鹿島茂氏の作り方/代官山 蔦屋書店3周年企画「WE RESPECT...」

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オープン3周年を迎える代官山 蔦屋書店で開催されている特別企画「WE RESPECT...」。代官山 蔦屋書店がリスペクトするクリエイター11名を招き、11夜にわたって一人ひとりのライフスタイルや人となりを知るイベントだ。

その皮切りとなる11月28日の第1回目に登場したのは、フランス文学の権威、作家・大学教授である鹿島茂氏。トークイベントの司会を務めたのは、代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ間室道子氏だ。「鹿島先生の姿は店内で頻繁に拝見します。いつも気が付くといらっしゃるんですよね」と笑いながら語る。

どんな幼少期を過ごせば鹿島氏のような人間ができるのか、鹿島氏という人物がどのような要素で構成されているのか、コンシェルジュ間室氏の質問から鹿島氏の「成り立ち」を探っていく。複数の視点から眺めることで、鹿島氏の姿が立体的に浮かび上がってきた。

4つの「視点」から見る、鹿島茂の作り方

その1「読書」 生まれ育った家には、一冊も本がなかった?

  

―鹿島先生といえば身体の3分の2が本で出来ていると言われるほどの読書家ですが、読書の原体験を教えていただけますか。

「僕の生家は江戸の天保時代から続く酒屋で、『商売に本は必要ない』という考え方から、一冊も本がなかったんです。読書の原体験は、新聞の連載小説ですね。祖父に何度も繰り返し読んでもらい、そのうちに内容をほとんど暗記してしまいました。また、家の店子の一角には漫画雑誌のコーナーがあって、店子の息子という立場を利用して、少女漫画を含めた全誌を立ち読みで読破していました」

―では、活字を自発的にお読みになったのはいつ頃からですか?

「中学校で読書感想文を書くように言われた時、家に本がなかったので、隣町の本屋に行ったんです。そこで本屋の主人にすすめられて現代日本文学の全集を読みました。その第一回配本は芥川龍之介だったんです。こういう全集は、最初は人気作家から始まるもの。途中の配本から始まる田山花袋や徳田秋声も仕方なく読んでいましたよ」

―「書く」ということを意識的にされたのは、この時が初めてということですね。

「小学生の頃にはエロ系の雑誌にまで手を伸ばしていました。その中の随筆コーナーのレベルが高くてね。文章指南として役に立ちましたよ。そのおかげか、中学時代に芥川龍之介の『河童』について仕方なく書いた読書感想文は、横浜市のコンクールで受賞しました。読むものが少ないから、その辺りにあるものは何でも読んできたんです」


その2「フランス」 苦手なフランス文学に進んだのは、恩師の「顔」がきっかけ

―フランスを意識したのはいつ頃でしょうか?

「大学の教養学部で受けたフランス語のテストが悲惨な点数でね。仏文に進学することは一切考えていなかったんです。きっかけは、東京大学仏文科で教鞭を執っていたフランス文学者の山田爵(やまだ・じゃく)先生ですね。文豪・森鴎外のお孫さんで、森茉莉さんの息子さんである方なんですけど、山田爵先生は、とても良い顔をされていたんです。子どもの頃から店でいろいろな人を眺めてきましたから、顔で人を判断する癖があったんですね」

―最も影響を受けた方はいらっしゃいますか?

「山田爵先生ですね。学生に対しても権威を振りかざすことなく、謙虚であり続ける姿勢を学びました。爵先生は声も口調も気持ちが良い。だからこちらも話し方まで似てくるんです」

その3「自動車」 フランス車を衝動買い。車のために家まで建てたことも

グリーンのシトロエン2CV

グリーンのシトロエン2cv
(C)paul prescott Shutterstock.com

―鹿島先生は車もお好きですよね。「町田街道を車で走るたび、両側にあるカーショップで目についた車を衝動買いした」というエピソードをお持ちだとか。

「以前フランスから日本に戻って『フランス車に乗りたい』という気持ちが高まっている時に、町田街道でマニア向けの自動車販売店を見つけて、グリーンのシトロエン2CV(ドゥシュヴォ)を購入してしまいました。しばらく後に、赤い2CVも手に入れました。並べたら綺麗だと思って。2台のシトロエンを並べるために車庫のある家を建てましたよ。フランスの中古車はすぐに故障するし、乗る前にはいつも整備する必要がある。修理代も馬鹿にならないし、散々悩まされてきました。それでもドイツ車よりフランス車の方に魅力がある。やはり食指が伸びるのはマニア向けの車ばかりでね。例えばスウェーデンの飛行機メーカーが作った車に乗ると、これは飛行機になりたかった車なんだと分かるんです。ギアを変えると飛行機のバーナーのような音がしておもしろい。あと最近、代官山 蔦屋書店でグリーンのシトロエン2CVのミニチュアカーを発見して、こちらも衝動買いしてしまいました」


その4「買い物」 新たなマニア領域「絵葉書」の沼に片足を踏み込む

エッフェル塔の絵葉書イメージ

エッフェル塔の絵葉書イメージ
(C)LiliGraphie Shutterstock.com

―鹿島先生は高価な古本を次々買って、『鹿島建設の御曹司ではないか』と噂が流れたこともあるそうですね。最近おもしろかった買い物はありますか?

「奥が深すぎるので深入りしないようにしているのですが、絵葉書ですね。物によっては100万円の値が付くほど、一部のマニアには堪らないジャンルなんです。先日はネットオークションでエッフェル塔の古い絵葉書が150枚ほどセットになったものに入札しました。エッフェル塔自体は変わりませんが、その周りは変化します。昔、トロカデロ宮殿のそばにサイ、ゾウ、馬、雄牛という4体の動物の銅像がありましたが、宮殿の撤去の際になくなってしまった。その銅像がどんな姿だったのか、絵葉書には写っているんです」

―買い物と言えば、鹿島先生は以前「一億円するセリーヌの生原稿を巡って福田和也さんとオークションで競り合った」と噂されたこともありましたね。

「ガセネタです。『世の果てへの旅』の生原稿が出た時に福田さんに教えただけです。生原稿の収集は幸いにして趣味にしていないんです」


その他、小説を執筆した時の話、読んだ本の保管方法、現在取り掛かっている仕事など様々なテーマに話は及んだが、尽きることのない1時間だった。「鹿島茂の作り方」と銘打ったトークイベントであったものの、やはり一筋縄では理解しきれない深みと幅を持った鹿島氏。その生き方の一端に触れることができた。

(文:玉田光史郎)

鹿島茂(かしま・しげる)

1949年横浜市生まれ。東京大学大学院修了。明治大学教授。専門は19世紀のフランス。91年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、2004年『成功する読書術』で毎日批評賞を受賞する。『パリの秘密』(中公文庫)、『パリでひとりぼっち』(講談社)、『蕩尽王、パリをゆく―薩摩治郎八伝』(新潮選書)など著作多数。訳書に『役人の生理学』(バルザック/講談社学術文庫)などがある。

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アーティスト情報

鹿島茂

生年月日1949年11月30日(68歳)
星座いて座
出生地神奈川県横浜市

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