イラストレーター穂積和夫さんインタビュー「おしゃれは、男が生きていくための武器」

お気に入りに追加

穂積和夫(ほづみ かずお)/1930年東京生まれ。建築設計事務所勤務を経てイラストレーターに。ファッションやカーイラスト、古建築や歴史的テーマと手がけたイラストは多岐にわたる。『絵本アイビーボーイ図鑑』(講談社)など著書多数。

Photograph: Masashi Asada

1960年代、80年代と二度のブームに続き、最近再び注目を集めている「アイビー・ファッション」。1960年代に一世を風靡したアイビー・リーガー(アメリカ東部の名門私立大学8校)のスタイルのことで、ジャパニーズ・アイビー・スタイルのバイブルとして絶大な支持を得ていた『絵本アイビーボーイ図鑑』(講談社)の続編ともいうべき『絵本アイビー図鑑』(万来舎)が12月初旬に出版されるという。

著者の穂積和夫さんは、アイビーの“レジェンド”だ。アイビーの歴史と共に歩んできたキャラクター「アイビー・ボーイ」の生みの親であり、自身もアイビーの体現者。インタビューは84歳を迎えた現在も、細身のチノーズに、フェアアイルセーターを合わせたオーセンティックなアイビー・スタイルで応じた。

インタビュアーは、代官山 蔦屋書店ファッション担当のアートコンシェルジュ森田賢一氏。中学二年生の時に『絵本アイビーボーイ図鑑』に出会い、ファッションに目覚めた一人だ。 穂積さんが歩んできた歴史、アイビーの裏話を教えてもらった。


穂積先生とアイビーの出会い

― 先生がアイビーに出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
「最初はアメリカの服飾雑誌。当時、1950年代ですね、僕はまだ建築設計事務所に勤めながらイラストの勉強をしていました。『GQ』『Esquire』などの一般的なファッション雑誌はまだなくて、業界向け。参考資料として毎月買っていましたね」

―アイビー・ファッションはどうやって購入されていたのですか?
「アイビーを世に広めたのはアパレルブランドの『VAN』で、1960年代に入ってからのことですが、僕が着始めたころは、どこにも売っていませんでした。ブレザーやスーツの仕立屋に雑誌を見せて作ってもらっていました。でもみんな分からないから、うまく仕上がってこないこともよくありましたけど」

―当時は、アイビーのブームのきっかけになったアパレルブランド「VAN」の後の重要人物くろすとしゆきさん達と、愛好会「アイビーリーガース」を結成していらしたそうですね。
「ええ。特に思い出深いのは、クリスマスパーティーですね。盛大にやりまして。例えば、『Back to 20’S』をテーマにしたときは、平川町のホテルオークラの旧館の前にT型フォードを玄関の前にどーんと置いて、ディキシーランド・バンドを呼んだり、チャールストンを踊ったり。20年代のアメリカは禁酒法の時代でしたから、お酒は全部ティーカップでサービスするみたいな趣向を凝らしたりね。当時、こんなパーティーがなかったから、アイビーのパーティーは面白いって評判になりました。当時の有名人や芸能人も来ていました」

代表作「アイビー・ボーイ」はこうして生まれた

―代表作「アイビー・ボーイ」の誕生秘話を教えていただけますか?
「当時、美術団体の公募展では油絵、日本が、彫刻なんかに加えて、写真やグラフィックデザインといった、従来の芸術とされていたものと違う部門ができたんですね。僕もファッションイラストで出品をしていたんですけど、あるとき真面目なものじゃなくて、おもしろくてかわいい、漫画みたいなものを描いてみようと思い立ったんです。芸の幅を見せるつもりでね。で、終わった後、家にあっても邪魔だから、当時アイビーを始めた『VAN』の石津謙介さんに差し上げたんです。そしたら翌日、ポスターにしたいって電話がきて。ギャラはブレザー1枚だったんです(笑)。ダブルブレザーの、かっこいいやつだった」

―初期のアイビー・ボーイは今とは雰囲気が違いますね。
「等身も高いし、あまりかわいくないでしょ。あれは何をイメージしたかというと、武者絵とか、凧の絵だとか、そういう木版みたいなタッチを持ち込んだらおもしろいかなと思って。今の姿になるまで10年間リファインしてきました」

日本のアイビー文化はアメリカ人もビックリ!

アイビー・リーグ校のキャンパスを密着取材した『TAKE IVY』(林田昭慶・石津祥介・くろすとしゆき・長谷川元 著、powerHouse Books 刊)※リンク先は日本語版

アイビー・リーグ校のキャンパスを密着取材した『TAKE IVY』(林田昭慶・石津祥介・くろすとしゆき・長谷川元 著、powerHouse Books 刊)※リンク先は日本語版

―日本のアイビー文化って、独特ですよね。本場よりもルールがしっかり決まっているというか…。
「実は僕が言い出して定着したっていう要素も多いんですよ。あのころの日本は、アメリカとはまったく別の流行、発展の仕方をしているんですね。それを見て、今のアメリカ人がびっくりしているくらい。僕は『Esquire』『GQ』などのアメリカの雑誌で用語を覚えたんですけど、情報が全然足りない。だから勝手に作って書いちゃった。例えば、『ボタンダウンのシャツにはネクタイをシングルノットで結ばねばならない』とかね」

