執着心にも驚かされました」と隈氏。

ロナン氏の細かな注文に応えるには、通常のこけしを作る技術以外の技が必要となるため、複数の職人で補い合いながら対応していったとか。その過程で、ロナン氏は建築家・デザイナーと職人のコミュニケーションの重要さを感じたという。

「職人の技というものが衰退しないように、どうやって光を当てていくか。大量生産が当たり前の現代で、こだわりのあるものを作っていけるといいですね」(ロナン氏)

デザイナーと職人のコラボが地域の活性化につながる

ロナン氏らが「KOKESHI」のほかに手がけた“伝統を新解釈する”プロジェクトとして、パキスタンのカーペットがある。パキスタンにある小さな街に千年前から伝わるキルトを応用し、4つの作品を完成させた。素材となるウールが粗い状態でしか手に入らず、しかも短期間かつ言葉が通じないなかにも関わらず、地域の活性化につながったという。

これに関して隈氏が類似例として挙げたのが、歌舞伎座のカーペットだ。鳳凰をモチーフにしたこのカーペットは山形県のオリエンタルカーペットと呼ばれるもの。雪のために畑仕事ができない冬の間に作られる手刺しの逸品だ。今でも女性たちが技を受け継いでおり、手刺しをし、最後に毛並みを整えるという工程を踏む。隈氏はその技術力の高さに感動し、自身で“苔”を模したカーペットを作ってもらったという裏話も披露。

このような手の込んだ伝統工芸品は、得てして時間がかかり、高価なものだ。しかしロナン氏は、「異文化の人々にこれらがどれだけ価値があるものか伝え、大量生産・ローコストに立ち向かっていきたい」と締めくくった。

継承者の不足などで、伝統工芸を含む伝統文化の衰退が危惧されて久しい。一方でおしゃれで前衛的なプロダクトデザインが注目を浴びている。この2つが合わさることで、どちらでもない「新しいデザイン」が生まれ、同時に両者の魅力も引き立つ。この『KOKESHI』は、伝統工芸自体の可能性について考えるきっかけになるはずだ。

(文:高橋七重)


ロナン&エルワン・ブルレックのその他の作品

ベルサイユ宮殿の「ガブリエル」館を飾るクリスタル製のシャンデリアで、18mもある大作だ。ベネチアで流行していた、ハンマーで大胆にたたくという製法を使って作ったもの。「今後も新しい素材、工程にチャレンジしていきたい」とロナン氏。

隈氏が「KOKESHI」プロジェクト前に二人が作った日本にまつわる作品として見せてもらったという、漆の照明器具。「今まで僕が漆に対して持っていたイメージをまったく変えてくれるような、すごくかっこいいものでした」

ブルレック兄弟の著書

Ronan & Erwan Bouroullec: Drawing

紙の切れ端や裏紙に書き溜められた、2004~2012年のカラーと白黒のアイデア作品を850以上掲載

Ronan and Erwan Bouroullec

作品の全容を、10章に分けて構成。手がけてきたプロダクトが網羅されたアーカイブ的一冊。


プロフィール

■隈 研吾氏/建築家、東京大学教授。近作に、サントリー美術館、根津美術館、浅草文化観光センター、長岡市役所アオーレ、歌舞伎座などがある。現在、国内外で多数のプロジェクトが進行中。著書は『小さな建築』(岩波新書)、『建築家、走る』(新潮社)、『僕の場所』(大和書房)他、多数。

■ロナン&エルワン・ブルレック/10年前にユニットを組み、日々の努力による結束と互いの異なる個性をもって、幅広いデザインに挑戦し続けている。ロンドンデザイン美術館、ポンピドゥーセンター・メスなど多くの美術館にて個展を開催。本年度のロンドンデザインフェスティバルにて、ロンドンデザインメダルを受賞。http://www.bouroullec.com/

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