―その「ねばならない」っていうのが多いんですよね。
「それが嫌だっていう人もいるけど、目標としてとらえればおもしろいんですよ。達成すればほかのものにチャレンジすればいいんだから。でも、日本はおしゃれがすべて、みたいに思いがちじゃないかな。おしゃれは生活の一部であって、すべてではない。そもそも、それを分かってないといけない」

実は、アイビーだけではなかった

新刊『絵本アイビー図鑑』(万来舎)

1964~67年のファッションのページ

1960年後期~70年のファッションのページ

1980年代~現在のファッションのページ

―服を選ぶ基準というのはあるのでしょうか?
「見た瞬間に、これは自分に似合いそうだ、ってピンとくるかどうか。ブランドとか、値段は関係ないんです。イタリアでアルマーニを着てみたときに、あまりの似合わなさに女房と二人でプッて噴き出しちゃった」

―アイビーブームは60年代、80年代の2回来ていますが、ブームが落ち着いていた70年代はどのようだったのでしょうか?
「世間もそうだけど、僕も全然アイビーじゃない格好をしてましたね。当時流行だった、ローライズのパンタロンをはいたり、ヘビーデューティーを追いかけたりね。『VAN』も当時は襟幅が広く、ネクタイもズボンも太くなっていて、細身のものを着るのはおかしいっていう時代の流れがありました」

―そういう時代の変化は認める方ですか?
「すんなり入っちゃいますね。ただ、自分のフィルターは通します。新刊の『絵本アイビー図鑑』(万来舎)では、2000年代のファッションも掲載しています。あと、僕はファッションイラストレーターなので、アイビー以外のものも描かせられます。いろんな流行があるとはいえ、アイビーで覚えたことをひとつのスタンダードにすることは、とても有効でしたね。アイビーとはここがこう違う、こう違いを出していく、と意識してね」

―最近は和服も着られているとか。
「15、6年前からでしょうか。いろんなものを着てみたいという気持ちがありまして。そもそもの動機は、時代小説の挿絵の仕事です。自分で着てみないと、布の動きや身のこなしが分からない。普段着た時の感覚が絵を描く中に出てきたらいいな、と」

84歳、歩みは止まらない

Photograph: Masashi Asada

Photograph: Masashi Asada

―いろんなファッションを試してみて、今はどうですか?
「元に戻ってきましたね。トラディショナルなものにね。戦争を経験している僕の世代は、男の着るものなんて何でもいいじゃないのっていうところがあるんですけど、洋服は男が生きていく戦略として重要なんです。ここら辺はぶれないようにしています」

―画集は出さないのでしょうか? 僕はとても欲しいんですけど…。
「僕はね、いろんなものを描きすぎるんです。着るものもそう。あれも、これもやってみたい。たくさんありすぎて、そんなものを集めても画集にならない。それに、注文のイラストレーションで忙しくて、作れといわれても納得できるものができないでしょう」

―今後、新たに挑戦したいことはありますか?
「僕が絵の芸術性みたいなのを理解しているかどうかなんて、はなはだ自信がないけど、この年になってやっと言えるのは、『この絵がすき』『この絵がきらい』ということです。そして、今までと違う絵にチャレンジしたいという気持ちはあります。イラストレーターはやっぱり時代を描いていかなきゃいけないっていうのはあるのですが、僕はもっと手法のほうで。油絵とか、今までとは違うテイストの、プリミティブとか抽象とかも描いてみたいですね。昔は写実的なイラストも描かざるを得なかったですけど、今はパソコンでできますからね」


毎日パソコンでSNSを利用し、常に感度のいい人たちとの接点を大切にする穂積さん。原点を大切にしながらも歩みは止めない。アイビーを牽引してきたように、今も「ダンディズム」を体現し続けている。

(インタビュー:代官山 蔦屋書店 アートコンシェルジュ 森田賢一、文:高橋七重)


【代官山 蔦屋書店関連イベント】
代官山 蔦屋書店 3rd Anniversary 「WE RESPECT...」 穂積和夫トークイベント
日時:12月5日(金)開場18:30、開演19:00、終了21:00
会場:Anjin

この記事が気に入ったら、
いいね!しよう。

Twitterでも最新記事をチェック!

この記事を読んだ人におすすめの記事

こちらの記事もおすすめ

あなたへのおすすめ

  • TSUTAYA TVオリジナル番組「イケメンPLANET」
  • お仕事発見T-SITE 希望のアルバイト・パート情報が見つかる!
  • TSUTAYAマンガ通スタッフおすすめ

人気の画像

  • “脱げる”シンガーソングライター・藤田恵名、過激なMV & ヴィジュアル解禁
  • 小倉優香、『チア☆ダン』「JETS」センター役に大抜擢!
  • 『けものフレンズ』で大ブレイクの美少女声優・尾崎由香、初の写真集を発売!
  • ナニワのブラックダイヤモンド・橋本梨菜、ヤンジャンに堂々登場
  • 有村架純、初セルフプロデュース 25歳の「今」が詰まった写真集発売
  • 可愛すぎる音大生・みうらうみ、「グラビアン魂」に初登場
  • 出口亜梨沙、“大人エロス枠”で初表紙飾る
  • 【2018年1月~4月】TSUTAYA写真集ランキング 昨年覇者・白石麻衣の座を長濱ねるが継承?
  • エロかわいい音大生・みうらうみ、再びグラビアに登場

TSUTAYAランキング

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST

TSUTAYA映画通スタッフおすすめ

SNS・RSS